【つながるポケ○(マル)日記】岩手の生産者さんと未知の発見。葵くんが発表した、自由研究は?ー猟師・兼澤さんー
※こちらではポケットマルシェ公式noteにて2022年11月に公開した記事を再掲載しています。夏休み明け、都内の小学校の登校日のことです。ある小学2年生のクラスでは、ざわざわと人だかりができていました。チャイムが鳴り、先生が注意してもなかなか席に戻らないクラスメイトのみんなが食い入るように注目していたもの、それは、<葵くんの自由研究ノート>でした。タイトルは「しかがお肉になるまで」けんきゅうのきっかけ:夏休みに岩手けんでしかのしゅりょうたいけんをしました。そのときにはじめて知ったことや、りょうしさんに聞いたことがおもしろかったのでレポートにしてまとめました。その後5ページに渡って、葵くんが夏休み中に体験した鹿猟の手順が、写真と共に詳細にレポートされています。そして、最後はこのように締めくくられていました。「かんそう今回しかのしゅりょうたいけんにさんかして、しかというどうぶつがお肉というたべものにかわるまでのながれを知りました。人間のつごうでがいじゅうとしてあつかわれころされてしまうのはかわいそうだけど、のうぎょうをやっている人の生かつを考えるとしかたない気もします。いただいたいのちはせめておいしくたべよう、のこさずたべようと思いました。」ちなみに、研究者の葵くん、実は大の昆虫好き。参加前は「岩手に行ったら、昆虫をたくさん取りたい。東北の固有種とか!タマムシやタガメも捕まえられるかも….?」と期待していたそうですが、この自由研究から想像する限り、葵くんが持つ昆虫への強い好奇心は、思いがけず更なる新しい学びにつながったようなのです。夏休み中、葵くんはどんな時間を過ごし、どのような心境の変化があったのでしょうか?2022年夏に初めて岩手で行われた<おやこ地方留学プログラム>の一部様子を、自由研究のノートと共に振り返っていきます。初めての狩猟体験今回狩猟体験アクティビティを共催してくださったのは、岩手県大槌町の「山のハンター」兼澤幸男さんと、弟子の大場さん。参加者の子どもたちは、早朝3時に宿泊所を出発し、兼澤さんがいつも猟をする山へ向かいました。車中では、大槌町の鹿の現状や、猟をする理由、山についてなどのレクチャーをいただきます。子ども達にとっては初めて知ることばかりです。兼澤さんの先導のもと足を進めて数時間経った頃、一匹の鹿を仕留めることに成功しました。仕留めた鹿は、山の麓まで協力して運び、処理場にて解体作業、調理までを行います。兼澤さん「今回は、ショッキングな場面がたくさんあったと思う。鹿さんを獲った後にみんなでお祈りしたけど、必ず食べる時にいただきますっていうよね。いただきますは自然からの恵みに感謝しているんだよ。そしてお肉を食べる時は兼澤の顔を思い浮かべて食べてほしいな。」自由研究この濃厚な一日を経て、葵くんが知ったこと、肌で感じたことがまとめられたのが、あの<自由研究>でした。「岩手けん大づちちょうのしかについて:大づちちょうではすごくしかがふえています。しかは一日に5kgの草をたべます。また、早ければ一さいからはんしょくかつどうができます。そのため、ほかくをしないと四年で二ばいにふえてしまいます。大づちちょうのしかはゆたかなしぜんの草をたべるいがいに牛のぼく草や、のうさくぶつもたべてしまいます。そのため害獣としてこれまではくじょされはいきされていました。しかし、じょうきょうをかえて、しかをかちのあるものにかえようと、ジビエじぎょうがはじまりました。」「しかのりょうのしゅるいについて:しかのりょうにわ大きく二つのしゅるいがあります。「しのびりょう」と「ながしりょう」です。しのびりょうとは:えものに気づかれないように近づいてしとめるりょう。あるきながらじぶんの目でえものをさがしていきます。ながしりょうとは:車などではしりながらみちのえものをさがすりょう。見つけたらうごかずしかが目をそらしたすきにうちます。」「おいしいしかについて:しかのおいしさはおすめすのちがいやじきによってちがいます。オス:6月〜10月にあぶらがのっておいしいメス:9月〜11月にあぶらがのっておいしいこのほかに年れいがわかいしかほどくさみがなく肉がやわらかくなります。しか肉をおいしくするポイント:しとめたらすぐにさかさにしてちぬきをする。氷でひやして肉のおんどを下げる。ないぞうをこわさないようにかいたいする。」かんそう今回しかのしゅりょうたいけんにさんかして、しかというどうぶつがお肉というたべものにかわるまでのながれを知りました。人間のつごうでがいじゅうとしてあつかわれころされてしまうのはかわいそうだけど、のうぎょうをやっている人の生かつを考えるとしかたない気もします。いただいたいのちはせめておいしくたべよう、のこさずたべようと思いました。兼澤さんが話していたように、非日常的な体験ということもあり、初めこそ遠慮したり、様子見をする子どもたちもいました。葵くんも参加前は、未知の体験に対するワクワクと「鹿を殺しちゃうとかわいそう」という葛藤する感情を持っていたそう。しかし、親の介在がないところで、全く新しい環境下でも「よくわからないけど、とりあえずやってみよう」と行動し、さらには正解のない問いに対して自分なりの答えを出した葵くん。一番誇らしく感じているのは、ずっと葵くんの成長をそばで見守っていた、お母さんかもしれません。葵くんのお母さんが側で見ていたこと実は、夏休みを前に、母親の栗原さんは悩んでいました。昨年は夏休みに学童に通わせたけれど、今年はもっと違う経験をさせてあげたいと思っていました。けれど仕事が…そこでたまたま見つけた<おやこ地方留学プログラム>では、親子で共に一週間新しい環境で過ごしつつ、親はワーケーション、子どもは自然と触れ合う数々のアクティビティに参加できるのだと、知ります。葵くんも「昆虫たくさん取りたい!もしかしたら岩手は環境がいいから、近所では見つけられない昆虫がいるかも!」と、乗り気になってくれたようで、親子二人での参加に踏み切ったのだそうです。とはいえ目的地は、二人にとって縁もゆかりもなかった岩手県。実際にプログラムが始まるまでは、この時間が葵くんにとってどんなものになるか、想像がつかなかったはずです。しかし、そんなお母さんの心配はよそに、毎日さまざまな生産者さんと一緒に新たな経験をして帰ってくる葵くんは、夕食の時間にたくさんその日やったこと、学んだことをシェアしてくれたんだとか。「元々、昆虫が入り口だった息子も、参加中は毎晩、農家さんのところで食べたピーマン、お米もとっても美味しかったな、という話や、自分たちで作ったジャムを早くお家でお父さんとお母さんと一緒に食べたいこと、自分で獲れたお魚は実はこんな珍しかったらしい!というエピソードを持ち帰ってきてくれました。自分の命を支えてくれている存在である「食べもの」を作ってくれている人がいること、「食べもの」を大切にしなければならない理由を、息子が体験を通じて理解していく様子を見て、とても嬉しかったです。各生産者の方の暮らしぶりもとても興味深かったようで、特に生産者さんのおうちと自分の家との違いを何度も話してくれました。「うちも野菜を作ったり鶏を飼おう」というので、「広いおうちじゃないと難しいんじゃない?」というと、「じゃあ将来僕が大きな家を建てるしかないか・・・」と頼もしい発言も(笑)生産者の面白いキャリアパス、自分なりの価値観を大切にしながら生きる素敵な姿を見れていたらいいなと思います。」狩猟だけでなく、海や川、農業にも触れた一週間は、特に昆虫だけでなく、他の生き物、命、そして食について、日常空間では得られない学びと発見でいっぱいだったよう。「葵にとっては楽しさと驚きの連続で、かけがえのない一週間になったと思います。東京に帰ってきてからも、「また生産者の方に会いたい」「鹿肉が美味しかったことを伝えたい」「あの後この昆虫を見つけたことを自慢したい」と言っていて、ついには、虫もいっぱい取れて、美味しいものがたくさんある岩手に移住したい…なんて洩すこともあります。これは、皆さんが息子を温かく迎え入れて、興味に寄り添ってくださったおかげです。これが「最高の思い出」ではなく充実した人生の「原点」になるよう、今後も成長をうまく導いていきたいと思いました。 今年で終わりではなく来年もまた参加したいと思います。 息子も「一千万無量大数%参加する」とのことでした (笑)」この夏、たくさんチャレンジをして、興味を広げていった葵くんのこのような姿は、きっと一緒に時間を過ごした子ども達や生産者の方々にも、印象を残しているはずですよね。これを機会に、またどこかで再会できますように!川のアクティビティで採った、思い出のザリガニとコオイムシも元気に生きているみたいです👀最後に2022年夏のプログラムを共に作り上げてくださった、以下の生産者の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました!・鹿猟同行(大槌町 兼澤幸男さん )・漁業体験とシュノーケリング体験(釜石市 佐藤啓太さん)・山と川の体験(遠野市 伊勢崎克彦さん)・農業体験(花巻市 酒匂合歓さん)・農業体験(花巻市 平賀恒樹さん)・農業体験(花巻市 平藤ヒサ子さん)
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