あの人気農家さんのレンコンを掘りに、霞ヶ浦へ自転車旅してきたよ。

毎日とにかく寒かった、2020年2月初旬。私たちは、とあるれんこん農家さんの元に取材に訪れました。しかし、程なくして世界は一変。出来上がった記事は社会情勢を鑑みて泣く泣くお蔵入りに……。

それから半年。冬の終わりと共に2019シーズンを終えたれんこんは、9月中旬の今、2020シーズンの旬ざかりを迎えようとしています。この機を逃すわけにはいかぬ……ということで、季節感はかなりズレてしまいますが、公開に踏み切りました!

さあ今からこの記事は2020年2月にタイムスリップします。

みなさま準備は良いですか?
良ござんすね?

それでは、ポケマル編集部蔵出しの『冬晴れの霞ヶ浦サイクリング&れんこん掘り体験ツアー』へ、いってみましょう〜🚴…🚴…🚴

※この記事は旅行・観光をテーマとしています。コロナ禍の旅行には、事業者だけでなく、旅行をする1人ひとりが感染予防について知り行動することが大切です。旅行の際には、現地の交通機関や観光スポットが掲出する新型コロナ対策関連情報の他、『新しい旅のエチケット(旅行連絡会(協力:国土交通省・観光庁)も参考になさってください。

目次

     ここに目次が表示されます。    

茨城の霞ヶ浦に自転車で

こんにちは、ライターの大城です。

私は今、れんこん生産量日本一の街・茨城県土浦市に来ています……が、土浦の魅力はれんこんだけではありません! 近年は自転車のツーリングスポットとしても注目されているのです。

というわけで……

\来たぜ霞ヶ浦!行くぜチャリで!/

全国第2位の水域面積を誇る霞ヶ浦のそばを自転車で駆け抜けていくと……

おやおやここは?

土浦駅から約7km。あっという間にとあるれんこん田に到着し、車用スペースに駐輪します。

となるとこの人影は……? 

ポケマル歴の長い方には、きっともうお馴染み……ですよね。お待ちかねの"あの人"が登場です。

冬のれんこん収穫、寒くないの?

迎えてくれたのは、茨城県土浦市のれんこん農家・栗又孝行さん。れんこん農家3代目、ポケマルでは初期の頃かられんこんを販売してきたベテランポケマル農家さんです。

訪問したのは、れんこん出荷の最盛期である12月を過ぎ、寒さ厳しい2月初旬のことでした。(栗又さんのれんこん出荷は3月まで行っています)

なんか思ってたより小さい自転車だね

えへへ〜、この子は私の愛車なんですイギリス生まれの折りたたみ小径車でしてものの十数秒で折りたため電車にもクルマにもスイスイ乗せられるんですどこにでも連れて行ける上に小径とはいえ走行性能もバッチリで……

ふうん

あっ……我を取り戻しました。ところで栗又さん。今年は暖冬と言われていますが、収穫でれんこん田に下半身ずっぽり浸かるのって、ぶっちゃけ寒くないですか?

いや、全然寒くないよ。これ着てみてよ

栗又さんが用意してくださったのは、長靴とゴム手袋が一体になったかなり厚手のドライスーツでした。

こういうのって、れんこん農家御用達のメーカーさんが開発してるんですか?

いやいや、これ特注よサーファー向けのメーカーさんにお願いして作ってもらったんだ

特注! しかもサーファー向けのドライスーツなんだあ

さっそく着てみようとチャレンジしますが靴から何までセットのスーツ、一度バランスを崩すと絶対に立ち上がれません。悪戦苦闘し、どうにか着用できました。

かなり暖かそうなドライスーツだけど、やっぱり寒いんじゃないの? だって今は厳冬期……

大丈夫、こっちこっち

今年は暖冬ということもあって、とりわけ暖かいんだ。普段なら氷が張ることも多々あるんだけど、今年は全然凍らないね

確かにそこまで冷たくない……けど……暖かくは……ないですよ…(氷張ってなくて良かった)

れんこんは蓮の地下茎だから泥の中に埋まっているんだ。だから、収穫にはこれを使います

おおお〜、消防士みたいですね

泥の中にこの高圧で水が出るホースを突っ込んで、泥を押しのけていくんだ。すると自然にれんこんが浮いてくるよ

ええと、ここらへんでしょうか?

そうだね、このあたりに水圧をかけてみて。折れちゃうのは元々弱ってるやつだから気にしないで

「ここ」や「あそこ」など、文字通り"手探り"で泥を柔らかくし解いていくと……

もしかして、この感じ……れんこんですか?

そりゃれんこんよ。持ち上げてごらん

うお、おおおおお! れんこんだ〜!!

やってみてわかったのですが、どうあがいても手探りなんですね

そうだねえ、慣れれば触った感じでわかるけれども

地上で成長する野菜は目で判断できますが、泥の底で根を張るれんこんは実際に触ってみないとわからないんですね

最盛期の12月は1日で8時間は収穫作業するから、まあ、結構大変だよね〜

8時間、見えないものを手探りで探る、と。そりゃあ大変ですよ!

現場で知った、れんこん農家の工夫あれこれ

収穫したれんこんは、いかだに積んでいきます。

このいかだもれんこん農家用ですか?

ううん、これは雪かき用のソリ。ホームセンターで売ってるやつよ

言われてみれば既視感がありますねぇ

田んぼから引き上げたばかりのれんこんは泥やひげ根がついている状態です。

まずはひげ根を専用の包丁でカットして、

れんこんに付いた泥をていねいに洗い流します。

まずは表面の泥を落として、

れんこんの穴の中まで丁寧に

きれいになったれんこんは、乾燥しないように水槽の中で待機。

つるっと可愛いれんこんたち

全てのれんこんを洗い終わったら、順々にカゴにあげていきます。

この水槽はれんこん農家専用……ではなくて。う〜ん、どこかで見たことあるぞ?

これは水産業で使ういけすだよ

なーるほど! 野菜栽培なれど、使用するアイテムはサーファー向けや、雪かき用、水産業のものなど幅広い。色んな道具を知恵と工夫で駆使しているんですね

ね、面白いよね〜

綺麗になったれんこん&笑顔の栗又さん

さて、私はナゼ自転車で来たのでしょう

ところで、冒頭に記したとおり、今回、筆者はここへ自転車でやってきました。その理由は他でもありません。ずばり、「もっと気軽に生産地に行けるようになりたい!」ということです。

マルシェなどで"作り手が消費地へ行く"ことはすでに多くありますが、私たちはその逆も大いにアリなのではないかと考えています。つまり、"食べ手が生産地へ行く"ことです。

しかし、私たちは知っています。都市に住む多くの人にとって、生産地を訪れるのは難しいことだと。

①やる気 ②体力 ③時間 ④生産地の知識
⑤装備 ⑥交通費 ⑦交通手段 ⑧お天気

これら全ての条件が揃って初めて実現するのが生産地訪問なのです。

今回私が自転車で霞ヶ浦に来たのは、気軽に生産地訪問できない理由のひとつである⑦交通手段問題を、楽しく解決するためです。


土浦は自転車ついでに行ける生産地

霞ヶ浦総合運動公園の風車は有名な立ち寄りスポット

今回の訪問地・土浦は、東京近郊在住の方が気軽に生産地訪問をするのにぴったりの場所だと、筆者は思っています。その理由はこちらの3つ。

1.東京から電車で1時間で行ける

東京駅から土浦駅までは電車で約1時間20分、特急なら約50分で到着します。JR上野東京ライン(常磐線)には普通列車グリーン車も連結されており、ゆったり座って小旅行気分を楽しめます。

2.駅ビルがサイクリストに最適化されている

2020年3月、土浦駅に併設する商業ビル『atre(アトレ)』は、サイクリストのための駅『PLAYatre TSUCHIURA』としてフルリニューアル。サイクルカフェやサイクリスト向け宿泊施設もオープンしています。

駅構内やatre内の一部では自転車の押し歩きが可能

筆者がオススメしたいのは駅で借りられるレンタサイクル! 体力に自信がなくても大丈夫な電動自転車「eバイク」や本格ロードバイクなど、普段乗れないような自転車を体験できますよ。

参考サイト:PLAYatreTSUCHIURAホームページ>RENTAL BIKE

3.霞ヶ浦一周サイクリングロードが整備されている

霞ヶ浦をぐるりと囲む約180kmの自転車道「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、サイクリングにぴったりの快走路です。

駅周辺から霞ヶ浦まで、案内板や自転車用の道路表示も至る所にあります。

参考サイト:つくば霞ヶ浦りんりんロードホームページ

土日で小旅行しつつ農家さんのところへも行ってみたいと思っても、

  • 自家用車を持っていない
  • 運転に不慣れ
  • 運転免許を持っていない
  • 車はエコじゃないからちょっと……

などの理由で叶わなかった生産地訪問の解決策こそ、電車+自転車なのです!

れんこん農家が語る故郷・土浦

れんこん収穫体験終了後、「せっかく来たんだから」と、栗又さんが霞ヶ浦とれんこん田が一望できるとっておきの場所に案内してくださいました。

れんこん田が一年で一番綺麗なのは初夏かな。蓮の花がワァッと咲いて、良い香りもするんだよね

いいなあ、夏に改めて自転車で遊びに来てみたいです。にしても、れんこん田がびっしりですね。さすが日本一の生産地!

土浦で走っている軽トラはみんなれんこん農家よ(笑)。小学生の頃なんて、クラスに5人はれんこん農家の子どもがいたもんね

そりゃあ凄まじいれんこん農家率! そもそも土浦はなぜ日本一のれんこん産地なんですか?

霞ヶ浦や豊富な湧き水があったりと、一帯が水に恵まれた土地柄だというのが大きいよね。昔はもっと水田が多かったとは聞くけど

景色を眺めながら栗又さん馴染みの町の話を聞く

でも俺が子どもの頃は、霞ヶ浦の水質も良くなくて、夏は町中にいてもどこかドブ臭かったんだよね〜

な、なんですと!

もちろん今はもう大丈夫(笑)。まあ、また遊びに来てよ


* * *


取材の終着地は栗又さんちの納屋

ずっと好きで乗ってきた趣味の自転車と、農業が結びついた今回の取材は、私にとって不思議なものでした。

好きなものふたつが出会った瞬間、今まで知ることのなかった新しい景色が見えたのですから。

今までの私が「知っている」と思っていたのは、れんこんの一部分だけだったんだなあ

採れたてのれんこんを焼いてくれる栗又さん

どれだけ「ごちそうさま」を伝えても、現地でなければ見ることのできない景色や、聞けない話がありました。

今まではツーリングを楽しむために走っていた霞ヶ浦湖畔でしたが、これから自然とれんこん畑を探しながら走ってしまうんだろう——と、思います。

それほど、愛車とともに自分の足で向かった農家さんちは、強烈な思い出になりました。

次の休暇で行こうと思っていた旅先に、農地はありませんか?

筆者のようにツーリングコースに組み込んでも良いし、写真が趣味ならばとっておきの一枚を撮影してもよいかもしれません。

そして農家さんがいらっしゃったら、大きな声で挨拶してみてはいかがでしょう。

もっと気軽に、もっと近くに、作り手さんはいらっしゃいますよ。

※特定の農家さんの農地に訪問したい場合は、必ず事前にご本人の承諾を取ってからお伺いするようにしてくださいね。

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文=大城実結/写真・編集=中川葵

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