これが本当のパエリアだヨ!スペイン人社員が家庭のレシピを再現してみた

スペイン料理と日本人の味覚って相性良いと思うんです。ほら、おばんざいのようなタパスに魚介類をふんだんに使ったパエリア。

でも純日本人の私、恥ずかしながらパエリアがなんたるかを知りません。魚介の炊き込みご飯? それとも特別な日のご馳走? サフランやら色んなハーブやスパイスも必要だよね?


Hola! ボクが本場の味を教えてあげるヨ!

現れたのは謎のポケマル社員・タオさん。スペイン出身の彼から、材料やレシピ、食べ方まで、パエリアのすべてを教えてもらいます。

目次

ここに目次が表示されます。

タオさんって何者?

ポケマルにグロースハッカーとして勤めるタオさん。

目があったらニコッと笑いかけてくれる茶目っ気たっぷりながら、高身長で彫りも深い……。まるで動く彫刻作品のような美しさに、筆者はすでに緊張気味です。

今日はパエリアを作るからネ、これ持ってきたヨ!

私物のパエリア鍋を持参してくれたタオさん。これが“本気”だ……!


大きな袋から取り出したのは、なんと立派なパエリア鍋! 

こんな大きな鍋を持って出勤するグロースハッカー、世の中にタオさんくらいしかいないはず。

実は料理の腕前もピカイチの彼。スペインのご実家ではお父さんが大の料理好きだったのだとか。子供のころはあまり手伝いこそしなかったものの、週末のたびに料理を振舞ってくれるお父さんの背中を見て育ちました。

フランスの大学に進学してから自分で料理をするようになったヨ。やっぱりスペイン料理が恋しくなっちゃって

ところでタオさん、パエリアってスペイン国内では一体どんな時に食べるお料理なんですか?

ソウネ、サマーシーズンに屋外で大人数で集まって賑やかに食べることが多いから、日本のBBQに近いかもしれないネ

なるほど! 筆者はてっきり手巻き寿司やちらし寿司のように、特別な日に食べるものかと思っていました

肩肘張らずにカジュアルに楽しむものがパエリアヨ。それじゃあ作っていきまショ!


材料紹介

今回使用する材料はこちらです。※分量は4~6人分(直径26cmのフライパン1個分)で記載

お米・・・
だいたい2合
トマト・・・
だいたい1個
パプリカ・・・
だいたい1個
にんにく・・・
だいたい 2~3片
白身魚・・・
だいたい200g
二枚貝・・・
だいたい200g
タコかイカ・・・
だいたい200g
ハーブ(ローズマリー・タイム・オレガノetc)・・・
お好みで
魚のブイヨンスープ・・・
だいたい1000mL分
ホワイトラム・・・
少々
オリーブオイル・・・
だいたい100mL


ふむふむ、パプリカにトマト、魚介類……確かに私が想像していたパエリアに近い気がします。けれどアレ? サフランって必要なかったかしら?

うちの家ではサフランは入れないヨ。サフランを入れるとちょっと風味が強くなりすぎちゃって、ボクはあまり……

へえ〜、家庭によって味が違うんだぁ。インタビューするたびに発覚する新事実に筆者は口が開きっぱなしです。

実はパエリアって種類も幅広いんだヨ。鶏肉で作るパエリアとか、野菜だけのものとか……たくさんある。だからパエリアの定義って難しいんだ

パエリアたるもの、必ずシーフードと一緒に煮込むものかと思い込んでいました。なるほど何を入れるかはけっこう適当……ゴホンゴホン幅広くてOKなんですね。


そんなパエリアですが、今回使用する食材で注目すべきはこの2つです。

①いたりあ米(スペイン料理だけどね)


あいがも農法による稲作を営む岡山県森安かんなさんは、お米の珍しい品種「カルナローリ」「ヴィアローネナーノ」の2種類を販売しています。


……って名前だけ聞いてもわかりません。一体何が“イタリア”なの?

森安さん作成の商品ページに書かれている内容を要約すると……

「カルナローリ」は長粒種ですがアジアのお米よりも胴は太いです。アミロースを多く含んでいるためアルデンテ状態を長く保つことができ、リゾットなど「お米を煮込む」ようなお料理におススメです。

ヴィアローネナーノ」は少し丸みを帯びた形状と、煮崩れしにくいのが特長です。調理中はたくさんスープを吸水しますが、アルデンテ状態を保ってくれます。味に深み・甘みがあるので、ボタッとしたリゾットを作りたい時におススメです。


今回はこのいたりあ米2種類で別々にパエリアを作って食べ比べしてみます。一体どんな違いが生まれるのか楽しみです。

並べてみれば、確かに形状が異なります


②未利用魚セット


出ました! ポケマルお馴染み漁師、青森県高森優さんの未利用魚セットです。

ポケマル豆知識:【未利用魚】とは?

大きさが不揃いであったり、漁獲量が少なすぎてロットがまとまらないなどの理由で、市場の買い取り価格が低いまたは買い取ってもらえない魚介類のこと。

参考:水産庁のホームページ http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h21_h/trend/1/t1_t_01.html


というわけで、どんなお魚・貝たちがやってくるのか蓋を開けるまでわからない「未利用魚セット」。どきどきの開封です。

未利用魚セット=現場のリアルセットなんです


今回入っていたお魚たちは、フサギンポやニジカジカ、マコカレイ、メイタカレイ、水草カレイ、真カレイ、アサバカレイ、カスベ、エゾヒバリ貝、アカザラ貝、イタヤ貝。個性豊かなメンバーがずらりと揃いました!  

さて、これがどんなパエリアに変身するのでしょうか。

青森の海からやってきました。お魚たち続々


タオ渾身のブイヨン

でね、これが未利用魚ブイヨンなんだケド……


●分クッキングのようにタオさんが懐からスッと取り出したのは自作のブイヨン。黄金色のスープの底には未利用魚のアラと玉ねぎが丸々入っています。

これってどのくらい煮込んだんですか?

煮込んだのは昨晩ダネ。夜に1時間グツグツ煮込んで、そこからは蓋をして放置したヨ。このブイヨンスープはパエリアに欠かせないからね

なるほど! 余念のない下準備が効いてくるわけですね、タオ先生! 


タオ's ポイント①:パエリアを作る前にブイヨンを仕込んでおく


タオ流スペインパエリアの作り方

※今回は2種類のお米を食べ比べするために、2つの鍋を使い、はじめに記載した分量の3倍量で作っています。そのため写真の分量は多めです。ご注意を!


1.食材を剥く・切る

パエリアに入れる食材をそれぞれ下ごしらえします。トマトは皮むきし、細かく刻む。パエリアは中わたを取り、くし切りに。魚介はそれぞれさばきましょう。

通称クルクルりんご剥きをトマトに応用するタオさん。面倒くさい湯むきから解放された瞬間

「スペインではまな板を使わず宙で切っていくヨ」とタオさん。指に注意してね!

パプリカもそれぞれ幅1cm程度にに切り揃えていきます


2.にんにくを炒める

パエリア鍋に大量のオリーブオイルを投入し始めたタオさん。トクトクトク……なかなか注ぐ手を止めません。おおお、これが本場ってやつ?

オリーブオイルを大量投入することで有名なタレント速見もこみち氏を彷彿させる絵


こんなにたっぷりの油で大丈夫なんですか? 水深5mmくらいある気がするんですけど……

パエリアを作るときはいつもこのくらい油を使うヨ。たっぷりのオリーブオイルが秘訣ネ!


タオ'sポイント②:オリーブオイルは惜しみなくた〜っぷり!


その後、潰したにんにくを油に投入しじっくり香りを引き出します。それにしても姿ごとにんにくを入れるなんて、なんだかダイナミックです。

火力は強火でOKです

焦げる前にボウルにあげます


3.パプリカを炒める

にんにくを引き上げたあとは、パプリカを炒めます。こちらも強火でガンガン攻めていきましょう。

”結構”焦げついたくらいが目安。先程にんにくを引き上げたボウルに同じように取り出します。


4.魚介類を炒める

同じ要領で捌いた未利用魚とその他の魚介類も一気に鍋に投入します。にしても、なかなか豪快に調理が進みます。依然ここまで火力は“強”です。

せっかくなのでタコ(北海道吉岡さん)やしじみ(島根県錦織さん)も入れてみました


おっと、ここでタオさんに動きが! なにやら懐から小瓶を取り出しました。

ハーブを入れると、いい香りになるヨ

そう言って散らしたのはローズマリーの葉。清涼感のあるローズマリーの香りにキッチンが一気に華やぎます。

「タイムやオレガノもおススメ!」とタオさん。いろんなハーブを試してみよう


そのまま強火で煮込むこと数分。鍋の中は魚介類からでてきたスープで白濁しています。

「いつもこんなに白くなることはない」と不思議がるタオさん。おそらく旨みたっぷり寒シジミの仕業と思われます。


すべての貝が開き、具材切り身に火が通ったことを確認したら、先程のボウルに具材だけ引き上げます。スープはお鍋に残しておいてくださいね。


5.トマトを炒める

さあ炒め作業もこれが最後。細かく刻んだトマトを炒めていきます。


と、ここでタオさんよりアドバイスが。

フレッシュ感を残したいから、トマトは炒めすぎないように注意してネ

今までがっつり芯まで火を通していたスタンスとは異なり、トマトだけは少し繊細に炒めてあげるのが吉なんだそうです。

この状態まで火を入れます


トマトが出来上がったら、ボウルに取り出していた具材(ニンニク、パプリカ、魚介)を鍋へ一気に戻します。

どひゃあ! なかなかのダイナミックな絵柄に


ここでホワイトラムをひと回し。これ重要ヨ。必ず“ホワイト”でね

茶色いラムを入れると色が変わってしまうのだとか。


6.ブイヨンスープを入れて煮込む

とうとう丹精込めて作った未利用魚ブイヨンの登場です。


いわばこれが秘伝の出汁。マグカップを使って豪快に鍋に注ぎ込みます。

キッチンに転がっていた筆者のマグカップが突如活躍しました


タオさん! ブイヨンは計量しなくて、大丈夫なんですか?

ダイジョーブ、目安は鍋のフチ。こぼれないくらいまでたっぷり入れてあげてネ


タオ'sポイント③:量るんじゃない、鍋の形状次第だ!


いちいち量や重さを量ることを実は億劫に感じていた筆者にとって、その一言は福音でした。そうか「鍋が一杯になるくらい」という目安でOKなのか。ガッと炒めてワッと煮込んじゃうんですね。

あとはここで味を調整するヨ。これをベースにお米を煮込むから味は濃い目にします

味見をした編集曰く、「煮詰まった味噌汁くらい」の塩加減にする。


味付けは塩オンリー。え、そんなにシンプルでいいの? と思い味見にスープを一口。

ワッ、なんだこの複雑で奥深い旨味は……!


そうなんです。ブイヨンスープをはじめ、魚介類のお出汁とトマトやパプリカの甘みが惜しみなく口いっぱいに広がります。

こんなにとてつもなく美味しいスープを吸い込んだ米って……考えるだけで喜びの舞を踊りたくなります。


7.生米を煮込む

お鍋いっぱいに入れたスープが5mmほど減ったら、とうとういたりあ米の登場です。

今回は2種類のイタリア米を食べ比べるため、パエリア鍋用にヴィアローネナーノを約4合、フライパン用にカルナローリを約2合用意しました。

お米なら任せろと計量に余念の無いポケマル編集部員


研いだ米をムラのないように手でパラパラと投入します。

手を使ってばらまくように、米の陸地ができるくらいまで入れる。経験と勘がものを言う瞬間。


さてあとは煮込むだけ! と、ボウルに視線を移すとそこには生米が余っている。

せっかくスタッフが量ったのだけれど……どうして全部使わなかったのタオさん?  スペインでは分量をはからなくてもお米って炊けるの?

ソウネ、普段ボクはお米もブイヨンも同じマグカップで量ってるよ。ブイヨンをマグカップで入れた回数÷2.5がお米の分量。

たとえば、ブイヨンをマグカップで5杯入れたら、お米はマグカップで2杯が目安。あとは鍋の様子を見て調整しているんだヨ。今回用意してくれたお米を全部入れちゃうと、ちょっとお米が多すぎたから入れないことにしたヨ。ゴメンネ!

これは米を入れた直後に木べらでならした状態。米はスープの中に完全に隠れている。


煮込む時間も計らないんですか?

しないネ。様子を見ながら味見して、お米がアルデンテになったら完成さ!


そのタイミングを知るために、タオさんはふたつのポイントを重点的に確認しつつ味見していました。


●スープの分量はどうか?

「ヴィアローネナーノはスープをよく吸うネ!」とタオさん。今回はお米がアルデンテになる前にスープが無くなってしまいそうだったため、途中でブイヨンを足しました

だから、ブイヨンは少し多めに作っておくようにネ


●お米の固さはどうか?

いわゆるアルデンテに仕上げるのがタオ流。火を止めたタイミングで味見をすると、日本人のいつものごはんの炊き加減と比較してかなり硬め。お米の芯がしっかりと残っていました。

日本料理の炊き込みご飯や雑炊の状態だと、パエリア的には煮込みすぎなんだそうです。


タオ'sポイント④:完成は煮込み時間じゃあない。判断はその目とその舌で!



レシピ本ならば「○○グラムで〜」や「○分中火で煮込んで〜」など、あくまでも数字に頼りきった情報が並んでいることでしょう。しかし日常の料理で、例えば鍋で、いちいちそんなことするでしょうか?

「葉物は芯から入れてね」や「あとは味見ながら醤油とみりんで調整して…」など、私たちにとって日常茶飯の調理。これってつまり……!

日本人にとっての味噌汁と同じように、パエリアはスペイン人にとってのおふくろの味なんだ!


そしてとうとう待ちに待ったタイミングが。今まで首を横に振っていたタオさんが頷きました。

ちょうどこの固さがイイネ! これで完成だヨ!

これぞ本場のパエリア! 芳しい香りにお腹もグゥグゥ騒ぎはじめます


完成! 食べてみるヨ


食べる前にレモンを絞るのがスペイン流。味がシュッと締まるかんじがするんだ

と、パエリア鍋の周りにレモンを飾り、真ん中には蒸したイセエビを乗っけてみました。迫力マシマシです。

筆者は海底のようだ、と心中で呟いていた(レモン:長野県柳坪さん、イセエビ:静岡県藤井さん)


それではお楽しみの食べ比べの時間です! 気合い入れてテイスティングしてみます。


まずは細長い形のカルナローリから。


一口噛み締めると「おおっ!?」となるほどのアルデンテ。日本のお米では生み出せない独特の食感です。噛みしめていくと、お米にたっぷり吸い込まれた魚介のうまみがどんどん滲み出てきて、これぞスルメ米と言わんばかり。

一方、日本米と似た丸い形のヴィアローネナーノは先ほどのカルナローリよりもしっとりとした印象です。


ぽってりとした雰囲気は、お鍋の〆の雑炊にもちょっぴり似ています。とても馴染みがある食感ながら、柔らかい食感と優しい甘みが出汁とマッチし、舌も心もまどろむこと……。

正直こればかりは甲乙つけ難いです。だって両方にそれぞれのおいしさがあるんだもん! 強いて言えば筆者はカルナローリ派

日本米では決して得られないような食感や味が印象的。魚介の旨味を余すことなく吸い込んだカルナローリは鍋の〆ともまた違う。これがパエリアなのかぁ……!


一方タオさんはヴィアローネナーノ派。粒一つひとつが独立していながらもパサパサしすぎていないところがお気に入りポイントなんだそうです。

粒一つひとつが独立していながらパサパサしていない。あっさりした感じがイイネ!


世界のどこにいても、心にはいつもおふくろの味がある。今回はスペインのとあるご家庭の味と出会ってしまったのでした。生産者のみなさん、そしてタオさん、ごちそうさまでした!


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Writer

大城実結/MIYU Oshiro

フリーランスライター・編集者。自転車や地域文化、一次産業、芸術が専門。紙雑誌やWeb媒体問わず執筆中。ポケマルでは農業初心者を生かし、わかりやすく愉快な記事の執筆を目指す。イラストや漫画も発表中。

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