秋田の漁師12人が立ち上がった!県をあげてのオンライン販売、初挑戦の舞台裏に迫る

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秋田県で新設された「オンライン販売推進協議会」って?

2021年12月、全国の漁業界に先駆けて「秋田県水産物オンライン販売推進協議会(以下、オンライン販売推進協議会)」が立ち上がりました。

秋田県ではこれまでも新たな取り組みに積極的な若手の漁師さんたちが、自発的にオンライン販売に取り組んできました。しかし、保健所の許可を得た加工施設がないと魚を捌くなどの処理ができなかったり、年配の漁師さんはスマホやパソコンでの操作に不慣れだったり。地域の漁師さんの間でオンライン販売を広げていくためには多くのハードルがあります。

そこで今回、より多くの漁師さんがオンライン販売に取り組める仕組みをつくるべく秋田県水産漁港課のサポートのもと設立されたのが、オンライン販売推進協議会です。
協議会はオンライン販売に取り組む漁師さん12名と、それをバックアップする秋田県漁業協同組合で構成され、秋田県の魚介類の魅力や漁師さんの取り組みの情報発信を目指します。

今回はこの協議会を率いる漁師の杉本さん、藤谷さん、そしてバックアップする県漁協と秋田県水産漁港課の職員さんにその経緯や夢を聞きました。

「若いやつらに見せつけてやりたい」|杉本貢さん

「実は20年くらい前、フロッピーディスクの時代にホームページ作ってオンラインで魚を売ったことがあるんだよ。」にこにこしながら教えてくれたのは、オンライン販売推進協議会会長で、定置網漁をしている杉本貢さん。「注文がたくさん来て一人で捌ききれなかったり、いろいろあって止めてしまったんだ。」

18歳から5代目として漁師の職についたという杉本さん。なんで漁師を継ぐことにしたんですか、と聞くと「話長くなるけどな、不純な動機なんだ。」と笑いながら昔話をしてくれました。

小中学生だった頃は魚の値段が高く、小学生6年生で高級腕時計を買ってもらえるほど親の収入もよかったそう。でも杉本さんは「漁師やるつもりなんて少しもねがった(なかった)」。将来やりたいことが漁業以外にあったので、勉強して一般の高校に進学しました。
しかし、高校2年生のときに男鹿の海に大きな時化(しけ)が発生します。当時お父さんがやっていた定置網は全滅。300〜500万円もするような筏が全部流出してしまいました。
そこから始まった、地獄のような生活。借金を返すため「やけくそになって漁師を始めたんだ」。

親が病気で漁をできなくなったとき、杉本さんはまだ40代。地域のなかでも若手だったので権力も財力もありませんでした。借金を返すため。一匹でも多く魚を獲るため。頼れるものは全部頼って、たくさん勉強し、がむしゃらにいろんな方法を試した。その挑戦のうちの一つが、オンラインでの販売でした。改めて今回オンライン販売に挑戦する理由を聞くと、「いい魚をいい値段で売っているとこを後継者に見せつけて、お前らもやれ、と言ってやりてんだ」。
今の魚価では、労働に対して価格が見合っていない。漁獲量はこれからますます減っていく。それでも収入が減らないようにするためには、単価をあげていかないといけない。
今の若い人には、昔の自分が味わったような苦労もさせたくないし、こうやって収入を増やす方法もあるんだ、ということを示していきたい。その言葉には、とても力がこもっていました。

新しい漁業経営の形を模索する|藤谷誠さん

次にお話を聞いたのは、今回副会長を務める藤谷誠さん。藤谷さんは漁業資材の販売店を営む傍ら、兼業で漁業に取り組んでいます。

男鹿で現役で漁をしている人のメインは60代や70代。40代の藤谷さんは、地区のなかでは最年少だそう。
「若い漁師が増えてほしいなとは思うけれど、船を買って資材を揃えて、専業で漁を続けていくのは現状なかなか厳しいと思います。」魚価も下がる一方で、資材や燃料代は上がり続ける。若い人のなかにも釣り好きはいるけれど、仕事として漁をする人がいない。漁師さんのなかには漁業経営を諦めて、釣り船の船頭さんに転身する人も多いのだとか。

そんななかでも、藤谷さんは資材販売の仕事がない土日や平日の朝早くとか、時間が空いた時に漁をしています。兼業は大変じゃないですか?と聞くと、「大変なことは大変ですが、漁が楽しいんですよね〜」と笑って言いました。
秋田県では定置網や底引網などの漁法が主流ですが、藤谷さんはカゴ漁をメインにしています。船も小さく設備投資もさほどかからないので、始めるハードルが低いのだそう。「カゴを仕掛けた日の夜は、ワクワクして眠れないこともあります。」

藤谷さんは、獲った魚を主に「道の駅おが・オガーレ」に出荷しています。
以前は県外からもお客さんが大型バスでオガーレに訪れて魚をたくさん買っていったけれど、コロナ禍で県外のお客さんは来なくなり、売れる量も減っています。
売り切れずに余った商品は自分で引き取らねばならないし、需要が減ればオガーレに出荷する漁師さん同士で価格競争が生じてしまう。だからこそ全国に売り先を広げ、単価を上げて、継続できる漁業の形を作ることが必要だと感じています。
「秋田では本当にいろんな種類の魚が獲れます。もっと全国の人にその魅力を知ってほしいし、食べてみてほしい。」

「衰退を見過ごすわけにはいかない」県漁協・県庁職員の想い

秋田県全体の漁業生産額は1999年に52億円だったのが、2019年には26億円に。20年間で半減しました。(※出典:漁業・養殖業生産統計年報)
漁師の高齢化と減少、後継者不足、魚価の低迷、環境変化による漁獲量の低下など、秋田県の漁業の課題は山積しています。

秋田県の漁業の衰退をこのまま見過ごすわけにはいかない。なんとか衰退の速度を減速させて歯止めをかけ、さらにはそこから回復させていけるような取り組みをしなければ……。
そんななかで今回の取り組みを支援する秋田県漁協の佐々木さん、小西さん、秋田県水産漁港課の柳原さんにもお話を伺いました。

秋田県漁協・佐々木さん:
「今までは浜で水揚げされたものが中央市場に流通し、量販店に販売されていくまでだったのが、今回ポケマルを通じて漁業者が一般消費者へダイレクトに秋田の魚を販売できるようになる。その喜びを、漁業者、県漁協、秋田県など、皆で共有していけたら最高だなと思います。」

秋田県漁協・小西さん:
「ブランド化などの取り組みは大事ですが、漁業者からするととてもハードルが高いことのように思えます。今回ポケマルを通じて直接お客さんに届けることで、まずは秋田の魚のファンになってもらう、それが次第にブランド価値向上に繋がっていくのだと思います。」

秋田県水産漁港課・柳原さん:
「秋田県は鮮度のいい多様な魚が獲れることが魅力ですが、秋田の魚はまだまだ全国的には認知度が低く、他県であまり取り扱われていないことを残念に思っています。だからこそ、全国のお客さんと秋田県の漁師が直接つながることで、その良さを広めていけたらと思っています。
また、オンライン販売は情報発信ができることも利点の一つだと思っています。情報に触れた人々が水産物そのものだけではなく秋田の漁業にも興味を持つきっかけになり、ゆくゆくは担い手確保にもつながっていけば……と夢見ています。」

秋田県の漁師さん応援キャンペーン実施中!※終了しました※

オンライン販売推進協議会の発足は、初めの第一歩に過ぎません。
ここからの漁師さんの活躍、そして秋田の漁業振興がうまくいくかどうかは、漁師さん、県漁協、秋田県、ポケマル、そしてこの記事を読んでくださっているみなさんにかかっています。

このたび秋田県のバックアップのもと、ポケットマルシェでの秋田県の漁師さんの商品が限定数、2022年2月22日から先着で「送料無料」となっています。(「送料無料」タグがついている商品が対象です。)
ぜひこの機会をお見逃しなく、秋田県のやる気ある漁師さんへの応援も込めて購入してみてくださいね。

※【2022年2月22日15:50追記】秋田県魚介類の送料無料キャンペーンは、予算上限に達したため終了いたしましました。ご購入、誠にありがとうございました。

現在時化(しけ)の影響で出品が少ない状態となっておりますが、今後もポケマルでは旬の魚介類がリアルタイムで出品されていきます。
今後もぜひ秋田の魚介類をチェックしてみてください!

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