ポケマルで買える加工食品は、一次産業の生産者がプロデュースした食品です。
大手食品メーカー品と比べて圧倒的にローカルでレアなところが魅力ではありますが、裏を返せば、多くの買い手にとって未知の商品ということ。使用感や味の想像がつきにくく、気になりつつも購入を見送ることもあると思います。
この #試食会 シリーズでは、ポケマル編集部員3名が気になる加工食品を買い集めて「試食会」を行い、その様子を記事としてお届けしています。
シリーズ第2回の今回のお題は「ホップ飲料」です。ホップはビールの風味付けに使われることで知られるハーブの一種ですが、その利用範囲はビールだけにとどまりません。
購入したのは、クラフトビール、炭酸飲料、シロップの3商品。どれも、編集部員が「いつか飲んでみたい」と心に秘めていたホップ関連商品です。
お酒好きな人にも、お酒が飲めない人にもおすすめできる、令和3年の初夏にうってつけの3選となりましたよ。
※試飲会は2021年4月上旬に東京都内の貸切スペースにて行いました。
本日のホップ飲料3種をご紹介
「ホップの飲み物」と聞いて真っ先に思いつくのが、最近人気のクラフトビール。なんとポケマルには"農家兼ビール醸造家"も生産者登録してくださっています。
また、ビールの他にも、ホップの香りを活かしたノンアルコール飲料を販売している農家さんもいます。
今回は、おうちで酔いと共に嗜めるクラフトビールの他に、シュワシュワ爽快なレモンとホップの炭酸飲料、お子さまも飲めるホップシロップの3種を買い集め、編集部員3名(なかゞわ、おがた、おゝしろ)による試飲会を行います。
1.農家のクラフトビール『穂波』

今回試飲するホップ飲料その1は、島根県浜田市・三島ファーム(三島淳寛さん)のクラフトビール『穂波』シリーズの7種セット(8本入)です。
三島さんは2002年に島根県に移住。2010年に就農し、2011年には有機JAS認証を取得。2018年には畑の中にビール醸造所を開設し、三島ファームで育てたサツマイモなどを原材料の一部に使用したビールを製造しているそうです。
製造できるのは1回に130Lほど。一般家庭の浴槽半分くらいの量です。醸造も瓶詰めも全て手作業で行っていて、小回りのきく副原料選びができるところは、小規模ならではのメリットです。
今回購入した8本セット商品は、7種類のクラフトビールの詰合せです。ラベルを見ると、商品ごとに麦芽の種類や副原料に違いがあることがわかります。


ラベル裏面コレクション。写真だけでつまみがすすみそう
副原料に使われているのは、三島ファームで育てたサツマイモや島根県産の農作物。酵母の種類もアルコール度数もそれぞれです。
- 紫芋(穂波レッド:オリジナルエール ALC.5%)
- 紅はるか(穂波ゴールデン:アメリカンペールエール ALC.5%)
- 安納芋(穂波ホワイト:ヴァイツェン スタイル ALC.5%、穂波安納:オリジナルエール ALC.5%)
- 黒豆(穂波ブラック:インペリアル スタウト ALC.8%)
- 生姜(穂波ブラウン:セッション ビター ALC.3.5%)
- 八朔(穂波八朔:セッション ホワイトIPA ALC4.5%)
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醸造には、島根県江津市のブルワリーが開発した「石見式(いわみしき)」と呼ばれる特殊な方法を採用。一般的なステンレスタンクを使わず、専用のポリ袋で製造できるため、小規模ビール生産が可能なのだそうです。
クラフトビールマニアはもちろん、クラフトビール入門編としても、良さそうな雰囲気ですね。
2.ノンアル炭酸飲料『大人の初恋レモン』

ラインナップその2は、愛知県豊橋市・ON THE CITRUS(河合浩樹さん)によるレモンの炭酸飲料。ノンアルコールクラフトビール『大人の初恋レモン』3本セットです。
「一日中虫を見ていても飽きない昆虫少年」だったという河合さんは、大学卒業後すぐに家業の柑橘農家に就農。レモンと言えば輸入がほとんどだった1990年代からすでに化学合成農薬を削減してのレモン栽培に取り組み、現在も農薬不使用でのレモン生産を行っているそうです。
※参考資料:第48回日本農業賞 事例集(PDF)より
主原料は、河合さんが育てた「レモネーディア」というレモン。半世紀前には栽培されていた品種ですが、とても香りが良い一方で、一般的レモンと比べて酸味が穏やか過ぎたため、市場ニーズに合わず普及しなかったそう。

香りが魅力のレモネーディアを、同じく香り自慢のホップ(なんと4種類ブレンド)と組み合わせることで、ランチタイムに飲める爽やかノンアル飲料を目指して作られたこちらの商品。原材料欄に書かれているのは「レモネーディア、ホップ」の2つだけ。
レモンに目がない筆者の期待が高まる、注目商品です。
3.『ホップシロップ〜ハーブコーディアル〜』

ラインナップその3は、岩手県遠野市・BEER EXPERIENCE(吉田敦史さん)の『ホップシロップ』。ホップど真ん中の商品としてセレクトしました。
半世紀前からホップ栽培が行われ、現在も日本におけるホップ栽培面積1位の遠野市ですが、生産者の高齢化や後継者不足が問題になっているそうです。
吉田さんは東京から遠野へ移住し、2018年に農業法人を設立。ホップの他にも、ビールのおつまみに最高な野菜「パドロン」を栽培しています。

こちらのホップシロップは、ホップが主役の商品です。日本産ホップ品種「IBUKI」に、ホップの風味を引き出す香辛料を組み合わせ、「ホップ独特の華やかな香りと奥深い味わいが楽しめ」るお味に。
水などで割って飲む他にも、ヨーグルトやバニラアイスの風味&甘味足しとして使うこともできるとのことで、お子さまのいる家庭でも重宝しそうな予感がします。
ノンアルコールから試飲スタート🍻
商品観察が終わり、いよいよ試飲開始です。
アルコールで味がわからなくなるリスク回避のため、試飲順はノンアル飲料から始めることに。試飲会一部始終は部員たちの会話にてお届けします。
大人の初恋レモン


「コッ」という音と共に祝・初開栓

「シュワシュワ」と細い音と共にグラスに移動する薄黄色の液体

※マルセル・プルースト・・・19世紀終わりから20世紀初め頃に活動したフランスの作家。代表作『失われた時を求めて』は20世紀を代表する傑作として名高く、その長大さでも知られている。同作のエピソードは特定の匂いから記憶が思い起こされる現象「プルースト効果」の名の由来ともなっている。

いただきます

ホップシロップ




原液の色が白ワインに似ているのでワイングラスに注いでみました

酔う前に飲むんだ…! 試飲会後半



穂波レッド〈オリジナルエール〉ホップの苦味や主張をおさえ、酵母が産みだすフルーティな香りと、紫芋由来の美しい赤をお楽しみください。苦いビールが苦手な方にも好評です。Alc. 5% |
説明文は添付資料より(以下枠内同)

穂波安納〈オリジナルエール〉これだけ安納芋を入れているクラフトビールはないと思われます。舌に残る芋の風味を感じてください。Alc. 5% |

穂波ホワイト〈バイツェン スタイル〉安納芋使用。小麦麦芽を50%以上使用するドイツのビール「バイツェン」にならってつくりました。バイツェン酵母が産みだすバナナやクローブの香りのするフルーティで飲みやすい白ビールです。Alc. 5% |

穂波ゴールデン〈アメリカンペールエール〉さわやかな柑橘の香りと、適度な苦味の中にさつまいも「紅はるか」の余韻を楽しめるビールができました。農家の醸造所の自信作を是非おためしください。Alc. 5% |

穂波ブラック〈インペリアル スタウト〉黒豆を使用。麦芽をぜいたくに使い、しっかりとしたコクとうまみが詰まった、飲み応えのある黒ビールができました。Alc.8% |

穂波ブラウン〈セッション ビター〉ショウガとイングリッシュホップがほのかに香る、ブラウンのきれいなビールができました。会議(セッション)しながらでも飲めるくらいの軽くてスッキリとした飲み口をお試しください。Alc. 3.5% |

穂波八朔〈セッション ホワイトIPA〉八朔と小麦麦芽を使って、とても飲みやすいホワイトIPAをつくりました。ホップバースティング製法により、八朔の香りと柑橘系ホップが層をなし、飲んだ後にさわやかな苦味が追いかけてくる、心地よいビールに仕上がりました。キレの良い後味で、塩味やスパイシーな料理にもよく合います。Alc. 4.5% |
穂波シリーズ総括
ホップを飲んだら、もっと知りたくなった

開栓した商品は、試飲会後に残さずいただきました
「ホップはハーブ」
これまで「知識」としてぼんやりと記憶していたことですが、実際にホップの飲料を飲んでみると、自分自身が如何にホップのことを知らないかを思い知らされました。
ホップは、この液体の中に確実にいる。けれど、それが元々どんな姿で、どんな香りでいたのかまではわからない。きっと、ホップそのものと対峙する時まで、ホップの正体を"つかむ"ことはできないのでしょう。

人気店の大きな餃子。とてもビールに合いました
素材を理解し、香りや味わいや液色などの微かな違いに焦点を合わせ、味わいを伝える文章表現を考える……原材料の作り手がプロデュースした加工食品は、「商品」であり「作品」でもあるのだと思います。
芸術・文学作品を鑑賞するときのように、作り手の視点や背景を想像しながら味わったら、これまでよりももっと深い「食べ方」ができるようになるかもしれませんね。

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文・写真=中川葵、企画=ポケマル編集部