北海道在住・捌けるライターのわたなべひろみです。
ここしばらく、おうちで過ごす時間が増え、食べることや料理することに改めて向き合う機会を得た方も多いのではないでしょうか。
一方、学校給食の停止や飲食店の営業自粛などにより行き場を失った野菜や魚たちについて耳にし、直売に踏み切る生産者さんの話題に接することも多かったように思います。
野菜や果物であれば、「じゃあ、買ってみよう!」と手軽にポチッとできるのに、お魚はちょっと……と二の足を踏んではいませんか?
「丸のままのお魚が届いても、道具を持っていないから捌けないや……」と思うのは、魚を捌いたことがなければ、当然の気持ちだと思います。
でも、ちょっと待ってください。
特別な道具はなくてもお魚は捌けます。コツさえつかめば案外楽しいものですよ。
この記事では、普通の包丁(三徳包丁・文化包丁)や普通のキッチンばさみを使って魚を捌く手順を解説します。スーパーでのお買い物の時に手頃なお魚を見つけた時には、ぜひ試してみてください。
そしてお魚捌きに慣れた暁には、ぜひぜひ漁師直送の丸ごと鮮魚にチャレンジしてくださいね!
プリップリ・バッキバキのお魚に感動
今回は、地産地消にこだわり北海道内の漁師さんのお魚をということで、北海道寿都町の森貴紀さんの「匠の活〆!! 季節の魚詰め合わせセット」をチョイスしました。
「ピンポーン」朝早くお魚到着です。
発泡大きいー! ずっしり重い!!
見づらいですが、テープの端が折り返してあり、はがしやすい! こういうちょっとした気遣いがうれしい
いざ、ご対面! デカっ!!
氷の袋の下に5尾のお魚がみっしりと詰まっていました。その季節に獲れるお魚をセットにして届けてくれるという森さんの魚詰め合わせセット、今時期はこんなラインナップです。
ミズガレイに。
白いお腹のミズガレイをひっくり返すと
2つの目玉と虫食い状の斑紋が。別名ムシガレイと呼ばれるのはこの斑紋のため。
胴体の丸々としたサクラマス。
プリッと引き締まったフクラギ。
アップに耐えられるキュートなお顔
そして、今回の超初心者向け魚の捌き方の主役であるホッケ。
最近スーパーで見かけるものよりもかなり大きい
堂々の36.5センチ!!
どの魚も手で掴んでもバキっとした固体感を感じるほど引き締まり、持ち上げてもそのまま棒状のままでグンニャリすることはありません。魚体を指で押しても全く引っ込まないくらいの身の張りです。
「これは美味しくないわけがない!」見事な魚たちを前に震えました。
捌き始める前に…魚を捌く手順・道具を確認
さて、「魚を捌いたことがない」あるいは「魚を捌くのが苦手」と思っている人にとってのハードルとは何でしょう? 筆者なりに考えた結果、「何をどういう順番でやったらよいかわからないから」ではと思い至りました。
そこで、まずはお魚捌きの手順と準備について説明しましょう。
お魚捌きの手順
魚を食べられる状態にするまでに最低限やるべきことは次の4つのステップです。
- ウロコを取る
- 頭と尾を切り落とす
- 内蔵を取り除く
- 冷水でよく洗う
ここまでできれば、漁師さんから直接届く新鮮な魚を焼き魚や煮魚にして食べられます!
この後、「身と中骨のついた身の2パーツに切り分ける作業」が「2枚おろし」、「身2枚と中骨の3パーツに切り分ける作業」が「3枚おろし」となります。さらに、「中骨から切り分けた身から皮をはがす作業」ができれば刺身も作ることができます。しかし、それは追々ということで。
お魚捌きの道具(初心者編)
ホッケくらいの大きさ・骨の硬さの魚であれば出刃包丁のような特別な道具は必要ありません。
スーパーなどでも買えるごく普通の包丁(三徳包丁)で十分捌くことができます。また、今回は、さらに簡単に扱えるキッチンばさみでも捌いてみましょう。
使うのは三徳包丁または、キッチンばさみだけ
その他に、捌く前に準備しておくものはこちら。
- ゴミ袋を用意して大きく口を開いておく
- ペーパータオルを使いやすい場所に置いておく(魚の水気を取ったり、まな板の汚れを取るため)
- 捌いた魚を置くバットか皿などを用意する
まな板の向こうにゴミ袋を広げておく
作業をする場所に広めに新聞紙などを敷いておくとキッチンが汚れにくく、後始末も簡単に済むでしょう。
三徳包丁での魚の捌き方を写真で解説
ホッケが登場!
①ウロコを取る
包丁の刃を魚体に当てて尾から頭側に向けて動かしてウロコを削ぎ落とします。
もしウロコが飛ぶのが気になるようなら、大きめのビニール袋に魚ごとまな板をすっぽり入れてその中でウロコ取り作業を行ってもよいです。
ホッケのウロコは小さめ。
尾の際の方もゴリゴリ
触ってみてザラザラした感触がなくなればOKです。
②頭と尾を切り落とす
前ヒレの下から包丁を入れます。
実は、ここでわたなべは包丁の方向を間違えて刃を入れてしまったのですが、実際には包丁は赤い点線の向きに入れてくださいね。
魚を裏返し同様に包丁を入れて頭を落とします。
尾も切り落とします。
思い切りよくブツンと
③内蔵を取り除く
次に内蔵を取り除くのですが、活きがよいために内蔵がそのままゴロリと出てきました。
包丁の刃先を使って内蔵を引き出します。
腹を包丁で開きます。
中骨に着いている血合いをこそげるようにして取ります。
④冷水でよく洗う
ここまで来たらもうフィニッシュ。冷たい流水で手早く洗います。
外側も内側も丁寧に洗ってください。魚を洗うのはこの1回だけ。何度も洗うと活きが落ちてしまいます。
ペーパータオルでしっかり水気を拭き取り、
できあがりです。
包丁の方向を間違ったばかりに……余計な切れ目が(泣)
ここまでできたら、ばっちりです。このまま焼き魚や煮魚にして食べられます!
⑤2枚おろしにする
でも、せっかくなので、もう少し頑張ってみましょうか。2枚おろしに挑戦です。
尾の方から中骨と身の間に包丁を滑りこませるように入れていきます。
中骨が包丁にゴリゴリとこすれる感触を確かめるように頭側に包丁を進めます。
途中経過。開くとこんな感じ
頭の方まで包丁を進めきったら2枚おろし完成です。
多少切れたり、身が中骨に残っても、このまま調理すれば全部の身を食べられます。この先には「自分で刺身を作る」という道が繋がっていますので、ぜひ挑戦してみて下さい。
もっと簡単に捌いちゃおう。
キッチンばさみでの魚の捌き方を写真で解説
キッチンばさみ登場
包丁だとやっぱり難しそうでしたか?
ならば、キッチンばさみで捌いてみましょう。捌く手順は包丁の時と同じく4つのステップです。
①キッチンばさみでウロコを取る
ウロコを取るためにキッチンばさみの刃を広げます。
※ハサミで自分の肉を切らないように、刃の内側に指などをかけないようにご注意ください。
包丁の時と同じに尾から頭に向けてゴリゴリと削ぎ取るようにウロコを取ります。
キッチンばさみでもウロコはしっかり取れます。
腹側を下にして魚を立てるなど魚本体の態勢を変えながら取っていきます。
②キッチンばさみで頭と尾を切り落とす
頭を切り落とします。前ヒレの後ろ側に刃を入れてジョッキン。
尾もジョッキン。
③キッチンばさみで内蔵を取り除く
腹側を上にしてキッチンばさみを差し込むようにして切り開きます。
キッチンばさみの刃先を立てて内蔵を取り出します。
④冷水でよく洗う
捌けました。冷たい流水で洗って水気を拭き取ったらできあがりです。
ここで気になるのが、捌いたあとの内蔵などの生ゴミでしょうか。
わたなべは内臓などを入れたゴミ袋を二重にして冷凍庫に入れておき、燃えるゴミの日まで保管します。新鮮な魚から出た内蔵ですので、水漏れなどしない限り冷凍庫内が汚れるということはありませんから。
自分で捌くと楽しい!美味しい!!
包丁でもキッチンばさみでも、捌く手順・4つのステップさえ覚えてしまえば大抵の魚を自分の手で捌いて食べることができます。
さらにキッチンばさみでぶつ切りにして、
煮魚にしたり
2枚おろしにしたものに塩をして
こんがり焼き魚に。
身も皮も脂乗りしてジューシー。自分できちんとウロコ取りをしているので皮まで全部食べられます。
レシピはこちらのページでご説明しています:お魚料理入門編。「焼」「煮」「飯」「汁」4つの基本のお魚レシピ
他の魚も捌いてみた
自分で捌くことができるようになると、一緒に届いたフクラギもぴっちぴちの刺身にできます。
同じ要領で捌いて、大きなサクラマスを切り身にすることもできます。
新鮮な魚を捌いて食べられると、ごはんのバリエーションも広がります。
* * *
今回気づいたのは、魚を捌けないから漁師さんから魚を買うのは難しい……ではなく、初心者さんこそ漁師さんから買うべきということ。海から直接送られてくるものだから、初心者さんが捌くのに最適なのです。
なぜなら、活きのいい魚は内蔵もしっかりしていて取り除きやすく、血の汚れも少ない……キッチンもそれほど汚すことなく簡単に捌けるから!
ちょっとした工作気分で気軽に魚捌きにチャレンジしてみてください。楽しいですよ。
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北海道生まれ北海道育ちのライター。宣伝会議 編集・ライター養成講座米光クラス第7期受講。Think School企画コース2期卒。クルマ・教育関連・北海道ネタなど多岐に渡り執筆中。たまにアート企画などにもたずさわる。各地で地元スーパー巡りをするのが好き。魚を捌くコツは祖母ゆずり。