ちょっとウロコかたすぎるけど絶品…漁師直送のオナガグレを捌いてみた

生れも育ちも北海道なライターのわたなべです。

また、見つけてしまいました。北海道ではめったにお目にかかれないお魚。

その名は、「オナガグレ」


こちらは、宮崎県延岡市で魚の養殖業を経営する結城嘉朗さんが育てた、養殖のオナガグレ。

結城さんは漁業の世界では珍しい「少量多品種の養殖業」を目指しているとのことで、オナガグレのような珍しいお魚も育てていらっしゃるのです。

※少量多品種:「色々な種類のものを少しずつ」という意味。直販で生計を立てる小規模農家さんの間では「少量多品種栽培」は一般的になりつつあります。同じものをたくさん育てるよりも手間がかかります。


商品写真を見ると、全体に丸みを帯びて、かわいらしい。


ここしばらく、こわーい顔や、長―いお魚とお付き合いしていましたので、今回はこちらに挑戦することにしました。

 

目次

 
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オナガグレとご対面

遠く宮崎から、はるばるいらっしゃいましたよ。

発泡ケースを開けると、中で泳いでいる?


頭から尾までつやつやと黒光りする魚体。全体の形も丸いですが、お腹や背びれ側のカーブもきれいです。

 

頭から尾まで48㎝ほど。結構大きめのボディにブルーがかったつぶらな瞳。

 

オナガグレは別名「クロメジナ」ともいいます。メジナというのは「目近魚(メジカナ)」からきているそう。両目が近いことからついたとか。

確かにちょっと目が寄ってるところがキュート。なんてかわいいお魚なんだろう〜〜〜💕


わたしはこの時、かわいい姿にうっとりしていて、次に起こることを予想だにしませんでした……


オナガグレを捌く。しかし…

それでは、さっそく三枚おろしにしましょう。この日のために、祖母の形見の出刃包丁も研ぎに出してあり、ピッカピカです。

準備も万端。これだけお魚らしい姿をしたお魚ですもん、なんてことないでしょう。ちゃっちゃと三枚おろしにしちゃいましょうか。 

軽い気持ちで前ヒレを持ち上げ、どんなものかなとウロコに包丁を立てようとしたら……

カキーン


なんですと!?

全く刃が入りません


硬い硬いウロコが柔らかくカーブした魚体を寸分の隙もなく覆っています。まるで鎧のようにがっちり。


かわいい顔に騙されました。

釣り好きのオットに聞けば、オナガグレは釣り人の間では引きが強く、なかなかにタフな魚として語られているとか。

なめてました。かわいいことはかわいいですが、お魚も見かけだけで判断してはいけません。


改めて、オナガグレと向き合います。 

尾の方から少しずつ、ウロコの根元に包丁の刃先を押し入れて、頭側に返すようにはがしていきます。

バリっバリっと手ごたえがすごい。

 

いくらかはがれてくると、はがしやすくはなりますが、ウロコの柔らかい魚のように、ただ包丁の刃を立ててこするようにしていては文字通り刃がたちません。


何枚かをまとめて削るようにはがしていきます。

大きなウロコが大量に取れてくる


キッチン大惨事。

この後、何日も、キッチンのあちらこちらからウロコが発見された


新聞紙を敷いてからやれば良かった……(後悔)。


後日、結城さんに伺ったところ、

「ゴミ袋や大きめの買い物袋とかに入れてウロコを取るのがいいかもしれません」

とのこと。ああ。


頭と尾をおとし内臓をとる

気を取り直して、頭を落とします。上部からざっくりと包丁を入れて、


前ヒレの際を通って腹側へ。


裏返してこちらも前ヒレの際に包丁を入れてそのまま骨を切ります。


出てきたはくっきりと角が立つほど新鮮です。


尾を落とします。


腹を頭側から尾の方に向けて切り、はらわたを出します。


お腹を開くとはらわたがゴロリと登場。取り除きます。


はらわたを全部出したら、魚体とお腹の中を水洗い。

魚を捌く時は、何度も水洗いをすると活きが落ちてしまいますので、はらわたを出した時に一度だけ洗うようにするとよいでしょう。

このオナガグレはしっかり血抜きがされているので、まな板が血で汚れを気にすることなく卸せました。


骨と身を切り分け三枚におろす

背ビレがわの身と中骨の間に、身をはがすように包丁の先を入れてから、尾の方から中骨に添わせて包丁を入れます。


できるだけ、骨のゴリゴリという感触を感じるように、尾から頭側に向かって中心の骨と包丁の面とを平行に進めると身が骨に残りにくくきれいに卸せます。


ゴリゴリと頭側に到達して身を剥がしてみたら、おやまあ。結構、中骨に身が残ってしまっています。私もまだまだ修行が足りませんな(苦笑)。

片身を剥がした状態。写真奥が切り剥がした身。手前はまだ中骨が付いています。


でも、大丈夫、こそげるようにして中骨に残る身をはがし、その身をそのままペロリ。魚を卸した人の特権!

「甘ーい!」

白身なのでもっとあっさりした味をイメージしていましたが、かなり脂があります。”サシ”ではなく身の表面全体に薄くベールがかかったようなトロリと溶け出てくる脂です。


続いて、骨のついているもう片側の身も中骨側をまな板の方へ、皮側を上にし、同じ要領で骨から身を切り剥がします。


腹骨と小骨をとる

身二枚と中骨の三枚おろしにできたら、腹側の骨を落とします。


内臓を包んでいた腹骨は湾曲しています。半分くらい包丁を入れたところで、切れ目を入れた部分の骨をめくり、骨と肉の境目部分を目視しながら切っていくと良いでしょう。


身の真ん中の小骨を巨大なトゲ抜き状の骨抜きで抜こうとしましたが、なかなか抜けません。


そこで、骨の並びに沿って身の中心に包丁を入れ、小骨の部分を切り取りました


頭と骨のアラ部分と身に分けました。

かわいい顔の割に、相当手ごわいヤツでした。


生産者おすすめの食べ方「炙り刺身」

捌いている時のつまみ食いで、オナガグレがあっさり白身ではなく、コクのある脂が浸みだす旨みの魚だということがわかりました。


結城さん曰く、

「皮目が美味しい魚ですので、特にガスバーナーで皮目を焦がすくらいにあぶった炙り刺身皮付きのまましゃぶしゃぶがオススメです」

とのこと。炙り刺身は脂の味もトロッとくるのでは? まずは炙り刺身に挑戦です。


ところが、我が家のガスバーナーはなんとガス切れ。


バーナーがなければガスコンロでやればいいんじゃない?

というわけで、登場したのはバーべキュー用の鉄串。まずは4分の1身分に、扇状に串を刺します。


ガスコンロの直火にかざしてみました。火が近いので火傷に注意です。

串は直接持たずに必ずふきんなどで覆うこと


皮目はしっかりと焼いた方が方がよいとのことなので、じっくりじんわり。

ファイヤー!!!


皮が焦げたところで、氷水にさっとくぐらせて


薄く切り分けました。


実は、今回三枚おろしにしたあとすぐに調理にかかれなかったもので、2日ほど冷蔵庫で寝ていてもらいました。

キッチンペーパーにくるんで、ラップで包んで保存したのですが、私の保存の仕方が悪かったのか、血合いの色が沈んでしまいました。結城さんにもオナガグレにも申し訳ない……


ただ、釣人ブログなどを読むと、「オナガグレの刺身は何日か熟成させたほうがウマい」との声も多いのです。


さて、お味は……


「トロ甘ーー!!」


2日前より、明らかに脂が濃く甘くなっています。

「熟成させる」のはありでしょう。でも、やはり、やり方はもう少し研究してみなければ。


この味の濃さはごま油などに合うに違いないとアレンジしてみました。

塩ダレユッケです。


卵の黄身と絡めても負けないしっかりした味!


>>炙り刺身と塩だれユッケのレシピはこちら<<


半身は塩振り焼きにします。皮目がパリパリです。

おいおい! 鼻! 鼻! あまりの香ばしい匂いに我が家の犬が珍しく鼻を出してきました。


しっかり焼くと余分な脂が落ちるのか、思いの他あっさりとした感じです。


頭もそのまま兜焼きに。

しっかり塩を振って、オーブンで焼きます。


こんがりと焼けました。


頭の上にも、エラ側にも身がみっしり詰まっています。


この他のアラはあら汁に。脂の味に負けないようにみそ仕立てで。


出汁がしっかり出てしみじみ美味しい。


魚も見た目によらぬもの

かわいい顔に、鎧のようなウロコ、舌がうっとりする甘い脂の白身――オナガグレは見た目を次々に裏切る魚でした。

頭から尻尾まで余すところなくいただきましたが、1尾でもしっかり食べ応えがあります。

今度は、しゃぶしゃぶもいいなあ。でも、その時は、しっかり袋で防御してウロコを取ることにします。


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Writer

わたなべひろみ

北海道生まれ北海道育ちのライター。宣伝会議 編集・ライター養成講座米光クラス第7期受講。Think School企画コース2期卒。クルマ・教育関連・北海道ネタなど多岐に渡り執筆中。たまにアート企画などにもたずさわる。各地で地元スーパー巡りをするのが好き。魚を捌くコツは祖母ゆずり。

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