スーパーに並んでいるパックの牛肉、焼肉屋さんで食べる牛肉、それらがどんなお肉か知って食べていますか?
呼び名の違い、美味しさの違いは何によるのか。安全性は?栄養は?
知っているようで知らなかった牛肉の基本を学んでみましょう。
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私たちが食べている牛肉はどこからきているの?
日本で私たちが口にする牛肉。
58%が輸入、そして残りの42%が「国産牛」と言われる肉です。
グラフにある通り、国産牛も、様々な種類で構成されていることがわかります。
そもそも国産牛の定義とはなんなのでしょうか。
国産牛とは、和牛とは
和牛はもちろん、外国の品種の牛でも、外国で生まれ育った牛でも、日本にいた期間の方が長ければ「国産牛」になります。
そして、その中でも生粋の和種だけが、「和牛」と名乗ることができるのです。
現実には、スーパーで「国産牛」と表示されているものの多くは、「和牛」ではなくホルスタイン種や交雑種である可能性が高いです。
ホルスタイン種・交雑種って?
●ホルスタイン種(乳牛)
国内ではほとんどが牛乳を生産するための乳用牛として飼育されている。乳を出せないオスの牛は、種牛以外は去勢され、肥育して食用に出荷される。また、子供を産めなくなった=乳が出なくなった老いたメスも、同じように食用として出荷される。
●交雑種(F1)
F1とも言われるハイブリッド種。ホルスタインなど乳牛のメスに、和牛のオスの精子を人工授精させて生まれた牛。肉質は和牛に近く、体格や病気などへの抵抗力は和牛よりもよくなる、両者の良さを受け継いだ雑種。
和牛を名乗れるのは4種類だけ!
●黒毛和牛(和牛の95%)
全国で200前後の銘柄牛がおり、「神戸牛」「松坂牛」などのブランド牛が有名。「霜降り」と言われるサシ(脂肪)は世界的に評価が高い。和牛4種の中で一番小柄で一番脂肪が多い。
●褐毛和種(約4%)
薄い褐色であかげ牛とも言われる。阿蘇地域を中心に飼育される「肥後牛」などの熊本系と、高知県を中心に飼育される「土佐和牛」などの高知系がある。
●日本短角種(約1%)
岩手・青森・秋田・北海道を中心に飼育されている。夏は放牧し、冬は里に下ろす夏山冬里方式が特徴的。毛色は濃い褐色で、性質は温厚。4種の中で体格は一番大きくがっしり、一番サシが少ない赤身肉。
●無角和種(0.数%)
山口県萩市を中心に飼育される。現在ほとんどが、(社)無角和種振興公社の管理する「無角和牛の郷」で育てられており、月に3〜4頭しか出荷されない。
飼育方法いろいろ
◆旨さをとことん追求!A5を狙う、黒毛和牛などの代表的な育てられ方
黒毛和牛はほぼ100%が人工受精。生まれた子牛は3〜6ヶ月で母牛から離され、牛舎の中で人工乳と粗飼料(生草、サイレージ、乾草、わら類)で10カ月齢程度まで育てられます。
その後、15〜25カ月かけて、肉用牛としてしっかり肥育する(太らせる)段階に。この段階では、粗飼料は最低限に抑えつつ高カロリーな濃厚飼料(※)をたっぷり与え、特に肥育の中・後期は筋肉のつく運動を制限することで、格付けの高い肉をつくります。
そうしてまるまる太って旨みたっぷりになった黒毛和牛は、生まれて25〜35カ月で出荷されます。
◆健康的な赤身肉の旨みを追求!「夏山冬里」方式の育て方(短角牛)
短角牛は春に親子で放牧され、子牛は牧草と母乳で育ちながら秋までたっぷり約8ヵ月一緒に過ごします。繁殖は、母牛40~50頭に対して種牛1頭が放たれ、自然交配します。秋になると牛舎に入り、母牛は2~3月頃に出産します。
肥育の期間は14~18か月で、短角牛の多くは国産の、地元で栽培した原料の飼料を使い、粗飼料と濃厚飼料をバランスよく与えます。
こうして短角牛は、伝統的な「夏山冬里」の飼育方式で大きくなり、誕生から22~25ヵ月で出荷されます。
※濃厚飼料とは
タンパク質の多い大豆や、デンプン質の多いとうもろこし、小麦ふすまなどの穀物を原料にした飼料。牛を早く太らせたり、脂肪を増やすために使われる。現在、日本の畜産で使用される濃厚飼料のほとんどは輸入されている(自給率約10%)。
A5って何?格付けが意味するもの
和牛の格付けは、「歩留(ぶどまり)等級」のA~Cランクと、「肉質等級」の5~1ランクを組み合わせ、最高「A-5」~最低「C-1」までの15ランクで表します。
歩留とは、簡単に言えば体重に対する肉の量の比率。肉質等級は、サシの入り具合、肉の色、肉の締まりとキメ、脂肪の色と質の4項目あり、サシが多く、光沢のある明るい赤色で、締まりとキメが良く、脂肪の色が白いものが高級とされます。
外国産牛肉との質の差を明確にし、価格競争から守る役割を果たしてきた格付けですが、これは人間が感じる「口当たりや見た目」を重視されたものとも言えます。
例えば、よく運動し粗飼料を多く食べている短角牛は、骨が太く内臓が大きいため歩留りは悪くなり、ビタミンAのもととなるカロチンが多い自然な牧草やサイレージをよく食べている牛は脂肪が黄色っぽくなります。
つまりより自然な環境で育てようとすると、格付けは下がってしまうことがよくありますが、それは必ずしも「おいしさ」のレベルが低いということにはなりません。
ポケマルで買える牛肉は?
農家漁師から直接買えるポケマルですから、牛肉ももちろん生産者が販売しています。そこで、これまでの牛肉の出品を一覧にしてみました。
①岩手県の柿木さんの「短角牛」
岩手県北上高地の厳しい自然環境の中で、「夏山冬里」方式で育てられる山形短角牛は、国内の肉牛の中でも非常に希少。全国的にはあまり知られていないため、知る人ぞ知る、肉用牛です。
黒毛和牛などに一般的な飼育方法とは一線を画し、自然な環境の中で国産飼料だけを食べて健康的に育った短角牛は本来の赤身の旨みを存分に味わうことができます。
柿木敏由貴さんの出品をもっとみる
②熊本県の井さんの「あか牛」
褐毛和種に分類される和牛。
「牛は草で育てる」を基本理念に、自分たちで育てた牧草を自分たちで刈り取って与えています。濃厚飼料は一般的な買い方の半分程度に抑えているので、脂肪が少なく、赤身のうまみ・甘みを存分に味わっていただけるお肉です。
井俊介さんの出品をもっとみる
③福岡県の赤崎さんの「赤崎牛」
黒毛和牛とホルスタインから生まれるハイブリッド種。
豊かな自然環境の中でのびのびと暮らし、栄養バランスの整ったエサを食べて育った赤崎牛は、脂身が少なくうまみの強いヘルシーなお肉です。
赤崎和徳さんの出品をもっとみる
④佐賀県の山下さんの「佐賀牛」
JAさが管内で育てられた黒毛和種の和牛のなかでも、特に等級の高いA5ランクとA4ランクの一部のみが名乗れるブランド牛肉が「佐賀牛」。
その貴重な佐賀牛の生産者である山下さんが「全国のみなさんにおいしい佐賀牛を食べてもらいたい」と、直接販売を開始!A5ランクの贅沢なおいしさをお届けしてくれます!
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※この記事は、東北食べる通信2013年8月号に掲載された、「What's Beef? 知ってるようで知らなかった牛肉の話」を一部加筆・編集したものです。
※この記事は2017年3月30日に公開した記事を加筆修正したものです。