突然ですが、みなさまに「第二の故郷」はありますか? 生まれ育ったわけではないけれど、なんとなく親しみがあって何度も訪れたくなるような、そんな場所……。
筆者にとっては、愛媛県の宇和島がそれに当たります。何度も通い、時には2ヶ月ほど滞在して、もはやプチ移住状態になったことも。
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宇和島の海。浮かんでいるのは養殖のいかだ
宇和島滞在中に、筆者は衝撃的な食体験をしました。それは、「鯛めし」の概念を覆す「宇和島鯛めし」との出会い。みなさまにもあの衝撃体験を共有したく、筆者が愛してやまない「宇和島鯛めし」をご紹介します。
「宇和島鯛めし」ってなんだ?
鯛めしを説明するにあたり、まずは愛媛県の地理について説明する必要があります。なぜなら愛媛県は東予・中予・南予の3つの地方に分けられており、その地方ごとに根付いている鯛めしの種類が異なるからです。
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愛媛県簡略図
鯛めしと聞いて多くの人が想像するのは、おそらく炊き込み式の鯛めしだと思います。これは主に東予から中予のもので、「松山鯛めし」と呼ばれています。
一方、今回ご紹介する「宇和島鯛めし」は南予に根付く郷土料理で、お刺身式の鯛めしです。生卵を溶いた醤油たれに鯛のお刺身を入れ、ごはんにかけていただきます。
宇和島市役所発行の『宇和島本』によると、宇和島鯛めしは海賊たちが酒盛りのシメに食べていたという説があるそうです。新鮮な鯛が手に入ったからこそのご馳走だったのかもしれませんね。
参考サイト:宇和島市ホームページ>宇和島市観光パンフレット
南予から「ゆら鯛」をお取り寄せ
宇和島鯛めしを再現するためにお取り寄せしたのは、宇和島のお隣、南予地区の愛南町で真鯛養殖を手掛ける朝倉典之さんの【ゆら鯛サイコロカット】です。
発泡スチロールの中に、一口サイズにカットされたゆら鯛1袋(500g)と、食べ方が書かれた紙が入っていました。
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ポケマルで南予の鯛が手に入るとは、感激です。
鯛は袋の中でガチガチに凍っている状態なので、使い始めは半解凍の状態で1回に使う分量ずつ小分けして、冷凍保存するのをおすすめします。
室温でしばらく置き、サイコロが分けられる程度に解凍されたら開封。
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サイコロの大きさはまちまちで、2cm角の立方体や、2×2×1cmの直方体などがありました。だいたい13〜16個で100gです。
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同封されていた紙に「とりあえずは生のままお醤油で」と書かれていたので、気になって何個か完全解凍し、味見をしてみます。
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た、鯛の味が濃い……!
淡白さの中に上品な脂がのっていて、既に私の心は宇和島に引き寄せられました。
解凍したら水っぽさが残るのでは? と思うかもしれませんが、そんなことはまったくありません。骨もないので、思う存分ぷりぷり食感を楽しめました。
朝倉さんの会社では養殖から加工までを一貫して行っています。そのため水揚げしてから加工するまでのスピードが速く、さらにマイナス35℃で急速冷凍することにより、鮮度を保ったまま私たちの元に届きます。
解凍しても旨みたっぷりなのは、そういった工夫があるからなんですね。
さあ、思い出の「宇和島鯛めし」を再現しよう!
\じゃーん/
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早速ですが、こちらが筆者が宇和島で食べた思い出の鯛めしを、ゆら鯛サイコロカットで再現したものです! お店で食べるよりも盛り付けは質素ですが、必要な材料は揃っています。
はじめに、全卵を落とした醤油たれの中に鯛をいれたら……
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たれのレシピはのちほど
そのまま卵を溶いて、鯛を黄身でコーティングして……
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具材だけをタレからひき揚げて、温かいご飯の上に乗せます。
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お好みの食べ方で構いませんが、筆者はいちどに全ての具材をのせてしまわず、少しずつ楽しむのが好きです。
「そうそう、この味この味……!」
タレの味に負けることなく、意識せずとも感じられる濃い鯛の甘み。宇和島に行かなくてもこの味を堪能できるなんて、感動ものです。
2順目は大葉をのせて、ちょっと味に変化をつけてみたりして……。
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最終的には、タレごとぶっかけます。
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そのまま飲むとしょっぱいタレも、ご飯とともに食べるとちょうどよくなります。かきこむように、あっという間に食べてしまいました。
ご飯に刺身を乗せてから醤油をかけて食べる形式の「海鮮丼」とは全く違います。ほんのちょっと手間をかけてつくる醤油たれと、卵を絡めて食べるこの味に、心がときめくのです。
漁師直伝の「南予風鯛めし」も作ってみよう!
お次は、ゆら鯛の生産者・朝倉さん直伝のレシピで鯛めしを作ってみましょう!
朝倉さんのレシピは、生の鯛を使うという点では先ほどの宇和島鯛めしと同じですが、決定的に違うところが2点あります。それは、鯛をあらかじめ漬けておくことと、卵は卵黄だけ使うこと。
また新たな鯛めしのあり方を知ってしまいました……。
これが真鯛養殖漁師直伝
\「南予風ゆら鯛めし」のレシピだー!/
材料(約2人前)A. ・出汁・・・60g ・みりん・・・40g ・酒・・・40g ・濃口醤油・・・40〜50g ゆら鯛・・・お好みの量 卵黄・・・2個 トッピング・・・大葉・水菜・海藻・海苔・白ごま等、お好みで |
作り方
① Aを鍋に入れて火にかける。沸騰したら火を止め、粗熱がとれたら冷蔵庫に入れて冷やしておく。
② 解凍したゆら鯛と卵黄を①に30分〜1時間程漬ける。(※漬け込みしたゆら鯛は、冷蔵庫で翌日までにお使いください)
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③ しっかりとたれの味が染み込んだ鯛を②から取り出してトッピングとともに盛り付け、同じく②から取り出した卵黄を具材の真ん中にそっと乗せて、完成!
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食べてみよう
鯛には、漬けならではの独特のねっとり感が生まれていました。染み込んだたれが鯛の甘みを引き立ててくれているようです。とろ〜り卵黄には、鯛とはまた違った甘みが。
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ここは漁港か? 漁港に併設した食堂か? 遠くの方からカモメの鳴く声が聞こえてきそうなくらい、海の近くにいる気分になりました。
宇和島×愛南=南予鯛めしデラックス!
筆者思い出の「宇和島鯛めし」と、愛南市の朝倉さんが教えてくれた「南予風ゆら鯛めし」。2種の南予の鯛めしをゆら鯛で作って食べてみた結果、どちらもおいしいです!
本来の鯛の味を楽しみたければ生で、ねっとりとした鯛の甘みを楽しみたければ漬けで食べるのがいいかもしれません——といいつつも、どちらかを選ぶとなると、やはり迷います。
そこで筆者は、禁断の「南予の鯛めしデラックス」を生み出してしまいました。
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具は多い方が絶対においしいという心得から、たっぷり2種類の鯛と、たっぷり海藻と、後がけ用のゴマ・海苔を用意。
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鯛は、生と漬けをそれぞれ50gずつ使用。上写真のお茶碗には合計100gの鯛が乗っていることになります。
ポケマル購入価格を材料費として計算すると、鯛だけで約600円※。こんなに豪華な鯛めし膳、外で食べたら絶対に2000円以上はするでしょう……。
※今回は農林水産省の支援事業のおかげで送料無料で購入できました
* * *
炊き込まないお刺身の鯛めし「宇和島鯛めし」や「南予風鯛めし」のおいしさ、伝わったでしょうか? この記事で、そのおいしさに気づくきっかけを提供できたならば、これ以上嬉しいことはありません。
筆者が過去に宇和島で食べた鯛めしは薄切りのお刺身を使用したものでしたが、今回使用したゆら鯛サイコロカットはより弾力があり、鯛の甘みを感じやすいような気がします。
炊き込みで作る鯛めしも良いものですが、ぜひ、生の鯛で作る鯛めしも、レパートリーのひとつにしてみてください。
おまけ:鯛の切り身
朝倉さんはサイコロカットの鯛だけでなく、切り身も出品されています。記事作成にあたり、切り身のサンプルをいただいたので、最後に宣伝をさせてください!
今回は、皮目がパリッとするくらいに焼いてからいただきました。生の鯛とはまた違った風味を楽しめます。
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焼くことで滲み出た鯛の脂が身をコーティングし、口に入れた瞬間、噛む前から脂が舌の上で溶けていくようです。冷めてもおいしいので、お弁当の具にもぴったりだと思います。
切り身をお好みの厚さでスライスして、宇和島鯛めしをつくるのもいいかもしれませんね。
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文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵