農家さんに悩み相談。キャリアとは、生きるとは、ポケマルとは?生産者必見コーナーもあるよ

2020年2月上旬の或る夜。私たちは、"北関東随一の歓楽街"との誉れ高い茨城県土浦市の居酒屋で、その人と会っていました。

胸に踊るのは「NO RENKON, NO LIFE!」の文字。

ベテランポケマラーのみなさんには、その正体は一目瞭然かもしれません。今回の主役は、れんこん農家の栗又孝行さんです。

この夜は、翌朝からのレンコン収穫現場取材前の打合せ兼インタビューのつもりだったのですが。

お酒の力も相まってか、まるでサークルの先輩のような雰囲気にのまれてか……編集部員たちは、いつしか自身の悩みを打ち明け始めていました。

さあ、「ポケマル酒場」の赤ちょうちんが灯ります。

当記事の取材は2020年2月に行いました。

\この記事は2本立てです/

  1. あの人気農家さんのレンコンを掘りに、霞ヶ浦へ自転車旅してきたよ。
  2. 農家さんに悩み相談(この記事です)

目次

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時には消極的な転職もあり。
栗又さんの意外なキャリアを聞く

悩める新社会人ひのはら(右)と栗又さん(左)

私、インターンの日野原です。この春(2020年)卒業して社会人になるのですが、社会でうまくやっていけるのか不安で……。栗又さんも会社員だったことがあるとプロフィールで読みましたが、レンコン農家になるまで、どんなキャリアを歩んできたのですか?

プロフィール

栗又孝行|茨城県土浦市

レンコン農家三代目。前職は環境計量士なる職についていましたが、組織に馴染めず(笑)寿退社! 「食べるものには困らんだろう」と単純な考えだけで、何もわからない妻をつれて実家へ戻り農業の道へ。でも、今は「レンコン」という作物の面白さや可能性難しさが面白く、しかも会社員にはない出会いや繋がりが楽しく、これを一生続けて行くのだろうと感じてます。

栗又孝行さんの商品をみる

俺はれんこん農家の家に生まれたけれど、親の希望もあって四年制大学の環境工学科に進学したんだよね

農家になる予定ではなかったんですか?

そうそう。俺が農家になるのには親が反対してさ。せっかく四年制大学を卒業したのだから、一般企業に就職してほしかったらしくて
で、卒業後は環境調査を行う会社の専門職に就いたんだけど、そもそもその会社に骨を埋める気もなかったね

へえ、なんでですか?

うーん、同じ業界内の上位企業を目指していたから

ということは、はじめからキャリアアップ転職を前提で就職したのですね

上昇志向な会社員時代

まあね。1社目は国家資格を取得したら報酬をくれる会社だったんだ。だから上を目指して頑張って勉強したんだよね。当時は資格さえ取ればどうにかなると思って

”思ってた”というと……

仕事でね、上司の仕事の進め方を指摘してしまったり、対立したりしたこともあって。結果、名古屋の大学へ出向することになったんだ(笑)

 しゅ、出向!? それってまさか……

いや、別に上司のメンツ潰したから島流しになったのではない……と思うけど。でも企業に属してお金をもらいながら、大学で研究を進めるのは楽しかったよ。あの時代はすごく良い思い出だな

実は私も何年か社会人をしてから大学院に進学するのも良いかなと思っているんです

うん、とても良いと思うよ

しんどくなって農家に転職

ちなみにプロフィールに「組織に馴染めず(笑)寿退社!」とありますが?

1社目に7年勤めたあと転職したんだけれど、前職があまりにも専門的な職種だったから同じような業種にしか就けなくて。業界自体も狭くて、結構しんどくなってしまったんだよね
農家になる予定はなかったとはいえ「いざとなれば家業を…」って考えはあったし、同じ頃に今の奥さんと出会ってたこともあって、そのまま土浦に連れて帰ってきちゃったってワケ(笑)

意外です……。今の栗又さんは"れんこん農家がアイコンであり人生!"と見えるのに、れんこん農家の道を選んだキッカケは、どちらかといえば消極的な理由だったとは

まあねえ。人生どこでどうなるかわかんないよね〜

一時的には挫折したと思い自信をなくしても、長い目で見ればそれがプラスに転じる瞬間だったりする……なんだか勇気がでてきました!

安定を土台に新しいチャレンジを

悩みを吐露するライター大城(左)と、答える栗又さん

「安定」は生活の土台

私おおしろはフリーランスのライターなんですけど……アノ…老後のために2000万円貯金しなきゃとか一生仕事しなきゃとか考えると、将来が不安で不安でしょうがなくて……

俺の若いときにもあったよ、ヤミ期

えええっ! 栗又さんも病んだんですか!?

なんだよ、その言い方は〜(笑)。俺も超病んでたよ。ひとり暮らししていた会社員時代は、休日ずっと引きこもって酒飲んでアニメ見てた。あとは仏の教えにハマったりとか、色々あったねえ

でも今はもう平気なんですよね?

歳を取ったから落ち着いたのかな。結婚して子供ができて、かなり安定したよ
あとは収入的な部分も大切だよね。うちは地元の農協に卸すのがメインの農家だから、ある程度は安定収入が見込めるのよ

ほう、土台となる収入があるのは強いですね

まずは家族、次に自分

ちなみに、栗又さんの中でのポケマルの位置づけって?

あくまでも俺の場合だけど、ポケマルでの収入はあくまでもプラスアルファで考えてる。俺にとって家族の生活を安定させることが最優先事項だから、ポケマルみたいな「自分のやりたいこと」をできるのは、収入の土台があってこそなんだよね

なるほど、安定第一……。飄々としているようで、実はすごく堅実なのですね

で、今はたけのこ農家の勉強中なんだ

え? また何事で?

いやあのね、自宅裏に竹林があるんだけど、以前、整備ついでにたけのこ掘ってポケマルで販売してみたら結構反響があってさ

ほう、販売先だけでなく、販売商品でも新規開拓に挑戦するのですね

そそ

私もライターとして取引先をいくつか持つことや、専門分野を深めつつ、同時に広げていくことが大切なのかな、と思っていました。農業にも似た部分があるんですね。相変わらず将来は不安ですが、できることから頑張ってみます!

栗又的ポケマルエンジョイ法とは?

あの、私なかがわです。せっかくなので、私からは、この記事を読んでくださっている生産者のみなさまの役に立つようなご相談を……

はい

では失礼します……コホン
Heyみんな🎧 ここで栗又さんに質問のおハガキだぜ🎶️
ラジオネーム"青年部30年目"クン!
『僕は最近ポケマルを始めたのですが、まだ活用しきれていない気がします。どうすればもっと楽しくポケマれますか? ポケマルをエンジョイしている先輩からのアドバイスがほしいです!』

(ハガキ?ラジオ……?)……とのことですが栗又さん?

いや……まぁ、どうだろうね

そもそも栗又さんがポケマルを知ったキッカケって何だったんですか?

ポケマルが始まる頃に、ポケマル代表の高橋博之さんがやっていた座談会に参加したのが始まりだったな

そこで誘われて?

そうですね、まあ、軽い気持ちで……。それ以前にもネット通販をしてみたことはあるんだけど、そこで継続的に売り続けるのはなかなか難しかったんだよね

それが、なぜかポケマルにはハマったと

何でだろうねえ

そこに、ラジオネーム"青年部30年目"さんにとってのヒントがあるような気がします

生産者必見コーナーはここからです

栗又さんがポケマるときに意識するコツってありますか?

いやぁ、そんなにないけど……例えばさ……ランキングってあるじゃない? ランキングに載ると新規のお客さんから注文をもらえることがあるね

栗又流ポケマル壱の作法

ランキングに載ったら新しいお客さんと出会えた

記事として公開しているランキングは編集部がコツコツ手作りでお届けしています。少しでも役に立てているならうれしいです!

それとね、業界研究じゃないけれど、同業者さんのコミュニティを覗いてみたりしたんだよね。そしたらコミュニティ投稿の更新頻度が大切なんだなって
やっぱりコミュニティでの発信が活発な生産者さんは、食べ手さんからのリアクションも良いんだよね〜

栗又流ポケマル弐の作法

コミュニティ投稿を研究しよう

そう、栗又さんといえばコミュニティ投稿ですよ。2017年1月1日の感動は今でもよく覚えています

何があったんですか?

その頃はポケマル黎明期で生産者さんもお客さんも少なくてね、せっかく出品してもらってもほとんど売れなかったし、「コミュニティ投稿」や「ごちそうさま投稿」を書いてもらうことも難しかったの。そんな2017年1月1日、新年の初投稿をしてくれたのが栗又さんだったのです

2017年1月1日 栗又さんのコミュニティ投稿より

うんうん

あれはうれしかったです。それがきっかけで2017年の年末にはこんな記事をつくっていました

関連記事:2017年のポケマル思い出アルバム ③栗又孝行さん編

栗又さん、3年前には既にコミュニティに注力していたのですね

ポケマルを始めて1〜2年の時は、いわゆる正規品だけを出品してたんだけど、あるとき”はみ出しもの”も出品しはじめたんだよね

あっ、もしや「レンコンかぁ!」ですか? あれ、ネーミングセンスが最高で大好きなんです。鎮魂歌ァ!ならぬ「レンコンかァ!」って(笑)

そうそう、あれが大反響でびっくりしたんだ。「そうか、みんなこんな感じの商品がいいんだ……」って

栗又流ポケマル参の作法

既成概念にとらわれず、ポケマルのお客さんが欲するれんこんを探る

ポケマルでレンコンを買うのはどんな人で、どんな目的で購入するのかを考えながら、商品の内容や見せ方を変えつつ反応を確かめていくのがコツなのかもしれませんね

いわゆるマーケットリサーチですね

無言の「ごちそうさま」に応える

にしても、たくさんごちそうさま投稿してくれる方いるよね。ありがたいよね。すごいよね〜

これまでで特に印象的な「ごちそうさま」ってありますか?

あるよ、あるんだけど"無言"なんだよね

む、無言……?

毎シーズン絶対買ってくださるお客さんがいるんだけど、ごちそうさま投稿はないの。だけど、必ず翌シーズンも購入してくださる
でも、それが生産者にとって"とても嬉しいごちそうさま"なのかなと思う。ずっとリピート購入してくれてるってことは、うちのレンコンを気に入ってくれてるってことでしょ。すごく嬉しいことだよ

お客さまの「レンコン美味しかったよ」は購入という形で栗又さんへ伝わり、栗又さんからの「また買ってくれてありがとう」は、届いたれんこんの品質が伝える……と。それこそ本物の信頼関係ですね

栗又流ポケマル肆の作法

無言の「ごちそうさま」に気付き、応える

おいしそうな写真と共にごちそうさま投稿をくれたり、無言だけど定期的に購入してくれたり。「ごちそうさま」にもいろいろな形があるんですね

「NO RENKON, NO LIFE! 」の謎にせまる

あの、栗又さんって、実際のところどれだけ「NO RENKON, NO LIFE」なんですか


ザワッ……

ちょっとまってください! 栗又さんはすごく「NO RENKON, NO LIFE」に決まってるじゃないですか

えへ〜、どうだろうね。いやこれパロディなんだよね。「NO BIKE, NO LIFE」の(笑)

※「NO BIKE, NO LIFE」とは、バイク乗りの間での合言葉。このフレーズのコミュニティサイトやグッズなどがある。ちなみに栗又さんも生粋のバイク乗り。

ええ〜〜

いやいやいや、キャッチコピーはパロディだけど、実際レンコンは俺の人生
まず俺はお酒が好きだし、お酒があるから人生は楽しいなと思っている。でね、お酒を飲むにはお金が必要、俺にお金を運んでくれるのは何か?……そう、レンコンだ。よってレンコン=人生ということになるのだ

翌日の取材で我々は「NO RENKON, NO LIFE」グッズの数々を激写した

沁みる言葉だ……


* * *


さて、今宵のポケマル酒場は、あっという間に店じまいの時間です。

とはいえ、やっぱり皆さんのごちそうさまがあるから頑張れるっていうのが大きいもんよ

そう言い残し土浦の夜に消えていく背中を見送りながら、「れんこん農家栗又さんは、編集部や色んな食べ手さんを勇気付けていますよ」と、筆者は思ったのでした。

栗又さんの出品一覧

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文=大城実結、写真・編集=中川葵

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