いのししは臭くない!美味しい猪肉の焼肉の裏に猟師の努力と思いがあった

イノシシやシカなど、野生鳥獣いわゆる"ジビエ"のお肉には臭い・固いというイメージがありますが、ポケマルで猟師さんが販売されているジビエ肉では全くそんな話を聞きません。

コミュニティには「おいしい」というごちそうさま投稿がたくさん……!



それを眺めていたポケマルの某編集が突然言いました。

「利きイノシシ肉やろう!」

というワケで、購入したのはこちらの出品。

編集の中川から「各部位の食べ比べがしたいんですが…」と相談したら、専用出品を作ってくださいました。

#ジビエのリアルタイム出品一覧をチェック

生産者は、猪や鹿といった野生動物の解体処理施設「熱♨湯ジビエ工房 山の恵」錦織悦子さんです。

静岡県熱海市に本拠地を置いており、周辺で捕獲された有害鳥獣を“山からの恵み”として丁寧に解体・精肉し、ジビエ食材として加工販売しています。


ポケマルで猟師さんから直接買うイノシシ肉は本当においしいのか? ポケマル編集部が実際に買って食べてみました。

 

目次

 
     ここに目次が表示されます。    


温泉の街から届いた“山の幸”

届いたのはその名も「温泉いのしし」

温泉に浸かっているイノシシ……ではなくて、「温泉地のイノシシ」という意味だとか。山深い熱海・湯河原エリアでは野生鳥獣による農業被害(獣害)が後を絶たず、1年中イノシシが捕獲されているそうです。

難しいことは後にして、さっそく実食してみましょう!


今回いただくのは、バラ・モモ・ロース・肩ロース、計4種類のお肉。

お肉は冷凍で届くので、食べる1〜2時間前から袋ごと氷水につけて解凍しておきます。


やはり肉といえば焼肉。部位ごとの味の違いがわかるように味付けはシンプルに塩コショウで。よ〜〜し、利きイノシシ肉だ!!


※ここで、ジビエ肉を安心して楽しむための大切なご注意です。

牛や豚などの家畜と違い、野生動物のお肉には、E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌または寄生虫による食中毒のリスクがあります。包丁やお皿などは生肉を扱うものと加熱後のお肉を扱うものとでしっかり区別して、お肉は中心まで十分に加熱をするようにご注意くださいね。

(参考:厚生労働省>ジビエ(野生鳥獣の肉)はよく加熱して食べましょう


それでは、よく焼いたお肉を部位ごとに食べていきましょう。ここからは筆者:大城の心の声でお送りします。


①バラ→存在感バツグンの肉汁!


力強い脂身が舌の上を弾む! なるほど、これが野性味溢れる脂ということか。まろやかさを内包する存在感バツグンの肉汁が「ここにいるよ!」と言わんばかりに、口いっぱいに広がる。

利き肉参加者の多くからも「……これはすごい。普段食べている豚バラと似ているようで違う」という声が多数。


②モモ→スポーツマンにオススメしたい!


なんだこのやる気満々の赤身は!  この旨味こそ、赤身ファンに届いてほしい。飼い慣らされることなく、自らの脚で野山を踏みしめていた姿を彷彿させる食感と味に感動だ。

一方で臭みも食べにくさも一切なし。高タンパク低脂質を求めるスポーツマンにオススメしたい肉とは、イノシシ肉モモのことよ。


③ロース・肩ロース→「おいしさ」とはこの味のことだ!


脂身と赤身の美しいバランス、力強さが成り立っているのがロース・肩ロースだ。

加熱前のお肉は赤と白のコントラストがあまりにも艶やかなため、「もしかするとこのふたつは絡み合うことがなく、独立した味わいとして感じるのか?」と、一抹の不安がよぎったのも事実。

しかし、それは全くもっての杞憂!!

一口食べた瞬間、調和する両者の味わいが「これだ……おいしさとはこの味を指す言葉だった……」と、疑念を喜びに変化させた。

筆者と同じように「これだ」とため息を漏らす参加者も多数。一時、利き肉会は感動の渦に飲まれていた。


……というわけで独断と偏見で味をレポートしましたが、どのお肉も個性豊かでおもしろい! 焼き肉で「美味しい」と感じても、「楽しい、おもしろい」と思ったのは初めてでした。

大人はもちろん、子どもでも美味しくいただける「温泉いのしし」は、普段とは一風違った焼肉にもってこいです。


狩猟という命のいただき方

胃袋が満足感で満たされるのを感じながら、筆者の頭にはイノシシ肉に関する疑問が次々と浮かび上がってきました。


狩猟ってどうやるの? なんでこんなにクセもなく食べやすいの?


普段なかなか聞けないジビエ肉の疑問を、生産者さんに直接質問してみました!


——どのお肉も非常に美味しく、私の中の「イノシシ肉」観が変わりました。猪の種類や猟の方法は特別なものなのでしょうか?


いいえ、ごく一般的なニホンイノシシという種類で、くくり罠を使用して捕らえています。他に、熱海市が設置するはこ罠で捕獲した個体も受け入れています。

※くくり罠:けもの道に埋めた仕掛けを動物が踏むと、足がワイヤーでくくられる罠
※はこ罠:檻の奥に仕掛けた餌を動物が引っ張ると入り口が閉まる罠


——なんと、ごく一般的なイノシシだったのですね。なぜこんなに臭みがないのですか?


ジビエが臭いと言われる原因は主に、止め刺し後の経過時間とされています。現在、「山の恵」では止め刺し後2時間以内の個体のみ受け入れています。

※止め刺し:罠にかかった個体に銃や槍でとどめを刺すこと


——作業工程の中で、特に注意していることなどありますか?


イノシシは脂が美味しさの肝になります。そのためできるだけ脂を残すよう、丁寧に処理を行います。特に脂が乗るのは冬場の個体です。

しっかり脂を残すために、3時間以上かけて解体作業をすることもありますね。


——そのおかげでこんなに美味しくいただけるんですね。まさに努力の賜物!


狩猟では罠にかかる個体を選ぶことはできないので、精肉方法もその個体に合わせて考えています

例えば、小さい個体は骨抜きすると細切れになってしまい商品価値が下がってしまいます。その場合はあえて骨付きのスペアリブとして精肉するなどの工夫をします。


スペアリブは食べやすいようにお肉に切れ目を入れてから焼きます。ガブッとワイルドに丸かじりでいただきました!


“恵みをいただく”サイクルをこれからも

山からのいただきものとして感謝し、余すことなくいただく。野性味溢れる美味しさの裏側には、猟師さんだからこそ知っている害獣駆除の現実がありました。


——ところで、錦織さんたちはなぜ解体処理施設「山の恵」を始めたのでしょうか?


有害鳥獣として捕獲される動物たちの命を活かすためです。

熱海近郊では、野生鳥獣による農作物への被害を軽減するために、農家が資格を取って有害鳥獣を捕獲してきました。しかし、以前は正規の解体処理施設がなかったため、捕獲した野生動物の多くは埋めるなどして捨てられていたのです。

「捨てられていた命を恵みとしていただこう、そして持続していこう」というのが私たちの目的です。


——猟師自身がジビエ肉を販売する仕組みを作ったのは、命を“活かす”ためだったのですね。


罠猟師仲間が立ち上げた組織だからこそ、できることがあります。「有害鳥獣を狩猟する仕組み」と「食資源としての活用」を結びつけることで、持続可能な取り組みになると考えています。


——持続可能にするためには、ジビエ肉が並ぶ食卓をもっと増やしたいですよね。


そうですね。イノシシ肉は「とっつきにくい」「固い」「臭い」というイメージが先行していますし、都市部では手に入れる機会もなかなかありません。

私たちからの情報発信はもちろん、食べた人同士での情報共有もできるポケマルのようなサービスを通して、みなさんに 「イノシシ肉は美味しいんだよ!」ということを知ってもらいたいです。

そして、私たちの活動を続けていくにはやはり資金が必要です。みなさんに購入していただくことが、”恵みをいただく”サイクルの原動力にもなるのです。


関連出品

◎山の恵みさんから買えるジビエ肉の出品はこちら!

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この他にも、ポケマルには日本中からたくさんの農家・漁師・猟師さんが参加しています。

はじめての購入の時には、ポケマルでの販売に慣れている生産者さんを選ぶのがおすすめです。ランキングを週1回更新していますので、どうぞご活用ください!

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Writer

おゝしろ実結

writer&editor&illustrator 自転車や地域文化、芸術を専門に執筆。東西奔走、自転車に荷物を積み離島へひっそり渡航するのが生きがい。2012年に短編小説『常套的ノスタルジック』が筑波学生文学賞 大賞を受賞。2016年執筆のルポルタージュ『ワニ族の棲む混浴温泉』が宣伝会議 編集ライター講座大賞を受賞。他、自転車雑誌やグルメ系Web媒体など幅広い分野で執筆を行っている。旅のイラストなども随時発表中。公式サイトmiyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro


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