西洋ミツバチと日本ミツバチはどこが違うの?養蜂家さんに教えてもらいました

日本で流通するハチミツ。実はセイヨウミツバチの蜜とニホンミツバチの蜜の大きく2種類に分けられることをご存知でしょうか?

この2つ、実は蜜源(※)の花の種類から採蜜回数・方法などまで特徴が大きく異なります。さらに、スーパーなど一般流通の店頭に並ぶ商品の大半は、セイヨウミツバチのハチミツなんだそう……。

知っているようで知らないハチミツの基礎知識を、香川県三豊市でを育てている曽根花卉(そねかき)農園の曽根和久さんに教えてもらいました。

※蜜源:ミツバチがハチミツをつくるために集める花の蜜。日本には、こうした蜜源植物が600種類以上あるといわれています(一般社団法人日本養蜂協会調べ)

Producer

曽根和久(曽根花卉 )|香川県三豊市

曽根花卉(ソネカキ)農園の曽根和久です。現在は主に花農家として、榊、桃、桜等の花卉(枝ものの花)を生産しており、一年を通じてたくさんの花が咲いています。50年以上前から、温州みかん(マル曽みかん)を栽培するみかん農家でもあります。また、30年ほど前から、昔ながらの手作業で養蜂を行っています。


従順で育てやすいセイヨウ、繊細で逃亡癖のあるニホン

セイヨウミツバチ(以下西洋蜜蜂)ニホンミツバチ(以下日本蜜蜂)の違い。日本に住む私たちの視点では、それは「外来種」と「在来種」の違いと言っていいでしょう。

左:セイヨウミツバチ 右:二ホンミツバチ


西洋蜜蜂とは、ヨーロッパやアフリカ・中央アジアなどを原産地とする蜜蜂。19世紀半ばに飼育管理方法が広まって以来、家畜として改良され、人間とともに歩んできました。日本では明治時代にアメリカから輸入されたと言われています。

現在、スーパーなどの店頭に並んでいる商品や、加工食品の原材料に使用されているハチミツのほとんどが、西洋蜜蜂のハチミツです。


それに対して、日本蜜蜂はもともと日本列島に住んでいた在来種。西洋蜜蜂に比べて飼育が難しく採蜜量も少ないため、商業的に不向きと言われています。


曽根さんへのヒアリングをもとに、2つの違いを簡単にまとめてみました。


セイヨウミツバチ
二ホンミツバチ
蜜源の花
特定の花
複数の花
採蜜回数
年に2回度程度
年に1回度程度
採蜜量
多く採りやすい
西洋の5%程度と少ない
価格
安価
高価


——こう見ると、日本蜜蜂の飼育が非常に難しく感じますね


そうなんです。ただでさえ採蜜回数や量が少ないうえに、日本蜜蜂には巣の中の環境が悪化すると別の棲家へ移動する「逃亡癖」があります。

気温など外的環境に左右されやすく、特にここ数年は飼うのにとても苦戦しています


——それは、なぜでしょうか?


暑さが一因だと思います。このあたりは以前から全国的に日照時間が長いことで知られています。それに輪をかけるように、近年は猛暑の夏が多いですよね。夏になると強い日差しや高温のせいで巣が落ちてしまったり、ミツバチが嫌がって巣から逃げてしまうんです。


育て方は?味わいは?

——飼育や採蜜方法も全然違うんでしょうか?


はい。

西洋蜜蜂の場合は、木製の巣箱の中に巣枠(すわく)と呼ばれる板のようなものを敷き詰めます。

巣枠には、人工的にミツロウでハチの巣の形をした巣礎(すそ)を貼ります。ここにミツバチたちは体内から分泌されるミツロウを使って、巣をつくっていきます。前段階の手間が随分かかりますね。


——採取するときは……


巣枠を取り出して、手回しの遠心分離機にかけます。その後、フィルターで不純物を取り除き、そのまま手作業で1つずつ瓶詰めしています。


西洋蜜蜂用の巣箱


取り出した巣枠


巣枠を遠心分離機にかけるとハチミツが滴り落ちる仕組みになっている


——日本蜜蜂の場合は?


日本蜜蜂の巣箱は重箱式と呼ばれ、木の箱が3段重なった状態で飼育します。西洋蜜蜂とは違って、ハチたちが巣箱の中を飛び回り、上段の箱からゼロから巣をつくるんです。

採取するときは上段の箱を取り外し、その後圧搾機にかけます。


日本蜜蜂を採取するときは重箱式の一番上の箱を取り外す


箱を開けると中には……


断面はこんな感じ。ここからたっぷりのハチミツが採れる。


——味に違いは?


西洋蜜蜂は日本蜜蜂と比べて花粉があまり入らないので、甘みと香りが強めですね。

一方の日本蜜蜂 は、複数の花の蜜がブレンドされていて、花粉も多く含んでいます。そのため、濃厚で熟成されたような味、やわらかい酸味などが感じられると思います。


——曽根さんのハチミツは“自然そのまま”である点も特徴ですよね


どちらの種類のハチミツもフィルターでゴミを取り除いて濃厚なまま瓶詰めし、すぐに冷蔵しています。熱処理などの加工を一切施していないので、ハチミツ本来の風味や栄養分、酵素が失われません。

希少な自然そのままの国産ハチミツです。市場にはなかなか流通していないと思います。生産者と直結したインターネットだからこそ、販売できるんです。


フィルターでろ過し、不純物を除去。100%自然のまま瓶詰めしているのも、曽根花卉農園ならでは!


「苦労ばっかり」でも、衰えない探究心

西洋蜜蜂日本蜜蜂 。2つの違いを知れば知るほど、日本蜜蜂のハチミツがいかに希少なのかがわかってきます。そんな中、曽根さんは30年以上前から、小規模農家ならではの手作業による生産を地道に続けています。


——やはり苦労は多いですか?


もう、苦労ばっかりですよ(笑)。特に日本蜜蜂の場合は何度飼育してもわからないことばかりで。

通常、ハチの群は1つから2つ、2つから4つ、といった具合に分蜂(※)することで増やしていけるんですが、日本蜜蜂はどうもうまくいかず……。

5年ほど前まで30〜40群飼っていましたが、今は5群くらいに減ってしまいました。近所の人たちも苦戦しているようです。

※新しい女王蜂が生まれたあと、その母親の女王蜂が働き蜂の約半数を連れて巣を飛び出し、新たな場所に巣を作ること


——それは大変ですね……。


でも、近くに600群ほど飼っている“大先生”がいましてね。色々教えてもらいながら、なんとか細々と続けています。どうも養蜂家には飼育のノウハウなどを教えてくれない人が多いらしいので、師匠の存在はとてもありがたいですね。

今年も採蜜時期を変えるなど、試験的にいろんなことを試したいと思っています。日々、試行錯誤ですね。


——そんな中で、なぜ曽根さんは2種類のハチミツにこだわり続けるんですか?


だって、おいしいものを食べてもらいたいじゃないですか。


量産できない分、市場に出回ることは少ない。それでも「おいしい」と喜んでくれるお客さんの存在が曽根さんの原動力なのだとか。決して多くを語ることない曽根さんの言葉は、なんとも力強いものでした。

近年は耕作放棄地や鳥獣被害が増え、生産者の高齢化も止まらない。養蜂場を取り巻く環境も決してやさしいものではありません。


何度やってもうまくいかず、苦労ばっかりですよ。


そんな言葉と似ても似つかないような、明るい笑顔を浮かべる曽根さん。その裏側には何十年経っても色褪せない食への探究心と、蜜蜂たちへの愛情が秘められていました。

曽根さんは今日も個性豊かな“彼ら”と、真正面から向き合っています。


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Writer

近藤快

化粧品専門誌の記者として8年勤務。東日本大震災後、業界紙・東北復興新聞にプロボノで参加、その後専属に。他に、企業のCSR・CSV、一次産業、地方創生などのテーマで取材〜執筆している。

文=ポケマル編集部

※この記事は2018年2月18日に公開した記事を加筆修正したものです。

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