しらすとシラウオの"違い探し"。沖漬けの食べ比べをたしなんでみた

間違い探しを歌った流行りのJ-POPを耳にするたび、筆者は思うのです。間違い探しというものは、どちらか片方が間違いで片方が正解なのではなく、互いの違いを探すだけなのでは? と。

釜揚げされた細長くて小さい魚たちをご飯にかけて食べていた時も、確かこの音楽が流れていたはずです。その時筆者が食べていた魚の名前は「しらす」でしたが、似たような見た目の「シラウオ」という魚もいたはずです。

恐らく両者は違う生き物。どちらかが間違いではなく、どちらも正解で、どちらもおいしいはず。しかしながら、両者の違いを能動的に知ろうとする機会はなく、いつしか知ろうと思った事実さえ頭の片隅に残るのみとなったのでした。この文字列を目にするその時までは——

『生しらすの沖漬け&シラウオの沖漬けセット』

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〜この記事は、あまり魚類に詳しくないが酒のアテは人一倍に好きな筆者が、しらすとシラウオの沖漬けによって両者の違いを知っていくレポートである〜

目次

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しらすとシラウオの違いがわからんぞ

そこには千葉県の伊藤友門さんから届いた小包と、その到着と同時に前のめりになって開封する筆者がいました。

冷凍便なので早急に開封しなければなりませんが、それ以上に

「早くしらす・シラウオを見てみたい、食べ比べてみたい、なんなら早く酒を飲みたい」

という気持ちが高まってしまったからです。

さあ出でよ、しらすとシラウオ……!

……あれ?

なぜ? なぜみんなおんなじ……なのか?

封を開けてしまえば一目瞭然にしらすとシラウオの違いが分かり、なんなら次の酒場でうんちくたれることができるんだろうなどと甘く構えていたのですが。

箱の中にあったのは、ぱっと見同じに見える6つのパッケージでした。

角度を変えてもぱっと見同じ

瞬時に脳裏をよぎったのは「私、違う商品を注文してしまった?」という仮説。すぐにポケマルアプリから注文履歴を確認してみますが、確かにしらす2パックにシラウオ4パック入りの「食べ比べセット」をお願いしていました。

筆者がパニックになりかけたその時、心の中にあの歌声が聴こえてきた気がしました。

落ち着いて、改めてラベルをよく確認してみましょう。書いてあることを声に出して読むと良いと習ったことがあります。

四角いラベルの左に「生しらす」、右に「志ら魚」、つまりシラウオのことでしょうな。そして右には両者のイラストが描かれており……あ、もしや?

ぬあ〜〜〜っ!

丸です!パッケージに描かれている黒丸の位置にご注目ください!

数えたら確かに、しらす2パック、シラウオ4パックが封入されてありました。ああ〜……焦った。

まさか間違い探しで楽しませてくださるとは、伊藤さんったら〜、も〜うふふ。

初めて注文される方は筆者と同じように驚かれるかもしれませんが、どうか落ち着いて。パッケージをよく見比べてみてくださいね。

比べてみるよ

さて、ほっと胸をなで下ろしたところで、両者を比べていきましょう。

パックに入れた状態での見た目

左:しらす、右:シラウオ

沖漬けされているため、今回は色味での違いを確認することはできません。

ひっくり返してみます。

こちらも魚同士が密接に詰め込まれており、何が何だか分かりませんでした。しかし蓋を取ると、様子が徐々に変わってきます。

もしかすると左(しらす)の方が細かい……かな?

さらに近づいて見てみましょう。まずはシラスから。

言われてみれば釜揚げしらすと似た雰囲気を感じます。どちらかと言えば見慣れている方。

続いてこちらがシラウオ。

確かに前者とは様子が違う気がします。なんだかニョロっとした雰囲気ですね。1匹あたりの大きさも若干大きいような気が。


パックから取り出してみた

次にパックからそれぞれ取り出してみました。ここで初めてしらすとシラウオの明らかな違いを知ることとなったのです。

\ババーン!/

なんだこのスケールの違いは! ここでやっと両者の決定的な違いが白日の下にさらされました。

もちろん小さい方がしらす、大きい方がシラウオです。試しにサイズを測ってみると……

しらす(上)が30mm、シラウオ(下)が65mm。シラウオはしらすの倍以上もの大きさです!!

しらすと比べて、シラウオは不思議な形をしています。

顔は細いものの、胴体の中程で太くなり、尾に向かってまた細くなる。魚類……というよりも、ヘビやうつぼのような形に似ている気がします。

見つめれば見つめるほど、しらすとシラウオは似て非なる生き物ということを突きつけられるようです。

さて、沖漬けを食べ比べます

お待ちかねのテイスティングです。まずはしらすから。

口に含んだ瞬間、筆者は咄嗟に周囲を見渡しました。「なぜ、酒を用意してなかったのだ」答えは「仕事中だから」というシンプルなものですが、コイツは本能的に上戸の心に訴えかけてくるお味をしております。 奥深く豊潤な醤油とみりんの味わいに加えて、生しらすらしい苦みがアクセントに。ああ、きっとあなたは度数低めの甘酸っぱい春酒が最適解なのでしょうね。クリームチーズを添えて交互に頂けば、味の緩急を嗜みながら夜通し頂けるのでしょう。

↑筆者、心の感想


お次はシラウオをいただきます。

口に含んだ瞬間、またも筆者は咄嗟に周囲を見渡しました。「なぜ、ここにホカホカ白米がないのだ」こちらも仕事中だからしょうがないのですが、コイツもまた本能的にほかほか白米を欲してしまう罪な味をしているのです。同じような調味料に漬け込んだとはいえ、しらすとはかなり異なるシラウオの沖漬け。プツンという柔らかな食感とともに広がるのは、調味料をさらに包み込むまろやかなお味。これはシラウオ自身の味なのでしょうか?——願わくは白米の上にドドッと乗せ、無我夢中でかき込みたい。半分を食べ終わった頃に、アツアツのお出汁をかけてお茶漬け風にして……。

↑筆者、心の感想2

矢継ぎ早に言葉が溢れ出ましたがそれはさておき、どちらもあれよあれよと箸が進んでしまう旨さでした。

最後に図鑑で調べてみた

"小さい魚"というふんわりとしたジャンルでくくっていたしらす&シラウオ。より詳しく調べてみると、とっても奥深い生物でした。

「しらす」とは

「しらす」は「カタクチイワシ」や「マイワシ」などのイワシ類の稚魚で、市場に最も多く出回るのはカタクチイワシ(ニシン目カタクチイワシ科カタクチイワシ属)。日本各地の沿岸が産卵場で産卵期は地域によって異なるため、しらすの旬も産地ごとに異なる。しらすを塩ゆでしたものを「釜揚げしらす」、それを軽く乾燥させたものが「しらす干し」、更に乾燥させたものが「ちりめんじゃこ」と呼ばれる。

「シラウオ」とは

「シラウオ」はサケ目シラウオ科の魚。全国の汽水域で生きるものは「シラウオ」、青森から宮崎の太平洋沿岸の海水域で生きるものは「イシカワシラウオ」で、食用となる場合にはこの2種は特に区別されず流通する。イシカワシラウオは尾部の付け根上下にほくろのような黒い模様がある。また、有明海流入河川の感潮域で生きる「アリアケシラウオ」「アリアケヒメシラウオ」という種類もあり共に絶滅危惧ⅠA類に指定されている。

参考資料:『日本魚類館』小学館,2018年、シラスは何の魚かご存知ですか?|マルハニチロ 海といのちの未来をつくる日本のレッドデータ検索システム


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酒を飲みたい、美味しいアテを食べたい、うんちくたれたいという欲にまみれて出港した、しらす・シラウオ違い探しの旅でしたが、ようやく寄港地を見つけたようです。

仕事終わりは待望のお酒と共に

もちろん生のしらすやシラウオも違った美味しさがありますが、沖漬けひとつあれば瞬時に家が素敵な酒場になってしまうのも魅力的。ああ、久しく見ていない赤提灯の光が見えてきた気がします。

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文・写真=大城実結 編集=中川葵

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