白いキャンバスに、少しずつ色を重ねて――能登でゼロから始めた大山さん夫妻のパプリカとトマト
石川県・能登町・日本海に面した集落で、大山具範(とものり)さん・直美(なおみ)さんご夫妻は夫婦二人三脚でパプリカやトマトを育てています。お二人は香川県のご出身。ご主人の具範さんはブランディングやマーケティング、直美さんは医療事務のお仕事をされていました。まったく畑違いの世界から、なぜ能登へ。そして2年半前の能登半島での震災をどう乗り越え、今どんな想いで野菜を育てていらっしゃるのか。じっくりお話を伺いました。「白いキャンバスのような場所」を選んで-お二人はもともと農業とは縁のないお仕事をされていたそうですね。能登に来られるまでの経緯を教えてください。具範さん:もともと僕はラグジュアリーブランドのブランディングやマーケティングをしていたんですが、このまま海外のものを扱っていても限界がくるなと感じていました。そこから日本の「食」に関心が向いていったんです。ちょうどこれからは女性農業者の時代だという思いもあって、妻が認定農業者になろうという話になりました。直美さん:正直、最初はびっくりしました(笑)。当時は大阪の難波という都会のど真ん中に住んでいたんです。でも実家が畑をしていたので、なじみがないわけではありませんでした。一人でこつこつ作業するのも好きだったので、反対はしませんでした。-そこから能登に辿り着くまでには、どんな道のりが?具範さん:神戸で 1 年間農業研修を終え、しばらく横浜に住んだ時期もありました。ただ、農地を借りようとしてもなかなか思うようにいかず、模索していたときに出会ったのが能登でした。元々石川にはとてもいいイメージを持っていて、能登は良い意味でどんな色にも染まっていない、いわば「白いキャンバス」のような場所だと感じたんです。家、畑、水など条件のいい場所を探し歩くなかで、最終的にご縁のあった地域の方が「ここに住みなさい」と声をかけてくださいました。その方が、困ったことあれば彼らを頼りなさいと指名されたのが今お世話になってる農協の役員の方で、色々な方に私たちのことを紹介してくださったんです。本当に運が良かったとしか言いようがありません。-移住されたのが2018年、今から8年前だそうですね。まさにゼロからのスタートだったと伺いました。具範さん:本当にゼロでした。道具もないし、ビニールハウスも自分たちで建てました。最初の5年は休みなし。よくやったなと今でも思います(笑)。 まず地域で昔から作られていたトマトとキュウリから始めました。いきなり自分のやりたいことだけをやってしまうと、地域とのコミュニケーションがうまくいかない。まずは信頼関係を築くところからはじめました。 トマトの3倍難しいと言われる、パプリカへのこだわり -今は看板商品としてパプリカも育てていらっしゃいますね。具範さん:パプリカは「トマトの3倍難しい」と言われているんです。出荷できる200gほどの大きさになるまで、基本的に無傷でなければいけない。少しでも傷がつくとそこから傷んでしまう。栽培期間も長いので、その間に病気や虫のトラブルが起きると、なかなか商品にならないんです。 最初の年は失敗しました。新しく建てたハウスで、土がどんな状態かも分からないまま挑戦したので、木がだんだんと枯れていってしまったんです。 -そこからどうやって美味しいパプリカが育つようになったんですか?具範さん:とにかく土づくりです。地域で仲の良い能登牛の生産者から堆肥を分けてもらって、たっぷり土に入れました。全国的に見ても、化学肥料に頼って堆肥をあまり入れない農業が増えているんですが、僕らは逆に、昔ながらのやり方に戻ったんです。それでようやく、パプリカがちゃんと育つようになりました。 彩りが豊かで見た目も華やかなので、美容や健康を意識する女性のお客様にもよく手に取っていただいています。4kgの箱をシーズンに20回も頼んでくださる方もいて、「何に使ってるんだろう?」と夫婦で話しています(笑)。冷凍保存もできるので、余ったらカットして冷凍して、少しずつ楽しんでいただけたら嬉しいです。 -トマトの方は、どんなこだわりが?直美さん:就農したての頃は、見た目を優先して作っていました。でも3年くらい経ってから、体にいい、甘くて食べたら元気の出るトマトを作りたいと思うようになりました。毎日ハウスに入って、葉っぱの色を見て、水が足りないのか肥料が足りないのか、病気のサインはないか、丁寧に観察して気になるところはなるべく早めに改善するようにしています。輸送に耐えられる青いうちに収穫するトマトが世の中には多いんですが、私たちはギリギリまで赤く熟してから収穫しています。青いうちに収穫して追熟させたトマトは、色づいても味がのりにくいんです。木の上でしっかり熟すのを待ってから収穫するからこそ、甘みも旨みもしっかり感じられます。このやり方では市場には出せませんが、直売所やポケットマルシェのようにお客様に直接お届けできる方法だからこそ、本当に美味しいタイミングで収穫ができます。2年半前の地震、そして農業を続ける決意 -2年半前の能登地震の時は、本当に大変な状況だったと伺いました。具範さん:地震の直後は津波警報が出て、海から自宅まで10メートルほどしかない場所に住んでいたので、集落の方に「逃げるぞ」と声をかけていただきました。幸い家は無事だったんですが、集落は大きな被害を受けました。一番困ったのは、農業用水が完全に止まってしまったことです。ちょうど苗を育てる時期でしたが、そんな時にふと、家に古い井戸があったことを思い出しました。コンクリートの分厚い蓋を開けたら、水面がキラッと光っていて、石川県の方に水質検査をお願いしたら、道路もまともに通れない状況の中、すぐに駆けつけて調べてくださいました。検査の結果、問題ないと分かって、その水で苗を育てることができました。 -本当に薄氷を踏むような状況だったんですね。その後、能登を離れることも考えられたと伺いました。具範さん:僕は、妻をここに連れてきた責任もあるので、もっと環境のいいところに移った方がいいんじゃないかとも思ったんです。ちょうどその時、NHKと農業新聞の取材があって。妻がそこで「私は農業を続けます」と、その場で宣言してしまったんです。直美さん:自分よりもっと大変な状況の方、家をなくした方もいる中で、「直美ちゃんのトマトを待ってるよ」と言ってくださる方がいたんです。仮設住宅に移られた方も、また食べたいと言ってくださって。それを聞いたら、ここで頑張って畑をしようという気持ちになりました。具範さん:ゼロどころかマイナスから頑張ってきたことを、簡単に投げ出すという考えにはなれませんでした。宣言してしまった以上、もう逃げられないですしね(笑)。 -炊き出しの支援などもされていたそうですね。具範さん:何か自分たちにもできることはないかと考え、炊き出しなどで能登に来てくれていたボランティアの方々に食材を提供することにしました。SNSで呼びかけて、割り箸やお椀などの資材も自分たちで調達していたんですが、その資金を作るために始めたのがポケットマルシェでの販売だったんです。物流も混乱していて、既存の取引先への出荷が難しくなっていたタイミングでした。発送が遅れることもお伝えした上で出品していたんですが、それでも温かいメッセージやコメントをたくさんいただきました。本当に励みになりました。これからの夢は、農業を「学べる場所」をつくること -今後、どんなことをしていきたいと考えていらっしゃいますか?具範さん:農業の技術は、なかなか他の人に伝えられないことが多いんです。全くの他人に無償で教えるのはちょっと、という空気があったりして。でも僕は毒物劇物取扱の資格も持っていて、農薬をできるだけ減らす方法なども勉強してきたので、基本的に全部オープンにしています。おかげで、色々な方が習いに来てくださるようになりました。 近々の目標は、農業を学べる場所を作ることです。担い手不足はどこの地域でも同じ課題ですから。直美さん:私も同じ気持ちです。近くで学べる場所があったらいいなと思っています。 -地域の風景を守っていくという意味でも、大切な取り組みですね。具範さん:地域には耕作放棄地も増えていて、イノシシもかなり増えています。誰かが技術を受け継いで、この土地でじっくり農業に取り組んでくれる人が増えたら、里山らしい景観も守っていけると思っています。-新しい取り組みとして、さつまいもの「シルクスイート」も始められたそうですね。直美さん:総務省の「ローカル 10,000プロジェクト」(地域経済循環創造事業交付金)に採択いただいた事業を地場の水産加工会社さんと一緒に取り組んでいくことになりました。実は、おおやまファームは、石川県内で唯一のシルクスイート苗の許諾契約農家です。その苗から育てたさつまいもを使って、加工品を作っていく計画を進めています。耕作放棄地の解消にもつなげていきたいので、地域の他の生産者さんにも協力してもらいながら、いずれは能登発のさつまいもブランドとして育てていけたらと考えています。うまくいけば、年明け以降に干し芋などの加工品としてお届けできる予定です。楽しみに待っていただけたら嬉しいです。ポケマルの皆さまへ 具範さん:ポケットマルシェのお客様は、本当にいい方ばかりなんです。急かされることもなく、「そちらのペースでいいですよ」と言ってくださる方が多くて。だからこそ、自分たちのペースで、丁寧に野菜と向き合うことができています。お客様のお人柄に、私たちが支えられていると感じています。 まだまだ道半ばですが、これから旬を迎えるパプリカやさつまいもを、ぜひ一度食べてみてください。土からこだわって、時間をかけて育てた能登の野菜の味を感じていただけたら嬉しいです。インタビューを終えて取材を通じて印象に残ったのは、具範さんの決断力と行動力でした。ブランディングの仕事から一転、右も左も分からない土地に飛び込む思い切りの良さや、ゼロから立ち上げてきた8年間の歩みを聞くほどに、その行動力と意志の強さが伺えます。震災後のエピソードも「もう逃げられない」と語る姿には、覚悟だけでなく、地域への責任感がにじんでいたように思います。一方で、その足元をずっと支えてきたのが、直美さんのこつこつとした積み重ねです。毎日野菜を観察し、小さな変化を見逃さない。そうした地道な作業の先に、赤く熟すギリギリまで待って収穫するという、今の美味しさへのこだわりが生まれています。「私は農業を続けます」という一言も、勢いだけの言葉ではなく、能登での暮らしや農業への真摯な想いを感じました。「白いキャンバス」だと感じて飛び込んだ能登の地に、8年かけて少しずつ色を重ねてきた大山さんご夫妻。震災を経てもなお筆を置かなかったその手から、これからどんな色が描かれるのでしょうか。お二人の作品とも言えるお野菜を、ぜひ食卓で味わってみてください。<おすすめ商品のご紹介>朝収穫したものをその日のうちに発送する、鮮度が自慢のパプリカとトマト。特にパプリカは、赤・黄それぞれの色合いも選べる2kg・4kgでの販売です。彩りよく、ラタトゥイユやガスパチョなど、これからの季節にぴったりの料理にもおすすめ。抗酸化作用が高く、美容や健康を意識する方にもぜひ味わっていただきたい一品です。今後は「シルクスイート」や加工した干し芋の展開も予定していますので、続報をお楽しみに。>大山さんの生産者ページはこちら<能登生産者さんの商品はこちら>重さ5㎏を超え!カツオは大きいほど旨い!獲れたて新鮮大判生カツオ刺身鉄分たっぷりFeメンチカツ塩麹漬け旬の魚のチーズ焼き能登重さ5kg超えカツオと地獲れ魚の欲張りセット重さ5kg超えカツオと地獲れ魚の欲張りセット重さ5kg超えカツオと地獲れ魚の欲張りセット重さ5kg超えカツオと地獲れ魚の欲張りセット\夏の能登を楽しむ!ただいま特集中/>能登応援キャンペーン
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