ふりかけなどに入っている小さな魚「ちりめんじゃこ」。その正体を、あなたはご存知でしょうか?
ちりめんはカタクチイワシの稚魚ですが、もう少し大きくなってから漁獲・乾燥させたものは「かえり」「いりこ」などの名前で呼ばれているのです。
大きさによって呼び名が変わる——私にそれを教えてくれたのは、広島県の石野智恵さんが販売しているこちらの商品でした。
稚魚の成長度合いによって見た目も味も違うとのことで、取り寄せて比べてみることにしました。
磯の香り、到着
ちりめん&かえりのセットが、筆者の住む山梨の自宅に届きました。山梨は言わずと知れた、海なし県。
箱を開ける前から磯の香りがぷーんと漂って来て、久々に海の気配を感じることができました。
中にはちりめんカップ・かえりカップ・レシピ付きパンフレットが入っています。
左端の袋入りのものは「記事が書きやすいように」と石野さんのご好意で入れてくださったもの
カップはちりめん180g、かえり160gです。
商品説明にグラムで表示されていたのを見た時には実際の量は想像がつきませんでしたが、想像以上に量があります。
手のひらにひと盛りのせて、これで10g。
1カップにはこの16〜18倍の量が入っているということに。軽くても結構な量がありますね。
水気は一切なく、パラパラに乾燥しています。
こんなにたくさん、どうやって食べようか……同封レシピを見ながら、ワクワクで胸が膨らみます。
かえりとちりめん、何が違う?
食べる前に、まずはちりめんとかえりの違いを観察してみましょう。
見た目はちりめんの方が白く、小さく、弱々しい感じ。かえりはちょっと銀色で、大きく、しっかりとした印象です。
10gずつお皿に取り、5匹ずつ選抜してみました。
左:かえり、右:ちりめん
同じちりめん、同じかえりの中にもさまざまなサイズ・形のものがあります。なんだか、多様性溢れる海の中をのぞいている気分。
稚魚の呼び名は、同封のパンフレットによるとこんな風に分けられているそうです。
- ちりめん:3.5cm以下。1.5cm未満のものは極小
- かえり:3.5cm〜4.5cm
- いりこ:5〜8cm
ただし、これはあくまでも石野さんが住む地域での分類。他の地域では呼び名などが異なる場合もあるとのことですので、ご注意くださいね。
試しに長さを計ってみようと、、かえり2尾・ちりめん3尾を取り出して、並べてみました。
おやおや、上の2尾はかえりの中からとったのですが、大きめのものを選んでようやくぴったり3.5cmという感じ。パンフレットにあった基準値と合いませんね。
そこで改めて商品説明文を読んでみると、
ちりめんのおなかが銀色になり煮干しになる準備を始めたときをかえりといいます
と書かれていました。なるほど、一概に大きさだけでは比べられないということですね。
体のサイズはちりめんでも、発育の度合いはかえり。なかなか難しいお年頃のようです。
そういえば、事前に「かえりの旬は本当はお盆ころなので、今の時期(編集注:商品購入は7月上旬頃)は少し小さめのかえりになります。その時々のかえりを楽しんでもらえたら」という旨のメッセージもいただいていました。
旨みたっぷり「し」の字の子たち
「記事の参考のために」と、石野さんが同梱してくださった、ちょっと大きめのかえりたちがこちら。
113gでも結構なボリューム
その中には、いりこになる寸前の大かえりや、
6cm近くあるいりこまで。
今回観察した感じだと、カタクチイワシは「極小ちりめん→小ちりめん→ちりめん→小かえり(大ちりめん)→かえり→大かえり(小いりこ)→いりこ」という成長を遂げていくように思えます。
下3つがちりめん、真ん中3つがかえり、一番上がいりこ
一口に「ちりめん」「かえり」といっても、大きさだけで分類できないものがあることは、驚きの発見でした。
ちなみに……長さを計るため、できるだけまっすぐにのびたものを探すのにひと苦労。
だいたいが「し」の字のように腰が曲がった子たちで、これは新鮮なうちにムラなく茹でられた証拠なのだそうです。どおりでそのまま食べても生臭くないわけですね。
ちりめんはなんだか給食を思い出す懐かしい味で、適度に塩気があります。かえりも同じような風味ではありますが、ちりめんよりも魚の旨みを感じます。大かえり(いりこ)になると、ちょっと苦味が出てきます。
例えるならば、鮭ひと切れの真ん中部分がちりめんで、端っこの脂の乗った部分がかえり……という感じでしょうか。
大かえりの袋の中に、小さなイカが
確かにそのまま食べるなら、かえりのサイズがちょうどいいいかもしれません。「おやついりこ」と言われるのもわかります。
ちりめん&かえり、どう食べる?
大量のちりめん&かえりを前にして、ここで大活躍するのが同封のレシピ付きパンフレットです。使い勝手がよさそうで、比較的日持ちのいい常備菜がたくさん載っています。
それらを参考に、まずは4品つくりおきし、さまざまな食べ方で楽しみました。
1.ちりめん酢もどし
ちりめんを空炒りして、一晩米酢に漬けておくだけ。
漬けられたちりめんは、そのままよりもふっくらして、酢の風味を帯びています。
輪切りにして塩もみしたキュウリと和えて酢の物に。
蒸し暑く食欲がわかない時にもさっぱりと食べられそう。
2.焼きちりめん
ごま油でちりめんをカリカリになるまで炒めます。
これをフライドオニオンのように、生野菜のサラダにかけると、
良い食感&風味が追加され、しっかり海鮮サラダになりました。
3.かえりニラダレ
ごま油で炒ったかえりを刻んだニラ・唐辛子と混ぜ、しょうゆ・みりんと合わせます。ごま油とニラ、醤油の香りがたまりません。
一晩おいたら豆腐にかけたり、
オムレツにかけたり。
このニラだれは、食欲増進剤です。
4.かえり白ネギオイル
米油でかえりをカリッと炒って、唐辛子とみじん切りのにんにく・白ネギを投入。ビンに移して、ひたひたに米油を注ぎ、一晩浸けておきます。
このかえりは「瀬戸内のアンチョビ」とでも名付けましょうか。かえり×にんにく×白ネギの香ばしさトリプルパンチは、食べる前からそのおいしさを確信。
これさえあれば、茹でたパスタに和えるだけで簡単和風ペペロンチーノが完成です。見た目は地味ですが、食べると心が華やぎます。
このかえり白ネギオイルを活用して作る「大人のポテサラ」は、想像を絶するポテサラに。
じゃがいもを潰して白ネギオイルと混ぜるだけの簡単絶品料理です。
もしも私が居酒屋オーナーだったなら、絶対にこれをお通しで出して、一瞬にしてお客さんの胃袋を掴むことでしょう。
ご飯のお供、おやつにも
ご飯のお供にもなるし、おやつにもなる。万能すぎる食材に、メロメロです。
1.ちりめんピーマン佃煮
醤油とみりんとだし汁でじっくり煮詰めた佃煮。ちょっと辛くしすぎたけれど、ご飯にのせて、卵を割って……ああもうご飯が足りません。
2.かえりアーモンド
よくおつまみコーナーで見かける組み合わせ。甘めに味付けしたら、おやつにもなっちゃうかえりです。
カリポリな食感に、アーモンドの風味がたまりません。
3.ちりめんネギ海苔チーズトースト
石野さんへのごちそうさま投稿を見ていて、これだけはやらなければと思っていた「ちりめんトースト」。
食べ手さんによって具材はさまざまですが、私は食パンに海苔、チーズ、ネギ、ちりめんの順にのせて焼いてみました。
海苔によってちりめんにはない磯の風味が追加され、チーズが全てをまとめあげているような……各素材が、食パンの上で一体化します。
4.かえりバタートースト
いろいろ食べ方を調べていたら、「煮干しバター」という文字が目に入ってきました。
それは煮干しの粉末をバターに混ぜ込んだものでしたが、「煮干しバターがあるならば、かえりバターもありなのでは?」 と思い、焼いた食パンにバターを塗り、くだいたかえりをパラパラと……。
うん、合う合う。ちりめんトーストもそうですが、ちりめんは乳製品との相性も抜群です。
その時々の味を楽しもう
「カタクチイワシ」として一括りにしてしまえばそれまでですが、成長度合いによって味の違いを感じられたり、食べ方を変えられるのは面白いですね。
ちりめん&かえりの賞味期限は冷蔵で2ヶ月ですが、石野さんによると、これから暑くなる季節、冷蔵庫の出し入れはカビる原因にもなるのだそう……。
長く楽しむのであれば、「届いたら2週間分くらい残して、あとは冷凍するのがおすすめ」とのことです。
どんな料理にも合うし、お手軽に毎日取り入れられる……そんな魅力を知ってしまった私には、ちりめんとかえりが宝の山に見えてきました。
最初は大量でどうしようかと思いましたが、毎日食べても飽きないので意外と早く食べきってしまいそうです。
みなさんにもこの宝物を、見つけてもらえますように。
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文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵