初めてでもなんとかできた北海道の秋鮭の捌き方。本物の親子丼を食べるために…

ぎょ?


ぎょぎょ?


見たい? 出しちゃうよ……?


ぎょぎょぎょーーー!!!


ポケマルインターンの尾形です。

みなさんは、丸1匹の鮭を見たことがありますか? 私はつい最近まで、スーパーに売っている切り身の形でしか見た事がありませんでした。

だから、元の鮭がどのくらいの大きさなのか、どのくらいの重さなのか、どんな顔をしているのか……何も知らずに食べていたんです。


そんな私がポケマルオフィスで作業をしていたら、1匹の鮭が北海道からやってきました。

きたからには、残された選択肢はただ1つ。

捌く。


しかし、都会生まれ都会育ち、現在も実家に住んでいる筆者は、恥ずかしながら魚を捌いた事がありません。そこで、他のポケマルスタッフに出したSOS。

「誰か、鮭捌ける人きて〜〜〜!」

筆者の呼びかけに集まってきたポケマル応援隊。しかし、「捌いた事? ないですよ」「あ、アジくらいなら……」と、まさかの鮭を捌ける人がいない問題が発生しました。


じーっとこちらを見つめてくる鮭。このままじゃ冷蔵庫にも入らない。


私たちは決意しました。よし、このメンバーでなんとか鮭を捌こうではないか……!!

今回は漁師の吉岡さんが内臓も処理してから発送してくれたし、切るだけならできるはず。

サーモンピンクとはこのことね。


初心者4人は、果たして鮭をおいしくいただくことができたのでしょうか?

誰が最初に入刀するか、ジャンケンで取り合い。やる気だけは十分なんです。


 

目次

 
     ここに目次が表示されます。    


みんなで捌けば怖くない! 鮭捌きリレーのスタートだ!

鮭はこんな状態で届きます。重さは、「よいしょ」と言わなくても持てるくらいの重さです。女性でも楽々持てます。


今回鮭を送ってくださった生産者、吉岡奨悟さんからの注意点は、「川に上る直前の鮭なので、身はあまりおいしくないかもしれません」ということ。


鮭は「母川回帰」といって、産卵期になると自分が生まれた川に戻ってくるという習性があります。つまり川に上る直前は、産卵直前。身の栄養が卵にとられてしまう時期なのです。

普段買い物していて、いつの時期に獲られた鮭かなんて、考えた事もありませんでした。それを考えるきっかけになっただけでも、もう満足かもしれません。

いや、しかし目の前には鮭があります。満足するにはまだ早いのです。


1.まずはイクラを漬けよう

メス鮭なので卵持ちですが、内臓処理と共に筋子をお腹から出し、筋をとった状態で送られてきたので、私たちがすべきは調味料を合わせてイクラを漬けるだけ。

まさにイクラの宝石箱。川を上る直前の鮭だったからか、一粒が大きい。


しかし、鮭はどれくらいの重さをお腹に抱えて泳いでいるのだろう……そんな好奇心から、漬ける前に重さを量ってみました。


582g……

ということは……


ペットボトル一本分!? これをもって泳いでいるなんて、メス鮭も力強いんですね。

せっかくなので、漬ける前の生イクラも試食。漬けてあるものしか食べたことがなかったので、もともと味がついているのかと思いきや……


ほとんど味はしません。ほんのりと、卵の黄身に似た甘みを感じます。

インターン金澤のなんともいえぬ顔。「ちょっと、脂っぽいですね」


今回私たちが使った調味料は、醤油大さじ4、酒大さじ2、みりん小さじ2。


漬ける容器にはペットボトルを選びました。これならボールで保存するより、冷蔵庫のスペースをとらなくて済みますし、注ぐようにイクラを取り分けられるので衛生的です!。

少しだけ入りきりませんでした。


スーパーで買う物だと思っていたイクラ。まさか自分たちで味付けする日が来るなんて……。感慨にふけりつつ、「ちゃんと味がしみこみますように」とそのまましばらく置いておきます。


2.胸びれのところから頭を切り落とす

イクラを漬け終えたところで、ついに鮭へ入刀します。

とはいえ、捌き方が全く分からないので、「鮭 捌き方」で検索。youtubeでみつけたさばけるチャンネルさまの「鮭のさばき方」動画に大変お世話になりました……!


緊張のトップバッターは日野原。初めての鮭を前に、少し腰が引け気味になっています。

うろこも取ってあり、台所がうろこまみれになる心配はありません


みんなで協力し、動画を見ながら進めていきます。


まずは頭を身体から切り離します。鮭の頭と一緒に指を切り落とさないよう、細心の注意で。


「ヌメヌメするよぉ〜」といいながらも、結構きれいにできました。

「おおお〜」という歓声に、思わず英雄になった気分。


3.腹と背から中骨に沿って包丁を入れ、片身をはがす

2番手は宅野!3枚おろしの1枚目という、重要な役目を担います。

骨にそって、腹と背に切り込みを入れていきます。

出刃包丁の使い方に慣れず、ついぎこぎこしてしまう


切り込みを入れ終え、ようやく一枚目をおろします!


「ちょっと不細工になっちゃった」といいながらも、初心者にしては上出来では? 意外とできるものですね。


4.中骨と身の間に包丁を入れ、中骨をとる

次にバトンを受けたのは、唯一の男性応援隊、金澤です。

3枚おろしにけりをつけられるか……!?

包丁捌きがうまく、「捌ける男子かっこいいぞ!」と言われて思わずにやける


3枚おろしの真ん中、骨の部分を切っていきます。

1枚目の人が骨に身をたくさん残すと、骨が見えにくくなり、やりにくいです。そう、鮭捌きリレーは連帯責任なのです。

どこまでが骨なのか、見分けが意外と難しい


3人がかりで、無事3枚になりました! ここまでできれば、もう一人前ですね。


5.背びれ・腹びれ・腹骨をとる

アンカーは、応援隊を呼んだ張本人、尾形。3枚におろしたら終わりだと思っていたら、ちゃんと順番が回ってきました。

背びれなど、食べない部分を取っていきます。スーパーに売っている切り身にはこの部分が残ったままであることが多い気がします。


初の逆さ包丁にも挑戦。これをやっただけでも、気分は職人です。


3枚おろしはみんな苦労してたのに、この行程はするする〜といって非常に快適!


「ちょっと、他の人にもこのするする感味わって欲しい!」

ということで、すっかり油断していたトップバッター日野原に戻ります。鮭リレーのバトンはいつまで続くのでしょうか。


6.切り身にする

骨と身の境目を見分けるのに苦労しながらもなんなく骨を取り終え、最終段階、切り身にする作業に移ります。

とりを飾るのは……金澤! 好きな厚さで、豪快に分厚く切っていきます。


こ、この形……


「見たことある〜〜〜!」

そう、これは紛れもなく鮭の切り身。この状態を自分たちで作り出せるとは夢にも思っていませんでした。


鮭を捌き始めて約1時間。鮭の片身で約15切れ、つまり鮭一本分で約30枚の切り身を手に入れました。

今度からスーパーで切り身を見かけたら、「ふふふ、私はキミの正体を知っているよ……なんせ、捌いたことがあるからね」と、一人でどや顔になりそうです。

鮭が捌けたのなら、他の魚もバッチこい!


後はおいしく食べるだけ。これぞ本物の親子丼

みなさま、こいつの存在をお忘れではないでしょうか。

1時間浸されたイクラたち


生だと味がしなかったイクラ、ちゃんと味はついているのでしょうか?

誰とはいいませんが、このまま飲んでしまおうかとほくそ笑む人も。


ドバーっと出しちゃいます。贅沢すぎて、夢のような気持ちです。

このイクラの滝で修行できたら、なんと幸せなことか


ここまできたらもう遠慮なんていりません。ほかほかのご飯にこれでもかというほどかけます。


身の方は、シンプルにホットプレートで。はじめに身に塩をふって皮目を焼いて、焼き目がついてきたら酒を振りかけ、蓋をして蒸し焼きにします。

ん〜、いい匂い。良い具合にふっくら焼けました!


頭や尻尾、骨はアラ汁に。


気づきましたか? ここまで、生ゴミがほとんど出ていません。片付けが楽ちんです。


お米などをのぞき、すべて一匹の鮭からできた夕食です。


さて、肝心のお味は……

「ぶちっ」

「く、口の中でイクラが逃げる……」

噛もうとするとイクラが暴れます。煎餅はバリバリ音がするように、このイクラは噛むと弾力でぶちぶちと音がします。

家族に隠れてイクラを独り占めしようとしている人は、注意してください。

イクラは6人で食べても5分の3ほど余りました


吉岡さんは身の味を心配なさっていましたが、まったく問題ありません。自分で捌いたからというのもあるかもしれませんが、普通に買って食べるよりもかなりおいしく感じました。

そして、みなさんお気づきだったでしょうか。この大きく書いてある「船上神経〆」という文字に。


実はこれ、魚の鮮度のいい状態を通常より長続きさせるための技なのです。

ポケマル豆知識:神経〆(活締め神経抜き)とは

魚の絶命後すぐに脊髄を破壊する技術のこと。魚の筋肉の痙攣が抑えられ、筋肉を動かすために必要なATP(アデノシン三リン酸)の消費を遅らせることができる。死後に筋肉が動いてしまうと体温の上昇による品質劣化を起こしやすくなり、また、ATPは魚の旨み成分であるイノシン酸の元になる物質であるため、活締め神経抜き処理を施すことで、魚の鮮度が良い状態を長く保つことができる。

参考:魚のしめ方がその品質に与える影響について/Journal of cookery science of Japan 36(2), 184-187, 2003-05-20


1匹1匹やるのは手間なので神経〆しない人がほとんどですが、吉岡さんは丁寧にしてくださっています。

なるほど、おいしいはずですね。


初心者でも、できるんです

大きな魚を捌くという初めての体験。1回捌いただけなのに、ポケマルスタッフの目にはみなぎる自信。

やり方さえわかれば実は簡単なのですが、多くの人は捌くのを難しいと思っているので、「これ、私が捌いた鮭なのよ」「このイクラ、私が味付けしたのよ」なんて言ったら、みんなのヒーローなること間違いなしです。

1人でやるのはちょっと……という方は、今回のように仲間を呼んで捌きリレーをしたら楽しいですよ。


そしてなんといっても、

おいしい!!!

最後はこれに尽きます。


頑張った先にはおいしさが待っています。毎日は大変だと思いますが、たまには挑戦してみてくださいね。

1回やったらハマってしまうかも……!?

新宿の夜景をバックにパシャリ。外で食べたらこれだけで1500円くらいかかりそうですね。


関連出品

「鮭捌きたい……!」と思ってくださった方、ごめんなさい。今年の秋鮭シーズンは終了してしまいました。

しかし、安心してください。ポケマルには初心者から熟練者まで、様々な捌きスキルの方にぴったりのお魚が出品されています。


そして、ここはポケマルとして思い切って言ってしまいますが、漁師さんたちの個性の幅、とても広いです。さらに、漁師さんはみんな、おいしいお魚をお届けすることに一生懸命。海に出るのは命がけ……本当に文字通り一生懸命なんです。

ふつうに都会で暮らしてきた方は、もしかしたら、びっくりしたり、戸惑うこともあるかもしれません。

初めての購入のときには商品リンクにある生産者アイコン写真をクリックして、プロフィールページの下にあるコミュニティに行ってみましょう。

この人は豪快だなーとか、この人は細やかだなーとか、この人のファンの人たち楽しそうだなーなどなど、いろんな漁師さんを見ているだけで楽しいです。

あなたの性格に合う、お気に入り漁師さんがみつかりますように!

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以下は吉岡さん以外の漁師さんの出品です。こちらもチェックしてみてください。

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文=尾形希利子

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