落花生ぼっちを作りに、千葉県八街市の小山さんの畑に行ってきたよ

こんにちは、秋田県出身・とある大学の農学部通学中のインターン金澤です。

田舎 × 農学部 いかにも農業大好き人間みたいな感じですが……実は私、もともと農業好きなわけではないんです。むしろ体を動かさずにおいしいものを食べたい…。そんな私が農作業をすることになったのは、2018年11月のこと。編集部中川の一言がきかっけでした。

金澤くん、落花生掘りに行かないかい?

(落花生? 掘る? えー、しかも休日でしょ?うーん、でも断りにくいなあ…)はい、もちろん行きます

じゃー朝6時に集合ね

(朝の6時だと? てことは移動時間も含めて4時には起きなきゃいけないじゃないか。冗談じゃないぞ。くっそーなんてことだ!!)はい!


平穏な毎日を過ごす私の日常に舞い降りてきた「農作業」という非日常。この記事はそんな私の農作業体験記です。

 

目次

 
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落花生の本場、八街へ

落花生といえば千葉県八街市ですよね。生産量全国1位であり「八街産落花生」は地域ブランドにも登録されています。

そんな落花生の本場で今回私が体験するのは落花生掘り……ではなく、「ぼっち積み」です。ん? ぼっち? 

「ぼっち積み」とはなんなのか、無事に農作業を終える事ができるのか……。不安な気持ちを胸に、ポケマルのエンジニア丸山、編集中川とともに八街へと向かったのでした……。


早朝、八街についた我々を出迎えてくれたのは小山直樹さん。ポケマルではお馴染み、あの大人気商品の「100%人参ジュース」を出品している農家さんです!

Producer

小山直樹|千葉県八街市

大切な人へ贈るこだわり野菜vegewonderの小山です。私の信念は「野菜作りではなく体作り」です。人の体は、食べ物から出来ています。「良い野菜」を作り、食べた人の健康を作る。それができる農業者を目指しています。


おはようございます! 今日はよろしくお願いします。小山さんは落花生も育てているんですね

はい、メインは人参ですが、特産物である落花生と甘いトウモロコシも作っています


実家が農家の小山さんは8年間エンジニアとして働いた後、実家に戻り農業を始めたそうです。その後独立して今年(※2018年10月)で3年目なんだとか。

現在独立して3年目と聞きましたが、ご両親には心配などされなかったんですか?

最初の1年は両親の手伝いをしていましたが、両親からは「もう独立して大丈夫か? おれが仕事覚えるのには30年かかったけどな」と言われました。しかしいつまでも人の手伝いではだめだ、自分事にして始めないと進まないと思ったんです


なんだろう、まだ作業も何もしていないというのに、農業に対する熱い想いを小山さんから感じたせいでしょうか。とても楽しみになってきました!!


いざ、過酷すぎる「ぼっち積み」

「ぼっち」ってなんですか?

落花生は乾燥が重要なんです。10月初旬までに掘り起こし、根を上にした状態で畑に置き、1週間ほど自然乾燥(地干し)させます。そのあと、地干しした落花生をだいたい大人の身長ほどの高さまで積み上げて、さらに乾燥させます。この落花生の山を「ぼっち」と呼んでいます

手前が地干し中の落花生。奥で青いビニールシートをかぶっているのがぼっち


へー、なんで「ぼっち」と呼ばれているんですか?

昔は積み上げた落花生の上に稲わらで作った笠を被せて雨やカラスを避けていたんです。その笠が時代劇などにでてくる「ボッチ笠」に似ている事から、ぼっちと呼ばれるようになったと言われています。今ではブルーシートを被せることが多いですけどね。

(ぼっち……かわいい。早くぼっち積んでみたい!!)


ぼっちの作り方講座

今回積む落花生は「千葉半立(ちばはんだち)」という品種です。国内で生産されている落花生の中では最高品種とされており、栽培するのが難しいんだとか。

とにもかくにもLet'sぼっち!!


①地面にビニールをしく

雨などで下からカビないようにするためです。

ビニールは再利用するよ、エコだよ


②根が中心になるように円筒状に積んでいく

急激な乾燥を防ぐために豆のついている根っこ側を中心にして、円形に積んでいきます。

体重をかけながら敷き詰めていくよ

ぼっちの基本形、この形を保ちながら積んでいくよ


思いっきり体重をのせながら積んでいきます。ここをお粗末にすると高さが出てきた際に「中折れ」し、ぼっちが倒れてしまうんです。

体重をのせすぎると落花生の殻が割れてしまうかも……と思いましたが、心配ご無用です。殻が割れてしまうような落花生は、選別の過程ではじかれるようなものなので気にしなくていいそうです。

高く積まれたぼっちはなんだかかわいいよ


③ブルーシートをかけて完成

雨よけ、カラスよけのため。


(なんだ、つまり積むだけやん)

本日はひとり5ぼっち目指して頑張りましょう!!

よろしくお願いします!(数え方は〇〇ぼっちなんか…)


マイぼっちを作る…正直なめていました

さあ、皆でマイぼっち作りスタートです!!

せいやっ

そいっ(インターン尾形、生粋のみかん好きである)

同行したエンジニア丸山とエンジニア高橋、初めての共同作業


説明を受ける限りなんだか簡単そうに思いましたが……甘かった。1ぼっち作るのに1時間もかかってしまいました。小山さんは20分程で作り上げるというのに……。

先ほど「なんだ積むだけやん」と思ったこと、撤回させていただきます。めちゃくちゃ過酷な作業ですこれは!!


周りを見渡すと、どうやら他の方々も苦戦している様子。ん? 人によって大きさや形が違うような……。

小山さん、ぼっちはつくる人によって形が変わりますね

個性がでますからねえ

個性!?

はい、人によって積み方が異なります。欲張るほど中折れしてぼっちが倒れやすくなりますし、その反面とってもきれいに作る人もいます

ふ、深い。つまりぼっちの高さはその人の欲深さに比例するのか……(多分違う)


この「個性」という言葉が私のクリエイティブ魂に火を付けました。こんなに過酷ですごく汚れるというのに……楽しいぼっち積み楽しいじゃないかあ!!

無我夢中で作り続けていた私に編集中川がひとこと。

金澤くん、仕事中には見せない笑顔してるよ


落花生作りは孤独との戦い、小山さんの本音とは

もくもくと作業する中で思いました。小山さんってこの作業をいつも独りでやっているのだろうか……?

小山さん。ぼっち積み、ほんとうに疲れますね。この作業をいつも独りで?

はい、ひとりぼっちです。作業が大変なのはもちろんですが、正直この朝から晩まで独りで行うという……落花生作りは孤独との戦いなんです。

しかも落花生づくりは全て手作業なんです。落花生づくりが盛んな中国では機械化が進んでいますが、日本は全く。手間がかかる分、輸入品と国産のものでは10倍近く値段に差がでてしまうんです。となるとみんな輸入品を買いますよね。これじゃあせっかくの特産品も衰退していくと思います。実際私もこの作業には心が折れますし……

ニャー

そこに現れた1匹のネコ


あの子はよくここに来るんです。何もしてくれませんが唯一の癒やしです。「ネコの手も借りたい」とはこのことですね。

はは


普段ぼっち積みは休まず作業して3日間程かかるそうです。開始から数時間でへとへとの私にとってそれは信じられない事実……。ネコさん、頼むから手を借して。

イニャー

スタスタ


エンジニア丸山、やってくれました

落花生作りの過酷さや小山さんの本音を聞きより一層やる気がでると同時に、少しずつぼっち積みにも慣れ、1ぼっちにかかる時間が短くなってきました。

(そろそろ調子にのるやつが出てくるはず……)

と、心の中で密かに思っていたその時!!

うっぎゃーーーーーーーーーぎゃーす、ぐはー

(僕にはそう聞こえました)


遠くの方で叫んでいたエンジニア丸山に全員で駆け寄ると。そこにはうなだれる丸山と共に、倒壊した丸山ボッチ……。

\   あー   /


そうです、丸山さんはやったんです。中折れしたんです。丸山さんのぼっちは中折れぼっちになってしまったんです。欲深く積みあげたぼっちが見事に倒れたんです!! 丸山さんの欲の塊が倒れたんです!!

みるな! 写真を撮るなー! ぐふう……


“ぼっち積みアルアル”である“中折れ”を経験した丸山さん。この日の主役はあなたに決まりです。


これが噂に聞く農家飯ですか!?

そろそろお昼にしましょうか。

待ってましたお昼ご飯!! 今回は小山さんが畑ランチを企画してくださっていると聞いていたので楽しみにしていました!!

お料理を作ってくださったのは小山さんの知人のリョウコさん。農家さんから直接仕入れた食材をつかったケータリングのお仕事をされています。


うは〜!ヨダレがとまりませんんん!

もちろん小山さんの人参ジュースで乾杯。それでは

\いただきまーす!/


「うまい」


こ、これが噂に聞いていた農家飯ってやつなのか〜〜。本当にどれもおいしい。

寝坊した日のお弁当作りから生まれたという海苔巻きフランクフルト


野菜の甘味がしっかり感じられる上に、お米の味も際立ちます!

東京に出てきて早4年。地元以外のご飯でこんなにおいしいと思ったのは初めてでした。

「何か美味しいものを炒めた後のフライパンでまるごと蒸し焼きにしただけのピーマン」が最高にうまかった


茹で用落花生「おおまさり」で知る、生産者の意識とブランド力

とってもおいしいご飯を食べ、気付けば日が落ちかけていました。

みなさん、目標は1人5ボッチでしたが、日も落ちてきてしまったのでぼっち積みはここまでにして、お土産に茹で用落花生の「おおまさり」を掘りに行きましょう!!

待ってました!!

ポケマル豆知識:「おおまさり」とは?

「ナカテユタカ」と極大粒品種である「ジャンボ落花生」からうまれた品種。通常の落花生の2倍ほどの大きさがあります。柔らかく、煎るよりも茹でた方が甘味が増しておいしいのです。

ズアアアアアア


すごい! たくさんついていますね!

たくさんついていますが、販売するものは白くて大きいもののみになります。小さいと中身がなかったり、茹でたときにフニャフニャになってしまうことがあるんです

厳選されたおおまさりはどれもビックサイズ


選び抜いた落花生だけを販売しているんですね!

はい、小さい落花生などを量かせぎに入れる事もできますが、それって総合的にみたらブランドイメージを下げる事につながりますよね。生産者の意識がいいブランドを保ち続けると思うんです。

なるほど……ブランド=いい品種、とだけ思っていました

農家は基本的に個別で作業し出荷しますが、そうではなくて、同じ産地のいいものはみんなで協力しあってもっとよくすることが大切だと思うんです。競争するのではなく”共走”できたらなと思います。


共に走ると書いて共走。

落花生がいくら特産物だとしても、1人ひとりの生産者がそのことを意識して販売しないと、結果的には八街全体のブランドイメージを下げる事につながってしまう……。それって他の食材にも言えることですよね。


ついに完成?ぼっちの地上絵

午前中から1日かけて体験したぼっち積みも、時間の関係でいよいよ終わろうとしていました。

最後に記念撮影をしましょう!!


そういって小山さんがおもむろに取り出したのは……

\ヴィィィィィィィィィィィンンン/


ど、ドローン!?

航空写真です!!

慣れた手つきで操縦する小山さん

夕暮れの空を高く昇っていくドローン、キミはいったいどこまで行くの


こ、これはまさか!?


時間の関係上途中までしかできませんでしたが、「8(落花生の形)」を目指して作っていたんです! これぞぼっちの地上絵ですね。


最後に

小山さん、本日はありがとうございました! 農業体験って収穫のイメージがありましたが、ぼっち積み楽しかったです

こちらこそ助かりました! そうなんですよね、農業体験も収穫だけでなく、作物を育てるその過程、プロセスを知って体験してほしいと強く思うんです。

都会の人はコンクリの上で生活していますが、地球に触る機会をもっと増やしてほしいと思います。農業、つまり土や草をいじるという事は、地球を触るということですから

夕陽に照らされてドローンを操縦する小山さん。とても楽しそう


この日、気がつけば体中が土まみれで手も足も汚れていました。でもこの土たちも地球の一部、1日だけでも真剣に地球と向き合っていたんだと思うと、なんだか誇らしくなりました。


「農業ってすばらしいーーーーーー!!」


落花生体験が決まった直後は、朝も早いし体を動かしてまでおいしいものを食べてもなあ……と思っていた筆者:金澤。

しかし、農家さんの生の声を聞き、地球とふれあい、農業の楽しさと厳しさを同時に体験することができました。

自分の愚かさに気付き、農業に心を洗われた金澤


正直に言うと、私にはこの作業を毎日続けていく自信はありませんが、今回の体験を通して感じたものをこれからも発信できたらなと強く思いました。

ポケマルではコミュニティを通してたくさんの生産者さんとつながることができます。もちろん小山さんとも。直にやりとりをすることで、あなただけの発見があるかもしれませんよ?

最後はみんなで「ハイッボッチ」

後日小山さんが1人で完成させたぼっちの地上絵


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文=金澤善空、ポケマル編集部

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