本当に美味いウニは「塩水ウニ」一択!北海道小樽の漁師が語る、極上ウニと出会うためのウニ知識

夏が旬の2種類のウニ。白ウニと呼ばれるキタムラサキウニは淡泊でほどよい粒立ち。赤ウニまたはルビーと呼ばれるエゾバフンウニは濃厚で舌の上でとろける……。どちらも甘さは格別だ。

2017年6月中旬、ポケマルで塩水うにを販売する小樽のウニ漁師:高野粋さんを訪ね、北海道へ。高野さんの住む小樽市忍路地区は、札幌から電車とバスを乗り継いで2時間弱。「シャコタンブルーの海」で知られる積丹半島へ向かう途中にある。

Producer

高野粋(たかのきよ)|北海道小樽市

北海道、小樽市で漁師をしております、高野と申します。1年を通してタコ漁とカレイ刺し網漁をしています。夏には、ウニやナマコなど、 冬には、ヒラメやニシン漁など、 季節によってさまざまな魚を獲っており、旬な時期に新鮮な北海道の海の幸をお届けいたします。

北海道の魚介類のリアルタイム商品一覧はこちら

 

目次

 
     ここに目次が表示されます。    

「新鮮なウニは苦いよね?」
都会の知人に言われてびっくり

「まあ、これでも食べて」と、高野さんが差し出してくれた「塩水うに」。こんな高価なものを…遠慮なく、いっただきま〜す。

左がキタムラサキウニ、右がエゾバフンウニ。


——うーまーい!あまーい!苦くも臭くもなーい!「塩水うに」はこんなに美味しかったんですね…

以前、東京から来た人に塩水ウニを食べさせたところ「これはウニじゃない!」と言われたんです。驚いて理由をたずねたら「新鮮なウニは苦いんですよね?」。さらに、びっくりした!

おそらく、ミョウバンを使用した折ウニ(板ウニ)を使っている寿司屋さんで言われて、その人はずっとそれを信じていたんだと思う。ミョウバンにつけたウニは苦くなるから。その人は、本物のウニの味をそれまで知らずにいたんですね。

編集部注:ミョウバンとは、化学的には「硫酸アルミニウムカリウム」や「硫酸アルミニウムアンモニウム」と呼ばれる物質で、食品添加物として使用されている。パンや焼き菓子などの膨脹剤、ナスの漬物などの色止め剤、タコ・イカ・ウニなどの形状安定剤、野菜類の煮物などの品質安定剤として使われる。(参考情報:①厚生労働省ホームページ>食品添加物>アルミニウムに関する情報東京都福祉保健局ホームページ>用途別 主な食品添加物神奈川県衛生研究所>衛研ニュースNo.159


——実は私も、ウニは苦くて臭みのあるもの、という先入観がありました。なぜ苦くなるのにあえてミョウバンを使うんですか?

ウニは、昔は生では食べなかったんだ。ウニ漁の歴史の古いここ小樽では、ウニを卵焼きに入れて焼いて、市場に出したっていうのが最初。次が蒸しウニを一個一個、折に並べて出していた。

そのうち、ミョウバンを使うようになった。生の身をミョウバン水の中にドーっと入れて何分か経つとカッチカチに硬くなるのね。そうすると身崩れもしないし、日持ちもいい。その折ウニが長いこと続いて、ミョウバンを使わない塩水ウニが出始めたのはここ10年ほどのこと。流通の発達のおかげだね。


——美味しいウニを食べたかったら、「塩水うに」を選べばいいんですね!

ただ、塩水ウニと一口に言っても、いろいろある。身が大きくそろっていて、赤ウニならオレンジ色の鮮やかなもの……。いいものは見た目がね、ぜんぜん違う。そのクオリティーを安定して長く続けることで信用がついてくると、高値で買い取られていくんだわ。


——東京で「塩水うに」は手に入るんでしょうか?

東京方面に出荷されたものは、ほとんどが寿司屋、料亭、高級居酒屋なんかに行ってると思います。「道産ウニ入りました」なんて言ってね。北海道フェアなど特別な機会がなければ、なかなか一般では手に入らないんじゃないかな。


——やっぱり、とても貴重なものなんですね。ところで、高野さんはどんなふうにウニを食べるのが好きですか?

いや、俺ウニ食べられないんだわ(笑)。


——………………ぇ?

うん(笑)。兄貴も母親も食べられない。祖父は80過ぎてやっと生ウニ食べられるようになった(笑)。


——えぇと……で、では好きな魚貝類はなんですか?

鮭と……サバかな。


——あれ? でもサバってこのへんでは……

うん、獲れない(笑)。


海の男デビューは5歳!学校よりも海が好き!!

高野さんのお母さまが用意してくださった海のごちそうの数々。しかしこのほとんどを高野一家は食べられない。食べられないのに、なぜ高野さんは漁師を続けていけるのか…?


——では、高野さんはなぜ漁師になったのでしょうか?

物心ついたころ…5歳くらいから、漁師だった祖父を追いかけて海に行っていたんだわ。周りの子が幼稚園やら保育園に行っても、オレは海。天気のいい日には船に乗せてもらって、祖父が道具の支度をしている間に舵をまかされたり。と言っても、ただ舵を持っているだけなんだけど。そういうのが面白くてたまらなかった。

小学校に上がっても、帰ってきたら祖父を探して浜へ直行。自分は漁師になるのが当たり前だと思っていた。まわりから「高校くらいは行っておけ」と言われて入学はしたものの気持ちは海へ行ってしまい、中退して16歳から漁師見習いを始めた


——ということは、相当なキャリア…。正式に漁師になったのはいつごろですか?

2年間、刺し網漁をやっているおじさんのもとで下積みをして、18歳で晴れて漁師になりました。最初の3年はウニ・アワビだけからスタートして今年(取材当時2017年)12年になるね。今では、ツブ、ナマコ、タコやカレイ、ニシンも獲ります。


印象的なプロフィール写真に写っているミズダコは20kg以上あったそうだ


「本物ったらこういうもんだぞ!」
食べられないからこそのこだわり

私達が「ウニ」として食べている部分はウニの生殖巣。ウニ1個体から5個しかとれない。

柔らかい身をていねいに外し、ピンセットで黒い筋や殻をとってきれいにし、形のいいものだけを残していく作業はとても神経を使うことだろう。100g入りパックひとつに、白ウニで12~13個体、赤ウニは15~20個体ものウニが必要だ。

加工は自宅の加工場で家族総出で行う。

清潔にととのえられた作業場


——ポケマルでは殻付きのウニも人気です。高野さんも出品してみませんか?

ウニは開けてみないと中身がわからないし、忍路から関東まで配送に1日半はかかる。お客さんのもとに届く状態に責任が持てないから、残念だけどやれないんだわ。

このピンセットをつかってウニの身ひとつひとつを丁寧に掃除する


——なるほど。そういう理由があったんですね。

でも、そういう体験ができる商品はやりたいと思ってて、これならいけるんじゃないかと考えているものが実はあるんだ。


——都市で生活する人に、どんなことを知ってほしいですか?

たまに、浜にふらっと立ち寄って、海のものを売ってほしいという人がいるんだけど。売ってあげると、「こんなに安くていいの?」と驚いてくれる。「活きがいい!」「うまいうまい!!」って喜んでくれる。そういうものを届けたいって思うんです。「本物ったらこういうもんだぞ!」ってね。

といっても俺は食べられないんだけどね(笑)。


持続可能なウニ漁は昆布づくりからはじまる

喜々として海の話、漁の話を語る高野さん。今回の記事には書けなかったが、ウニ漁からタコ漁、ナマコ漁、ツブ貝漁、ニシン漁と、話題は尽きない。魚貝類を食べられないことなんて、この瞳の前には些細なことと思えてきた。そう、高野さんは純粋に漁が好きなのだ。


——ウニって、どうやって採るんですか?

漁の仕方も資源管理の考え方も各地区によって全く違って、小樽は資源管理・保護に関しては厳しい方だと思う。ウニを保護するために、採る時期は5月から8月で漁ができる時間も決まっていて、「サシ(ウニスケール)」という器具で一個ずつウニを測って小さいものは海に帰さないといけない

「サシ」中央から両側にコの字に開いた部分にウニを当てて測る


——厳しいんですね。

ウニは昆布を食べて育つんだけど、昔、「磯焼け」と言って、岩が真っ白くなり昆布がまったくなくなる状態が深刻になったの。

小樽は、ウニ漁などの磯での漁がメインの地区だから、放っておいたらウニが採れなくなって商売ができなくなる。だから、ちゃんと手をかけていかないと。今は若手が中心となって、ウニのために昆布を増やす活動も始めている。


忍路の海は、海中の海藻がくっきり見えるほど透明だった


——そういえば、ここに来る途中で見た海がすごく透明で、海藻もたくさん生えていました。だから良いウニが採れるんですね!

これでも今日は濁ってる方だよ。この「箱メガネ」を口でくわえて固定して海底をのぞいて、昆布のなかに隠れているウニを探す。

ウニを採る道具はヤスという先端が分れた棒状のものと、網になったタモとがあって、オレはタモが好き。タモの柄はそのままだと4.5mあって、その先で昆布の森をかき分けてひとつずつ採っていくんだわ。

ナマコを採るときは柄をもう一本つなぐ。さらにもう一本つなぐと15mになって、年に何回かはその深さまで海の中が見えて大きいウニが採れることもあるんですよ。

左がタモで右がヤス。高野さんはタモで採る方が好き


——ひとつひとつ採るんですか!

漁のスタイルも各地でそれぞれ。うちの地区は船の先端で採るけれど、後ろで採るところもある。膝をついたりつかなかったり。ウチの地区独特のやり方は、肩を船べりに当てて乗り出して、箱メガネを口でくわえて固定するの。で、片手をついてもう片方でタモを持つ。

さて、じゃあ、船見てもらうわ。


……と、高野さんの車に乗って、浜へ!

「粋丸」と高野さんの名前を冠したを軽々と押して、高野さんはあっという間に海へ!そして、先ほど説明してくれたウニの採り方をデモンストレーション。

口で箱メガネを咥え、手にはタモ。舵は足で操る。船べりギリギリまで体をのり出す



ビューンと浜に戻り、ぐいっと船を押し上げた。船の重さは300㎏。筆者らが2人で全体重かけて動かそうとしてもピクリと動かない。さすが5歳から数えてキャリア25年の海の男!カッコイイ!!


「ウニは苦い」と思っている人にこそ食べてほしい

取材の後日、東京銀座のデパ地下を回って塩水うにを探した。

結果、販売していたのはたったの1店舗で価格は赤ウニ100gで7,500円。店員さんによると「いつも入荷するわけじゃない」とのこと。北海道内のデパートでも主流はミョウバンを使った折ウニで、価格は平均3,000円台だった。

一方、食べた人の「美味しい!」の声のため、徹底的に品質にこだわる高野さんの塩水うにのポケマル販売価格は……! しかもすこし多めに入っている……!

忍路の透明な海に育てられた高野さんのウニは、8月下旬までの期間限定だ。


関連出品

高野粋さんの出品をもっとみる

魚介類の商品をもっとみる


この他にも、ポケマルには日本中からたくさんの農家・漁師・猟師さんが参加しています。

はじめての購入の時には、ポケマルでの販売に慣れている生産者さんを選ぶのがおすすめです。ランキングを週1回更新していますので、どうぞご活用ください!

▼画像をクリックすると最新版のページが開きます


Writer

わたなべひろみ

1968年、北海道生まれ。設計デザイン、商品開発などに携わったのち、宣伝会議 編集・ライター養成講座 上級コース 米光クラス第7期受講。修了後ライターとして活動。現在、札幌国際芸術祭2017【大風呂敷プロジェクト】に運営サポートとして参加中。

編集=中川葵

※この記事は2017年7月に公開した記事に加筆修正したものです。

Magazine

あわせて読みたい