平成の百姓一揆イベントレポ③ 五味さん八幡さん、いらっしゃ〜い

一年かけてポケマル代表・高橋博之が全国を駆け回った「平成の百姓一揆」。その千秋楽となるイベントが、2019年2月に東京・渋谷にて開催されました。

その中でも好評を博した催しが『○○さん、いらっしゃい』のコーナー。ごにょごにょした関係を築き上げた作り手と食べ手を壇上にお招きし、とことん語ってもらう企画です。

前回は、ポケマル内で「イノベーション!」でお馴染みの漁師・高森さんと、ポケマル食べ手界の重鎮・茶太郎さんに、”食べる”を通じて出会ったステキな関係性を教えてもらいました。

さて二組目は、徹底的に食材をおいしく頂いただくことにこだわる食べ手・八幡名子さんと、2018年の年間野菜ランキングで1位を獲得した五味さんの登場です。

 

目次

 
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2組目のごにょブル
  • お料理上手なポケマルヘビーユーザー。食べる通信やポケマルの食材を用いた忘年会ではメインシェフを務めた。
  • 2018年年間野菜ランキング1位獲得。おいしい野菜と親しみやすさでポケマルユーザーの胃と心を鷲掴みにしている。

料理に気持ちが”乗る”


【司会:高橋】生産者から直接買うようになって、なにか変わりましたか。

料理に気持ちが乗っかりましたね。顔の見える生産者さんがいて、想いを知ってから食べるということは、食材を無駄にはできません。最近は、これが職業なんじゃないかと思うくらい、どうやったらおいしく食べられるかを一日中ずっと考えてます(笑)


生産者と繋がる消費には、食べる前に期待を抱き、食べた後にはごちそうさまを伝えるという側面がありますよね。これは普通の消費活動ではなし得ないことです。

スーパーでも「顔の見える生産者」って売ってますが、ポケマルは買う前後にコミュニケーションしながら買えるのが違います。会話を通して、作ってる人の人柄がわかるのもいいですね。


「無理だからやめます」都会から山奥に嫁いで


では五味さん、今日はお父さんも来てますね。大宮で育ち、渋谷のアパレルで働いていた都会っ子が、どうして長野の山奥で農家をやってるのでしょうか?

2005年から長野で一人暮らしをしていて、旦那に求愛され、2006年に結婚しました。はじめて家に訪問した時は、本当に山奥に家があることに驚き、「どこに連れて行かれちゃうんだ……」と思うくらいでしたね(笑)。結婚してから農家やってることを知り、仕方ないと思って手伝い始めました。


虫のいないところで育ったんですよね。そのへん大丈夫でしたか? 動物も出ますか?

いやあ、怖かったですね。特に嫌だったのはカマドウマっていう虫ですね。

これがカマドウマ。大きな画像で見たい人は写真をクリック!


こっちに向かってピョンピョン跳ねてくるんです。動物は、カモシカ、たぬき、きつね、ハクビシンなど、庭に歩いてますよ。

「カマドウマ」がかなりトラウマだったという五味さん


農家に嫁いで実際どうでしたか?

正直、農家は儲かりません。作業は地味だし、重労働なのにそこまでの収入にはなりません。何が楽しいかわからない中で手伝っていて、「無理だからやめます」ってお父さんに言ったこともあります。


お父さん、そんなこと言われたこともあったんですねえ……。

そうですねえ……

(と微笑みを浮かべる)


農家が自分の言葉で伝えなきゃ!


そんな中、ポケマルを知ったのは偶然見たインスタの投稿です。まずはユーザーとして買ってみたんですけど、それがすごく美味しくて。それならばと、生産者として登録してみました。直売所に出す経費や労働時間の短縮のために、ネット販売を検討していたので。


実際に使ってみてどうでしたか?

ポケマルユーザーの食の関心度が高く、ただ売るだけじゃだめだ、自分たちが伝えたいことをもっと伝えなきゃいけないんだと感じましたね。トウモロコシをつくる経緯とか、どういう想いで作っているか、それをわかった上で購入してくれます。自分たちの気持ちがそこにのっていくと、お客さんも反応してくれることがわかりました。


それに反応した1人が名子さんということですね。

長野の畑の風景とかを投稿されているので、育ってる環境がよくわかります。日本全国回ったことはありませんが、写真から土地の雰囲気・匂いが伝わってくるんです。

どうしたら自分たちの野菜のファンになってもらえるか、商品の付加価値はなんだろうかを考えて投稿しています。


ポケマルは、広告費を払えば商品が大きく出てくるところにはしたくありません。自分たちの食べ物の裏側を伝えた人たちが売れるところにしたいと思っています。

私もそう思います。私は「買って欲しい」より「知って欲しい」気持ちが一番にあります。なので新しい出品を出すとき、フォローしている人に知らせる機能がありますが、押しつけるのが嫌なので、あえて通知していません


え、そうなの? なんだって〜!?

見つけた人が買ってくれればいいかな、と思ってます。

五味さんのお野菜って、なかなか買えないんですよ〜(笑)


人を笑顔にできる。農家ってすごい仕事なんだ


五味さんのお野菜といえば小さいとうもろこし、「ちいもろこし」でしたっけ? 僕はあれが一番好きで 

去年、日照りで小さいとうもろこしがたくさんできてしまったんです。それを「ちいもろこし」として売ってみたら、正規品よりも売れたんですよね。


お父さんは恥ずかしくて売り物にしてなかったそうですが、お父さん、売れてビックリしたでしょ?

いや〜……味が良いので売れるとは思ってましたけどね(笑)


\ わはは /(会場、笑いに包まれる)


私はサラダ野菜のオリジナルブレンド「ごみっくす」を愛用しています。


「ちいもろこし」と「ごみっくす」。ネーミングがいいんですよね。

ネーミングはセンスですね(笑)。どういう名前にしたら心に引っかかるかなど考えて、お客さんに楽しんでほしいという気持ちがあります。自分自身も楽しんでやってます。


長野の山奥に連れて行かれ、結婚してから農家であることを告げられ、農家をやめたくなったこともあるくらい不安だったときと比べて、今の生活はどうですか?

農家ってすごいなって思います。地味だけどそれをわかってくれる人もいて、おいしいって言ってもらえて、人を笑顔にできる仕事なんだって。


名子さん、消費側のモチベーションはどうでしょうか。消費の意味が変わり、食生活は豊かになりましたか?

食べることは生活する中で、基本中のキホンです。食生産者の顔を思い浮かべながら食べるようになって、人生の深みが増したと思っています。食べ物にかかわらず、何もかも誰かが作っているものであることがわかって、人として優しくなれました


あー、わかります。

あと思うのは、買うと名前に「様」を付けて呼んでくれるけれど、そこはいらないなあって。自分では作れないものを作ってくださって、「様」はおかしいと思っています。私は「様」できたら、あえて「さん」で返すようにしています。

初めてのお客さまに「さん」は失礼だと思っていて。何回かやりとりして仲良くなったら「さん」になります。名子さんも、今は「さん」ですしね


これからは「さん」でいきましょう! 末永くお幸せに。


* * *


ポケマルで出会った生産者と消費者がリアルに出会い、互いに互いを尊重し合っている……これこそが、ポケマルの目指す世界です。


次回は最終回。交流会で実際にあった小さな”ごにょごにょ”たちをレポートしていきます!


文=尾形希莉子、編集=大城実結・中川葵、写真=中川葵


さあ、今日のポケマル最新出品をチェックしよう!


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