500円玉を握りしめて行きつけの牛丼屋に並ぶサラリーマンのみなさん!
「まかない」
さあ、みなさんも一緒に言ってみましょう。
「まかない」
なんという甘美な響き……。
職場が飲食店という方をのぞき、なかなかありつけるものではないですよ。
も、もういちど…… (*'д`*)ハァハァ
「まかない」
サラリーマンの夢、まかない。
どうせ働くなら、おいしいまかないを食べさせてくれる会社で働きたい!
……そう思いませんか?
今回は、そんなあなたに捧げる企画です。
テーマは【オフィスまかない】。
ちょっとした水場と、ちょっとした冷蔵庫と電子レンジ、そしてちょっとした料理道具があるオフィスなら十分再現可能なまかないを、ポケマル編集部が実際に食べてご提案します。
「ポケマルで買ってみたいものはあるけど、自分で料理できないしなあ」
そんな料理下手なあなたに。
「ひとりのご飯って味気ないなあ」
そんなおひとり様のあなたに。
「同僚のあの人に料理の腕前アピールしたいなあ」
そんなキュンキュンしているあなたに。
「求人費用って半端ないんだよなあ」
そんな経営者のあなたに。
さあ、オフィスまかない始めましょう!
主役はマグロの中落ちつき背骨だー!
「中落ち」と聞くと、誰もが食べたい!と思うことでしょう。「まぐろの中落ち丼」なんて、最高の響きですよね。
そんなプレミアム昼飯をまかないとして食べさせてくれる会社があったらぜひ入社したいです。
しかし、よく考えるとこんなギモンが浮かんできます。
「そもそも中落ちってなんなんすか?」
確かに、中落ちはおいしいというイメージをもっているものの、中落ちとは何なのか、改めて考えてみると説明できません。
インターネットで検索してみると……
中骨の周りに残り、骨に付いている部分。脂がのっていて独特の旨みがあります。ネギトロの材料にも利用されています。
とのことです。
しかし、骨についてるところなんて見たことないし、分かったようで分からない……いつも食べているマグロと味も違うのだろうか……。
今回セレクトした食材は、プレミアムでおいしいだけでなく、そんな素朴なギモンも解決してくれる、マグロの中落ち付き背骨です。
そして2018年8月某日。西新宿のポケマルオフィスに、青森県深浦町で水揚げされた野呂英樹さんから【まぐろの背骨】中落ちが届きました。
まずは炊飯。昆布を入れて炊く!
——プレミアムなまぐろには、プレミアムなご飯を。
……といっても、土鍋で炊くとか言いませんのでご安心ください。
炊飯器でできる和食のひと手間、「昆布を入れて炊く」方法をご紹介。炊き上がりの香りが良いのです♪
使用したお米は、熊本県の吉竹三千男さんの「森のくまさん」です。
適当な大きさに切った昆布をふいて……
研いで浸水したお米と一緒に炊飯器に入れて、炊飯スイッチオンするだけ!
今回は4合炊き。昆布を多めに入れましたが、おそらく5センチ角1枚くらいで十分でしょう。水加減はいつもどおりでOKです。
後はもう、ご飯が炊けるのを待つのみです。プレミアご飯、成功なるか……!?
マグロの背骨を観察してみる
ご飯が炊けるまでの間、中落ちつき背骨に興味津々な私たちは、背骨をまじまじと観察していました。
冷凍で届くので、食べる前日に冷蔵庫に入れて解凍しておきました。
届いたのは、5枚の背骨スライス。
iPhoneと比較すると、1枚のサイズはこれくらいの大きさです。
見てください、このゴツゴツとした背骨感。
トングで持ち上げるときに骨がボキッと折れないか心配しましたが、その心配は無用です。1枚でも結構な重さがあり、「こんなにしっかりとした背骨を持ったマグロを獲るのはどんなに大変なことか……」と、つい漁の様子に思いを馳せてしまいました。
ちなみにこのマグロ、まったく生臭さがありません。これならオフィスでも安心です。
そんなこんなしているうちに、ご飯の炊き上がりです。
このあと、昆布は細切りにして味噌汁にin!
昆布だしのいい香りとマグロのおいしそうな色が合わさり、空腹度はMAXに達しました。
さあ、超プレミア丼のオフィスまかないタイムだ!
最高のオフィスまかないタイムの始まりです。
「できた!」といっても、私たちがやったことはお米を炊いて味噌汁を作っただけ。
メインの背骨は解凍してそのまま食卓に出すだけなので、準備にさほど時間はかかりません。
主役のマグロだけでも十分ですが、脇役食材を用意して共演させると、さらに豪華になります。
この日は、ポケマルオフィスの冷蔵庫に入っていた北海道の高野粋さんのミズダコと、茨城県の大久保芙有花さんの烏骨鶏卵も出演。「味噌汁があったほうがまかないっぽいよね」ということで、ナスとジャガイモの味噌汁もつくりました。
もちろんここまでやらなくても、コンビニでメカブとかを買ってきて、インスタント味噌汁をお湯で溶く程度でも十分です!
簡単なのにかなりプレミア感のある食卓になるのは、すばらしいことです。
大人げなく、背骨じゃんけんもやりました。ポケマルでは食べ物に関して、譲り合い文化はありません。
各々自分のマイ背骨をゲットしたところで、
「いただきます!」
さあ、ここからがまかない本番です!
まずは中落ちを背骨からそぎとります。この「こそげとる」作業を「ねぎとる」と言うそうです。
色の濃い部分は「血合い」。まったく生臭くなく、生でおいしく食べられました。
スプーンで身をねぎとっている皆の目は真剣そのもの。背骨に身を残さないよう、真心を込めてねぎとります。
力が必要なのかと思いきや、スルスルッととれて快感です。これならお子さんとも一緒に楽しめそうです。
ちなみに皆さんおなじみ「ネギトロ」の名前の由来は、このねぎとる行為からきているそうです。
1枚の背骨からとれた中落ちの量は……
108g!
ご飯茶碗1杯分のご飯を余裕で食べきれるくらいの量でした。
ねぎとった中落ちをご飯にのせたら、中落ち丼の完成です。
2人で分けたのでこれは50gくらい。
プレミアムな昆布ご飯と、プレミアムな中落ちコンビを口にするや否や……
「おいしい!」
「野生のマグロの味がする!」
「なんて贅沢なんだ……」
という声が飛び交います。
いつも食べる赤身とは確かに違った旨みがあり、マグロの味が濃かったように思います。食べた人にしか分からない不思議な味です。
* * *
ステキなオフィスまかないにより、マグロの中落ちを自分の目で見て味わって、理解することができました。これでもう、「中落ちってなんなんすか?」というギモンを口にすることはありません。
みなさんもぜひ、マグロの背骨からの中落ちのねぎとりを体験し、鼻高々に「中落ち食べたよ!」と自慢してみてください。
後日談
おいしいオフィスまかないを食べた日の夕方……。みんなが帰ったオフィスで、まかない担当の中川はひとり背骨を見つめていました。
透き通る膜がきれいに残った、美しい背骨。整然と連なる脊椎。その中にあるゼリー状の脊髄。
——このまま捨ててしまってはいけない。
マグロの仏様に突き動かされるように、鍋に水を張り、背骨を投入し、火にかけました。
コトコトと、30分ごとに様子を見ながら煮ていきます。
火にかけてだいたい30分後
2時間半後、背骨が崩れて黄色い油が浮いてきました。煮続けているとどんどん水分が減っていくので、様子を見ながら適当に水を追加しました。
3時間後、なぜか油が乳化して白濁しています。
味見をしてみると、しっかり旨味がでています。マグロスープができたようです!
こうなったらもうこっちのもの。
フライパンにスープを適量移し、冷蔵庫にあったネギと、まかないで残ったタコを投入。グツグツ。
隣のコンロではスープの煮だしも同時並行中。
グツグツ。
残った冷ごはん投入!
残った卵も投入!
マグロスープの雑炊、いっちょあがりです。
その頃、スープはこんな状態。火にかけてからだいたい3時間半が経過しています。
そろそろこのへんでいいかな……。キッチンペーパーで濾します。
食欲をそそる白濁スープ。冷ますとゼラチン状に固まりました。1週間は楽しめそうです。
マグロの背骨、隅々までおいしくいただきました。
野呂さん、マグロさん、ごちそうさまでした!
今回使用したまかない食材はこちら!
文=尾形希莉子、中川葵