次世代に繋げていくことが私たちの役目——女性梅農家の先駆者は語った。

もうちょっと剪定せなあかんよ〜

やっぱり同じ梅をやっている人に畑見てもらうのは緊張しますねえ


南高梅のベテラン農家:二葉美智子さんが、南高梅栽培においては後輩の深見優さんへ、のんびりとアドバイスを口にしています。


ここは深見さんの梅畑。

「他の農家さんの畑に入ることは滅多にない」という二葉さんが深見さんの梅林にいる理由は、他でもありません。ポケマル編集部が無理を言ってお呼びしたから……!


現役梅農家さんに梅の未来を尋ねる今回の企画。前編は、有機JAS認証の梅栽培に挑戦する若き梅農家:深見優さんのお話を伺いました。

この後編では、深見さんの梅林に二葉さんを招き、梅文化の過去・現在・未来について、あれこれお話しいただきました。


薫風に梅の木が揺れる中、若手とベテランの2人の梅農家は何を語ったのか……? 南高梅を愛する2人の熱い対談をお届けします。


◎【うめ未来会議】は、前後編の2回に分けて、お届けします。

Producer

二葉美智子(みっちゃんの梅)|和歌山県日高郡みなべ町

「みっちゃんの梅」の二葉美智子です。梅農家で生まれ育ち、梅農家に嫁いでもうすぐ40年。年を積み重ねる度に梅の魅力にとりつかれ、生産者自らの情報発信は大切な事だと感じています。

気付けば既にコラボしとりましたねえ

左が深見優さん、右が二葉美智子さん


——まずは深見さんと二葉さん、お二人のつながりについて教えていただいてもよろしいでしょうか?


僕んとこでは、自分たちで梅を作っているほかに梅干し加工業も行っているので、二葉さんとこみたいな梅農家さんから買い取った梅を梅干しに加工して販売も行ってるんです


そうなんです。うちは深見さんとこにはずっと前から梅を出していて、熟成から販売をお願いしています


お世辞じゃないんですけど、二葉さんとこの梅はむちゃくちゃモノがいいんです。うちも色んな梅農家さんと取引さしてもろてますけど、二葉さんとこのはダントツでいい。うちのオヤジも『二葉さんとこだったら無理してでも買え』って言うくらい信頼してます


ええ〜やだわあ。そうなん?

ポケマルスタッフが購入した二葉さんの木熟梅


そうなんすよ。二葉さんの梅はすべて大ぶり柔らかくて薫り高くて……


——深見梅店が二葉さんの梅にベタ惚れなのがよくわかりました(笑)。ところで、素朴な疑問なのですが、梅干し加工用の梅って、梅農家さんはどの状態で出荷するんですか? 


塩漬けして干し終わったものを買い取ってもろとります。紀南での梅農家の仕事は、梅の栽培から塩漬け、干し工程まで。熟成からは加工屋さんのお仕事ですね


そうなんですよ。地域によって違ったりする言いますが、ここではそんな流れがあります


——とすると、すでにお二人はコラボして梅干し作りをしていると


おっしゃるとおりですね。気付けば既にコラボしとりましたねえ


「よまいよまい」言うててもアカン


——先ほど、深見さんについては詳しくお話をお伺いしたのですが、今度は二葉さんのお話が聞きたいです。梅農家になった経緯を教えてください!


私は梅農家に嫁いできたんよ。でも実家も梅農家やっててな、絶対『梅農家にだけはお嫁に行かん!』って思ってたんやけど、強く思ってたら不思議なもんで、いってまうもんなんやなあ。

梅農家の苦労も良う知っとったから、複雑な気持ちではあったんやけど。どうしようもないな、(旦那に)出会ってしまったからなあ(笑)


その気持ち、ようわかります。僕も子どもの頃、家が梅農家であることが恥ずかしくてたまらんかったんです。服とかもどことなく梅干し臭くて『お前、梅くさい』っていじめられたんですよ


ああ、わかるわ〜。

でもな、結局嫁いだあと、女性は手伝いのような農作業しかさせてもらえんし、農業に対して全然面白みを感じなかった。

だから、自分も手伝いではなく仕事として梅作りをしようと思って、手始めに一番難しい梅の木の「剪定(せんてい※)から『やってみたい』言うたら、『いきなり剪定なんてアカン、他んこと全部覚えてからやれ』って……

※新しく生えてきた枝のうち、必要なものだけ残し他を切り落としていく作業。


——確かに、剪定って長年の経験と勘が必要な難しい作業という印象があります。


でも全部覚えてからでないとダメなんて、そんなん面白うないやん。時間もかかるし。だから言うこと聞かんで勝手に剪定しようとした

したら旦那も『変にいじられる』って悟って、諦めて剪定の方法を教えてくれたんやわ


——なかなかアグレッシブなことされたんですね(笑)。


自分なかではそんなことない思っとるけどねえ。

結果的には、剪定はじめてすぐ町内で女性向けの剪定講習会やろうって話になってね。今まで女性の仕事ではなかったけど、もう女性もやらんとアカンよねってはじめることにしたんよ。

だって、一回家庭に入ったら外の情報が全然入ってこんし、家のなかだけで子育てずっとやっとると息も詰まるやろ


それまでの慣習になかったような新しい動きを取り入れると、いい意味でも悪い意味でも目立っちゃいますよね。ちょっとでも県外へ行こういうなら『あの人どこに遊びにいってん』ってウワサになるし


でも自分で動かなきゃならんやん。女性も外へ行って知識を深めることで、何でも前向きにやっていくんが大切やと思うんよね。だから私は自分で段取りを全部行って、自分の時間を確保するようにしとるよ


それは素晴らしいですわ!


よまい、ってわかるかな。ええと、方言なんやけど……要は、『弱ったなあ、まいったなあ〜』ということよね。『よまいよまい』ばかり言って仕事してたら子どもは同じことしようとは思わんのよね


そうなんですよね。アカンって言うけど、実は何がアカンかわかっとらん人もいる。二葉さんの活動もそうやけど、販売に関してもまったく同じことです。ちょっと自分でも販売してみようかなと思っても、めんどくさいが先に立つんですよね


でもそれを言ったらなんでも面倒やんか〜。手間と思ったら何もできなくなるんよね。自分らで動かんと


——そんな姿を見て、二葉さんの娘さんたちはどう思ってるんでしょうか?


うちの子らは三姉妹なんやけど、みんなお嫁に行ってしまって。でも私みたいに『継ぎとうない』言うこともないなあ


どんどん自分らで盛り上げんと、次の世代の子らもやりたい思わんですものね


そうそう。私も情報収集するために東京行ったりするんやけど、『あの人またどっか遊びに行って』って思われとるかもしれん。けど、そんなん言うてたらなんもできんもん。『仕事やも〜ん』って出かけとるよ


漬けも干しも、言ってしまえば勘なんよ


——先ほど深見さんが絶賛された二葉さんの梅ですが、種類は何ですか?


うちは南高梅やっとるよ。だいたい収穫は6月の半ば過ぎてからかな。完熟した梅はお日様に当たったところがぽっと実が紅く染まるから、とってもかわいくてねえ


——6月半ばというと、完熟梅ですか?


ううん。うちは『木熟』いうて、完熟の少し前で収穫しとるよ。お客さんのところに届いたくらいにちょうど良くなっているように。

自然に落ちた実を拾う完熟梅と違って収穫のタイミングが判りにくいから、誰でも採れるというわけやないんよ。自分らでしかできんから、大変なんやけどね

二葉さんの木熟梅(出品ページより引用)


二葉さんの梅は、とっても肉厚で柔らかいんです。それが最高なんですが、一方で実が崩れやすいので繊細なんです。丁寧に扱わんと割れてしまう


そうそう。でもやっぱり南高梅が一番! 箱を開けた途端の香り高さが群を抜いとる。他の品種も試したことがあるんやけど、梅干しにしても梅酒にしても、香りが落ちることがないんよね


南高梅はオールマイティーですよね。何にでもバッチリ合う


——『二葉さんの梅は繊細』とのことですが、何が要因となって他の梅農家さんのものと違いが現れるんでしょうか?


多分、塩漬けのときに一番違いが現れるんじゃないかな。コンテナに梅をどさーっと入れて、そこへ一気に塩をどさーってかまして作る人もいるけど、うちではしっかり手作業で梅に塩をかますんよね。

小さなコンテナに梅を敷いて、そこに塩を入れて、また梅を入れて……って手作業で層にする。その工程はお父さん(=二葉さんの旦那さん)一人でやることになってて誰も手伝えん


旦那さんひとりでやってらっしゃるんですか!


そうなんよねえ。あとは干しでも食感が変わるかねえ。うちはちょうど山間の谷にあるから、干しは毎年夏にやっとるよ。日陰だから皮も焼けんし、夕方になるといい風が来てね


逆にうちは夏やと陽で焼けてもうて。春と秋に干しとりますね


——隣接地域でも立地によってそんなに方法が異なるんですね! それぞれの家の味は、代が変わると変化するものもあるんでしょうか?


う〜ん、味は変わらんかな。一応うちには受け継がれてきたレシピがあるから、変わるとしたら食感よね。でも漬けも干しも、言ってしまえば勘なんよ


まさに勘。ようわかります


何をどうすればこうなる……って伝えられんのよね。やってたらわかるとしか言いようがないわ


もともと梅干しはとてつもなくしょっぱいものなんよ


——梅干しを取り巻く現状について、梅農家としてどう感じていますか?


本当の梅干しを知らん人が増えたなあって思いますね


そうね、白干しを知らん人ばかりやわ


——二人のおっしゃる白干しが、「本当の梅干し」なんですか?


今って食べやすいハチミツ入りや減塩タイプが人気なんよね。でも白干しいうのは、元来の梅干しの作り方でできたもので、20%の塩で漬けとる。だから、もともと梅干しはとてつもなくしょっぱいものなんよ。

だけども最近は食べやすいものが主流になったせいで、お客さんからも『しょっぱすぎます!』ってクレームが入ることもあったり(笑)


梅干しって本来は保存食だから、塩分濃度が高くないといけなかったんですよね。現在では保存環境が各家庭で備わっているから、そこまでしょっぱくする必要がなくなったんです。うちでもお客さんに『冷蔵庫にいれんくても持ちますよ』って言うとるんやけど、絶対みんな冷蔵保存するんですよね


白干しは白米と一緒に食べるもんであって、そのまま食べるもんやない。だけど最近の梅干しは食べやすいのが増えたから、そのつもりで食べて『しょっぱ〜い!』ってなるんやろね


とはいえ、僕らもお客さんがほしいもん作るのも仕事やから、その時代のニーズに合わせた梅干しを作りますけどね。だから『本当の梅を知らん人が増えた』という現状を生み出した原因には、僕ら梅農家も大きく関わっとるんです。ニーズに応え続けたあまりに、白干しを置いてきぼりにしてしまったんです


でも最近またその事情も変わってきたように思うよ


そうなんですよ。うちの梅干し販売の人気1位はずっとハチミツ入りの甘いのなんやけど、最近、2位に白干しが上がってきとって。お客さんからは『母親やおばあちゃんが昔作ってくれたあの味をもう一回食べたい』って声もあったりしてね。嬉しい傾向です


うちに来るお客さんも、スーパーでしょっぱい梅を取り扱ってないからって買いに来る方も多いんやわ。あとは子育て中の方で添加物を懸念されてうちに来る方とかね


昔の味を伝えていくことも僕らの仕事ですもん


お客さんに伝える努力を怠ったらいけん


僕も昔はとことんこだわったら、みんな振り向いてくれると思っとったんです。でもそれは違う。いいもん、おいしいもんを作るのは当たり前。それを伝えるということも、僕らのやるべきことなんですよね。

だから『面倒やもん』言って、伝えることをおろそかにしてはいけない思うんです


私も商店街の隅っこで梅売るとか、色んなことをやってどんどん梅を出していっとるよ。私が嫁ぐ前までは農家専業で直販はやっとらんかったんだけどね


——二葉さんは開拓者ですね!


やっぱり面倒やけどねえ(笑)。でもせんとならん。やってみて思うのが、やっぱり農家は農家、売り手は売り手だと言うこと。昼は農作業して夜は販売の業務をして……。本当に忙しいもん


今、六次産業が一種のブームみたいになっとるけど、簡単にできるもんじゃないんよね。でもこれだけこだわりもってうちも作っとるし、二葉さんもやってらっしゃる。だからこそお客さんに伝える努力を怠ったらいけん。

お客さんからも応援されるような農家になりたいし、お客さんも興味を持って応援していけるような社会になるといいなあ


そして私たちのもうひとつの役目は、次の世代に繋げていくことなんよねえ。深見さんはホンマすごい思うわ。こんなに若手なのにしっかりやってて。あとはねー……もうちょっと剪定をしてあげるとねー……


あー恥ずかし!!(笑)


* * *


「よまい」言うとっても、何もはじまらん

理想の梅を追求する若手梅農家と、開拓し続ける女性梅農家。紀南・梅文化の守人たちは、次世代の梅文化を見つめていました。


今回登場したお二人の梅の出品はこちら

◎二葉美智子さんの木熟の南高梅。※2018年の出品です


◎深見優さんの南高梅の青梅。※2018年の出品です


◎その他の梅

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Writer

おゝしろ実結

writer&editor&illustrator 自転車や地域文化、芸術を専門に執筆。東西奔走、自転車に荷物を積み離島へひっそり渡航するのが生きがい。2012年に短編小説『常套的ノスタルジック』が筑波学生文学賞 大賞を受賞。2016年執筆のルポルタージュ『ワニ族の棲む混浴温泉』が宣伝会議 編集ライター講座大賞を受賞。他、自転車雑誌やグルメ系Web媒体など幅広い分野で執筆を行っている。旅のイラストなども随時発表中。公式サイトmiyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro

編集=中川葵

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