干し芋マニア必見。五島列島のモチモチお菓子『かんころ餅』を買ってみた

こんにちは。ポケマル編集部の尾形です。

思うように出かけられないこのご時世、「ご当地の食べ物ものをお取り寄せ」して旅行気分を味わっている方も多いのではないでしょうか。

しかし、なぜそれがその地に根付いている食べ物なのか、考えてみたことはありますか?

そこには歴史・地理的な要因があることが多く、理由を知って食べるとありがたみが増し、よりおいしく感じられるようになると思います。

この記事ではそういった観点から、長崎県・五島列島の郷土菓子「かんころ餅」を深掘りしてみます。

目次

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かんころ餅をお取り寄せ

お取り寄せしたのは、花野果(ハナヤカ)の代表・岡本幸代さんのかんころ餅です。

長崎県の離島・五島の新上五島町からはるばるやってきました。関東方面に届いたのは、発送連絡があった2日後のことです。

原材料は、サツマイモ・餅米・砂糖というシンプルさ。つまり、かんころ餅はサツマイモのお餅といえそうです。

見た目は芋羊羹のようで、一本280gあり、持つとずっしり重みを感じます。

同封の説明書きに「柔らかいうちはぜひ、一口そのままパクッと食べてみてください」との文言があったので、さっそく食べてみることにしました。


封を開けると、蒸し饅頭を彷彿とさせる、素朴な香り。紫色の方は、ちゃんと紫芋特有の香りがします。

よく見ると、お芋の粒が残っているのがわかります。表面はツルツルしており、全くベタベタしません。

切り分ける時は結構な力を入れて、かぼちゃを切るときのように両手でググッと押し込みました。

今回はつきたてのお餅を送ってくださったのですが、注文したのは冬真っ盛りだったので、さすがに冷えて硬くなってしまったようです。

しかし、カチカチではないので、そのままひと切れ頬張ってみました。

みっしりとした食感があり、噛むほどにお芋の風味が後を追ってやってきます。ハード系のパンを噛みしめているときのような感覚に近いですね。あまりお餅感はありません。

厚さによって食感も変わります

程よい柔らかさを取り戻すため、ほんの少しだけレンジで温めてみると、もちもちが復活しました。それと同時にお芋と餅米の甘さも強まり、贅沢感が増します。

出来たばかりのお餅は、いったいどれだけもちもちなのでしょうか......現地に行って、つきたてのものを頬張りたくなりました。

かんころ餅を紐解く

現在解っているのは、かんころ餅が五島の郷土菓子であり、サツマイモのお餅であること。「"かんころ"って? 」「なぜ五島に根付いているの?」 など、深い部分はまだ闇の中です。

尽きぬ疑問を解消するため、かんころ餅の生産者である菓子工房『花野果』の岡本幸代さんに話を聞きました。

Producer

花野果|長崎県南松浦郡新上五島町

長崎県・五島列島の小さな菓子工房「花野果」のさなえ&さっぴぃです。島の元気なおばちゃんたちが立ち上げた花野果を2018年に受け継ぎ、2人でサツマイモや小麦などを栽培しながら、サツマイモを使った郷土菓子《かんころ餅》を製造・販売しています。

「かんころ」とはどういう意味ですか?

五島では、干し芋のことを「かんころ」と呼んでいます。サツマイモの皮を剥いて薄く切り、釜茹でした後、北風にさらしてカラカラに乾燥させます

写真:岡本さん提供

そして、「かんころ」を蒸して柔らかくした後、餅米や砂糖と一緒についたものが「かんころ餅」です。砂糖を入れるようになったのは、最近のことです

なぜ干し芋をお餅に入れるようになったのですか?

約200年前、長崎本土から逃れてきたキリシタンたちが山を開き、以来サツマイモは主食として人々の生活を支えてきました 。昔は餅米が貴重だったので、お正月用のお餅にかんころを混ぜてつくようになったそうです

サツマイモそのままではなく、干し芋にしてから餅にするのはなぜでしょうか?

サツマイモは暑さにも寒さにも弱く腐りやすいため、そのままだと保存がききません。そこで、昔の人は干すという手段でサツマイモの長期保存を可能にし、それを餅に入れるようになったからです

写真:岡本さん提供

現在はどういう場面で食べられるものですか?

今もちょっと贅沢なおやつという位置付けですが、自分で食べるよりも、島外の親戚や子供たちに送る人が多いですね

かんころ餅作りのこだわりはありますか

臼と杵を用いて、昔ながらの製法で餅つきをしています。また、優しい甘さや風味を感じられるよう、サツマイモの配合を一番多くしています


かんころ餅は、サツマイモに適した五島の環境と、それを長期保存するための先人の知恵あってこそのものといえます。

このような生産背景を知って食べると、また違う味に感じるかもしれません。

生産者に聞く、かんころ餅の食べ方4選

かんころ餅は冷凍すれば一年は保存可能ですが、硬くなります。生産者の岡本さんに教えていただいたオススメの食べ方を試してみました。

①トースターで焼く

トースターでほんのり焦げ目がつくまで焼くと、優しい食感と甘さを楽しめます

1cmほどの厚さに切り、トースターで2分ほど焼くと、ぷくっと膨れて甘い香りが漂ってきます。

外はサクッと、中はふわっとして、最後にもちもちがやってきます。そのまま食べる時にはなかった焦げ目の香ばしさが、おいしさに拍車をかけてきます。


②バニラアイスに添える

焼いたかんころ餅に、バニラアイスを添えてもおいしいですよ

さつまいも×バニラは合わないはずもなく、温かい×冷たいの組み合わせも最高です。「さつまいも大福アイス」を食べている気分になります。


③バター焼きにする

バターを引いて軽く焼くと、上品な絶品スイーツになります

たっぷりのバターを熱し、かんころ餅をIN。ひっくり返した時の艶やかな焦げには気分が高まります。しかし、意外とすぐに焦げてくるので、注意が必要です。

バターをまとったかんころ餅は、ふわっとしたスイートポテトのようで、デザートとしての満足感が抜群です。


④ピザにのせる

小さくダイス状に切って、ピザにのせてもおいしいです

黄色と紫の2色を乗せると、見た目もカラフルで綺麗です。

サクッとした生地に、もちもちした食感が良く合います。さつまいもとチーズの組み合わせも、甘しょっぱさがクセになります。

かんころ餅作りにかける想い

最後に、岡本さんご自身のかんころ餅への想いについてうかがいました。

岡本さんは、どうしてかんころ餅を作ることにしたのですか?

私は香川県から移住をして来たので、かんころ餅のことは知りませんでした。
島では高齢化でサツマイモ自体の生産量が減ってきています。かんころ餅も、昔は親戚同士で集まって作るのが年の瀬の風物詩でしたが、手作りする人はどんどん減り、今は委託製造する人が多くなりました

写真:岡本さん提供

私たちの工房「花野果」は現在2代目なのですが、1代目の地元のお母さんたちから後継ぎの話を聞き、一から教えていただきました。耕作放棄地を開墾し、かんころ餅に適した品種のサツマイモ栽培もしています。

写真:岡本さん提供

五島を語る上では欠かせない食文化としてかんころ餅を、そして代々続いて来たサツマイモ作りを残したいという思いでやっています

島の大事な文化を継承しようという、岡本さんの五島愛が感じられます

この活動もそうですが、小さな島だからこそ、たくさんの人が応援し、支えてくれます。美しい朝日、輝く海、プラネタリウムのような星空など、五島は日常に溢れる素晴らしい景色も魅力的です

結論:かんころ餅とは

観察し、食べ、生産者さんからの情報をまとめると、このようになります。

「かんころ餅」のまとめ

①場所:長崎県の離島、五島列島

②名前の由来:「かんころ」は干し芋のこと。「かんころ餅」は、蒸したかんころに餅米・砂糖を加えてついた、サツマイモのお餅

③食べ方:出来立てはそのままでもちもち、硬くなったら焼くとふわっとする

④課題:高齢化によるサツマイモの生産量減少、かんころ餅づくりの担い手不足

かんころ餅のこと、サツマイモのこと、五島のこと。

「食べておいしい」をきっかけにして、その奥にある生産背景にも、ぜひ目を向けていただければと思います。

その地のものを食べることは、生産者さんの応援になるだけでなく、尊い日本文化の一つを守ることにも繋がるからです。

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文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵

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