縁起は良さそうだけどヘンな柑橘『仏手柑』とは?香って観察して食べてみた

あけましておめでとうございます。

最近、"ポケマル編集部内No.1の年間柑橘消費量"と言われるようになった、ライターの尾形です。

先日、突然『仏手柑(ぶっしゅかん)という名の柑橘をプレゼントされました。

その存在は知っていたものの、実物を手にするのは初めて。筆者の脳内柑橘図鑑には掲載されていません。

このインパクト大の柑橘、どうやって楽しみましょう。

目次

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仏手柑の香りを楽しむ

今回私の元にやって来たのは、福岡県能古島久保田農園さんから出品されていたこちらの仏手柑。

商品はすでに売り切れでしたが、きれいに届いたか、どう使ったかなどの報告必須という条件で、半額で販売してくださるというモニター商品だったようです。

ごちそうさま投稿には、贈り主の編集部員による「柑橘女子へのプレゼントにしてみました」との”報告”が……。

久保田農園には私も取材で訪れたことがあり、一気に親近感が増しました。

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手近な本で調べてみると、仏手柑は「インド北東部原産。生食ではなく加工向きである」という説明がありましたが、あまり詳しくは書かれていません。

事前情報が少ないほど、解明のしがいがあります。妙に燃えてきました


さて、とりあえず持ち帰ったその日から玄関に置いてみました。

仏手柑は切らずとも、置いておくだけで独特の香りが漂ってきます。

ゆずのような爽やかな感じというよりは、バナナのような濃く深い香りとでもいいましょうか。

出かける時も帰る時も仏手柑の香りに送迎され、まさに自然のフレグランス。

置く向きによって見え方も変わるので、しばらくは出かけるたびに向きを変え、その姿を拝んでいました。生け花のようにも思えてきます。

実際のところ、縁起物の観賞用として飾られることが多く、お正月飾りとしても活躍しているようです。

仏手柑の見た目を例えて楽しむ

独特な姿は、眺めるほどいろんな形に見えてきます。

誰かがAと言えばAに見えてきそうな、人の数ほど例えようがあるであろう仏手柑。筆者はこんな風に見立てて楽しみました。

題名『クラゲ』
今にも泳ぎだしそうなクラゲです。


題名『バレリーナの服』
顔をつければ、バレリーナっぽくもなります。


題名『獲物を捉えるイソギンチャク』
獲物(みかん)を捕らえました。


題名『ヤマタノオロチ』
たくさんの頭が迫り来るようです。


題名『万歳しているような影絵』
面白い形を生かして、影絵芝居もできそうです。


この仏手柑ひとつあれば、「仏手柑大喜利」が開催できそうです。賞品は、もちろん仏手柑で。

仏手柑の謎の中身を解剖して楽しむ

玄関に1週間置いておくと、はじめはしっかりとしていた指も、関節がゆるんだかのようにだんだんしなびてきました。

香りはまだまだ健在でしたが、指先から茶色くなってきていたので、腐らせる前に……と加工のフェーズに突入しました。


おめでたい仏様の手に包丁を入れるのは少しためらわれますが、柑橘好きの血が騒ぎ、飾るだけで終わらることはできませんでした。

十分に見て、香りに慣れ親しんだ後は、複雑な構造をした仏手柑の中身をのぞいてみます。


まずは半分に……サクっ

断面はチューリップのような、妖精のような、可愛らしい感じです。

少しくらい粒々した果肉が出てくるかと思いきや、切っても切ってもその気配はまったくなく、白いワタが詰まっています。

仏の指は全部で23本ありました

さらに驚きなのはこのワタ

文旦などの他の柑橘のようにフワフワではなく、シャキシャキなのです。包丁で切ってもシャキッとした感触ですし、食べてもシャキッとしています。

また、「ワタは苦い」という先入観がありましたが、今回私の元に来た仏手柑のワタには全く苦味を感じませんでした。個体差があるのでしょうか?

例えるなら、まだ味が浸みていないパリッとした千枚漬けを食べているような感覚です。

表皮の黄色い部分は苦味がありますが、少量ならそこまで気になりません。

不思議な食感と風味、クセになります。

仏手柑を食べて楽しむ

さすがに生のまま全部は食べられないので、違う形に変身させます。

①干し柿の仏手柑巻き

黄色い皮は何かの風味づけにいいのでは……と思いついたのが、干し柿のゆず巻きならぬ「干し柿の仏手柑巻き」

干し柿を開いて、きざんだ黄色い皮をのせて丸め、形が落ち着くまでラップにくるんでおきます。

しばらくしたらラップをとるのですが、とったときの香りがなんともすばらしい……。

輪切りにして一口食べると、まず仏手柑の爽やかさが鼻に抜け、後からじんわり干し柿の甘さが追いついてきます。

上品なお茶うけにもってこいの一品です。

②仏手柑のマーマレード

柑橘の皮の使い方としては定番の、マーマレードもつくってみます。仏手柑マーマレードはどんな味に仕上がるのでしょう。

筆者がマーマレードづくりに挑戦するのは、人生で2回目。初挑戦は晩白柚マーマレードだったのですが、茹でこぼしが足りず、苦すぎて食べられないものになってしまいました。

今回はその失敗を払拭すべく、慎重につくります。


一般的なマーマレードは苦味の強いワタ部分を取って表皮だけを使用しますが、今回使用する仏手柑の場合はワタに苦味を感じなかったので、ワタも全てまるごと煮ることに。

皮の形が一定ではないので、細い指の部分は輪切りにしたり、ワタの部分は千切りにしたり、いろんな切り方を混ぜてみました。

刻んでいるときは、レモンの皮のお菓子(レモンピール)のような、爽やかな甘い香りがします。飾っている時とはまた別の香りで楽しませてくれます。

全て切り終えたら、表皮の苦さを除くために茹でこぼします。前回の失敗を繰り返さぬよう、皮をかじって苦さを確認しつつ行いました。

3回茹でこぼしたら良いほろ苦さになったので、全体がかぶるくらいの水皮の1/2量のお砂糖を入れて煮詰め、好みのとろみ具合になったら出来上がり。

おどろくほどに宝石のようなきらびやかさが出ました!


パンにのせても、

ヨーグルトにかけても、

紅茶に入れても。

華やかな香りで癒しのひとときを過ごすことができました。

ワタが多いせいか、普通のマーマレードには無いグニュっとした食感があります。これはこれで面白いです。


結果、今回のマーマレード作りは大成功。初挑戦したときのいろんな意味で苦い思い出は、令和2年に置いていきます。

仏手柑は、見てよし食べてよしの柑橘だった

仏手柑の楽しみ方は、人それぞれです。一般的ではないからこそ、見方・楽しみ方には余白があり、未知なる可能性が詰まっていると思います。

筆者の脳内柑橘図鑑には、

仏手柑とは、指がたくさん生えたような、面白い形をした柑橘。独特な芳香を放ち、主に鑑賞用として使われるが皮のほのかな苦味は加工用にも適している。果汁はないが、ゆずのように使うことができる。

という文字が刻まれました。

この記事を読んでくださったあなたも、今後どこかで仏手柑を見つけた時には、あなたなりの楽しみ方を見つけてみてくださいね。

関連出品

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文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵

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