近頃、ポケマルの変わりダネ調理班となりつつある、ライターのわたなべです。「先日のナガヅカに引き続き、長いモノいってみましょう」とポケマル編集部からお話があったのは11月に入ってからのこと。
長いモノって何だろう……なんですって、ハモ!?
ハモと聞いてイメージするのは……京都、高級料亭、夏、川床、はんなり……今、冬ですよ? ハモって高級魚なのでは? 普通のおうちで調理できるものなんですか?
そんなわたしの募る不安をよそに、「良いハモが獲れました!」と、今回届いたのは鳥取県境港市の中本克也さんのハモ。
Producer
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中本克也|鳥取県境港市
中本克也と申します。克丸という船で、主に小型底引き網漁を行っております。中野港の漁業者で最年少、至らぬところもあるとは思いますが、僕の獲ったさかなを食べてください。 美保湾の魚と克丸をよろしくお願いします。
「ぎゃっ!!」思わず叫んだその姿
海の天候の関係で、予定よりも早くハモが到着。届いたのは、意外と小さめの発泡スチロールでした。
では、さっそくご対面!
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思わず
「ぎゃっ!!」
と、声が出ました。いわゆる“爬虫類”は苦手でも何でもない私ですが、さすがにこれは強烈。極太、超長のハモがとぐろを巻いていたのです。どこが、「はんなり」なのよう! イメージと全く違います。
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にょろーん
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ハモは、ウナギ目ハモ科ハモ属。やはり姿やお肌の感触で予想した通りのウナギの仲間。生態はまだまだ謎に包まれた魚だそうですが、比較的暖かい海を好み、日本海側ではほとんど見られないそう。夏の産卵期になると外洋から瀬戸内海沿岸部に寄ってくるようです。
……ん? では、こんなに立派なハモが今時期獲れるなんて、ハモの旬は一体いつ?
ポケマル豆知識:ハモの旬はいつ?
ハモには旬が年に2度あると言われています。一度目の旬は、産卵直前の6〜7月辺り。その頃がちょうど、京都の祇園祭や大阪の天神祭の時期とも重なるのですね。そして、もうひとつの旬が、産卵を終え、食欲もりもりで身が肥え、脂が乗った晩秋の頃……まさに今時期なのです。
どうりで、こんな片手で握れないほどの丸々とした体になるわけです。
ヌルヌルを落としてから捌きます
では、さっそく、捌いていきましょう。ハモの到着前に、インターネット上のあらゆるハモの捌き方を見てシミュレーションしていたはずなのに、いざ、包丁を持ってみると、どこをどうしていいものだか。
だって、どの捌き方動画や画像でも、こんな大きさのハモはいないんだもの。
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パノラマ撮影でお送りしております(笑)。 我が家のまな板の倍以上
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最長85cm!
でも、私には1つだけわかっていることがあります。
ヌルヌルを制するものは、開きを制する!
と、いうわけで、まずは包丁でしっぽから頭に向けてごりごりとこすって、表面のヌルヌルを落とします。多少力を入れすぎても、皮に傷がついたり剥がれたりはしません。しっかり落とせば、まな板の上で滑ることはありません。
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喉元から包丁を入れてしっぽ側へとお腹を開きます。
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内臓を引っぱり出し、表面とお腹の中を水洗いします。
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1匹目はお腹から開いて、背側も繋がった状態の1枚におろそうとしたのですが……大失敗。お腹側から中骨にそって包丁を入れて開いて、その後中骨をはずして1枚の開きにするプランだったのですが……
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あれれ、ここでいいの? 身は厚いし、骨はゴツイしなので、刃が身のどこの部分にはいっているのか感触がよくわからない
あまりの身の厚みにどこに包丁が入っているのかわからなくなってしまったのです。急遽、3枚卸にすることに。
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どこに包丁を入れるのが正しい? 中骨にぎりぎりに沿うよう刃を入れるはずが、ずれてる気がする……このまま、刃で身を探ると崩れてしまう!
次からは、無理せず最初から3枚卸にしました。3枚卸にしたとしても、元が大きいので、しっかりと身の幅はあります。
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腹骨、背びれ側の小骨を身に添うように切り落として形を整えます。
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ハモの骨切りに挑戦!
いよいよ本日の山場、骨切りです。1mmくらいの幅で皮を切ってしまわないようギリギリまで身に包丁を入れて小骨を切る作業です。骨切りが上手くいっていないと、調理したものにチクチクと小骨が残ってしまいます。
この作業のために、世の中には四角い形で刃の薄いハモ専用の骨切り包丁というものもあるのだそうです。そして、この骨切り、本職の職人さんでも任せてもらえるようになるには、相当な修行を要する難技なのだとか。
我が家に骨切り包丁があるわけはないので、薄い刃の牛刀を使います。刺身を引く時のように包丁を奥から手前に引いて皮のギリギリまで刃を入れると
「プチプチプチ」
と、弾けるような手ごたえがあります。お? 気持ちいいぞ。
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プチプチ、プチプチとやり始めると、本当に気持ちいい。調子に乗ってプチプチしていると、ちょっと幅が大きくなっている。いけない、いけない。
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見た目だけは、それらしくなりました。
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全て、骨切りをして、下ごしらえ完了です。
ハモちりとハモの白焼きに挑戦!
ハモちり
まずは、超スタンダード、ハモちりにしてみました。沸騰したお湯にひと口大に切ったハモをくぐらせて
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手早く氷水で締めます。
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ハモの身がふわふわと開いたように見えることを「ハモの花が咲く」と言うそうです。
ちょっと大ぶりですが、花、咲いてます。赤い柚子胡椒とポン酢醬油でいただきました。弾力のある歯ごたえにさっぱりと上品な味わいです。
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白焼き
次は白焼きに挑戦です。串を打つのですが、身が柔らかいので、べたっとおさえるとつぶれてしまいます。左手でも串を持ち、串の先端で身をおさえながら、身の厚みのあるところに串を打ち込んでいきます。
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さっと塩を振り、串の部分が焦げないようにホイルで包んでグリルで焼きます。
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完成!
焼き上がったら、山椒を軽く振っていただきます。脂っぽさもなく噛めば噛むほど、じゅわーっと旨みが口の中に広がります。
ハモ出汁3変化!ハモ茶碗蒸し、ハモすき鍋、ハモ飯
さて、ここでさきほど3枚卸にした時に出た頭や骨などのアラで出汁をとります。まずは、全部グリルでさっと焼きましょう。
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カメラ目線
沸騰した昆布出汁の大鍋に全部投入。ひと煮立ちしたら火を止めます。ふわーっといい香りが! たっぷりとれたハモ出汁で何を作りましょう。
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ハモ茶碗蒸し
出汁を活かせる料理といえば……まずは茶碗蒸し!
ハモ出汁に醤油、みりん、塩で味付けし、卵液と合わせ、ひと口大のハモとしいたけを入れた器に流し込んで蒸します。
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ホカホカ、トロトロ!
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ハモすき鍋
ハモは玉ねぎとの相性もいいとのこと。そこで、ハモすき鍋を。
ハモ出汁300mlを煮立てたところに、醤油30~50ml、みりん30~50ml、酒少々、砂糖をお好みで入れます。少し甘めにするのがポイントです。
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ハモを入れます。
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そこに玉ねぎを多めで。ここで味見をして味が薄いようなら調味料を、濃いようならハモ出汁を追加しましょう。
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ハモ、玉ねぎにある程度火が通ったところで、春菊、しいたけ、焼き豆腐を入れます。ぐつぐつ。
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卵をからめてパクリ。プリッとした甘辛ハモが卵で中和されていくらでもいけます。確かに玉ねぎの甘みとハモはベストマッチかも。
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ハモ飯
仕上げは、ハモ飯で決まりです。
醤油、みりんで味付けしたハモ出汁で米を炊きます。ハモはさっぱりもいいですが、甘めな味もいいのがわかったので、隠し味に、はちみつをタラリ。
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炊きあがったら白焼きしたハモをたっぷりのせて、混ぜ込みます。
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甘いごはんと混ざるとハモの淡泊な味わいが際立ちます。
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「はんなり」より「あんじょう」?
ある時は堂々と主役を張り、またある時は一歩ひいて他の素材を包み込む。
衝撃の対面からは想像がつかないほど、ハモはそれぞれの料理に寄り添うように変化しました。これは「はんなり」というよりは「具合よい」という意味の「あんじょう」? 京都の皆さん、使い方間違っていたらごめんなさい。
具合よく料理になじむという点では、特別扱いにしてあまり食べないってのはもったいないかもしれません。特に、出汁と身の味わいが一緒に楽しめる茶碗蒸しやハモ飯はおススメです。
普段のごはんにも、ハモ、いいですよ。
関連出品
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他にもいろいろ。漁師直送の魚介類たちはこちらです。
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1968年、北海道生まれ。設計デザイン、商品開発などに携わったのち、宣伝会議 編集・ライター養成講座 上級コース 米光クラス第7期受講。修了後ライターとして活動。現在、札幌国際芸術祭2017【大風呂敷プロジェクト】に運営サポートとして参加中。