待ってくれぬは納期と旬——
世間が寝静まる時間帯、ぽつんと光が灯るは我が仕事部屋。毎度ながら原稿の納期に終われ、血の涙を流しつつ執筆するも、進捗は数分前からパタリと動きを止めてしまいました。
「おいしいものを眺めれば、きっと原稿もかけるに違いない」
などと淡い希望を抱き、ブラウザで開くはポケマルのコミュニティ画面。そこでふと目に入ったのは、とある漁師の叫びでした。
生産者さんのリアル方言にグッとくる……
叫びの主は、秋田の最北端で漁業を営む山本太志さん。玄辰担馬丸の船長を務め、ハタハタやマダラ、ノドグロ、エビ、イカを獲っている人気漁師さんです。
深夜、ナチュラルハイ状態の筆者。気がつけばガサエビをポチっていました。それが天にも昇るほど素晴らしい食体験に繋がるとは……当時は知るよしもありませんでした。
入手困難! 幻のエビ、その所以
が、漁師の山本さんからは注意書きが諸々。
「希少なエビですので今後も漁模様により発売停止になることもございます」
「注文があっても獲れない可能性もあります。予めご了承ください」
「(注文が)20件を超えた段階で、(今週の)新規受付は停止させていただきます」
それもそのはず、ガサエビは幻のエビなんです。
1日で獲れるエビの比率は、ボタンエビ70%、ホッコクアカエビ25%、ガサエビ5%。
つまり、量を確保するのがめちゃくちゃ大変なんです。幻の食材を獲って送ってくださる漁師山本さんに対しては、すでにありがたみしかありません。
無事漁を終え、ガサエビが我が家にやって来てくれますように。
念願のガサエビ着弾!
注文翌日からガサエビの発送を待ちわびて気が気でない筆者。仕事中もチラチラとメールボックスを確認してしまいます。
貴重なガサエビを最高鮮度のおいしさでいただくためには、人間がエビの都合に合わせるしかないのです。
そして数日後の13時18分、ついに念願の発送連絡メールを受信しました。
メールを読みつつ「やった〜〜〜!!!」 と小躍りする筆者
普段はありえないほどのスピードで仕事を片付け自宅へ舞い戻り、とうとうガサエビ(を携えたヤマト運輸のお兄さん)が我が家に到着です!
500gでおおよそ40尾ほど。2〜3人前くらい
まずは観察してみます。第一印象は黒い!
驚くレベルで黒々としています。山本さんの「見た目は醜いですが…」の言葉が蘇りました。
個体は大小様々で、中には卵を持っているものも
念願のガサエビ、レッツクッキング!
漁師・山本さんオススメ「塩網焼きまるごとガブッと」
事前メールで教わった通り、まずはシンプルに網焼きで。卵を持った個体を積極的に選んで焼いていきます。
①エビを水洗いする
水を張ったボウルにエビを入れて優しく洗います。雑に洗ってしまうと卵がポロポロ落ちてしまうので、丁寧に一尾ずつ手洗いです。
②ガサエビ on the 網、そして塩を少々
言ってしまえば、あとは焼くだけ。シンプルイズベストです。
お好みで塩を少々
下面が赤くなったらひっくり返し、まんべんなく火が通るようにしましょう。
とは言ってもお刺身でもいただけるレベルのエビ、火加減を見つつ好みでいただいちゃいましょう!
③完成!
焼き上がりを一口、もちろん頭からかぶりつきで
飛び込んでくるエビ味噌の甘み、カリッカリのエビの殻。噛むほど増える増える至高の旨味に、思わずコンロの前で震えます。
濃厚な甘み、とろける刺身に感涙
次は個人的にやりたい調理法ランキングNo.1。
やっぱりお刺身です。躊躇なく殻を剥いていきましょう。お刺身に向いているのは大きな個体です。処理もしやすい上に、食べ応えも抜群です。
①頭は捨てちゃダメ! やさしく殻剥き
通常のエビ剥きの要領で殻を剥いていきます。その際、頭は別容器に入れて保管しておくように。捨てちゃダメですよ!
だってあれだけ美味しい味噌があるんだもの、後ほど再利用しないわけないじゃない。
②腹面に切れ込みを
剥き身の腹面へ縦に切れ込みを入れて広げます。この工程の有無はお好みでOKです
③愛を込めてお皿に並べる
気合い十分の筆者は、大根で自作ツマを作り山わさびを削ってしまいました。よだれを垂れ流しながら大皿に盛り付けします。とにかく愛を込めて並べましょうね。
「この光沢がたまらないのだ……」ぶつぶつ呟きながら、ひとり台所で盛り付ける
完成!特製ガサエビ定食
「ああん、ガサエビまみれになりたい…」という思いから生まれた「特製ガサエビ定食」、ちょっと自慢させてください。
我ながら凄まじいものを作ってしまった
特にご紹介したい(そして食べてほしい)のはお味噌汁!
お刺身の際に取っておいた頭で出汁をとりました。具材は大根、た〜っぷりエビの旨味が染み込んでいます。これぞ最高という言葉の極致を表現するお味噌汁です。
ということで、余すことなくがっつりいただきましょう!
夢だった「ガサエビ刺身をモリモリ食べるイベント」も同時開催
お刺身を舌の上に乗せ、漏れ出るのは「うそぉん……」という言葉。
なんなのこの甘み、トロントロンの至福がここにありました。自分の味覚が信じられなくなるほどの味わい深さが、この小さな身に詰め込まれています。
神々しい光を放つガサエビ剥き身
はは〜ん、こりゃあ大人気になるはずです。そりゃあ山本さんも大忙しなわけです。
山本さんに、そして全てのガサエビに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
まだまだ止まらぬガサエビの輪!
——ガサエビは止まらない。
コミュニティ投稿をみれば、生春巻きにアヒージョ、トムヤンクンなど夢と希望に満ち溢れたお料理の数々が目に飛び込んできます。
私もすかさず「ごちそうさま」を投稿しました。
すると後日、山本さんご本人よりお返事が。
えーっ…あれより上位レベルの存在があるの? ガサエビ道、奥が深すぎます。
そういうことならば記事にして、このおいしさと、獲るのがどんなに大変かというリアルをもっとたくさんの人に知ってもらおうっと!!!
ということで、今回の記事が完成したのでした。
……というタイミングで、なんということでしょう!
ハタハタ漁がはじまるため、ガサエビは10月10日前後で一時出品停止になる予定!!!
この記事は10月7日に公開するので、購入できるのはあと2〜3日というところでしょうか。
みなさん、ガサエビの都合に合わせましょう。
山本さんの出品はこちら
幻の深海ハタハタも登場。日本海魚介の本気シーズン、開幕です!
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フリーランスライター・編集者。自転車や地域文化、一次産業、芸術が専門。紙雑誌やWeb媒体問わず執筆中。ポケマルでは農業初心者を生かし、わかりやすく愉快な記事の執筆を目指す。イラストや漫画も発表中。twitter:@moshiroa1 Web:https://miyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro