最強の寿司飯をつくる。肝はやっぱりお米の品種選びにあった!

別れと出会いの季節、春。歓送迎会や進級進学のお祝いの定番といえば、手巻き寿司パーティーでしょう。刺身や野菜をもりもり準備して、気兼ねなく盛り上がることのできる素晴らしい日本文化です。

手巻き寿司の必須アイテムといえば寿司飯。海苔と並んでどんな具材を巻くにしても、必ず口にする食材のひとつです。


何気ないからこそ死角になりやすい寿司飯。ポケマル編集部は強く思ったのです。

「せっかく食べるなら最強の寿司飯、食べたくない?」

そんな一声で開始したプロジェクト。ポケマルが総力を結集して「最強にうまい究極の寿司飯」に挑みました。


米・穀類のリアルタイム商品一覧はこちら

目次

ここに目次が表示されます。

戦いは米選びから始まっている

コシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれ……。「お米」と一口に言っても、品種によって味わいも違えば食感も違います。お米ごとの適材適所を考えたときに、寿司飯用には一体どんな品種がベストなのでしょうか?

ポケマルで出品されているお米の品種はなんと20種類以上! 以前ポケマルでまとめたこちらのお米品種一覧を見てみましょう。

こんなにあるのかお米の品種!あのレア品種も販売中〜編集部のクリップ帳〜

そんな中、目にとまったのはこちら、ササニシキ!

ササニシキは、まさに寿司飯のための米


ポケマル随一の品種マニア、編集部ナカガワ曰く、寿司飯に向いている品種は「粘り気の少ない」お米なのだそう。その理由を、詳しく聞いてみましょう。


——ナカガワパイセン、「寿司飯には粘り気の少ないお米」とのことですが、そのこころは?


えーとね、お米にはデンプンが含まれているっていうのは小学生の時に習ったと思うけど、実はお米のデンプンには2種類あるんだよ。「アミロース」と「アミロペクチン」の2種類。ここまでは良い?


——は、はい。(パイセン、専門性高くて好きっす。さすがっす。)


それでね、お米の粘り気は、アミロースとアミロペクチンの含有率の違いによって変わるの。アミロペクチンが多くなるほど、もちっとした食感が強くなる。たとえば、もっちり代表の「もち米」は100%アミロペクチン


——アミロペクチンがもっちり感を出すんですね。


そうそう。日常的に食べているお米は「うるち米」っていうんだけど、これにはアミロペクチンが80%前後、アミロースが20%前後含まれてるの。うるち米グループの中でも、アミロペクチンが多くてアミロースが少ないものほどモチっとしていて、アミロースが多くなるにつれてさっぱりサラッとした食感になるの。


——アミロースと粘り気の関係についてはわかりました先生。


では本題にはいりますね。お寿司はネタの繊細な味わいを楽しむものだから、お米自体の味が主張しすぎないほうがいい。寿司飯はすし酢とご飯を混ぜて作るから、粘り気が強いお米だとすし酢の吸収がよくなくてネバッとしちゃう。だから、あっさり味でサラッとしているお米が、寿司飯に向いていると。


——あっさり味でサラッとしているお米の代表選手が、ササニシキというわけですね。


正解。よくできました! ただ、結局こういう好みって人それぞれだからね。自分がおいしいと思うお米ならなんでもいいと思うよ!


というわけで、最強の寿司飯づくりの勝敗は品種選びの時点でほぼ決まってしまうということがわかりました。そこで、今回は品種マニア中川のチョイスで岩手県・佐藤勧さんのササニシキを使用することに。

佐藤さんの愛とともに東銀座オフィスに届きました。

米1kgはだいたい6合ぶん。お試し購入にぴったりの量です。


肩の力を抜いて、まずは米炊きから

それでは早速お米を研いでいきます。ここでトライしてみたい工夫がひとつ。


「いちばんはじめにお米に触れさせるお水は、おいしいお水を使用する」ということです。


お米は最初に注いだお水を、最も勢いよく吸水します。

米とぎの際にはじめから水道水を使わず、初手においしいお水(軟水)を使うのが、品種マニア中川がお米農家さんから教えてもらった炊き方のコツなのだとか。ちなみに海外のミネラルウォーターに多い「硬水」は炊飯には不向きですのでご注意を。

初手をおいしいお水で洗った後は、水道水で研いでOKです。水道水絶対イヤ!という方は、そのままおいしい水をつかってくださいね。


ちなみに品種マニア流の炊き方はこちら

最初のお水、最後のすすぎのお水、炊くときに使うお水の3回はおいしい水を使用。この方法なら2Lペットボトル1本でピッタリ!


お米を研ぎ終わったら、炊きます。

寿司飯用のお米は「固めに炊く」がポイント。


何かとても特別なことをしなくてはならない……! と力んでいるところ大変申し訳ないのですが、ここは文明の利器にあやかりましょう。

最近の炊飯器には「寿司飯モード」が搭載されており、お釜にも寿司飯用の水量が示されている場合が多いです。そのため、ここは素直に寿司飯モードで炊き上げることにしました。

「どうせ固めに炊くから」といいながら、吸水の時間をおかずにそのまま炊飯ボタンをポチっとする品種マニア。

今回は4合で炊きました


寿司飯モードがない炊飯器の場合は、お米とお水を1:1の比率で炊いてくださいね。


寿司酢も手づくりしてみよう

米を炊飯器にセットしたら、寿司酢作りをしてしまいましょう。

スーパーでは調味済みの寿司酢も販売していますが、微妙に余ってしまった寿司酢に頭を悩ませてしまうのもなんだかなあ……。というわけで、今回は寿司酢も手づくりしてみましょう。安心してください、簡単です


材料(4合分/160ml分の寿司酢ができます)

砂糖・・・
73g
塩・・・
24g
米酢・・・
110ml

*参考にさせていただいたのは『寿司屋の女将さんの小話』より「寿司屋の酢飯(シャリ)の作り方~保存版よ。」のレシピ。 おかみさん、本当においしく出来ました。ありがとうございました……!


世間では仰々しく寿司酢と売り出していますが、入っているのはシンプルな材料だけ。これらを混ぜ合わせて1日置きます。

お砂糖は三温糖を使用。色が気になる方は白砂糖をお使いください。


しかし今回は、前日に準備しておくなどという気の利いたことをしなかったため頭を悩ます私たち。

一般的には加熱すると風味が飛んでしまうと言われるお酢ですが、背に腹は代えられぬ。混ぜ合わせたお酢を湯煎で軽くあたため、お砂糖お塩をだいたい溶かします。


寿司飯作りの醍醐味! スピード勝負の混ぜ込み

お米が炊き上がり、寿司酢も完成したのならば、寿司飯作りの大仕事・混ぜ込みに挑戦です。ここからはスピード勝負。気合いを入れていきましょう。

必要なもの:

  1. 木製の飯台(寿司桶のことですね)
  2. うちわ(見当たらなかったので、飯台の蓋で代用)
  3. しゃもじ


①飯台に炊きたての米を投入する

木製の飯台は、余計な水分をほどよく吸収してくれるので寿司飯作りのマストアイテムです。お釜をひっくり返し、塊の状態で飯台に投入しましょう。


②アツアツのお米に寿司酢をかける

炊きたてのお米の塊に寿司酢をかけていきます。


③縦に切り込みをいれるように塊を崩していく

しゃもじで縦に切れ込みを入れるように崩していきます。ぱっと手早く!


④切るように混ぜる

ここからが勝負です。全体に寿司酢が馴染むよう、手早くまんべんなく混ぜ合わせます。決してネチネチ混ぜてはいけません。お米全体を縦にサクサクと切るように。時々底のお米をひっくり返してまたサクサク……。この間、約1分です。手早くスピーディーにいきましょう!


⑤米を広げて10秒あおぐ

お米をおひつに薄く広げて、うちわで10秒間あおぎます。その後しゃもじで全体をひっくり返し再度お米を広げたあと、もう一度10秒あおぎます。


⑥2時間ほど寝かして完成

できたては少しべちゃっとしているので、蓋をして2時間ほど寝かし、お米と寿司酢をなじませるのが理想です。(今回は1時間程度寝かしていただきました。これでも非常においしかったです)

ちょこっと味見する筆者「こりゃたまげた、最高にうまい…」


パーティーをもっと盛り上げる、とっておき食材たち

せっかくなら、寿司飯に合うおいしい具材が食べたい! ポケマルスタッフが厳選したとっておき食材が、パーティーに彩りを添えました。


◎盲点だった…! 見直すべきは海苔!

寿司飯と同格の存在といえば海苔。手巻き寿司では百発百中ならぬ”百口百中”口にする食材です。今回準備したのは、佐賀県の藤川直樹さんが作っている海苔です。


これが凄まじいんです。封を切った瞬間に立ち上る香り。一枚一枚が厚い。

10枚で約30グラム。1枚あたり3グラム……。


そして口に入れた瞬間、気づくのです。ただ「巻くもの」として認識していた海苔が、ここまで豊かな表情をしていたということに——。

焼海苔だから包丁で切れる!カスが飛び散らない!


死角でした。ポケマルスタッフはこれから声を大にして主張していきます。

手巻き寿司パーティーを盛り上げるならば、海苔にはこだわっていこうぜ!!


◎子持ちアマエビは二度うまい

石川県の逢坂さんが水揚げした天然もののアマエビは美しい赤色です。大時化つづきで当日に間に合うか危ぶまれる中、運良く天候も回復しポケマルの食卓にやってきました。



注目したいのがエビのおなか。青緑色のぷちぷちはアマエビの卵なのです。身も卵も二度おいしい! うれしいアマエビをいただきます。

卵は身から外し、エビの頭から取り出したおミソと、みりん・醤油・お酒と混ぜ合わせます。あら簡単、酒の肴が一品仕上がっちゃいました。


身は殻と頭を外し、手巻きしやすいように下処理をしておきましょう。


出会いも別れも、おいしい食材と一緒に「乾杯」

とうとう準備完了した「ポケマル手巻き寿司パーティー」。究極を目指した酢飯を筆頭に、海苔、エビ、刺身、野菜が豪華絢爛に並びます。


ポケマルインターン生の中にも、この春大学を卒業し、社会に巣立つ者が。彼の前途を祝して、おいしく巻き巻きしましょう!

自分で好きな食材を好きなように巻き巻きしましょう。


「この……ちょっとおいしすぎやしませんか?」

ひとつひとつが艶々と立っていて、なおかつ薫り高い!」

「まって、これ最強なんだけど。この米と海苔を永遠に食べ続けたい」

「いや、ここにアマエビを巻くとすごいことになっちゃうんじゃ……」


食事の時間は、人とのふれあいの時間でもあるのです。

作り手さんと交流しながら、調理をしてみる。ちょっと失敗しても大丈夫。会話も空間も、ぜんぶおいしくいただきます。

そんな、ポケマルが提案する食体験の究極が、手巻き寿司パーティーではないでしょうか。

おもちゃのお寿司屋さんセットで大盛り上がり。気になる方はこちら


作り手のみなさん、おいしい時間をありがとうございます! そして一緒にいただいた食べ手のみなさん、たのしい時間をありがとう

究極の寿司飯で手巻き寿司パーティー……自信を持ってオススメします!


Writer

おゝしろ実結

writer&editor&illustrator 自転車や地域文化、芸術を専門に執筆。東西奔走、自転車に荷物を積み離島へひっそり渡航するのが生きがい。2012年に短編小説『常套的ノスタルジック』が筑波学生文学賞 大賞を受賞。2016年執筆のルポルタージュ『ワニ族の棲む混浴温泉』が宣伝会議 編集ライター講座大賞を受賞。他、自転車雑誌やグルメ系Web媒体など幅広い分野で執筆を行っている。旅のイラストなども随時発表中。公式サイトmiyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro

Magazine

あわせて読みたい