神経締め? 熟成? 行列のできる店に聞いた、旨い刺身の新常識

突然ですが、魚の名前クイズです。

皆さん、こちら2枚のお刺身の写真をご覧ください。

1枚目は……そう、ブリです。漁師直送の新鮮なブリ。プリップリの食感が楽しめます。

では、2枚目は?

分かった方いますか?……タイ、スズキ、え?カンパチ?


うーん残念、こちら、なんと同じブリ!お店で6日間熟成させたものなんです。


普通のブリの赤い身が、寝かせることで脂がまわって白くなり、血合いまで消えてしまう。

気になるそのお味は?……もっちり、まったり、身の旨味が口に広がり、もはや「ブリのお刺身」とは別物の料理だそう。


ただし、スーパーで切り身を買ってきて6日置いても、痛むだけでこうはなりません。


腕のいい漁師さんが上手な脱血(だっけつ)と神経締め(しんけいじめ)をさせた魚の切り身だからこそ、冷蔵庫で置くだけで熟成刺身ができるのです。

 

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「熟成」刺身が、普通の刺身より美味しい理由

そんなお魚クイズを出してくださったのは、神奈川県藤沢市「江ノ島小屋」の苅米(かりごめ)雅彦さん。



アジのタタキがたっぷり乗った「まかない丼」や朝獲れのしらす丼、魚づくしの定食など、美味しい海鮮を求めて一年中、平日でも行列ができる超人気店。キラキラ光る海と江ノ島を臨む、潮風が心地よい店内は朝からお客さんの笑顔でいっぱいです。


江ノ島小屋名物の「まかない丼」


さて気になる熟成刺身についてもっと教えてもらいましょう。


私たち消費者は、とにかく新鮮な魚がいいと思い込んでいますが?


「うちでは、朝獲れの魚はしらすしか使わないんです。

獲れたての魚はコリコリした食感は良いけれども、魚自体に味がしないですから」。


確かに、新鮮なお刺身、どんな味かと聞かれたら……わさび醤油味?かもしれません。


では苅米さん、熟成って一体何なんですか???


神経締めをする事によって旨味を引き出すことに適した状態になり、その結果旨味成分となるグルタミン酸やイノシン酸などが増していくんです。

普通の刺身は、熟成する前に劣化し腐敗が始まってしまうのですが、神経締めした魚は身の劣化を遅らせているので、旨味の出た状態にもっていくことができるというわけです。」



江ノ島小屋では、届いた魚を料理人が見て、それぞれ熟成のさせ方を決めていきます。

これは3日、これは1週間、中には2週間寝かせるものも。


そんな、魚の旨さに何よりこだわる同店が、熟成刺身を提供するためにこの5年間直接仕入れているのが、石川県七尾市の東端、崎山半島で定置網漁を行う「鹿渡島定置」の魚。


その神経締めの技術の高さに惚れこみ、江ノ島小屋の代表が直談判で漁師直送の提携を取り付けました。

春のマダイやアジ、夏の終わりの青物、冬のブリはもちろん、旬の魚を「鹿渡島さんのなら何でも!」と仕入れています。


その大きな信頼感、もう溺愛と呼ぶ方がいいかもしれません。

「江ノ島小屋」の広報・苅米雅彦さん。社員もアルバイトも全員、鹿渡島定置の船に乗って5日間手伝うという研修があり、ご自身はもう50回以上乗船している。

 

 

家庭でも挑戦できる?熟成刺身を食べるには

お話を聞きながら、期待が膨らんでいきます。と、とにかく食べてみたい……。

では、漁師さん直送で神経締めの魚が届いたら、家庭ではどのようにしたらいいのでしょう。


「ここは一つ頑張って、3枚おろしにしてください。さばかないと老廃物が出てくるし、魚の体内にある塩分が浸透圧で入っていくことで、ドリップが出てきてしまいます」。

おろした魚は柵(サク)にしてラップをし、冷蔵庫で保存。神経締めをしているから、ここから普段できない熟成というお楽しみタイムに入ります。


でも「この魚は何日熟成しよう」という判断はプロでないと難しいですよね……?

「これまで召し上がっていた周期より長く置いてみてください。普段、買った当日食べていたなら翌日、翌々日。今までとは違う食感と旨味が出るはずですよ」。


なるほど、柵ごとに日数を変えてみたり、スーパーのお刺身と比較してみるなんていう実験的なことも面白いかもしれません。

メダイやイシダイなどの脂ののった魚は身が透明になって旨味が増していくし、アジやイワシなどの青魚は新鮮なものと熟成させたものの違いが特に分かりやすいとのこと。


ぜひ試してみたいですね!



DATA

「江ノ島小屋」:神奈川県 藤沢市 片瀬海岸2-20-12(小田急線片瀬江ノ島駅 徒歩2分)

TEL:0466-29-5875 http://enoshima-koya.com/


2月18日(土)には、雑誌「dancyu」さんが主催で、「漁師が教える本当においしい魚の食べ方」と題したイベントが江ノ島小屋さんで開催されました。そこには「鹿渡島定置」の漁師さんも登場!美味しいお魚を消費者に届ける技についても色々とお話いただきました。そのときの様子についても後日レポートをお届けします!


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