生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声 〜 vol.5 柑橘農家の二宮昌基さんより


年々深刻化している気候変動。みなさんは、何か環境の変化を感じているでしょうか?

私たちの食べものをつくってくれている生産者さんたちは、自然と向き合う中で日々環境の変化を感じ、また、すでに生産活動において様々な影響を受けています。

そんな生産者さんたちの状況を、少しでもみなさんに知ってもらいたい。そして、私たちにできることを一緒に考えていきたい。

ポケマルでは、自然環境の変化に直面する生産者さんたちの声をお手紙の形にして、連載形式でご紹介していきます。自然からの警告を「炭鉱のカナリア」のように私たちに伝えてくれている生産者さんの声を、まずは知ることから、一緒にはじめませんか?



愛媛県八幡浜市で柑橘を栽培している二宮昌基です。

ここ数年、夏が長くなり、それに伴って秋がとても短くなったと感じています。以前は10月の上旬には半袖から長袖に衣替えしていましたが、今では下旬まで半袖のままで、11月のある瞬間から急に寒くなっています。

夏が長くなると、病害虫の発生期間も長くなります。以前なら年に3回しかなかった病害虫の発生が、4回に増えたりしています。また、みかんは昼と夜の寒暖差で色がつくので、秋が短いと色づきが悪くなります。

雨の降り方も変化しています。西日本豪雨以降特に感じるようになりましたが、一晩で200mmや1時間で45mmなど、短時間にどっと降ることが増えました。また、梅雨時は、以前であれば6月によく降って7月は雨量が少なかったのが、逆に6月は少なくなって7月に大雨が降るようになりました。

雨はみかんの大きさに影響しますが、これだけ降り方の変化が大きいと、大きさをコントロールするのがとても難しいです。



こうした環境の変化に対して、地域や県では、品種改良や栽培技術の改善に取り組んでいます。

僕は、自然に逆らわずに、温度が高いなら高いなりに、雨が降ったなら降ったなりに、成り行き任せでそこに合わせていこうと考えています。どんなに自分が頑張っても、自然の変化には太刀打ちできません。自然に対して人間が力を及ぼそうとしても、それは川の中に杭を1本立てるようなものですから。なので、そこはもう開き直って、川の流れにのるように、合わせていこうと思っています。

みかんは小玉が人気で、毎年予約を受け付けていますが、天候の影響で予約が入っている量の小玉がつくれないということも考えられます。どうしよう、と頭が痛くなりますが、でも、なければないでしょうがないのです。そのときは、「こんなもんしかできなかったけど、これでいいなら買ってください」とお客さんに正直に説明します。どうしても小玉が欲しい場合は、よそで買ってもらっても構わないと思っています。

10人のお客さんがいたら3人ぐらいしか理解してくれないとは思いますが、そうやって残ってくれたお客さんと長く付き合っていければ、と思っています。




「自然には勝てない」「しょうがない」という言葉を、生産者さんはよく口にしています。そんなどうにもならない状況の中で、今できることを考えて、すでに起きている環境の変化に適応していっているのです。

自然との接点が少ない私たちは、それを自分ごととして捉えることがなかなか難しいかもしれません。でも、生産者さんを通して、変化について知ること、理解すること、心を寄せることはできると思います。

生産現場の変化は、やがて私たちの食卓の変化にもつながります。生産者さんの「カナリアの声」が、みなさんの食に対するあり方や暮らしそのものについて、改めて考えるきっかけになれば何よりです。

まだまだ知られていない、生産現場の変化のお話。生産者さんの「カナリアの声」を、ぜひ周りの方にも届けてください。



今回お話をお聞きした生産者さん

Producer 

二宮昌基|えひめ 二宮果樹園|愛媛県八幡浜市   


前回・次回の記事はこちらから

生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声〜 vol.4 ホタテ養殖を営む中野圭さんより


生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声 〜 vol.6 養豚を営む佐藤裕美さんより


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