生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声 〜 vol.6 養豚を営む佐藤裕美さんより


年々深刻化している気候変動。みなさんは、何か環境の変化を感じているでしょうか?

私たちの食べものをつくってくれている生産者さんたちは、自然と向き合う中で日々環境の変化を感じ、また、すでに生産活動において様々な影響を受けています。

そんな生産者さんたちの状況を、少しでもみなさんに知ってもらいたい。そして、私たちにできることを一緒に考えていきたい。

ポケマルでは、自然環境の変化に直面する生産者さんたちの声をお手紙の形にして、連載形式でご紹介していきます。自然からの警告を「炭鉱のカナリア」のように私たちに伝えてくれている生産者さんの声を、まずは知ることから、一緒にはじめませんか?



宮城県登米市で養豚を営んでいる佐藤裕美です。

ここ10年ぐらいで温暖化が進んでいると感じています。豚は寒暖差に弱く、また、1年の中でも夏場は特に育てるのが難しい動物です。なので、昨年の夏のように気温が高い日と、そうかと思えば急に低い日の繰り返しがあると、なかなか計画通りに育てられません。

もう一つ悩ましいのが、「豚熱」という豚や猪の感染症です。2018年に国内で26年ぶりに発生が確認されて、今は宮城県も含む全国16県で確認されています。豚熱の発生確認後には全国的にワクチン接種がはじまりましたが、接種の影響で2004年から継続していた香港への輸出ができなくなってしまいました。再開するまでには10年ほどかかると言われており、経営にかなり大きな影響がありました。

また、猪の侵入を防ぐために柵を設置しないといけなくなったのですが、養豚はただでさえ収入が厳しく、柵の設置費用は大きな負担です。さらに、養豚仲間は高齢化も進んでいるので、柵を設置してから10年も20年も続けられるわけではなく、かけた分の費用を回収するのがとても難しいです。



温暖化や豚熱への打開策はなかなか見つからず、契約農家の仲間を増やして一緒に養豚することでリスクを分散するぐらいしかできていません。仲間を増やすにしても、若い担い手が出てこないという難しさがあり、県北エリアだけでは生産者数が限られているので、県南エリアまで広げる取り組みをしています。

農業者・漁業者は全人口の1%ほどしかいないですし、その多くは60歳以上の高齢者です。あと5〜10年経たないうちに、この人数は半分以下になると思っています。でも、これはもうどうしようもないとも感じています。

生産者が減り続ければ、自分で選んで買うことができなくなる時代、本当に欲しいものが手に入らなくなる時代が、いずれ来てしまいます。今は、スーパーに行けば何でも売っていて、輸入品も手に入るので、実感はあまりわかないかもしれませんが。

ずっと食べ続けたいと思うものがあるなら、今のうちから、その生産者とつながっておいてほしいです。私たちは、つながっている人の食卓をまもりたいと思っています。




以前から言われてきた高齢化の進行に自然環境の変化が加わり、生産現場はますます厳しい状況に陥っています。

生産現場との接点が少ない私たちは、それを自分ごととして捉えることはなかなか難しいかもしれません。でも、生産者さんを通して、変化について知ること、理解すること、心を寄せることはできると思います。

生産現場の変化は、やがて私たちの食卓の変化にもつながります。生産者さんの「カナリアの声」が、みなさんの食に対するあり方や暮らしそのものについて、改めて考えるきっかけになれば何よりです。

まだまだ知られていない、生産現場の変化のお話。生産者さんの「カナリアの声」を、ぜひ周りの方にも届けてください。



今回お話をお聞きした生産者さん

Producer 

佐藤裕美|有限会社伊豆沼農産|宮城県登米市   


前回・次回の記事はこちらから

生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声 〜 vol.5 柑橘農家の二宮昌基さんより


生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声 〜 vol.7 海士の宗秀明さんより


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