捌けなくても大丈夫。冷凍庫の“お魚定期便”をたしなんだ45日間

なるべく買い物に行きたくないとき。

どうしても仕事に行かなくちゃいけなくて、帰りが遅くなるとき。

そんなとき、冷凍庫にとびっきりのお魚が眠っていたら、どれだけ安心なことだろう。

目次

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3月23日 北海道からお魚定期便がやってきた

北海道の平塚勝一さんの「お魚定期便」を見たとき、「これなら私でもお魚生活できるかも」と思った。加工された真空状態のお魚が、冷凍便で7〜8種類ほど届くらしい。

定期便という名前だけど、1回限りの初回お試し単品があったので、買ってみることにした。

2020年3月23日、我が家にお魚が届いた。

箱を開けると、

「…なんてステキなの!」

高級チョコレートでも入っていそうな包装で、魚が入っているとは思えないほど。

わくわくしながら紐をほどいていく。

するとそこには……

\じゃじゃーん!/

冷凍されたお魚たちが、ぎっしりと包まれていた。

とりあえず並べてみたら、恐るべし存在感。

机が魚で埋め尽くされる日がくるなんて。

7〜8種類が1つずつ入っているのだと勝手に思っていたけれど、2つ入っているのもあるから、数でいったら12個なのね。

ハサミの2倍もあるお魚がくるとは、思ってもいなかった。

不安なことはただ一つ。

単身用の冷凍庫1/4を空けて待っていたけれど、入るかしら。

冷凍庫の隙間にお魚たちを詰め込みながら、いつ食べようか、どうやって食べようか、どのくらいで食べ終わるのか……想像が膨らむ。

もはや尻尾は収まってないけれど、なんとか頑張って押し込んだ。

とりあえず冷凍庫でおやすみなさい。

満足度100%。お魚をたしなむ

同封の紙には、入っているお魚の種類と食べ方が記載されている。

にらめっこしながら、どれを食べるか決める。

よし、今日はこの気分。

3月29日 宗八一夜干し

まずは2つ入っていたこの魚から。

「宗八」はカレイの仲間らしい。

大きめのフライパンに入れて焼く。焼いている時のジュワーっという音と、皮目のこんがり焼けた感じがたまらない。

ほろっとしているから、お皿に移すときにちょっと崩れちゃったけど、味は変わらないもんね。

淡白な味だけど、程よい脂のりでふっくらとした身。食べ進めると、カレイの卵巣を発見。ほのかに甘くて、ぷにっとした食感。

部分によって脂ののり方が違うし、皮の味、卵の味、1匹のカレイで何種類もの味わいを楽しめる。だから、大きいけど最後まで飽きることなく食べ続けられるんだ。

4月3日 ババカレイの煮付け

今日は煮魚を食べたい気分だな。

これは、湯煎かお皿に移してレンジでチン。

お皿にあけるときも、ちゃんと切れ目がついてるからハサミすらいらずで楽チン。

ふっくらとした身に、上質な脂。そしてその脂が、煮汁にも乗り移っている。

お魚自体もおいしいんだけど、この煮汁がたまらない。ガツンと濃い味を飲み込んだ後、口いっぱいに広がる魚の旨み!

ちょっと魚を食べて、煮汁を飲む。これは旨みのダブルパンチ。

ご飯が進む、もりもり進む。まるで減速という言葉を知らぬかのように、食べるスピードはどんどん加速していく。

これだけキレイに食べられると気持ちがいい。

1ミリも逃さずに、お魚の旨みをいただきました。

4月10日 イカの塩辛

ポカポカしていて汗をかいたから、しょっぱいものを食べたくなった。

実は苦手意識のある塩辛。飲み会のお通しとかで出てきても、クセが強くて誰かにあげていた。

だからちょっと不安だったけど、「こ、これならイケる……!」

例えるならば、筋子の醤油漬けのような濃厚さ。従来感じていた生臭さのようなものはなく、食べやすい。

むしろ筋子は大好物だから、筋子のプチプチがイカのコキコキに変わったような感じで、ご飯に乗せてがっついてしまった。

4月13日 ニシンの丸干し

2つ入っていたシリーズ最後のお魚。

ニシンといえば、数の子の親。数の子は食べたことがあるけれど、ニシンは初めてだ。

魚焼きグリルギリギリの大きさ。

滴る脂に、パチッと弾ける音がたまらない。

説明紙に「大根おろしなどと一緒に」と書いてあったから、たっぷりめの大根おろしとともに。

たしかにさっぱりとして合う。

細くて糸のような骨は、とらなくても一緒に食べられる。

あっさりとした味ながらも、食べ終えた後、そこには確実に満足感があった。

4月16日 タコ飯の素

炊き込みご飯好きの私は、タコ飯を食べる日を楽しみにしていた。4月16日、ついに解禁。

スライスされたタコに、角切りのタコ。炊いている間から、とってもいい香りが漂ってくる。

炊けた音がなったらすぐさま駆けつけ、ぱかっと蓋をあける。

ご飯のジュワーっという音と湯気が、とても心地よい。

タコの他にも人参やしいたけ、ひじき、昆布などが入っていて色鮮やかだ。優しい醤油ベースの味はタコにも染みているけれど、完全に侵略されているわけではない。

歯ごたえ十分にありつつも、柔らかくて噛みやすいタコ。ちゃんとタコとしての尊厳を保ちつつ、タコ飯の中に入るべきタコとしての役割を果たしている。

2合分はさすがに食べきれないから、おにぎりにしてお散歩のお供にでもしようかな。

4月22日 ツブ貝の刺身

今日は母親の誕生日。一緒には住んでいないけれど、おめでたい気分なのでこの一品。

ツブ貝は、ちょっと調べてみたら毒をもった部分があるらしいから、自分で捌くのは大変そう。でもこれはすでに加工済みだから、そのまま楽々食べられる。

お皿に出してみたら、思っていたより大きなツブ貝が5個。

ペットボトルのキャップと比べても、圧倒的存在感。

まずはそのまま食べてみたら、「ゴリッ」という歯ごたえ! 貝は「ぷにっ」というイメージだったから、かなり衝撃的だ。

こんなに食べ応えのある貝は初めてかもしれない。そして、貝の甘みが、強い。

「バター焼きなども」と説明紙に書いてあるものだから、加熱したバージョンも試してみたくなった。

ほうれん草と一緒にバターでジュワッと焼けば、これだけで一品おかずが完成する。

火を通すと、ガリッと食感はどこへやら。コキコキシコシコ食感に大変身。バター醤油のしょっぱさと、貝の甘みがベストマッチだ。

4月27日 タラの粕漬け

タラの淡白な味を無性に食べたくなった。

1パックに2切れの切り身が入っている。酒粕のあま〜い香りが、封を開けた瞬間から食欲をそそる。

フライパンで焼くと……

こんなかんじ。

ほろっと崩れて、しこっという弾力。

少し甘めの酒粕タレが、タラの味を引き立てている。タラの主張、からの鼻に抜ける酒粕の香り。

でもちょっと焼きすぎた……かな? あんまり焦がすと、優しい味が焦げに負けてしまう。タラ、あなたって繊細なのね。

説明書には「粕を少しとって」と書いてあったけど、初めてでよくわからなかったからそのまま焼いちゃったんだよね。でももうちょっとしっかりめに取り除いた方が良かったみたい。

分厚い身は、一切れ食べたら結構お腹いっぱいになる。食べられないことはないけれど、もったいないからもう一切れは明日にとっておこう。

5月2日 鱒のルイベ

ゴールデンウィークに突入して、おうち時間をいかに楽しむか模索する日々。私はルイベでちょっとした楽しみを。

「ルイベ」は北海道の郷土料理で、凍った魚をそのまま味わうもの。

(ます)にはアニサキスという寄生虫がいることがあるから、1回冷凍しないとお刺身で食べるのは危険らしい。

まだうっすらと表面に氷が張り付いているマスを切っていく。

お刺身みたいに引いて切るんじゃなくて、上から押して切るような感じ。「ジャキッ」という感触が面白い。

色鮮やかな橙色。ちょびっとお醤油をつけていただく。

最初はジャリっと食感でヒヤッとするけれど、すぐに口の中でとろけてマスの甘みに変わる。

「ジャリ」→「ヒヤ」→「あま〜い」→「ジャリ」→「ヒヤ」→「あま〜い」の無限ループ。

薄く切ったら40切れくらいはあるから、かなりこのループを楽しめる。……でも、それだけじゃ終わらせない。

漬けにして、翌日に食べてみよう。

塩麹と塩昆布の漬け丼。プルンプルンとして、完全に解凍されたマスもこれまたうまし。

それにしても、アイヌの方々、凍らせて食べるなんてよく思いついたなあ。

5月6日 ホッケの開き

5月6日。お魚定期便が届いてから45日目の今日、ついに最後のアイツを食べる時が来た!

届いた瞬間から決めていた、コイツは最後のお楽しみにしようと。冷凍庫で約1ヶ月眠っていたホッケの開き、ついに解禁。

案の定、魚焼きグリルはいっぱいいっぱいだ。尻尾が乗っかりきっていない。

なんともおいしそうな焼き目……。

菜箸だけでは持ち上げられないほど大きい&重いので、両手を使って「えいっ」とお皿に移す。

お魚の主役感が半端ない。ご飯と味噌汁とお魚だけなのに、随分豪華に見える。

テッカテカな脂のりがたまらない。

箸を入れれば脂がじゅわ〜っと出てくる。ホッケは脂の泉を持ち備えているようだ。

ふっくらな身は、干物にありがちなパサパサ感をいっさい感じさせない。口の中でも脂が噴水状態。とはいえ嫌味のない脂だから、さっぱりと食べられる。

干物って、こんなにおいしかったんだ。干物の新たな可能性に出会った気がした。

冷凍庫にお魚を常備しよう

ほとんどは食べてしまったけれど、届いてから2ヶ月経った今も、2つ入っていたお魚の片方は残っている。

でも、もう少しで冷凍庫の中からお魚がいなくなってしまうと思うと、なんだか少し不安な気持ちになる。

今回は単品購入だったけれど、月替わりでお魚の種類は変わるみたいだから、定期購入にしてみてもいいかもしれない。「今月は何が届くかな?」と待つ楽しみが毎月生まれる。

お魚が眠る場所をしっかり確保しておくことを、忘れないようにしなくちゃ。

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文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵

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