キッチンが至福の香りに。自宅でコーヒー焙煎をたしなんでみた

春ですね。読者のみなさまハイサイ! ポケマル編集部員なかがわです。

突然ですが、コーヒーは好きですか?

私は好きです——スゥ(息を吸う音)手元の資料※によれば、その日本での歴史は、18世紀ごろにはじまっているそうですよ。19世紀初めには小笠原でコーヒーの試験栽培が始まり、1899年には日本人が世界初のインスタントコーヒーを発明!20世紀に入ると、第2次世界大戦で輸入量がゼロになることがありましたが、1950年には輸入再開、1969年には世界で初めての缶コーヒーが開発され、1980年には喫茶店ブームが訪れます。そして1996年、スタバの登場で第二次コーヒーブーム(シアトルコーヒー文化)が押し寄せ、2015年にはブルーボトルコーヒーが上陸し、その「サードウェーブ」と呼ばれる波は現在まで引くことなく押し寄せているわけです。

※Discover Japan 2013年12月号

そんな日本人の暮らしになくてはならないコーヒーという飲み物どのようにしてできているか、あなたは知っていますか?

一般的な農作物と異なり、コーヒーづくりは果実を収穫して終わりではありません。果実から種をとりだし、洗い、乾燥させて……その後にも工程は続きます。

今回は、沖縄県の稲福寛尚さんから、乾燥まで終わらせた段階の「パーチメントコーヒー」を購入し、これがあの「琥珀色の飲み物コーヒー」になるまで、自宅で加工してみようと思います!

目次

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これがパーチメントコーヒー…!

こちらが沖縄で育ち収穫され、果肉を取り除かれ乾燥され、東京までレターパックプラスで空を飛んでやってきたパーチメントコーヒー。

「沖縄の農家さんだからゆっくりかもな〜」と気長に待つつもりでしたが、注文翌日に迅速に発送してくださいました。

中には密封袋が2つ。

一見すると、黒い方がコーヒーかな?と思うかもしれませんが、そちらはオマケで入れてくださった「カスカラ」というコーヒーの果皮を乾燥させたもの。お茶にして飲むのだそうな。知らなかった〜。

こちらがパーチメントコーヒー。

沖縄で「ニューワールド」と呼ばれている種類のもので、20世紀にブラジルから沖縄に持ち帰られて導入されたものなのだそう。この時点ですごくロマンの香りがしますね。

大豆みたいな色をしていて、大きさは猫のカリカリ餌を彷彿とさせます。コーヒーのような香ばしい香りは全くしません。どちらかというと……マイルドにした銀杏といいましょうか…美味しそうではない匂い。

これをあの琥珀色した魅惑的な飲み物コーヒーに変身させるなんてことが、私ごときにできるのだろうか……ちょっと不安ですが、先に進んでみようとおもいます。


パーチメントどうやって剥くんだ問題

コーヒーの果実は、外側から順に【果皮】【果肉】【内種皮(パーチメント)】【銀皮(シルバースキン)】【種子】という構造になっています。私たちが普通の会話で「コーヒー豆」と言うとき、それはコーヒーという植物の【種子】を焙煎したものを指しています。

パーチメントコーヒーの状態から「コーヒー豆」にするには、まずは大豆色のパーチメントをとり外さなければなりません。試しに一粒つまみ爪でひっかくと簡単に割れました。パーチメント自体はそれほど堅くないようです。

中からは「シルバースキン」と呼ばれる白い皮がついた、やや緑色のコーヒーの種子がでてきます。ふうん、こうなっているのね。

しかし、これを一粒ずつ剥いていくなんて途方もないこと……そこで思い出したのは、第二次世界大戦関係の資料館で見たソリューション。

一升瓶に玄米を入れて木の棒で突くという精米方法です。

先人の知恵を拝借して、丈夫そうな麦茶ポットと麺棒でパーチメントを剥いてみましょう。

失敗するといけないので50gだけで試してみます。ガラスが割れないよう慎重にギュッギュッと圧をかけていくと……

パチパチという音を立てて、パーチメントが割れています。よーし、パーチメントとれてるようです。種子の割れが心配でしたが、大丈夫そうです。

無心で突くこと30分ほどで、こんな状態。

目の粗いザルでパーチメントの残骸を取り除き、剥けていないものは再び突いて……を繰り返し、ようやく「シルバースキン付きの種子」だけの状態になりました。

この姿、自家焙煎コーヒーのお店で見たことがある気がするぞ。


ハンドピックって、やらなきゃだめ?

さて、お次の工程は豆の選別作業「ハンドピック」です。

選別用の機械を持たない自家焙煎コーヒー屋さんなどで行われていて、形の悪いものや虫食いや異物などを取り除く作業のことです。

黒い板(今回はオーブンの天板を使用)の上にコーヒー豆を広げて選別していくのですが、初心者の私にはどれが良い豆でどれが良くない豆なのか、サッパリわかりません。

①形が変なもの→板を揺すって安定しないものに多い(形が良ければ扁平な部分があるので板の上で安定するという理論)
②虫食いとか色が変なもの→これといって見当たらず
③異物→これといって見当たらず

の3点はわかる範囲で取り除いたものの、これ以上は何を基準に選別すれば良いのやら……

結局、「全部コーヒー豆なんだから、全部焙煎しちゃってOKだよね?」と自分に言い聞かせて終わりにしました。(後ほどわかることですが、結果的にはこれが学びにつながりました)

選別で残った豆を水でゆすいで、細かなゴミや剥けた薄皮などを洗い流したら、次はいよいよ焙煎です!


えいやー!フライパンで焙煎ダー!

ごくごく一般的でたいして広くもない賃貸住宅である筆者の家には焙煎に適した機材はありませんので、ガスコンロと豆の量に合う大きさのフライパンでやってみます。

弱火〜中火でフライパンを熱して、コーヒー豆を木べらで動かしながら、ゆっくりゆっくり様子を見ます。

だんだんと豆が茶色くなるとともに、甘く香ばしいあの魅惑的なコーヒーの香りが漂ってきました。

台所でうっとり……しかしうっかり焙煎しすぎてしまってはいけません。豆の色を注意深く観察しましょう。

どの程度まで焙煎するかは、記憶の中にあるコーヒー豆の色で判断するしかなさそうです。

浅煎りから深煎りまで、コーヒーの味わいの好みは人それぞれですので、ご自身の好みの豆に近い色合いを見計らってくださいね。

……と言いましても、初心者の筆者にはどこが適切なのかサッパリなので、全体が茶色くなったくらいで一旦終了

トレーにざっとひろげてみます。なんだか色がまばら……とても気になるので、色合い別に分けてみたいと思います。

左が茶色グループ右が薄茶色グループ。きれいに分かれました。

薄茶色グループはまだ焙煎しても良さそうでしたので、薄茶色グループだけをフライパンに戻し、もう一度焙煎してみましょう。


ハンドピックの目的がわかったぞ

左側は先ほどと同じ茶色グループ、右側がさきほど薄茶色で焙煎し直したグループです。色むらが目立ちますが目をつぶりましょう。

あれ、なんか、右の豆、大きくないですか?

ほらほら。豆の大きさが全然違いますよ

はは〜ん、そういうことか!

つまり、豆の大きさによって焙煎にかかる時間が違うってことなのですね。先ほどハンドピックを省略したおかげで、自家焙煎コーヒー屋さんがハンドピックにこだわる理由がわかりました。

ハンドピックにはゴミや飲用に適さない豆を取り除くだけでなく、豆の大きさを揃え均一に焙煎できる状態にするという目的があったのですね。そりゃぁ、コーヒーの味わいにこだわる人ほどハンドピックが重要になるわけです。


一方、家でのんびりコーヒー焙煎をたしなみたいだけの私にとっては、味わいの追求は第一優先ではありません。少量ずつ焙煎して飲む程度ならば、今回のように焙煎しながら選別していくスタイルでも良いのかもしれません。

こちらが焙煎が終わったコーヒー。なかなかコーヒーらしい見た目になったと思いませんか?

すぐに飲んで味を確かめてみたいところでしたが、私の行きつけのコーヒー屋さんが「焙煎したてより少し寝かせてからの方が美味しいよ」と言っていたのを思い出し、2日ほど寝かせることにします。


自分で焙煎した沖縄コーヒーを淹れるぞ

そして2日後。ようやく飲めます!

コーヒー豆をよく見ると……おおっ?

市販のコーヒー豆と同じように、ところどころテカテカしています!

コーヒー豆の下に敷いた紙ナプキンを見ると、ところどころ色が変わっているのがわかるでしょうか?

これはコーヒー豆の油分で、焙煎後のコーヒー豆から油分が出るのは正常なことだそう。焙煎成功への期待が高まります。

1杯分、8グラムの豆を中挽きにして、ハンドドリップで淹れましょう。

コーヒーの淹れ方を指南できるほどの腕前ではありませんので淹れ方の説明は割愛させていただきますが、ちゃんとコーヒーになっていますよね?

お気に入りのコーヒーカップに琥珀色の液体が滴々と落ちていくのを眺める時間は、まさしく至福です。

気になるお味は……表現が難しいですが、「マイルドでフルーティな風味」といえば良いでしょうか。飲み慣れたコンビニコーヒーと比べて、刺激が少なく上品なお味。とっても優雅な気分です。

今回の焙煎、大成功のようです。

* * *

島生まれのコーヒーを自宅でゆっくり味わいながら大好きな南の島々に思いを馳せれば、今世界を駆け巡っている混沌もひととき忘れることができます。

今、休日も外出できずにお家にこもらざるを得ないみなさま、もしよければ、沖縄のコーヒーを焙煎してみてはいかがでしょう?


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文・写真=中川葵

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