【レポート】ムーンルージュをお取り寄せしてみた
リンゴといえば、赤や緑の皮と薄黄色の果肉のイメージがありますが、この秋、私たちはそんなイメージを覆す驚きのりんごと出会ってしまいました。
その名も「ムーンルージュ」。
ムーンルージュは、果肉が赤いりんご品種です。生産者は国内でも少なく、市場にはほとんど出回っていないといわれています。
「果肉が赤い」と言われますが、どれだけ赤いのでしょうか。そして、肝心のお味は美味しいのでしょうか。想像するほどに謎が深まっていくばかりの私たちは、ムーンルージュの実物を買って観察してみることに。
そして数日後に届いたのが、こちらのブツ。
長野県須坂市にお住まいの果樹農家の丸山康男さんからポケマルで直接購入したものです。
※2020/11/19追記:商品リンク左は2019年販売商品(この記事で購入した商品)です。右は2020年11月19日現在の販売商品です。最新の商品は記事記載内容と品質等が異なる場合があります。
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今回は、このムーンルージュをとことん観察していこうと思います。
初回公開日:2019/12/10、最終更新日:2020/11/19(商品リンクのみ修正)
だだ〜ん!これがムーンルージュだ!
箱を開けた瞬間からふわっと良い香りが漂ってきます。
「う、うつくしい~」「かわいい~」
立ち会った編集部員からも歓声が上がります。
待ち焦がれたムーンルージュ。その表皮は水彩画のように鮮やかでとても美しく、「これはアートだ」と連呼してしまいました。
ー ムーンルージュの基礎知識 ームーンルージュは、2018年に品種登録された長野県中野市生まれのりんご品種。収穫時期は11月上旬ごろ。「いろどり」と「ふじ」の掛け合わせにより誕生した品種で、「なかの真紅」や「炎舞(えんぶ)」も同じ親を持つ赤肉系品種であるとして知られている。 参考:信州大学農学部果樹研究室ホームページより |
今回購入したムーンルージュは「訳あり」の商品でした。生産者の丸山さんによると、今年(2019年)の10月に猛威を振るった台風19号による暴風の影響で、擦り傷や汚れがあるとのことでした。
確かに、表面に小さな擦り傷があったり、くぼみの部分が少し黒くなっているものもありましたが、どれもムーンルージュたちが頑張った証拠。そんな傷も愛おしく感じます。
ムーンルージュを早生ふじと比べてみる
ちらっ
それではさっそくムーンルージュの謎を暴いていきましょう。
見た目・味・食感など、一般的なリンゴと比較しながら観察していきます。
比較対象として選んだのは、スーパーで購入した青森県産の「早生ふじ」です。選定理由は「リンゴといえばコレというイメージ通りの見た目をしたおいしそうなリンゴだったから」です。
真っ赤な早生ふじちゃん(左)とムーンルージュちゃん(右)
① 果肉の色を眺めてみる
まずは最も気になる果肉の色から。ズバッとタテにカットしてみると……
ババーン
うわっムーンルージュほんとうに赤い!!
「赤」というより「桃色」と言ったほうが近いかもしれません。全面的に均一ではなく、薄黄色い果肉の中に桃色のサシが入って、ハートがじゅわっと滲んだような模様をしています。
「これ本当にリンゴなの?」と思ってしまったほどの独特の見た目。「かたい桃だよ」といわれたら信じてしまいそうです。
水平にカットしたらこんな感じ。やっぱり桃じゃない?
生産者の丸山さんによると、赤みの入り方や量には個体差があるとのこと。切るときにワクワクしますね。
薄くスライスして光にかざしてみたところ、模様が透けて蝶の羽のよう。とても綺麗です。
ただカットしてお皿にのせただけで、とても華やかに仕上がります。
② 糖度を測ってみる
次は気になるお味ですが……実食の前にそれぞれの糖度を測ってみましょう。
早生ふじとムーンルージュの果肉をそれぞれ押しつぶして果汁を絞り、糖度計(屈折計)で測ります。
<結果>⚠️数値はこの日使用したりんご1個体の糖度です。 |
「ムーンルージュのほうが糖度高いけど……普通のりんごの糖度ってどのくらいなんだろう」
実はこの時まで一般的なりんごの糖度の基準をよく知らなかった私たち。
インターネットで検索してみると、「美味しいリンゴ」と謳って販売されているリンゴには「糖度13度以上」と表示されているものが多くありましたので、リンゴ界では糖度13度がひとつの基準と考えられているのかもしれません。高級リンゴとしてブランド化されているものには「糖度15度以上保証!!」というような表示もありました。
今回の2個体はともに糖度14度以上でしたので、どちらも美味しいリンゴとしては合格ライン超えであることはほぼ間違いありません。
しかし、懸念材料がもうひとつ……「糖度」の定義です。
糖度計を覗く大城
今回使用している「屈折計」という糖度計は、溶液中の固形分の濃度を光の屈折率の違いを利用して測るタイプのものです。果汁に溶けている固形分には糖以外のものも存在しうるので、屈折計で計った数値が高いからといって「甘くておいしい」とは限らないのです。
「やはり、信じられるのは我々自身の舌だ……」ということで、最後は実食していきます。
③ 食べ比べてみる
それぞれのリンゴに対して公平な評価を行うため、隣で仕事をしていたライター大城に目隠しをし、見た目から品種を判別できない状態でどちらのリンゴなのか当ててもらいましょう。
ー 香り比較 ー
まずは、香りのヒントを与えてみます。
最初は早生ふじから。
なぜか緊張している大城
次はムーンルージュです。
念入りに嗅いでいる
ー 食味比較 ー
では香りのヒントを元に、早生ふじの方から実食してもらいましょう。
ぱく
次は、「香りから味が想像できない」と言っていたムーンルージュです。
恐る恐る食べる大城
ムーンルージュの謎、解明!
というわけで、ムーンルージュを観察し実食した結果得られた知見がこちらです。
ムーンルージュはこんなリンゴだ!外見:表皮は黄色に桃をのせた水彩画のように美しい 果肉:断面は桃色のサシが入り愛くるしく、もはや桃にしか見えない 糖度:丸山さんのムーンルージュはとても糖度が高い 香り:匂いは薄めだが、風味がとても良い 総合的な味わい:甘みがあるだけでなく適度に酸味もあり両者のバランスが絶妙。食べると後からふわ~っと豊潤な芳香が返ってくるオトナの味 |
はじめは衝撃の見た目から、思わず桃なの? リンゴなの? と疑ってしまいましたが……見た目も味も楽しめる、おもしろいリンゴでした。
ムーンルージュはどうして赤いの
ところで、そもそもなぜムーンルージュは果肉が赤いのでしょうか。
ムーンルージュの果肉が赤くなる原因はアントシアニンにあるそうです。
リンゴの皮には赤色のアントシアニンという色素が含まれています。日本の一般的リンゴではアントシアニンは皮のみに含まれていますが、ムーンルージュの場合は果肉の部分にもアントシアニンが含まれていることから、赤い果肉になるのだそうです。
果肉が赤いリンゴは海外では調理用やシードルなど主に加工用の品種として利用されているようです。しかし、酸っぱかったり渋かったり小さすぎたりして、生で食べるのには適さなかったのだとか。
リンゴは生で食べるのが一般的な日本人の味覚に合うように品種改良をされたのが、このムーンルージュだったのですね。
赤色はジュースやジャムにした場合でも消えないそうなので、色味を生かして加工すると楽しいかもしれません。
参考:長野県果樹試験場だより
* * *
日本国内で栽培されているリンゴは約2000種類あるといわれています。私たちが生涯で口にできるのは、あと何種類なのでしょうか……。
リンゴは奥が深いですね。これからも様々な食材の秘密を探るべく、ポケマル編集部は観察を続けていきたいと思います。
関連記事:買って食べられるリンゴ品種図鑑
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文=日野原有紗 写真・編集=中川葵