海水のろ過と紫外線殺菌で安全安心な美味しさを実現 大田商店の「黄金のヒラメ・黒潮ウナギ・夢の塩」/有限会社 大田商店 大田 幸宏海水のろ過と紫外線殺菌で安全安心な美味しさを実現 大田商店の「黄金のヒラメ・黒潮ウナギ・夢の塩」/有限会社 大田商店 大田 幸宏海水のろ過と紫外線殺菌で安全安心な美味しさを実現 大田商店の「黄金のヒラメ・黒潮ウナギ・夢の塩」/有限会社 大田商店 大田 幸宏

宮崎県の最南端に位置する串間市。黒潮海流を生かした沿岸漁業と養殖漁業が盛んな地です。今回訪れたのはそんな串間市にある、有限会社 大田商店(九州宮崎・くしま 未来養殖ラボ)。ヒラメ、ウナギ、トラフグの陸上養殖、塩づくり、大学などへの研究サポートを行っています。飼育水と塩づくりに使用される海水は、全てろ過・紫外線殺菌されたもの。安全安心に口にできるのが魅力です。

養殖場に足を踏み入れると、直系8mほどの大きな生けすが30基ほど並び、中には魚が。底に張り付きじっとする黄金色のヒラメ、うねうねと泳ぐウナギ、愛嬌のある姿のトラフグ。魚の多様性に驚かされます。どの魚も元気そうな様子ですが、実は今から5年ほど前には死んでしまうヒラメが続出し、このような活気はなかったそう。その苦境から大田商店はどのように復活を遂げたのでしょうか。運営者の大田幸宏さんに、大田商店のあゆみと、養殖魚の魅力についてお聞きしました。

鮮魚の仲買人から陸上養殖業者へ

大田さんは代々鮮魚の仲買を生業とする一家に生まれ、大学を卒業すると父と共に仲買人として働くようになった。そんな中、偶然知り合いから養殖のヒラメが肉厚で、高値で取引されているという話を聞き「それは面白そうだな」と興味を持つようになる。

大田さんを後押しするかのごとく、ちょうど串間市内では廃業した養殖業者の陸上養殖施設が売りに出されていた。ここでヒラメを養殖してみたいと思った大田さんは購入を決意。仲買を優先するという条件で父に許しをもらい、ヒラメの養殖を始めた。今から40年ほど前、大田さん27歳の時のことだ。

そこから仲買の仕事と並行してヒラメの養殖をしていったが、次第に養殖業に没頭。仲買からは自然と手を引く形で、養殖業に専念することになる。

兄弟で事業に取り組んでいる(右が幸宏さん)

ろ過・紫外線殺菌海水で復活を遂げた「黄金のヒラメ」

養殖業者に転身した後、大田商店は順調にヒラメを養殖して市場に出荷。ヒラメは黄金色をしていることから、食べると金運が上がる、福が来るなど縁起の良い食べ物としてお客様から喜ばれてきたという。

しかし今から15年ほど前、苦難が訪れる。なぜか死亡するヒラメが増えていき、一時は全体の8、9割が死滅状態に。廃業寸前まで追い込まれてしまう。「毎朝、死んだヒラメを拾うところから1日が始まりました」と大田さんは当時を苦い表情で振り返る。死ぬ前の様子を観察したり、死んだものを顕微鏡で見てみたりしたものの、原因は分からない。そんな日々が10年ほど続いた。

出口の見えないトンネルの中にいるような毎日だったが、大田さんは諦めなかった。ウナギやトラフグの養殖、塩づくりをしながら試行錯誤を重ね、飼育に使用している海水に問題があるのではないかと推測するに至る。そこで独自にろ過・紫外線殺菌装置をつくり、クリーンにした海水を使用してみたところ、死亡する数は減少。海水中の寄生虫が原因となっていたのだ。

こうして大田商店のヒラメ養殖は見事復活を遂げた。大田商店では現在も、都井岬の黒潮流れる沖合から汲み上げた海水をろ過・紫外線殺菌装置に通し、クリーンな状態にして掛け流し、ヒラメを養殖している。「投薬の必要がないため、安全安心に食べていただけます」と大田さん。苦境を乗り越えようと試行錯誤の末に辿り着いた海水のろ過・紫外線殺菌は、安全安心な食の提供にもつながり、大田商店の陸上養殖の強みにもなっている。

また大田商店では種苗(稚魚)を年3回に分けて導入することで、常に旬の状態で出荷できるようにもしている。天然のヒラメは旬とそうでない時期で脂の乗りに差が出るが、大田商店が出荷するヒラメは年間を通して脂が乗った美味しさを維持しているそうだ。

海水養殖の希少な「黒潮ウナギ」

大田商店ではヒラメの他に、ウナギやトラフグもろ過・紫外線殺菌したクリーンな海水を掛け流して養殖している。特に珍しいのはウナギ。一般的なウナギの養殖には温度調節した淡水を使用するが、大田商店で使用するのは温度調節しない海水。海水を掛け流すことでうなぎ特有の臭みが少なくなり、天然に近い水温で育つため肉厚で濃い旨味を持つようになるという。これらの特徴から、大田商店ではこのウナギを他と差別化して「黒潮ウナギ」と命名している。

「黒潮ウナギ」の養殖は発展途上だと大田さんは言う。天然に近い環境で養殖することには、身が美味しくなるという利点がある一方、年間を通して安定的に出荷するのが難しくなるという難点もある。ウナギは水温が22〜23度ぐらいに下がると活動量が落ち、餌をほとんど食べなくなる。そのため一般的な淡水養殖では人工的に水温を30度ぐらいまで上げ、冬場でも餌を食べて出荷サイズにまで成長するようにしているという。大田商店ではこのような温度調節をしないため、冬場の出荷が難しくなってしまうのだ。

「難しいのは分かっていますが、いつかは安定供給できるようにしたいですね」と大田さん。10年もの苦難の中、諦めずにヒラメの養殖に向き合い復活を遂げた大田さんなら、この課題もいつか解決できるかもしれない。

ポケットマルシェやECサイトで購入できる、黒潮ウナギの蒲焼

直販でも楽しめる安全安心な美味しさ

大田商店の主な販路は市場。しかし「黒潮ウナギ」と「夢の塩」については一般消費者向けにECサイトや道の駅などでも販売している。黒潮ウナギは備長炭で手焼きし、タレを絡めたものを冷凍にしてお届け。6カ月間保存が効くため、好きなタイミングで食べられるのは嬉しいポイントだ。もちろんろ過・紫外線殺菌した海水で育てられており、安全安心に食べられるのも魅力。臭みの少ないウナギ本来の濃い味を感じていただけるはずだ。ポケットマルシェを通じても購入できるため、ぜひチェックしてみてほしい。

塩については「夢の塩」という商品名で、主に宮崎県内の道の駅などで販売している。養殖に使われるのと同じ、ろ過・紫外線殺菌した都井岬沖合の海水からつくられるため、安心して口にしていただける。さらに、薪炊きでゆっくりと仕上げることで、まろやかな塩に仕上げているそうだ。「でしゃばらず、素材の味を引き立ててくれます」と大田さん。特に肉の脂に溶けると絶品だそうで、アカデミー賞授賞式後のパーティーの料理や国内の高級ホテルでも使用されるなど、食通の間でも高い評価を受けているという。宮崎の道の駅にお立寄りの際に、探してみてはいかがだろうか。

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