牧場の牛は人間なら成人病?赤崎牛の生産者が語るおいしいお肉と牛の健康のこと

赤崎牛


福岡県嘉麻市の自然豊かな牧場でのびのびと育つ300頭ほどの黒牛、その中で生後25か月の若い雌牛のみから厳選したお肉が「赤崎牛」として販売されます。

その赤崎牛の生産から一部の加工、販売までを行うのが生産者の赤崎和徳さんです。


お気付きの通り、赤崎牛とは「本当の意味で生産者の顔が見える食材を」という赤崎さん本人の信念から、生産者の名前をそのままブランド名にした牛なのです。

2016年は福岡県共進会の畜産部門で最優秀賞を受賞、また過去に西日本地区の肉用牛交雑種共進会にて金賞を受賞するなど、その実力は多方面で認められています。


その裏側を知るべく、生産者の赤崎和徳さんにお話を聞いてきました。


今求められる牛肉とは

赤崎和徳さんは赤崎牧場の2代目、自分の代になって11年目だといいます。いかにして今の牛肉に行き着いたのでしょうか。


赤崎さん「親の代からもちろん試行錯誤をして、その時その時で求められるお肉を作ろうとしてきました。」


編集部ぬのい「今求められるお肉ってどんなお肉なんでしょう。」


赤崎さん「今はほどよいサシとほどよい赤身だと思いますね。とにかくサシ!というのではなく。」


赤崎牛レンガステーキ。赤身の美味しさが特徴。


ぬのい「そうなんですか。」


赤崎さん「マスメディアの影響などで「食べてすぐ口の中でとろける」ようなお肉が良いというイメージを持つ消費者もまだいるとは思いますが、

それって胃もたれの原因にもなりますし、以前よりも脂身が嫌がられるようになった傾向は感じています。」


ぬのい「確かに脂身が多いお肉って一見美味しそうですが、食べた後に後悔するんですよね・・・」


赤崎さん「うちでもサシが多めの部位なんかも販売していますが、そういうことよりも、噛んだときの赤身の旨みを喜んでいただいていますね。


自分自身も脂っこいのはあまり好きではないので、赤身が美味しいお肉というのをしっかり作っていこうと思ったんです。」



そもそも肉用牛は不健康である

ぬのい「赤身の美味しいお肉を作るためには、何が一番大切なんですか?」


赤崎さん「ストレスをかけないことですね。



そもそもお肉用の牛って不健康なんですけど・・・」


ぬのい「え、不健康??」


赤崎さん「だって肥満じゃないですか。」


ぬのい「肥満と言われれば肥満・・・なんですか?」


赤崎さん「インドとかに行くといる痩せた牛いるじゃないですか」


ぬのい「いますね」


赤崎さん「あれがいわば本来の姿ですよ。」


ぬのい「あれが牛のナチュラルな姿!

そう言われてしまうと、牧場の牛は肥満かもしれないですね。」


赤崎さん「そうです。肥満で不健康なんですよ。でも不健康ながらも、お肉にするためにはその肥満状態をいい感じに維持しなきゃいけないんですね。」


ぬのい「なるほど〜」


赤崎さん「で、ストレスを与えずにいい感じに肥満状態を維持するためには“ルーティンワーク”なのです。」



決まった時間に決まったことをする

ぬのい「ルーティンワーク!!」


赤崎さん「つまり、決まった時間に決まったことをする、ということですね。


よく何か特別なことやっているんですか、と聞かれるんですけど。

色々やっていると言えばやっているんですが、ルーティンがバラバラだと他に何をしたとしても牛には悪いので、その管理が一番大事なことですね。」



ぬのい「決まった時間に餌を食べて、寝て、運動して、ということですか?」


赤崎さん「運動はカロリー消費するのでダメですね、痩せちゃうので。」


ぬのい「ああ、そうか・・」


赤崎さん「牛は習慣性の動物なので、不規則だとストレスがかかるんです。

人間もいつもより夜更かししたりしたら体調悪くなるじゃないですか、それと同じです。」


ぬのい「そうですね。人間で考えればわかりやすいですね。」


赤崎さん「また、そうすることによって、牛の観察もしやすくなるんですよ。



普段起きてくる牛がまだ起きてこないとなれば、それは良くない状態ですが、そういう異変にすぐ気づくことができます。」


病気の一歩手前で牛を売る

ぬのい「不健康な状態ということは、病気にもかかりやすかったりするのですか?」


赤崎さん「まず、牛ってサシを入れるためにはビタミンAを欠乏させるんですね。

ですから、それは人間でいうと「脚気」の状態とも言えます。人間もそれが酷くなれば失明したりするでしょう。

それから、肥満でコレステロールは高いし中性脂肪もすごく多いので、人間でいえば成人病みたいなものです。


そういう意味では、牛は病気のリスクはとても高いと言えますよ。」


ぬのい「なるほど・・・・」


赤崎さん「だから、『健康な牛を育てます』と言っている人は嘘を言っていると思うんですよ。」


ぬのい「肥満である時点で健康ではないと。」


赤崎さん「はい。不健康だけど、健康に肥満を維持している、ということです。


人間も、肥満な人が全て不健康で病気かと言ったらそういうわけではないですよね。肥満でも元気に過ごして病気にならない人もいます。


病気の一歩手前で牛を売る、それが真実だと思います。」


お肉の味をつくるもの

ぬのい「ほどよいサシのためには、やはりビタミンAをあえて与えないということが必要なんですよね?」


赤崎さん「うちの場合は、1日に吸収できる量の半分は与えるようにしています。

もちろんゼロにすることもできるのですが、それはうちが求めるお肉とは違ったのでやめました。」



ぬのい「赤身の味はどのようにコントロールするんでしょう?」


赤崎さん「基本的には餌の内容になってくるので、とうもろこし・麦・大豆などのバランスを調整します。

ビール粕や酒粕などの粕類については、うちも初めはコスト削減のために使用していたのですが、お肉の風味が落ちるので使用をやめました。」


ぬのい「牛肉の味をそうやって細かく調整していると考えるとすごいですね・・!

若い雌牛のみを出荷しているそうですが、それはなぜですか?」


赤崎さん「肉質が柔らかいんです。


色々試してみた結果、うちの場合は生後25~26か月が一番よくて、それより短ければ肉質が悪いし、それ以上おいても変わらないというラインなんですね。」


経営的にはいいと言われても薬は使わない

ぬのい「それから、赤崎さんは抗生物質は使わない方針なんですよね?」


赤崎さん「抗生物質を使うと、疾病予防ができたり、それから餌の吸収率が良くなるので効率良く牛を育てられるということがあるんですよね。

でも、僕の中ではお薬に頼った牛って不安なので。


一応、安全だから使っていいと機関が認めているわけですが、その安全の基準にも疑問が残ります。


うちは子どもが4人いるんですが、子どもに安心して食べられるものをつくることが親としての務めでもあると思うので、やっぱり不安のあるものは使わない方針です。」



ぬのい「やはりお子さんができて意識が変わったのですか?」


赤崎さん「それもありますが、自分は以前看護をやっていたのでその時に栄養学を勉強していたこともあって多少の意識はありました。


家でたまに食べる肉が美味しかったんで継ごうと思ったんですけど、

その頃から薬漬けの牛は違うなあと感覚的に思っていて、外牛のホルモン剤の話など、勉強すればするほど違和感が大きかったですね。


だから、銀行屋に使えと言われても反抗して使っていませんし。」


ぬのい「そうなんですか?」


赤崎さん「もちろん使ったほうが同じ餌量でも肉の取れる量は増えるので、経営的にはいいんですよ。

(抗生物質などを)使う選択も使わない選択も経営者がするんですが、使う選択のほうが楽なんですよね。目に見えて牛は大きくなるし、病気にもなりにくくなりますから。


でもそこは我慢です。」


現実を見て、理想をつくる

「牛は不健康だ」なんてことを言いながらも、それはむしろ牛と向き合い、そして食べる人と向き合っているからこその発言だと思いました。

世の中に求められる牛肉の味を目指しながら、一方で自分のポリシーも貫く。それこそが「赤崎牛」。


その赤崎さんの姿勢が、結果として、牛の死亡率を下げ、そして牛肉の味もしっかりと評価されるようになっていると思うのです。



・・・と、そんな話を聞いて食べないわけにはいかない!ということで、赤崎牛を我が家でも購入して食べてみました(年始のごちそうです)。

焼肉です。


「赤身の味が美味しいという意味がわかる!!!」

と家族一同絶賛でした。脂身も本当に程よいのです。



ちなみに、赤崎牛の牧場がある福岡県嘉麻市には、赤崎牛の加工・販売を行う直売所があります。

古屋をそのまま生かしたトンチャン横丁では、七輪の貸し出しも行っておりその場で赤崎牛を食べることができるのです!

お近くに行かれる際は、ぜひトンチャン横丁にも寄ってみては?


ご紹介した赤崎牛はこちら。

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