元号が令和になって早3ヶ月が経ちましたね。
令和になる瞬間、みなさんは何をしていましたか?
私は……南相馬市で、名曲『昭和/長渕剛』を聴いていました。

※注:カラオケです
大野村農園の農家民泊に行ってきた
平成31年4月の終わりから令和元年5月の初めまで、私、尾形は福島県相馬市の大野村農園で、農家民泊を体験していました。
ただ泊まるだけではなく、野菜や卵の収穫・鶏のお世話など、大野村農園の日常である「農」の営みに触れることができ、自分でさばいた鶏を食べることもできます。
前回の記事:鶏が教えてくれた、本当の「いただきます」 は、なかなかシビアな内容でしたが、ここでの生活は大変なことばかりではありません。後半のこの記事では、ほっこり楽しい大野村農園での生活をご紹介します!
農家民泊とは?
ところで、みなさまは「農家民泊」とはどのようなものかご存知でしょうか。似た言葉に「農家民宿」というものがありますが、「民泊」と「民宿」とは、法制度的に異なるものなのだそうです。
民泊
「民泊」とは、空いている部屋や家を貸し出して、旅行者などに宿泊サービスを提供すること。民泊をする場合、「①旅館業法の許可を受ける ②国家戦略特区法の認定を受ける ③住宅宿泊事業法の届出を行う」のいずれかを選択し、衛生確保や設備条件など、各法律に定められた条件を満たさなければならない。
参考:minpaku 民泊制度ポータルサイト>はじめに「民泊」とは
民宿
「民宿」とは…明確な定義はないが、旅館業法の中の「簡易宿所」に当たるとされている。客室の延べ床面積が33㎡以上という規定があるが、農林漁業者が民宿を営む場合のみ、特別にそれ以下でも認められる。
参考:毎日新聞>コトバ解説>「旅館」と「民宿」の違い
「農家民泊」は、農家さんや農林漁家の方が営む民泊のことです。
はじめての農家民泊体験レポート
人見知りだし、体力・筋力がそこまであるわけでもない……そんな私が、大野村農園の農家民泊を体験することになりました。菊地将兵さんってどんな人なんだろう? ちゃんと馴染んで生活することができるのだろうか……?
不安だけど楽しみな、ドキドキワクワクの滞在の様子をレポートします!
農家民泊の謎① ホストはどんな人?
行く前は、受け入れ先がどんな人なのか気になりますよね。
怖かったらどうしよう、怒られたらヤダな……そんなことを考えていると、いつの間にか「やっぱり行くのやめようかな」なんて気になることも。
しかし、イメージだけでやめてしまうのはとてももったいないことです!
大野村農園のホストはポケマルでタマゴや野菜を販売している農家さんでもある、菊地将兵さんご一家。
園主の将兵さんは、どんな方なのだろうか……と将兵さんのSNSを開いてみると……

菊地将兵さんのFacebook投稿より
少し心配になりながらも、1歩踏み出して大正解。
もちろんイメージ通りな場面もありましたが、滞在を通して将兵さんのイメージはガラッと変わりました。
菊地家の意外①

令和にカンパイ! in カラオケ
あの菊地さんがカラオケに行くなんて、イメージすらありませんでしたが、意外とparty people。
早寝早起きで規則正しい生活を送っているかと思いきや、遅く寝てゆっくり朝が始まるような生活でした。
菊地家の意外②

お客さんというよりは親戚のような感じで受け入れてくださるので、下手に気を遣わずこちらとしても楽です。
菊地家の意外③
菊地さんには可愛くて人懐こい2人のお子さんがいるのですが、

モデルっぽいポーズをとるイケメン長男の松陰くん

「卵かけご飯おいちい〜」と言いながら食べる長女の花ちゃん

カラオケでも花ちゃんと一緒にどんぐりころころを歌っていた
子供にもクールに接しているイメージでしたが、「やっぱり女の子は可愛いよ〜」と、完全に一家のパパの顔をしていました。
とはいえ、イメージ通り真面目にアツい想いを語る場面も。
真面目なときとふざけているときのギャップが、なんともいえない将兵さんでした。
泊まるのはどんな家?
次に気になるのが、どんなところに泊まるんだろう? ということです。トイレは? お風呂は? 虫はたくさん出る? などなど、気になるポイントはいくつかあります。
しかし、安心してください。
泊まるのは、菊地さん一家がお住いの古民家……ということは、普段菊地さんが生活していくために必要な設備はきちんとそろっているということです。
私が到着した日、花ちゃんが家の中を案内してくれました。ここでも花ちゃんに案内してもらいましょう。



5月というまだ涼しい時期だったからかもしれませんが、全然虫もいず、快適に過ごせました。洗濯機も貸していただけるので、長期滞在でも安心です。
持ち物は、タオルと歯ブラシ、そして楽しむ気持ちくらいでしょうか!
食事はおいしい?
せっかく旅行するなら、おいしいものを食べたいですよね。それは農家民泊でも同じです。
いわゆる「農家飯」はおいしいイメージですが、大野村農園の食事はどのようなものなのでしょうか。
結論からいうと、「めちゃくちゃおいしい」です。新鮮な卵や鶏肉を使った料理は、ここでしか食べられません。

双子ちゃん卵の卵かけご飯で朝がスタート

お昼には庭先養豚の豚ひき肉を使用したミートスパゲッテイ
三度の飯の目玉は夜ご飯……というより、宴会です。
1回目の宴会のとき、そう豪語していた将兵さん。とはいうものの、たかが知れているだろうと思っていたら、なんと6泊中4日が宴会でした。
いつもはいかにケチケチ使うかばかりを考えていたので、陽子さんのこの言葉はとても印象的。宴会料理はこのお言葉通り、鶏肉&卵料理のパラダイスです。

チキン南蛮
コース料理ばりに、次々とお料理が運ばれてきます。

つくねの卵黄のせ

手羽先
宴会には地域の方々、近所の子供達とその親御さんなどなど、20名ほどが菊地家に集結します。
夜やることがなくてヒマ……寂しい……なんてことはありません。

ワイワイとみんなで食べ、語っていたら時間が経つのはあっという間です。

鶏肉と相馬土垂の煮物

ときには、漁師さんから差し入れの海の幸も
どんな農業体験ができるの?
お料理がおいしいのは、生産現場を自分の目で見て、食材のストーリーを理解しているから、というのもあると思います。
では具体的に、大野村農園ではどのような体験ができるのでしょうか。
①ミルキーエッグの収穫
鶏小屋には、着いた瞬間からテンションがあがる可愛い看板があります。

青い看板が目印
中に入ると、鶏たちがコオォーコオォーと鳴きながら、自由気ままに動き回る姿がありました。

菊地さんが飼育する約800羽の鶏が1日に産む卵は、全部で400個ほど! 1日4回、すべて手で回収しに行きます。
驚くことに、まだ生温かい卵もありました。つい先ほどまで鶏の体内にあった証拠です。

卵を産もうとしている鶏
収穫したら、これを一つずつ丁寧に濡れた布で拭き……


拭いた卵はピカピカ
このパックに詰められて私たちのもとへ届きます。

②鶏の餌やり
卵の黄身の色は、食べた餌で決まります。自分で餌やりをすることで、ミルキーエッグの黄色い黄身のヒミツがわかりました。

最初は飛び込みで「分けてください」とお願いにいったそうです。もともとは捨てられていた地域資源を活用した養鶏で、地域内循環を生み出しています。

エサに群がるヒナたち
なにやら、軽トラ1台分の草をほぼ毎日1時間くらいかけて刈り集めているのだとか。そして、草のない冬の時期には、鶏のためだけに白菜畑を作るらしいのです。

地面に敷き詰められた草
③鶏をさばく
民泊の一大イベントはコレ。
宴会料理の鶏肉は、自分でさばいたものをいただきます。
その様子はこちらの記事で詳しくレポートしておりますので、知りたい方はぜひご覧ください。
④野菜のお世話
大野村農園では、シーズンごとに3~4種類の野菜を育てています。
晴れた日は畑へ行き、新玉ねぎやサヤエンドウ・スナップエンドウの収穫をしました。

結構スポスポ抜けて快感

サヤエンドウ。一番右のサイズになると、大きすぎるらしい

ふっくらとしたスナップエンドウ
野菜は収穫だけではありません。その他の作業があってこそ、収穫まで到達することができるのです。
と将兵さんがいう作業は、雑草抜き。

花ちゃんにもらったタンポポを大事そうに持ちながら説明する将兵さん

じゃがいも畑では、じゃがいもの間に生えている雑草を草削りで削る

果てしなく向こうまで続く
「循環」は、もはや大野村農園のキーワード。
鶏の世話をしていても、畑にいても自然の循環を感じました。大野村農園を訪れれば、さまざまな場面で循環を感じるでしょう。
年中同じ野菜があるわけではないので、時期に応じて作業は異なります。スーパーに年中同じ野菜が並んでいるのとは違い、作業を通じて「旬」を感じることができそうです。
さあ、大野村農園へ行こう!
「農家民泊」に対するイメージを、いい意味で変えてくれた大野村農園での食事・体験。訪れた人にしかわからない楽しさと学びがそこにはあります。
まるで親戚の家にいるかのように、ありのままの自分でいられる場所を、ぜひ訪れてみてください。
ここにきて「人生が変わった」という人もいるそうですよ。
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文・写真=尾形希莉子