ポケマルで”体験”を購入してみた。伊豆沼農産で手づくりウインナー体験

お米やお野菜、お魚、お肉といった食料を生産者さんから直接購入できるポケマルですが、

こんな出品があるのにお気づきでしょうか。


そう、”体験”の販売です。農作業や手作り体験を販売しようという挑戦的な試み、思わず気になってしまうものです。

けれど、実際にどのように準備すればいいの? 気をつけることは? 当日の流れは? どんな風に体験できるの……? なんて尽きぬ悩みと不安。参加を考えたときに、少しハードルが高いのもまた事実。

「これはポケマルを代表して体験してみなければ」

というわけで編集部のおおしろが体験を購入し、宮城県登米市の伊豆沼農産で手づくりウインナー体験をしてきました。


チケットが届いたら、開催日を相談しよう!

いつもとは違った緊張感で購入ボタンを押してから数日後、伊豆沼農産から封書が届きました。

中に入っていたのは、「つくりてからのおたより」と「チケット」の2点です。事前の注意事項や当日の流れは「つくりてのおたより」に記載してありました。


出品者さんによって異なりますが、伊豆沼農産の場合、これらが手元に届いたらするべきことは以下の3点です。


1,来場希望日の5日前までに予約を!

原則として来場希望日の5日前までの予約が必須だそうです。予約状況により開催不可の日もあるため、できるだけ早めに相談するのが吉です。予約は直接電話で行いましょう。


2,当日は10:30までに必着! アクセス方法を確認しておく

当日は10:30までに伊豆沼農産に到着するように向かいます。最寄り駅となる東北本線の新田駅から伊豆沼農産までは徒歩7分ほど。駅から歩いて行ける立地も魅力のひとつ! タクシーやレンタカーを借りることなく、手軽に訪問することができます。

開始時間に遅れないよう、事前にアクセス方法を確認しておきましょう。

最寄りの新田駅はこぢんまりとした素朴な駅でした。旅は東北へ!


3,必要な持ち物を確認しておく

事前に必要なのはエプロン・三角巾・チケットの3点。さらに清潔なタオルを持っていくと尚良いでしょう。また爪が長い場合には切っておくようにしましょう。


首都圏から伊豆沼農産まで。週末小旅行にもピッタリ!

さて、当日がやってきました。筆者は当日朝に東京の上野から向かいます。出発は7:20頃、東北新幹線で北上。そこから1〜2回の乗り換えを経て新田駅に到着です。

アクティブに旅したい方は当日朝に現地へ向かい、そのまま岩手方面で宿泊するのもよし。まったりしたい方は、前日に仙台や一ノ関へ行っておき、翌日に余裕を持って向かうのもおすすめです。


*ちなみに筆者は、当日新幹線を乗り間違え30分遅刻してしまうという失態を犯しました。その節は大変失礼いたしました…。皆さんお気を付けて! 新幹線も在来線も本数少ないよ! いちど乗り間違えると大きな時間ロスに繋がります!!


肉汁じゅわじゅわウインナーを作ろう

それではついに始まりました、手づくりウインナー体験! 当日は伊豆沼農産のスタッフさんが懇切丁寧に教えてくれます。


実は以前、個人的にウインナーを手作りしたことのある筆者。ネットの情報を頼りにトライしてみたのですが、詰めてる最中はブチブチ腸を破り、完成したソーセージはパサパサのあまり「段ボールを食べているのではなかろうか…」と錯覚に陥るほどの代物が出来上がったのです。


そんなトラウマを払拭すべくウインナー作りに挑戦します。


1,挽肉とスパイスを混ぜ合わせる

伊豆沼ハムシリーズの原料として使われている豚挽肉と、数種類のスパイスをブレンドした香辛料を混ぜ合わせていきます。


このときのポイントは「背脂を潰さないこと」。じゅわっと溢れる肉汁となる背脂の塊を残すように、手のひらをグーパーしながらざくざく混ぜ合わせていきましょう。

練るのではなく、グーとパーを駆使して混ぜ合わせるイメージで


教えてもらった通りに忠実に混ぜ合わせます。すべてはうまいウインナーのため!


2,腸に詰める

専用マシンを使用し、羊の腸に詰めていきます。

以前のウインナー作りで腸を破った記憶が蘇り、一抹の不安を覚える筆者。


カチカチとハンドルを引きながら、丁寧に腸に詰めていきます。直接アドバイスを受けられるので、この日だけでウインナー腸詰めスキルが向上したのを痛感しました。


3,整形する

長い一本のウインナーを、食べやすい長さに結んでいきます。小洒落た料理や映画で見るような束を作っていきます!

ウインナーの結び方を教えてもらいます


整形完成! これぞ洋画で出てくるウインナーです


すぐにボイルしてもらいます


おいしさもひとしお! 作りたてウインナーをいただきます

無事完成した手づくりウインナーは、もちろん当日現場で試食できます

美味しい食べ方のコツは、ボイル後にフライパンで軽く焦げ目を付けること。そうすることでより薫り高くなるそうです。


自分で作ったから色眼鏡ならぬ色味覚で感じてしまうかな……と思いつつも一口ぱくり。


「なんだこの溢れんばかりの肉汁とうまみは…!!」


材料は見たとおり、挽肉とスパイスのみ。シンプルにも関わらず、ここまでの奥深さが口いっぱいに広がるのは、やはり豚本来のおいしさのおかげでしょう。

ちなみに残ったウインナーは冷凍で自宅へ郵送することも可能です。自宅でいただくときは、一度湯煎で解凍してからフライパンで焼き上げましょう。

おうちに帰っても楽しみが続くのも嬉しいポイントですね。


伊豆沼農産から発信する”農業のこれから”

佐藤さん:「ここの立地はさ、山からの吹き下ろしが寒いんだあ。冬はいつもビュービュー吹いててとってもしんどい」


ランチ後に畑に連れ出してくれた伊豆沼農産のご担当者・佐藤さんが発した一言。冬が色濃く残る3月上旬、開墾したてという蓮田でレンコンを収穫している最中の台詞でした。

ポケマルのコミュニティが、リアルの場に飛び出したような伊豆沼農産での体験。会話を通じて、生産者さんの日常を垣間見ることができることこそ、この体験の一番の意味なのかもしれません。


佐藤さん:「今回のような体験企画だけではなく、これからは農業と宿泊を掛け合わせた農泊体験のイベントを積極的に行っていきたい!」


佐藤さんが目を輝かせながら語るのは、農業のこと、伊豆沼農産が目指すこと——。いち農家さんのありのままの姿でした。


——この体験はいつ頃からやっているのですか?

佐藤さん:「4~5年前くらいから、地元の婦人会や学童といった地元の方々に体験してもらってました。ぜひ首都圏をはじめとする他の地域の方にも来てもらいたいと思い、ポケマルでも出品しています。

いま伊豆沼農産全体でも、農業と食と宿泊をセットにした”農泊”の取り組みに力を入れているんですよ」

話をしながら蓮田で収穫作業を行う佐藤さん。3月上旬、冷たい空っ風が吹き荒れる日だった


3月には訪日外国人の農泊体験が開催され、インバウンドを受け入れる体制づくりがスタートしたそうです。さらに夏には周辺地域のサイクルツーリズムと農園BBQを絡めた新たな試みも実施予定なのだとか。


なぜ伊豆沼農産はいま、農泊体験という新たな試みに力を入れているのか。収穫したてのレンコンを抱えながら、佐藤さんは答えてくれました。


佐藤さん:「”知らない”こそ、都会の人たちが困ると思うんだよね」


笑顔で語る彼女でしたが、そこには重い事実が横たわっていました。

例に挙げてくれたのは、日本国内における食料自給率。農林水産省の発表では、東北地方の109%に対して、全国では39%となっています*。(*農林水産省 東北農政局 東北地域食料自給率 平成27年度版より


佐藤さん:「たくさんの農産物が並ぶ光景が日常的に広がっている首都圏のスーパー。都市部の人たちからすれば『あたりまえ』になってしまっている。けれどそれは東北をはじめ、他の地域があってこそ成り立っているかたちなんだよね」


この『あたりまえ』が、未来永劫あり続けるかどうかはわからない、と佐藤さんは指摘します。


佐藤さん:「現在、農業に従事する人口の平均年齢は66.7歳**なんだよね。社会全体の高齢化ばかり注目されがちだけど、この問題も実はとても深刻。それなのに、一次産業の現状を知らないから、どうしても注目されにくいんです」(**農林水産省 農業就業人口 平成29年度版より


だからこそ伊豆沼農産では、まず知ってもらうことを推し進めたいと語ります。


佐藤さん:問題意識こそ、未来を変革していく第一歩になると信じてます。ふだん農業と触れ合う機会がない方に、まずは農業に親しんでもらう。それが考えるキッカケに繋がればいいなって。

だからまずは気軽に遊びにきてほしいですね」


——体験を通じて、食を考える。

手づくりウインナー体験が教えてくれたのは、日本の一次産業の未来を想う伊豆沼農産からの大切なメッセージでした。


【おまけ】体験後の絶品ランチもお忘れなく

忘れてはならないのが、手づくりウインナー体験後に待ち受けているランチタイムです。このときは赤豚のしゃぶしゃぶをごちそうになりました!

一人前でこのボリューム!手作り体験でのウインナーの食べ過ぎに注意しましょう!


バラとロース2種類のお肉を楽しめるこのセット。


ポン酢を付けていただけば、あっさり甘い脂と柔らかな肉質に、思わず両手で頬を押さえてしまうほど……。


ひたすら幸せなソロしゃぶ(ひとりでしゃぶしゃぶをすること)タイムでした。


伊豆沼農産の体験出品はこちら!

体験後のお食事は、現在(夏季)は焼肉に変更されています。季節ごとに変化する嬉しいメニューにも注目です。


Writer

おゝしろ実結

writer&editor&illustrator 自転車や地域文化、芸術を専門に執筆。東西奔走、自転車に荷物を積み離島へひっそり渡航するのが生きがい。2012年に短編小説『常套的ノスタルジック』が筑波学生文学賞 大賞を受賞。2016年執筆のルポルタージュ『ワニ族の棲む混浴温泉』が宣伝会議 編集ライター講座大賞を受賞。他、自転車雑誌やグルメ系Web媒体など幅広い分野で執筆を行っている。旅のイラストなども随時発表中。公式サイトmiyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro

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