山奥で女性農家さんと運動がてらの稲刈りしてきた報告書

スタートアップ企業あるある、いきま~す!

なぜオフィスチェアをヨガボールにしがちなんだろう〜?

なぜオフィスに健康器具が転がりがちなんだろう〜?


こんにちは、ライターの大城です。

2019年10月。東京・渋谷のど真ん中にあるポケマル編集部は、この日も多種多様な健康器具で雑然としていました。

でも最近意味がわかんなくなっちゃって

ほう、と言いますと?

カロリーを気にしながらご飯を食べて、デスクワークに明け暮れて、ネット通販で買った健康器具で筋トレしてさ……何なのコレ

私たち結局、お金を払ってカロリー摂取して、お金を払ってカロリー消費してるんですよ

ならば、ご飯を食べなければいいのでは? 動かなければいいのでは?

よくわかります

こうね、貝のようにジッとね……

動かなければ……スッ…

この虚無感はなんなのだろう

行くよ

……アッ、スミマセン。カロリー省エネモードに入ってたので、何も聞いてませんでした

ポケマルコミュニティを見てごらん、今は稲刈りの季節だよ

いや私たち、貝のようにジッとしていこうと決意したんです……

なぁに言ってんの、ほら長靴用意して!!

\この記事は2本立てです/

  1. 山奥で女性農家さんと運動がてらの稲刈りしてきた報告書 (この記事です)
  2. 「稲刈りは筋トレなんだ!」山梨に実在したカロリー循環型の持続可能な援農の物語

目次

     ここに目次が表示されます。    

小淵沢にやってきた

筆者「うまだ…」

ここは山梨県北杜市にある小淵沢駅だよ。東京の高尾駅と愛知の名古屋駅をつなぐ全長396.9kmの中央本線の途中駅で、特急あずさ・かいじも停車する大きな駅だから名前を聞いたことのある人は多いよね。乗馬クラブが多い「馬のまち」としても有名なんだ

あ、こんな時間。日課の消費カロリー確認しなきゃ……

※「安静」は基礎代謝として消費される分、「運動」は活動を通じて消費されたカロリーを指している

今日(2019年10月15日)は台風19号による土砂流入の影響で上り方面の電車が止まってるみたいだけど、この記事の公開時には通常運転再開してるから安心して遊びに来てね。それじゃ、行くよ

……アッ、スミマセン

着いたよ

……アッ、スミマセ……ん?

小淵沢駅から車を走らせること20分。降り立ったのは、田んぼでした。その中にテキパキと働く人の姿が……

やだ…カッコイイ……

というわけで今日は稲刈りのお手伝いにやってきましたー! ここは山梨県・北杜市にある「オーガニックフォーム チュトワ」さんの田んぼだよ。八ヶ岳の南麓、標高900mから1,000mのあたりにあって、豊かな湧き水と野菜栽培に適した「黒ぼく土」という土壌が特長なんだって

オーガニックファームチュトワは村瀬麻里子さんと高井文子(あやこ)さんという女性コンビで営まれていて、自然に負担をかけない育て方をモットーに野菜作りに取り組んでいらっしゃるのです! すみません大城さん、私はちゃんと予習してきちゃいました!

へ、へえ……


オーガニックファーム チュトワで稲刈りをすることに

オーガニックファーム チュトワの高井さん(左)と村瀬さん(右)

にしても編集、収穫時期の田んぼなら他にもたくさんあるのではと思うんですが、なぜチュトワさんへ?

チッチッチ☝️ 甘いな大城くんよ。ここを声に出して読んでみたまえ

オーガニックファーム チュトワ公式ホームページより

運動ついでに援農

そう。東京の真ん中で虚無を感じている人間への特効薬、それが運動ついでの援農というわけだよ、きみ。ということで、チュトワの村瀬さん高井さん、今日一日よろしくお願いします!

はい、ではまず長靴に履き替えてね、膝までは泥で埋まっちゃうから

わかった、つまり援農で体を動かそうって企画ね。そうとなったらさっそく田んぼへ突入!!……わ、わわっ

沈むだろ? 動けば動くほど沈んでいくだろ? 両脚が膝まですっぱり泥に埋まり、抜け出せなくなるだろ?

た、助けて村瀬さ〜ん!

泥沼と格闘する大城を尻目にテキパキと作業を進める日野原

この田んぼは「大泉」と呼ばれる地域にあって、自然と水が湧き出る箇所がいくつかあるんです。八ヶ岳からの水で、お米がおいしくなる秘訣でもあるのですが……沈んじゃうんですよ

米喜ばせ、人間泣かせの「大泉」か。こりゃあ足腰に効くわい

日野原は収穫を終えた稲を束にし黙々と麻紐で括っていく

うちでは「黒米」「香り米」「赤米」「まんげつもち」「ふくもち」「ゆめしなの」の6品種のお米を育てています。収穫するときに品種が混じらないようにだけ注意してね

6種の稲穂。素人には違いがわからない

そういえばプロフィールには、チュトワさんでは「自然栽培」を実践していると書かれていましたね。農薬・化学肥料を使わずにお米作りをするのは難しいと聞いたことがあるのですが、実際のところどうなのですか?

ん〜、正直私たちははじめからこの方式しかやってきていないから、難しいかどうかはわからないんですよね

縛った稲束は鉄パイプで組んだ洗濯物干しのようなものに掛けていく

もちろん除草剤を使わない分、かなり草取りはしなければいけないけれど。運動したい人は草刈りのタイミングで来てくれると、良い運動になると思いますよ

お手伝いに来てくださる方は結構いらっしゃるのですか?

人を集めるのはなかなか難しいですね。稲刈りとか田植えの時は人がたくさんいると助かるんですけど、自然相手の作業なので、決まった日にちを設定して来て頂くことができないのでね

違う品種のお米が混ざらないよう、品種札が付けられている

そしたら一旦お昼にしましょうか!

ああ、もう12時なのですね

もうお昼でいいんですか? 私たち、まだそんなに働いてない……

しょうがないよ。だって今日は台風19号の影響で中央道が通行止めになっていて、東京から御殿場方面に迂回して北杜市入りしたから、到着時間がだいぶ遅くなってしまったんだもの

(編集、今日は解説が多いな)


新米おにぎりランチをいただきながら

古民家でランチ

今回は、なんと村瀬さんと高井さんにお昼ごはんをご用意いただいてしまったのです! 感謝!


それでは、空腹を加速させる飯テロ写真の数々をご覧ください。

\新米「ゆめしなの」の塩にぎり/

\ぬか漬けと梅干し/

\大根、ジャコ、かつおぶし、ごま、ひじきなどがたっぷり入った和え物/

\高井さん特製石狩鍋風お味噌汁/


それではいっただっきま〜す!

うお〜〜!! 食べ応え抜群のおにぎり最高!

付け合わせのご飯のお供もたまりませんっ

(そう君たち、それが食べる喜びだよ)「ゆめしなの」は、はじめて聞いた品種のお米です

「ゆめしなの」は寒冷地向けの品種なんですよ。最近はやわらかめのお米が多いけれど、これは跳ね返すようなコシがあってとても気に入っているんです

跳ね返すようなコシ……確かにアヤちゃん(高井さん)みたいに力強いお米だね

(……強い、確かに)


村瀬さん&高井さんコンビの謎にせまってみた

おにぎりひとつめは海苔で

女手だけで稲刈りをこなすお二人はかなりカッコよかったです

たしか、村瀬さんと高井さんはお2人で農業をはじめて今年で3年目でしたね。息ピッタリに見えますが昔からお知り合いだったのですか?

麻里子(村瀬さん)と会ったのは、農家になるときに通った研修先です

研修先というと、割と最近のことなんですね。それまでは別々の人生を歩んでいたと

そうですね。私は横浜出身で、麻里子は愛知出身で

就農場所を山梨に決めたのは?

はじめは北海道から探し始めたんですがイマイチぴんと来なかったので、とりあえず北から南まで実際に行ってみたんです。でも南の地域は森の植生が合わなくて

森の植生?

私、落葉樹林が好きなんです。秋に全部落ちて、春にはぶわぁっと芽吹く。あの感じは北側の地域でしか経験できないんですよ。その点、この地域は空気が軽いし開けていてとても好きでした。最終的に肌に馴染んだのがここだったんですね

村瀬さんはどうして山梨を?

就農するにあたって、各地域ごとにどんな特徴があってどんなことをやっているのか実際に見てみたくて、私も同じく旅をしながら全国を転々としました

島で農業をすることに憧れた時期もあったんですが、育てることのできる作物が限られてしまいますからね。特に野菜は、昼夜の寒暖差があるとおいしく育つので、この辺りなら何でも作れそうでいいなと思ったんです

お二人とも実際に見て、感じて、それぞれが一番しっくりきたところが山梨県北杜市だったのですね


高井さんはモウレツ就農研修経験者だった

おにぎりふたつめはシート状の「おぼろ昆布」で

農家を志す前はどんなお仕事をされていたのですか?

私は就農するまではタイマッサージ師をやっていました。

タイマッサージ!? あとで農作業後にぴったりのマッサージを教えてくださ〜い

ふふふ。かつて地元の愛知県で家庭菜園をしていた時期もありましたね。昔から健康オタクだったので、自然や健康のことを考えていくうちに、農家を志すようになりました

私はずっと「農のある暮らしがしたいなぁ」と思っていたんです。幼い頃の夢は、農業をしながら馬と一緒に暮らすことでした

青色の衣装をまとって馬を乗りこなす高井さんの姿。すんなり想像できます!

札幌の大学に進学して、卒業後は北海道で環境アセスメントなどの動植物調査をしていました。仕事で行った霧多布湿原(きりたっぷしつげん)でNPOの植物調査員に誘われ、転職して約9年間勤めました

※霧多布湿原(きりたっぷしつげん)とは、北海道・厚岸道立自然公園にある東京ドーム600個以上の面積を誇る湿原のこと。6月から9月にかけて約300種類の花々が咲き乱れるといわれている。

画像:霧多布湿原センターホームページ

その後、農家に転身されたのですね

霧多布湿原でずっと暮らし続けるのか、それとも夢であった農のある暮らしをするのか、とても悩みました。当時、NPOの方はちょうど人も足りていて上手く回っていたし、そろそろ出てもいいかなと、思い切って辞めました

そして研修先での出会いにつながるわけですか

その前に”あの件”が……

NPOを辞めた後「新規就農者フェア」に参加したのですが、そこで衝撃的な農家さんに出会ってしまったんですよ

ほう、一体なにが?

「ウチで研修させてあげるからとりあえずすぐ来なさい」といわれたので行ってみたのですが、その方が本当にもうガチンコ……というよりモウレツ農家で……

夜中の3時からヘッドライト付けて収穫に行ったりとか、モウレツなことでとても有名な人なんです

口癖は「限界はない」

 笑 

あまりに強烈過ぎて、研修生は1週間とかでリタイアしちゃうことが多いらしいんですよ

育成方針がスパルタ式の方だったのですね

私はなんとか頑張って4ヶ月続けたのですが、あまりにもその生活が辛すぎて最後にはケンカして辞めてしまいました

馬と暮らすはずがモウレツ農家で修行することになるとは

私が麻里子と知り合った研修センターに移ったのは、その一件の後です。研修が終わったら、私はひとりで就農しようと考えていたけれど、「手伝わなきゃいけない気がする」と麻里子が一緒にやってくれることになりました


* * *


村瀬さんと高井さんの人生話を聞きながら、ご飯を噛みしめる喜びを取り戻した大城と日野原。午後の作業のへのやる気がみなぎっていくのを感じました。

さあ、後半戦もガッツリ働くぞ! ……って、え、ええっ!?

なにあのスゴ技!

そう、チュトワでの収穫作業はここからが本番だったのです……。

後編はこちら▶「稲刈りは筋トレなんだ!」山梨に実在したカロリー循環型の持続可能な援農の物語


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文=大城実結、日野原有紗、編集・写真=中川葵

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