卵の旬はいつ?品種による味の違いは? 養鶏家さんに教えてもらいました

調理シーンに欠かせない食材の1つである卵。味にはそれほど違いがないように思われるかもしれませんが、実際のところどうなのでしょう。品種によって味はどれほど違うのでしょうか。そもそも、野菜や果物、魚介類のように卵にも旬はあるのでしょうか……?

改めて考えてみると、よく知らない卵のこと。

素朴な卵の疑問を養鶏家さんにぶつけてみたら、そこには奥深い卵の世界が広がっていました。

登場いただくのは、福島県三春町で4種の卵を生産している吉田睦美さんです。

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アニマルフォレストうつしの森 吉田睦美 |福島県田村郡三春町

「羊がいるから、見においでよ」と言われたことをきっかけに川内村にある牧場へ。しかしその後、東日本大震災により、羊牧場の継承はいったん断念を余儀なくされました。被災した羊やヤギを近隣からも預かり、有志の皆さんと育てていくうちに「羊の文化を無くしてはいけない」という想いが心の底から湧き上がりましたが、羊を取り巻く環境は厳しく、では経過を見ながら鶏を育てようと思いました。現在は、福島県田村市にある移(うつし)地区で、豊かな森と水に囲まれながら鶏やめん羊、ポニー、ウサギ等を育てています。


鶏の品種によってこんなに違う! 卵の色・形・味

吉田さんの元にいる鶏は4種類。白色レグホン、烏骨鶏(うこっけい)、アローカナ、会津地鶏です。とはいっても普段、卵の味の違いについて考えている人は少ないはず! 4種の違いを教えていただきましょう。


①白色レグホン

吉田さん流通量が圧倒的に多く、おそらく消費者の方々が普段よく手にする最もオーソドックスなものがこれです。殻が白くて、味はさっぱり。どんな料理にも合う、万能で使いやすい卵です。価格も一番手頃ですね。


②烏骨鶏(うこっけい)

吉田さんこれもよく耳にしますよね。栄養価が高いことで有名な、肌色をした卵です。産卵数が少ないこともあり、値段も卵の中では高級ランクの品種です。

白色レグホンは年間約280個(1日あたり約0.8個)の卵を産むと言われますが、烏骨鶏は170〜180個(1日あたり約0.5個)と言われています。

体が小柄な分、卵も小ぶり。だから栄養が濃縮されているといえます。味覚が鋭い人には味の違いもすぐわかるそうで、少しクセのある独特な味わいです。


③アローカナ

吉田さんチリ原産で、殻が水色をしたちょっと変わった品種です。「殻の色を染めたの?」「餌を着色してるの?」などと聞かれることがありますが、これが自然の状態なんです。

どうやらこれを扱っている業者は都道府県に1つあるかないか程度のようで、知る人ぞ知るマニアックな卵。味は4つの中で一番甘みが強く、でも後味はすっきりしています。


④会津地鶏

吉田さん文字通り、福島県会津地方のブランド鶏です。黄身が濃厚なので、卵をたっぷり使った料理で濃厚さを存分に味わってもらいたいですね。茶碗蒸しやカツとじなどがオススメです。

それと、他の鶏と比べると体が大きいんです。餌の量は白色レグホンの約2倍。鶏肉として出荷されるケースが多く、卵を育てているのは比較的珍しいと思います。


卵の旬? 卵にまつわる素朴な疑問を聞いてみた

次にお聞きしたのは卵にまつわる疑問。事前にポケマルスタッフ内で話題に上がった質問をお伺いしてみます。


――卵に旬はありますか?

現在の鶏は長い歴史の中で家畜としての改良をされているため、年中いつでも産めるようになっています。

強いて言うなら、鶏が栄養を蓄える繁殖期がなので、旬はその時期ではないかと。栄養を蓄えた分、味が濃厚になりやすいですね。

他にも、季節ごとの気温によって微妙に味が変化することはあります。例えば夏。鶏は寒さにはある程度強いんですが、暑いのは苦手です。猛暑のときは水分を多く取るので、少し白身が多くなったりします。


―― 他に外部要因で味が変化することはありますか?

あります。特にエサの影響は大きく、味だけではなく栄養価にも影響しますね。

栄養価とエコフィード*にこだわる私が使用しているのは、田村市特産のエゴマ油を搾った後に残るカスとおから。どちらも捨てられる素材でありながら栄養価は抜群です。

成分分析をしたところ、脂肪酸の一種であるαリノレン酸**が豊富に含まれていることがわかりました。


――有精卵と無精卵では、味に違いはありますか? 

味には違いはないと思います。

ただ、一般に流通している商品の大半は無精卵でしょう。大規模な養鶏場は、多くの場合、だいたい1羽分ほどの大きさのケージの中で雌鶏だけを飼いながら、機械的に卵を回収していきます。その方が、生産性が圧倒的に高いからです。


――味に違いはないのに、吉田さんはなぜ有精卵を生産してらっしゃるのですか?

「卵をとるための鶏」ではなく、「鶏が自由に暮らした結果の卵」。いろんな考え方がありますが、私はそうあるべきだと思ってるんです。

鶏の生活を想像したら、きっとオスとメスが一緒に群れをつくっているのが自然ですよね。鶏のことを第一に考えた末、”平飼いの有精卵”に行き着きました。


福島で鶏を育てる理由

吉田さんは、養鶏家としてはまだ新米だといいます。数年前まで、鶏を育てたこともなければ、生産者の経験もありませんでした。

ではなぜ鶏を育てようと思ったのか。それは、「福島」だからこそ伝えたい思いがあるからだと語ります。


ーーなぜ養鶏家になられたんですか?

福島ではいまだに、原発事故による風評被害が続いています。お米をはじめ、放射線量は測定したうえで基準値以下のものを出荷しているにも関わらず、なかなか売れません。それがつらくて、悔しくて。

私が卵を生産することで、復興している姿を見せたい。同時に福島で暮らす子どもたちに安全でおいしいものを食べてもらい、健康に育ってほしい。それが養鶏家になったきっかけです。


ーー吉田さんは福島のご出身なんですか?

一時、全町避難となった浪江町の出身です。

震災当時は夫の地元である川内村で山羊と羊を飼育していましたが牧場が被災。事故後しばらくは、郡山市で避難生活を送っていました***。

それから新たに場所を移して鶏を育てることにしたんです。


ーーまさにゼロからのスタートというわけなんですね

正直言って、鶏を飼ったこともなければ、どんな風に成長して卵を産むのか、すべてが初めてのことだったので、基本的な知識すらありませんでした。

自分で調べられるものは調べ尽くし、あとは趣味で鶏を飼っていた経験のある義母や地域の方々に教えてもらいながら、なんとか続けています。今も試行錯誤の毎日で、まだまだ勉強中ですよ。


* * *


吉田さんのコミュニティ投稿には、鶏をはじめとする個性豊かな動物たちが日々登場しています。


動物たちが織りなすのは、ごく当たり前で自然な営み。

「鶏が自由に暮らした結果の卵」を通じて、吉田さんは今日も福島から発信し続けます。


*エコフィードとは…食品残さなどを利用して製造された飼料
**αリノレン酸とは…私たちの体内で絶対必要とされる「必須脂肪酸」の一種。血中の中性脂肪を下げたり、高血圧を予防したりする作用があるといわれている。
***2018年2月現在は、浪江町の避難指示は一部の帰還困難区域を除き解除、川内村の避難指示は全域で解除されています。


吉田さんのたまごの出品はこちら



- - writer - -

近藤快

化粧品専門誌の記者として8年勤務。東日本大震災後、業界紙・東北復興新聞にプロボノで参加、その後専属に。他に、企業のCSR・CSV、一次産業、地方創生などのテーマで取材〜執筆している。


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