生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声〜 vol.11 延縄漁師の鈴木重作さんより


年々深刻化している気候変動。みなさんは、何か環境の変化を感じているでしょうか?

私たちの食べものをつくってくれている生産者さんたちは、自然と向き合う中で日々環境の変化を感じ、また、すでに生産活動において様々な影響を受けています。

そんな生産者さんたちの状況を、少しでもみなさんに知ってもらいたい。そして、私たちにできることを一緒に考えていきたい。

ポケマルでは、自然環境の変化に直面する生産者さんたちの声をお手紙の形にして、連載形式でご紹介していきます。自然からの警告を「炭鉱のカナリア」のように私たちに伝えてくれている生産者さんの声を、まずは知ることから、一緒にはじめませんか?



山形県鶴岡市で延縄漁師をしている鈴木重作です。

漁師になって40年ですが、5〜6年前から海の四季がはっきりしなくなってきたと感じています。冬の海水温が高いので、春と冬で海水温の差が小さくなっています。それに伴って、魚の旬もはっきりしなくなっています。

また、以前よりも魚の生息域が小さくなったと感じます。水域が少し変わるだけで獲れる魚の種類が変わるので、同じ場所で同じ魚の漁をする期間が短くなっています。海の変化が早いので、魚も子孫を残すために生息域を変えているのだろうと思います。



これまではこうした環境の変化や資源量の変化を直視せず、ハイテク機器をはじめとする技術力でカバーして、なんとか量を獲ってきました。でも、変化が早い中では前年のデータが使えないことが多く、漁場や資源量の変化、自然の生産力の限界と向き合わざるをえなくなっています。

これからは、そうした変化や限界を前提にものを考える漁業者を増やすことを目指したいと考えています。漁獲量を制限すると収入は減りますが、減らないように、獲ったものに付加価値をつけて売ることを私たちはやっていきたいです。

一方で、消費者のみなさんには、食事そのものの意味や食事の持つ力を、もう一度考えてみてほしいと思っています。

一般的に、水産物のおいしさは脂の有無で判断されてきました。特に養殖魚は脂が多く、口に入れた瞬間においしいと感じるようです。なので、噛めば噛むほどうまさが湧き出る天然魚より、養殖魚が選ばれてしまう傾向にあります。でも、天然魚には相当奥深いおいしさがあると思っています。

それぞれの魚の特性を理解して魅力を引き出す料理人が増え、また、その奥深い味わいを理解する消費者の方も増えていけばうれしいです。





自然環境の変化を含む、生産現場でのさまざまな変化について、私たち消費者の理解も必要だということを、生産者さんはよくお話しされます。

生産現場との接点が少ない私たちは、それを自分ごととして捉えることがなかなか難しいかもしれません。でも、生産者さんを通して、変化について知ること、理解すること、心を寄せることはできると思います。

生産現場の変化は、やがて私たちの食卓の変化にもつながります。生産者さんの「カナリアの声」が、みなさんの食に対するあり方や暮らしそのものについて、改めて考えるきっかけになれば何よりです。

まだまだ知られていない、生産現場の変化のお話。生産者さんの「カナリアの声」を、ぜひ周りの方にも届けてください。


今回お話をお聞きした生産者さん

Producer 

鈴木重作|第八 長寿丸|山形県鶴岡市   


前回の記事はこちらから

生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う#カナリアの声〜 vol.10 野菜農家の鍋嶋亜由美さんより


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