こんにちは。一人暮らしの自炊生活、体を壊さないよう食べるものに気をつけ始めた編集部員・尾形です。
最近、なんとなく体にいいような気がして、「雑穀ミックス」という名で売られているものを白米に混ぜて炊くようになりました。
しかし、食べながらふと気づいたのです。
豆のようなものや黄色いぷちぷちしたもの、麦っぽいものなどなにやらいろいろ入っているけれど、その正体を詳しくは知らないことに……。
そもそも、雑穀とは何なのでしょうか?
六穀米をお取り寄せ
雑穀とよばれているものの正体を探るため、ポケマルにて「雑穀」で検索。
なにやらいろいろ混ざっていそうな、千葉県 磯部将さんが販売している六穀米をお取り寄せすることにしました。
6種類の穀物がブレンドされており、見た目にもきれいです。
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パッケージも可愛らしく、チャック付きの袋で送られてきます。
近づいてよく見てみると、確かに様々な色のお米と、黄色い粒々したものが確認できます。
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封を開けてにおいをかぐと、なにやらかいだことのある香り。お菓子などにトッピングされている「かぼちゃの種」を噛んだときの、あの香りに似ています。
今回は磯部さんのお気遣いで、ブレンド前の6種類をサンプルとして同梱してくださいました。
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上写真の左上から時計回りに、黒米・赤米・緑米・きび・もち麦・あわです。磯部さんの六穀米は、この6種類がブレンドされているそうです。
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よく観察しようと、とりあえず50gを取り出してみたところ、なんだかうずうずしてきました。6種類、どんな割合でブレンドされているのだろう……と気になってしまったのです。
というわけで。
六穀米を分解!
\ピンセット、君の出番だ!/
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ブレンド済みの六穀米を再び1穀ずつに分けてみることに。ひたすら分けながらサンプルと照合し、それぞれの特長を探っていきます。
①黒米
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本当に真っ黒なお米です。白米と炊くと薄紫っぽい色のご飯になるようです。
②赤米
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赤茶色のような色をしています。白米と炊くとほんのりピンク色のご飯になるようです。この赤米で炊いたご飯を神にお供えしていた風習が、赤飯のルーツになったという説もあるようです。
※参考:丸山清明, 『ゼロから理解する コメの基本』, 誠文堂新光社, 2013.
③緑米
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緑色のお米ですが、白に近いほのかな緑色の粒もあります。黒米、赤米よりも一回り小粒です。
④もち麦
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磯部さんが栽培しているのは「ダイシモチ」という品種で、薄紫色をしています。これはもち性のある大麦で、中心に一本線が入っており、麦らしさを感じます。
⑤もちきび
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丸みがかった、黄色い穀物です。栗のような濃い黄色から、白っぽい薄黄色、茶色っぽい色の粒が見られます。
⑥もちあわ
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きびよりもさらに小さい、ビーズのような穀物です。白ごまっぽい色をしています。弱そうに見えますが、ピンセットで強めにつまんでも、潰れはしません。
「濡れ手で粟」ということわざがありますが、確かに濡れた手で触ったらたくさんくっついてきそうです。
謎の7穀目? ピンク粒の正体は…
これで6種類……のはずですが、どこにも分類できないピンク色の粒を発見しました。とりあえず別枠に置いておきます。
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数時間かけてようやく分類完了。
おおよそのブレンド割合を比べてみると、黒米・赤米・もち麦が同じくらい、緑米がそれより少し少なめです。
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きびとあわは粒が細かいので少なく見えますが、粒数は緑米と同じくらいある気がします。
不明ゾーンに置いておいた謎のピンク粒も少なからず入っており、たまたま混じったとは思えない量になりました。
六穀米を分けてみたら7種類あったという奇妙な現象の謎を究明すべく、生産者の磯部さんに聞いてみました。
磯部 将さん
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千葉県北東部、香取市で少量多品目の野菜作りをしています。里芋・落花生・モチ麦をメインで栽培していますが、その他にもお米や雑穀、珍しい野菜などを少量多品目に栽培しています。
ピンセットで分解してみなければ、気づけなかったであろうピンク色の粒。それがきっかけとなり、磯部さんの粋な計らいに気づくことができました。
雑穀ってなに?
ところで、雑穀とは結局なんなのでしょうか。六穀米に入っていた六穀を、すべて「雑穀」と呼んで良いのでしょうか。
日本雑穀協会さんのサイトを元に、雑穀についてまとめてみます。
そもそもの分類では、穀物は4つに分けることができ、雑穀はそのなかのひとつのカテゴリーなのだそうです。
この分類では稲・小麦・トウモロコシは「主穀」の中に入るので、白米も玄米ももち米もインディカ米も、お米はすべて主穀ということになります。
しかし、現代の日本ではほとんどの人がうるち米の白米を主食としており、玄米やトウモロコシは一般的に主食とはいえなくなくなったため、日本雑穀協会さんでは「主食か否か」を基準として、「雑穀=”主食以外に日本人が利用している穀物の総称”」と考えているそうです。
日本雑穀協会さんが提唱する定義に従うと、現代日本における雑穀の範囲は「一般的に主食となっている白米と小麦以外」ということになり、今回の六穀米に含まれていた黒米・赤米・緑米・もち麦・アワ・キビは、すべて雑穀ということになります。
黒米・赤米・緑米とは?
粒を分けながら、もうひとつ疑問に思ったことがあります。黒、赤、緑のお米は、なぜこんな色をしているのかということです。
調べてみると、これらの色のあるお米をまとめて「有色米」もしくは「古代米」と呼ぶそうです。
有色米は、玄米のぬか層に色素などをもつお米のことで、黒米はアントシアニン系、赤米はタンニン系色素を含み、緑米はクロロフィル(葉緑体)をもつことでそれぞれの色が表れているのだとか。
※参考:猪谷富雄, 『赤米・紫黒米・香り米―「古代米」の品種・栽培・加工・利用』, 農山漁村文化協会, 2000.
緑米の稲(磯部さんのブログより)
精米をすると色のあるぬか部分が取れてしまい白米とほとんど見分けがつかなくなるため、玄米のまま食されることがほとんどです。
「古代米」ともいうのは、昔のイネの特長を色濃く残す品種群だから。
現代では、背丈が高く倒れやすかったり収量が低かったりと、栽培の手間や難しさがあるため、栽培する人が少なくなっているそうです。
六穀米、炊いてみた
雑穀や古代米について整理できたところで、実際に六穀米を炊いてみます。何を混ぜているのかよくわからないままに食べていたあの頃の自分とは、おさらばです。
商品パッケージの記載通り、お米1合につき六穀米大さじ1を入れて炊きます。
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大さじ1すりきりでちょうど15gでした
今回は2合分にしたので、六穀米を大さじ2入れ、いつもと同じように洗米し、炊飯器でいつもどおりに炊くだけです。
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炊き上がりは黒米から移った紫色がまだらに見えますが、底からよくかき混ぜると、全体がほどよく薄紫色に染まります。
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ほかほかご飯を一口頬張ると、ほのかに……なんていうものではなく、ガツンと力強い玄米の香りが一気に鼻へと抜けていきました。
炊き上がった六穀を一粒ずつ並べてみると、全体的に吸水してふっくらしているのがわかります。特にもち麦はかなりの存在感になります。
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それぞれ意識して味わうと、古代米は皮が弾けてプチプチ、もち麦はムギュッとした歯ごたえ、あわ・きびには淡白ながらもほのかな甘みが。
黒米には黒米独特の風味があり、「今黒米を噛んだな」というのがわかる時もあります。
それぞれの持ち味が引き出されていて、一口ごとに異なるハーモニーが生じます。
雑穀米の楽しみ方はさまざまですが、ご飯そのものの香りを活かすため、味付けは塩だけのシンプル卵かけご飯にしてみました。
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ご飯の食感と玄米の香り、たまごのまろやかさ、たまに感じる塩気のバランスがとてもよく、とても高級な絶品料理を食べたような気分です。
* * *
雑穀は、ご飯にも生活にも、彩りを与えてくれます。
いつも炊いているご飯に雑穀を混ぜるだけなので、なにも面倒なことはありません。
似たような名前・見た目でも一粒ひと粒に個性があり、それを意識して食べるだけで、雑穀の見え方が変わってくるように思います。
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文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵