8月に収穫する「早期米」とは?鹿児島県の自然栽培農家さんに教えてもらいました。

まだまだ蒸し暑い日が続く2018年8月中旬。

一足お先に、今年も平成30年産新米がポケマルにやってきました!

平成30年産新米の最新出品一覧はこちらから


そもそも「新米」とはどんなお米を指すのでしょうか? 農林水産省のホームページにこのような記述がありました。

 新米の表示は、食品表示法の規定にある食品表示基準では、
1.原料玄米が生産された当該年の12月31日までに容器に入れられ、若しくは包装された玄米
2.原料玄米が生産された当該年の12月31日までに精白され、容器に入れられ、若しくは包装された玄米であれば「新米」と表示できます。

(出典:農林水産省ホームページ 消費者の部屋より)


つまり、「平成30年産の新米」と呼べるのは平成30年中に小分け包装されたお米だけ。

注意したいのは、今年の12月末までに包装したお米であれば、来年になっても「新米」と表示して販売することも可能というところ。

「白米は精米したてがいちばんおいしい」と言われています。

もしも年が明けて、2〜3月になっても「新米」と表示されているお米をみかけたら、数ヶ月前に精米・包装された「古い新米」ということです。お気を付けください……。


さて、今回は2016年から3年連続でポケマル新米出品いちばんのりの、鹿児島県の生産者:窪壮一朗さんへのインタビューをお届けします。

窪さんの新米(コシヒカリ)は、「早期米」と呼ばれる、一般的な新米よりも約2カ月も早く出荷されるお米です。

なぜそんなに早いの? 普通とどんな違いがあるの?……そんな素朴な疑問を、農家さんにぶつけてみました!


2カ月前倒しする理由は…◯◯対策

早期米の産地の1つとして知られる、日本本土の最西端に位置する鹿児島県南さつま市大浦町。

ここで、お米や柑橘類、かぼちゃなどを栽培しているのが窪壮一朗さんです。

文部科学省の元キャリア官僚という異色の経歴をもつ


—— そもそも「早期米」って何ですか?

一般的な米よりも早い4月頃に田植えを行い、8月のいちばん暑い時期に稲刈りして出荷・販売します。一般的な新米は10〜11月に収穫・販売しますが、それと比べると2ヶ月くらい早いわけです。


—— なぜ、南さつま市では盛んなのですか?

台風から米を守るためです。

これまで大事な収穫前に、台風によって大きな被害を何度も受けてきたそうです。そこで、台風が押し寄せる前に収穫しようと、今から50〜60年ほど前にこの地域では早期米に切り替わったみたいです。


—— 一般的なお米と比べると、苦労も多そうですね……

早期米は植える時期がまだ寒いので、一般に初期生育はあまりよくないと言われています。また、収穫量も安定的とは言えず、少なくなる傾向にありますね。


——  8月の稲刈りは過酷そうです

私自身は刈り取りは委託しているので手伝いだけなんですが、暑くてとても大変ですよ、毎日大量の汗をかいてます(笑)。

この時期はとにかくアブが多くて、作業中は常に体の周りをブンブン飛んでます。一日中、アブを手で叩いたり、払ったりしながら作業してますよ。


お客さんが喜ぶ「手間」をかけたい

不利で過酷な条件でも、知恵を絞り、大量の汗をかきながら毎年収穫作業をしている窪さん。そんな窪さんのお米は、農薬も化学肥料も使わずに栽培している点もポイントです!


—— 農薬を使わない栽培を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

私の考えでは、農薬を散布するのも大変な作業で、それは一種の「手間」なんです。

同じ「手間」をかけるなら、みなさんに喜んでもらえる「手間」をかけた方がいいと思い、2014年から農薬や化学肥料を使わない栽培を始めました。


——  肥料にもこだわりがあるんですね。

肥料も油粕をわずかに使っているだけなので、ほとんど無肥料に近いです。「有機」「化学」を問わず、肥料を使わない方が害虫や病気に強くなれます

試しに鶏糞をたくさん使った年があったんですが、とても出来が悪く、翌年に無肥料で栽培してみたら仕上がりがよかったんです。全く肥料を与えないと畑がやせ細ってしまうので、今はほんの少しだけ使っています。


値段を気にせず、お腹いっぱい食べてもらいたい

いよいよ2018年産の販売開始! 気になる出来栄えは果たして……?


今年(2018年)は田植えの時に機械トラブルに見舞われ、かなり疎植になってしまったことなどで正直なところ不作でしたが、意外とお米の粒が充実していて品質的にはよかったです。


—— 予約販売は毎年増えてるんですか?

毎年買ってくれるお客さんもいますし、なぜか宣伝しているわけではないのに、新しいお客さんも増えてます。どこで知ったのかな?と思うほどです(笑)。東京や神奈川など関東からの注文が多いですね。


—— リピーターも多いんですね!

栽培期間中農薬・化学肥料不使用のお米としては安いからではないでしょうか。うちはおそらく相場の6〜7割の価格です。


—— そんなにお得なんですね!

米は主食です。「小さい子どもに食べさせたい」というお客さんも多いですし、値段を気にせずお腹一杯食べてもらいたいというのが、私の考えです。


——今年はいつごろまで販売予定ですか?

9月10日頃までは販売できると思います。


キャリア官僚から、なぜ本土最西端の田舎町へ

独自のこだわりを数多くもつ窪さんですが、かつてはあの霞ヶ関で官僚として科学技術行政に携わっていました。そんな国の中枢から、なぜ本土最西端の町で農業を始めたのでしょうか?


—— なぜ官僚から農家への転身を?

もともと農業に興味があったわけではなく、気がついたら農家になっていた、という感覚です。

文部科学省の仕事は好きで、自分の気質に合っていました。でも、組織特有の閉塞感を感じ始め、ここで一生を終えるのはよくないかなあと。


—— それにしても、ギャップがあります(笑)

東京・霞ヶ関という中心地から、真逆の方向に舵を切ったらおもしろそうだなと(笑)。「そうだ、田舎で働いてみよう」と、ふと思いついたんです。そこで、空き家になっていた祖父の家に引っ越すことにしました。


—— それから、農業を?

実はその時点でも農業をするつもりはなくて(笑)。

ただ、ここで暮らしていこうと思ったら、農業以外の仕事はほとんど見当たりません。「これ作ってみたら?」というご近所さんの勧めに従っていたら、いつの間にか農家になっていましたね(笑)


異色の経歴をもちながら、いたって自然体な姿勢を崩さない窪さん。霞ヶ関から本土最先端の町に引っ越し、農業を始めてから5年以上が経った今でも、その自然体は全く変わっていないようです。

味について、自分で「おいしいです」とは決して言いません。自分のつくったものはおいしいに決まってるし、他のものと食べ比べたわけでもないので「食べてみてください」としか言いようがありませんよね(笑)。

田舎では米や野菜を隣近所で譲り合う風習がありますが、そのときに「この野菜、おいしいよ」と言う人はいません。「つまらないものだけど、もしよかったらどうぞ」「お口に合わないかもしれないけど、余っているからいかがですか?」というのが普通です。

そんなおすそ分けのスタイルが、私の理想です。


窪さんの早期米の出品はこちら

残念ながら、2018年産の早期米は完売してしまいました! また来年をお楽しみに。。


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Writer

近藤快

化粧品専門誌の記者として8年勤務。東日本大震災後、業界紙・東北復興新聞にプロボノで参加、その後専属に。他に、企業のCSR・CSV、一次産業、地方創生などのテーマで取材〜執筆している。


※この記事は2017年8月16日に公開した記事に加筆修正したものです。

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