生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声〜 vol.12 農家の五十嵐大輔さんより


年々深刻化している気候変動。みなさんは、何か環境の変化を感じているでしょうか?

私たちの食べものをつくってくれている生産者さんたちは、自然と向き合う中で日々環境の変化を感じ、また、すでに生産活動において様々な影響を受けています。

そんな生産者さんたちの状況を、少しでもみなさんに知ってもらいたい。そして、私たちにできることを一緒に考えていきたい。

ポケマルでは、自然環境の変化に直面する生産者さんたちの声をお手紙の形にして、連載形式でご紹介していきます。自然からの警告を「炭鉱のカナリア」のように私たちに伝えてくれている生産者さんの声を、まずは知ることから、一緒にはじめませんか?

山形県鶴岡市で百姓をしている、五十嵐大輔です。

10年前に就農して以来、環境や次世代を育む農家でありたいという想いのもと、土地の特性を活かした循環型農業を心がけ、在来作物を含む40品目を作っています。

山形では、一年を通して寒暖差の変化が極端になってきました。例年でも4ヶ月近く雪に覆われる雪国ですが、さらに近年は激しい寒波に襲われることが多くなりました。また、夏には気温が40℃を超えることもあります。さらに、1日の間でも寒暖差が短時間で大きく変化する事が増えてきました。5月から10月には、雹(ひょう)災害も発生しています。

去年の10月、庄内柿の収穫時期間近のある朝に、5分ほど強い雹が降りました。雹が降り止むのを待ってから現場を見にいくと、9割の柿に傷がいくつも付いており、7割ほどはその場で廃棄することになってしまいました。無傷の秀品はほとんどありませんでした。




当然、このように売り物自体が無いという状況では「買って応援」をしていただくこともできず、また、廃棄の対象にならなかった柿も倍の価格で売ることは難しいです。この雹被害は、自分が就農してからの10年間で経験したことのない最悪なレベルで、売り上げも例年の3割ほどに落ち込みました。

また、真冬の厳しい大寒波による影響も著しいです。寒さによる冷害はもちろん、今年の春は雪解けが遅くなった影響で、作物の新芽がやられてしまったり、山菜の収穫シーズンが例年より短期間で終わってしまいました。これらは、台風、洪水のような分かりやすい災害と比べて目立たず、ニュースにも取り上げられないような気候の変化による影響です。

さらに、予測できない降水量の変化や強風による影響もあります。こういった現象に対しては事前に対策できることが少なく、2週間雨が降らなかった時は、その後の水撒きに半日を費やすこともありました。天気がいい日が続くと、通勤がしやすかったり、洗濯物が干せたりとポジティブに感じられることが多いかもしれませんが、農家は大きなダメージを受けている場合もあります。

このような状況下で例年通りの収穫量を確保することが難しくなっていますが、農家が抱える事情を消費者のみなさんにお伝えする術は少ないです。何らかの被害によって作物が採れず販売できない場合でも、売り切れていると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

私は、ニュースにならない変化にこそ敏感になってもらいたいという想いで、環境について肌で感じる情報を自分自身のSNSにできるだけ投稿するようにしています。ですが、農家の中には、ただでさえ辛い被害の経験を発信することや、それを理由に「買ってください」と言うことに抵抗感を感じる方もいらっしゃいますし、その気持ちも分かります。また、自然環境の変化による被害があまりにも多すぎて、発信しようとしてもキリがない、という側面もありますよね。農家個人からも、メディアからも、現状を細やかに伝え続けるには限界があるように感じざるを得ません。

しかし、ポケットマルシェのようなサイトには、生産者と直接つながることで、本来の旬や昨今の気候変動に関する情報を取り入れやすいという意義があると私は感じています。

ですから、消費者のみなさんにはぜひ、応援している生産者さんの声に耳を傾けて、発信を広げていくお手伝いをしていただきたいです。そして、ご自身が感じる環境の変化に対して、アンテナを広く立てていただけたら嬉しいです。その分、私は生産者として出来る限り丁寧に伝える努力をしたいと思います。



自然環境の変化が、自分の生活空間から離れた場所にどれほどの影響を及ぼしているか。生産現場との接点が少ない私たちには、なかなか想像しにくいことかもしれません。

しかし、日々、予測不可能な変化と向き合っている生産者さんの話を通じて、身の回りで起こっている自然環境の変化を積極的に知ろうとすること、理解することはできるのではないでしょうか。

生産現場の変化は、やがて私たちの食卓の変化にもつながります。生産者さんの「カナリアの声」が、みなさんの食に対するあり方や暮らしそのものについて、改めて考えるきっかけになれば何よりです。

まだまだ知られていない、生産現場の変化のお話。生産者さんの「カナリアの声」を、ぜひ周りの方にも届けてください。



今回お話をお聞きした生産者さん

 

Producer 

 

  五十嵐大輔さん | 金三郎十八代目 百姓 | 山形県鶴岡市


前回の記事はこちらから

生産者さんからみなさんへ 〜自然環境の変化と向き合う #カナリアの声〜 vol.11 延縄漁師の鈴木重作さんより

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