【大阪発・農業×福祉】障がいのある方もいきいき取り組むバラエティ豊かな農の現場👨‍🌾👩‍🌾<前編>

Sponsored By 大阪府環境農林水産部農政室

農福連携は、障がいを持つ方や高齢者などが農業の分野で活躍できる場を提供し、農作業を通じて社会参画を実現していく取り組みだ。大阪府では、農業の多様な担い手の確保と障がい者の雇用・就労の拡大を図るため、ハートフルアグリ(農と福祉の連携)を推進しており、府内でも取り組みが拡がりつつある。今回取材した大阪市内でハートフルアグリに取り組む2件の事業所は、ポケットマルシェ初参加となる。それぞれの取り組みを紹介しよう。

今回は、2件の事業所の1つである「街かどあぐりにしなり よろしい茸工房」代表理事の豊田さんに話を聞いた。

 

目次

 
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\この記事は2本立てです/

  1. 【大阪発・農業×福祉】障がいのある方もいきいき取り組むバラエティ豊かな農の現場<前編> (この記事です)
  2. 【大阪発・農業×福祉】障がいのある方もいきいき取り組むバラエティ豊かな農の現場<後編> 

365日営業中・大阪のどまん中で生まれた肉厚、ぷりぷり、シャキシャキのしいたけをお届けします

大阪のどまん中でしいたけ栽培をしていると聞くと、「ほんま?」と誰もが少し驚く。大阪の名所、通天閣がある庶民的な街、西成区で、しいたけを栽培しているのが「よろしい茸工房」だ。電車の線路沿いから少し入ったところにめざす「よろしい茸工房」の小さな看板が見えた。元々は倉庫だったところで、100坪のハウスでしいたけの生産、45坪の工場で菌床を培養している。ここで障がい者12名と、20名の職員がシフトを組んで働いている。なんと365日営業だそうだ。「今までは就職しても1年足らずで辞めていく子が多かったんですけどね、ここではずっと続いているんですよ」というのは、しいたけ栽培以前から様々な障がい者の就労支援を行なってきた「NPO法人街かど福祉」の代表であり「よろしい茸工房」の代表理事を務める豊田みどりさんだ。工房の運営、営業、商品開発と一人で何役もこなしている。

西成に新しい産業を作ろうと福祉作業所が農業を始める

豊田みどりさんは波乱万丈の人生だ。料理の先生、スナック経営、そして不動産業とさまざまな仕事に就いた。還暦を過ぎ、人の役に立つことをしたいと、不動産の経営を息子に譲り、2012年に全く畑違い、今までかかわったことがない障がい者の就労支援施設を始めた。そして2016年に西成区で借りた土地を活用して「よろしい茸工房」を始めたのだ。以前から非正規労働者の多い西成区で新しい産業を始めたいと、区長に相談を持ち掛けていた豊田さんは「なにか自分たちで働く場所を作らないといけない」と模索していた。そんな頃、しいたけ栽培を見学する機会が訪れる。「いいな。これなら継続して働いてもらえるかも」とひらめいた。栽培方法をいろいろ調べていくうちに、しいたけ栽培の作業は、多岐にわたっており、障がい者であってもその特性に応じてできる作業があると確信していった。菌床(キノコの種菌を植え付け、栽培するための培地)を棚に並べる作業、まびき作業、収穫、重さをはかる、仕分け、袋詰め、シール貼り、パック詰めと様々な作業がある。「この作業はあの子ならできるとか、この子にはこの作業が向いているとか浮かんだんですよ」。西成区内の土地を見て回り、空き地になっていた現在の土地にめぐりあう。こうして農業とは無縁だった人たちの手によって「よろしい茸工房」が誕生し、今年で5年目を迎える。

手入れの行き届いたしいたけ栽培

しいたけ栽培のハウスの中は、清潔でひと目で手入れが行き届いているのが分かる。それぞれが自分が任されている作業を黙々と続け、手を休めることはない。菌床部屋は、湿度が高めで、温度は18℃から20℃に保たれている。農薬を使用していないが、菌床部屋で発生する虫はほとんどいない。掃除が徹底されており、電子水を使用しているので傷みや臭みも軽減されている。ハウス内にはモーツアルトの曲が流れていた。ここで働き始めて5年目という青年に嫌になったりしたことはないか聞いてみると「大きいしいたけが取れたらうれしいし、機嫌悪くしてたらあかんよ」と話しながら、丁寧に収穫後の軸切りをこなしていた。しいたけは収穫もその後の処理もすべて手作業で行わなければならない根気のいる仕事なのだ。

コロナ禍で、乾燥シイタケの置き場所が溢れかえっている

 朝に収穫されたしいたけは、その日のうちに近郊の飲食店やスーパーなどに直接運ばれるので、新鮮さが一番の「売り」だ。通常、しいたけは軽い振動や摩擦で傷つきやすいが、輸送時間が短いので傷がつきにくい。工房からは、飲食店が多い難波や梅田、天王寺にも近く、大阪市内なら30分もあればお届けできる。収穫したばかりのしいたけをフライパンで焼いてみた。新鮮なしいたけは、火が通ってもぷりっとふくらみはそのままで、しなっとならない。その食感はシャキシャキでぷりぷりだ。塩をちょっとふるだけで十分おいしい。一度購入したらリピーターが多いというのもうなずける。

 コロナ禍の影響を聞くと「今、乾燥しいたけが溢れかえってる」という答えが返ってきた。ここも例にもれず、飲食店への売り上げが半分くらいに落ちている。菌床しいたけは、約10日ほどで収穫を迎え、収穫は待ってくれない。新鮮さが売りの生しいたけの出荷量が落ちると、乾燥しいたけにしたり、加工品にして活用しているが、それにも限界がある。乾燥しいたけを増やしてなんとか無駄にしないように努力をしているのが現状だが、保管場所も満杯状態だ。

しいたけの赤ちゃんから生まれた商品

 乾燥しいたけ以外にも料理の先生の経歴を持つ豊田さんのアイデアで、次々と加工品も誕生している。しいたけを大きく育てるために、小さいうちにまびきをしていくのだが、このしいたけの赤ちゃんと言われる「しいたけの芽」は、小さいながらも栄養がいっぱい詰まっている。石づき(軸の先の部分)をとる作業が手間なため、あまり市場には出回っていないが、ここでは、その手間暇を惜しまず、ひとつずつ丁寧な作業で取りのぞくなど、さまざまな商品が誕生している。ココナッツオイルで乾燥させたサクサク食感のきのこのチップス「Meっぷす(めっぷす)」、どんな料理にも合う椎茸パウダー「魔法の粉」、大阪市内の有名レストランのシェフと共同で開発したきのこのアヒージョ「Me HIJO(め ひーじょ)」などがある。どれも自信作だ。

もっと多くの人に知ってもらいたい

 今まではすべて菌床を購入していたが、去年の2月からは自社で菌床を作りはじめた。ただ、大阪には菌床に必要な広葉樹が少ないため、府外から取り寄せなければならず、運送代がかかるのが悩みの種だ。もっと多くの人に知ってもらいたいし、お客さんとリモートで会話ができたりすれば、仕事にやりがいがでると考えている。働く人の為に、以前から栽培のマニュアルを作っており、携帯で簡単に動画で作業手順がわかるシステムも3月に完成する予定だそうだ。今まで様々な仕事を経験してきた豊田さんだが、それぞれにストレスも多かった。しかし「この仕事はストレスないねん」と言う。昨年は、消費者との接点だった様々なイベントやマルシェが中止になった。販売数も大きく減少している中で、ポケットマルシェで直接買ってもらうことにした。SNS機能を通じて、買ってくれたお客さんの声を聴けるのが働く人たちの励みにもなり、そこで生まれる繋がりに期待していると豊田さんは言う。「交流を通じて叱咤激励してもらいたい」そうだ。

 

●街かどあぐりにしなり よろしい茸工房

〒557-0061 大阪府大阪市西成区北津守4丁目9番5号

http://yoroshitake.com/


ハートフルアグリに取り組む生産者さん

Producer

 

  

豊田みどり|大阪府大阪市西成区|よろしい茸工房

   

よろしい茸工房の豊田みどりです。大阪北新地で生まれ、今、西成で菌床椎茸の栽培をしています。大阪のど真ん中西成から食卓へ大阪もんしいたけをその日のうちにお届けする、そして西成をしいたけの街にすることでイメージが変わり、地域が元気に!!を掲げ頑張っています。

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Producer

 

小林將元|大阪府高槻市|NPO法人クラウドナイン

     利用者さんと職員で育てました。ぜひご賞味ください。

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Producer

 

中野友明|大阪府大阪市|株式会社 舞洲フェルム   

舞洲フェルムの野菜は太陽光を利用した水耕栽培で、栽培期間中は「農薬を使わない安全安心の野菜」です。

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Producer

 

辻晃佑|大阪府和泉市|F.C.農縁

     大阪・和泉市で農薬、化学肥料を使わずお米と野菜を育てています。

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Producer

 

中島光博|大阪府和泉市|GreenGrove

     初めまして、大阪府和泉市にて洋野菜を中心に栽培をしているGreenGroove(グリーングルーヴ)の中島と申します。
看板商品の「ヨーロピアンリーフミックス」は多くのレストラン・ホテルのシェフより好評をいただいている自慢の一品です!2019年6月に開催されたG20大阪サミットでは特定食材としてご使用いただきました。是非皆様もお試しください! 

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Producer

 

加藤秀樹|大阪府泉佐野市|泉佐野アグリカレッジ   

     泉佐野アグリカレッジは、「NPO法人おおさか若者就労支援機構」、「株式会社 泉州アグリ」、「有限責任事業組合大阪職業教育恊働機構(A’ワーク創造館)」の3つの団体で構成された共同企業体です。
それぞれが取り組んできたこれまでの蓄積をもとに、3社の特性と泉佐野の地域性を活かした新たな事業をつくり出すために設立されました。

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