農家だけが生産者じゃない。泉佐野アグリカレッジに見た農業の多様性 [PR]

前編では泉州キャベツ『松波』について話を聞かせてくれた株式会社泉州アグリ加藤秀樹さん。彼の事業は農作物をつくるだけにとどまりません。

泉州アグリのもうひとつの顔に、『泉佐野アグリカレッジ』という名の就労支援団体があります。ここでは、様々な理由で就労が難しい人に農業体験を通して新たな扉を開いています。

後編では『泉佐野アグリカレッジ』に関わる人々に話を聞きます。

\この記事は2本立てです/

  1. 大阪グルメの立役者『松波キャベツ』の旬がやってきた! [PR]
  2. 農家だけが生産者じゃない。泉佐野アグリカレッジに見た農業の多様性[PR](この記事です)

目次

ここに目次が表示されます。

“かも”と“たい”の間にある場所

左から順に、株式会社泉州アグリの太田光昭さん・藤田祐介さん・加藤秀樹さん

泉州アグリのもうひとつの顔『泉佐野アグリカレッジ』とは、一体どんな場所なのでしょうか?

『泉佐野アグリカレッジ』は僕らが就農したときに感じたことの実践として生まれた場で、農業を通じて「就労」を応援する場所です。組織としては、『NPO法人おおさか若者就労支援機構』『株式会社 泉州アグリ』『有限責任事業組合大阪職業教育恊働機構』の3団体による共同企業体です

「カレッジ」というと、就農希望者に農業を教える学校のようなイメージでしょうか

少し違います。もちろん農業をやりたい人も歓迎ですが、『泉佐野アグリカレッジ』はその前段階のための場です

前段階……とは?

「農業やりたいのかも」の段階です。農業やりたい"かも"の段階から、実際に農業やり"たい"に至るまでには長い時間がかかる人もいます。でも、就農イベントなどに相談に行くと、「はい就農ね。補助金はこんなのがあって農地はこういう風になっていて……」と、いきなり農業者に仕立て上げようとされてしまうんです

インタビュー中の加藤さん

つまり「農業やりたい"かも"」から「農業やり"たい"」の間にある場所が無いんです。"かも"の段階の人に、はじめから就農ありきで話を進めるのは重いんちゃうかなと思うし、もっとライトに農業に携われる場を作りたかったんです

"かも"と"たい"の間ですか

そうです。ここの取り組みはあくまでも農業を利用した就労支援で、就農のためではありません。1人ひとりにとっての希望の働き方ができるようにすることが目標です

農業を細分化した就労体験プログラム

実際、『泉佐野アグリカレッジ』はポケマルに生産者アカウントを持ち、野菜を販売していますね。この野菜はここの体験者さんが作ったものということですか?

体験者が一から十まで携わっているわけではないんです。生産の主体はあくまでも僕ら『泉州アグリ』というプロの農家で、その作業の一部分を体験者が行っている、ということです

体験者さんはどこまでどのくらい関わるのでしょうか?

『泉佐野アグリカレッジ』では、農業をできるだけ多くの工程に分解してつくった体験プログラムを用意しています。これらの中からそれぞれの得意不得意や興味に合った体験をしてもらっています

『泉佐野アグリカレッジ』の体験プログラム
  • 生産体験
  • 加工体験
  • 販売体験
  • 堆肥づくり体験
  • EC体験
  • 農業ぐらし講座

たとえば【生産体験】では、ただ農作業をするのではなく、必ず収穫作業もできるようにしています

取材当日も、畑にはハクサイ、ブロッコリー、セロリ、ほうれん草など、様々な作物が育っていた。

だってずっと「あそこの片付けして」みたいな単純作業だけだったらつまらないでしょ? 自分で採ったもんを食べるっていうのは農作業の醍醐味だと思うんです【加工体験】では水なすのぬか漬けゆず大根とかの加工品を作ったり、【堆肥づくり体験】本気で農業をしたい人に人気ですよ

農業を分解するとこんなに多岐にわたる仕事があるのですね。ところでこの【EC体験】ですが……もしかしてポケマルでの販売も?

【EC体験】ではネット販売を体験してもらってます。僕らはポケマルに『泉州アグリ』と『泉佐野アグリカレッジ』の2つの生産者アカウントを持っていて、『泉佐野アグリカレッジ』のアカウントでは社員と一緒に体験者も販売に関わっていますよ

なんと、体験者さんが販売を?

社員と体験者の二人三脚。ポケマル担当の二人はどんな人?

写真左が藤田さん、右が山本さん

ここからのお話を聞かせてくださったのは、株式会社泉州アグリ社員の藤田祐介さんと、『泉佐野アグリカレッジ』体験者の山本華乃(かの)さんです。

藤田さん山本さんよろしくおねがいします。お二人でポケマルを担当されているとのことですが?

僕は泉州アグリの社員で、地元のマルシェでの販売や飲食店などへの卸業務、ポケマルでのネット通販など、営業全般を担当しています。山本さんには僕の業務の一部を手伝ってもらうような形で、ポケマル担当をしてもらっています

山本さんは普段はどんな作業をしているんですか?

商品ページを作って、注文が入ったら食材を梱包して、発送して、発送完了のお知らせをしています

実際にポケマルの発送完了連絡をしているところ

ごちそうさま投稿への返信以外は既に彼女が担当しています。近いうちに、それも含めて『泉佐野アグリカレッジ』アカウントの業務は全て彼女に任せようと思っています

体験者からポケマル担当に抜擢ですか。素晴らしいですね!
ところで、山本さんはどうして『泉佐野アグリカレッジ』へ通うことにしたのですか?

専門学校を出てから就労相談に行った時に勧められて、ここに来ました

もとから農業に興味があったというわけではなく?

はい。農業には興味がなかったのですが、作業が好きで体験に参加したいと思いました

実際のところ…農業やポケマルでの販売は楽しいですか?

楽しいです。フリマアプリで物を売った経験はあったのですが、野菜を売るのは初めてでした。コロナをきっかけに筋トレを始めたこともあり最近は食べ物に興味が出てきて、おもしろいなと思って携わっています

落花生の袋詰め中

苦労していることはありますか?

私はあまり野菜について知らないので、商品ページを作るときに困ることがあります。知らない野菜があれば、自分から聞きに行って教えてもらって、それをみんながわかりやすいように、文章にして商品説明を書くのが難しいですね

それは立派なインタビュー取材です。すごい、大切な仕事をしてらっしゃるんですね

新体制で師弟はライバルに?

プロフィール写真撮影直前、「もう一個!」と山本さんにキャベツを手渡す藤田さん。

山本さんが独り立ちしたら、藤田さんはポケマル販売担当卒業ですか?

いや、実はそんなこともないんですよ。僕らのもうひとつの販売アカウントである『泉州アグリ』の方は引き続き僕が担当しますので

『泉州アグリ』は藤田さん、『泉佐野アグリカレッジ』は山本さんで、それぞれのアカウントでポケマル販売をすると。つまりそれは師弟対決……二人はライバルということですね

そうですね

そういうことになりますかね

お二人がそれぞれにどんな商品作りをして消費者とのコミュニケーションを交わすのか……内幕を知ってしまったからこそ、これからが楽しみです

おわりに

泉佐野の地に飛び込み就農した加藤さん。その経験が『泉佐野アグリカレッジ』という新展開を生み、そこからまた新たな人生が生まれていく。

今回の取材で感じたのは、農業の機能は決して食料生産だけに止まらないということです。『泉佐野アグリカレッジ』の中で、農業は人が可能性に出会い人生を変化させる"触媒"のような機能を果たしていました。

「野菜を買う」というありふれた日常の行為の先に、さまざまな人の人生があります。あなたのお買い物が、働くことに悩み葛藤する人へのエールとなっていることも、時にはあるのかもしれません。

前編はこちら>>大阪グルメの立役者『松波キャベツ』の旬がやってきた![PR]

関連商品

◎泉佐野アグリカレッジの商品

泉佐野アグリカレッジの商品をもっとみる

取材・制作

いいきじ生産組合(なかゞわ、おゝしろ)

取材で集めた種から『いいきじ』を育てる仕事をしているweb編集ライターのチームです。2017年から農林水産業系の取材記事制作に携わり、2020年11月末までの取材歴は全国29カ所以上、制作記事数は39記事以上。2人とも宣伝会議「編集ライター養成総合講座」東京32期卒業(最優秀賞)です。

Magazine

あわせて読みたい