農協×生産者のタッグで“いしかり野菜”を全国へ!

9月下旬の北海道。田んぼには黄金色の稲穂が揺れる頃、200万都市札幌市に隣接する石狩市を訪ねました。
鮭を使った「石狩鍋」発祥の地として知られるこの町にあって、地域住民の暮らしを支える農産物直売所、JAいしかり地物市場「とれのさと」。
今回はその魅力や、生産者さんと農協担当者さんの想いをうかがってきました。


目次

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▲パートさんが考えたという、どこか垢抜けない親しみを感じさせる店名「とれのさと」。


「食べたい」の声で今や100品種!

取材に応じてくださったのは、2名の生産者さんと、農協担当者さんでした。

▲左から遊佐宏文さん、前田まさ子さん、千田翔太さん。「とれのさと」を支えるエースたちです。

前田まさ子さんは、出荷者協議会の前会長で、JAいしかりの直売事業が始まる頃から関わってきた大ベテランです。

▲前田さんが作るとうもろこし「まるかじり」は、甘いだけでなくコクと風味が抜群!

生まれ育った札幌を離れ、石狩市高岡で農業を営む夫に嫁いでから45年、ミニトマト10種のほか、とうもろこしなど多品種を栽培しています。
食べる人たちの笑顔に応える姿勢は、「とれのさと」誕生にも大きな影響を与えていました。

「幼い頃、母が軽トラックにとうきび(とうもろこし)を山積みにして売りに出て、空っぽにして帰ってくるのを見ていた」という前田さん。
農協の共選では、規格外とされたものは廃棄されてしまうのがもったいないと、胸を痛めていたといいます。農協からの提案もあり、20年ほど前から、共選所の前にテントを出して直売を始めました。
自分が作った野菜を食べてくれるお客さんと、直接向き合うようになった前田さんは、あれが欲しい、これが食べたいというお客さんの声を聞き続け、現在は実に100種類以上の作物を栽培しています。

テントでの直売はその後、時を経て規模を拡大し、平成23年に「とれのさと」が誕生しました。
「とれのさと」に多くの市民が集まるのは、前田さんをはじめ生産者さんたちが20年積み重ねてきた信頼と期待があるからなのでしょう。

▲こんなに大きな冬瓜も、前田さんが育てて運んでいます。おつゆにどうぞ。

人生戦略で定年後に農家の道へ

出荷者協議会の会長を務める遊佐宏文さんは、ミニトマトやレタスを中心に約50種類もの野菜を育てる農家さん。

▲北海道では意外に思われる、落花生も作っています。塩ゆでが美味!

現在62歳の遊佐さんが農業を始めたのは、なんと6年前。防衛大を卒業後、自衛官としてのキャリアを全うするなかで、全国各地に赴任して、人々の暮らしを見てきたといいます。
定年まで残り6年となった50歳の頃、その後の自分の人生を戦略的に考え、80歳を過ぎてなおコメ作りに精を出す九州の義父をはじめ、農家や漁師は元気だ!という確信をもって、農家になる決意をしたそうです。

遊佐さんの畑では、この秋は、多品種を育てているじゃがいもがおすすめといいます。
カラフルな詰め合わせをコーディネートしたのは、「妻が彩りが欲しいと言ったから」と照れ笑い。
農家になることを応援して支え、食卓を彩る作物がほしいと意見をくれるパートナーがいたからこそ、食べる人に寄り添う野菜作りが出来るのです。

▲遊佐さんがポケマルで出品するカラフルなじゃがいもセット。見事な彩りです。

農協×生産者の二人三脚!

こだわりの農産物を作る前田さんと遊佐さん。そんなお二人以外にも「とれのさと」では多くの生産者さんが農産物を販売しており直売所は常に盛況。
今年からは夏季(4月~11月)の定休日をなくしたことで、より継続的に買ってもらえるようになりました。売れ残ったものが休日を経て、しなびて戻ってくる悲劇も減ったと、遊佐さんは笑顔を見せます。

しかし、直売所ではできないことがあります。それは全国のお客さんに農産物をお届けすること。
これまでも全国にお届けしたいという声は生産者からも上がっていたものの、パソコンやインターネットが得意でない生産者が多いといった理由から、ネット販売などには高いハードルを感じていたと「とれのさと」のスタッフ千田さんは言います。

どのようにして「いしかり野菜」を全国に広めるか思案していたところ、
石狩市からポケットマルシェというサービスがあることを教えてもらい、「とれのさと」に出荷する有志の生産者の商品を販売することに決めました。

▲広い店内に並ぶ野菜は、生産者さんたちが毎日持ってきて並べています。

遊佐さんは、ポケマルでの販売について、JAいしかりとの二人三脚による効果を期待していると言います。
生産物が集まる直売所の機能をうまく使い、農協の職員が発送作業をサポートすることで、生産者は農作業や袋詰めなどに専念でき、より良いものを新鮮な状態でお客さんに届けることができるようになります。

▲店内の壁には、直売所出荷者協議会のメンバーである生産者さんたちの写真が並んでいました。

発送作業だけでなく、JAいしかりでは販売促進にも力を注いでいます。

札幌の大学で経済を学び、JAいしかりに就職した千田さんは、現在「とれのさと」に勤務し、イベントを考えたり、自分で考えたレシピを載せたチラシを発行したりと、
農産物の良さをお客さんに伝える仕事をしています。最初に配属された資材課で、圏内のすべての農家さんに顔を出していたことが、今の仕事につながっていると言います。

圏内の農産物だけでなく、北海道産の鶏肉も仕入れて店頭に並べ、レシピでの食べ方提案をセットにして販売している例もあります。
「野菜に限らず、お客さんに来てよかったと思ってもらえるものを増やしていきたい」と語る千田さんは、「酒屋として商売を営む祖父を見てきたこともあり、お客商売が好きなんでしょうね」、と笑顔で話します。

▲千田さんが自ら料理のレシピを考案してチラシを作っています。美味しそう!

常にお客さんに向き合う、前田さんたちの姿勢から生まれた「とれのさと」。

これからは、地域の方々だけでなく、全国の皆さんに石狩の野菜を知ってもらいたいという強い想いから、JAいしかりと出荷者協議会のタッグでポケマルに臨みます。乞うご期待!

▲店頭販売している季節のベジソフト(310円)が安くて美味しくて巨大! 取材時はかぼちゃでした。

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