それは、ある夏の日の編集部員の会話がきっかけでした。
申し遅れました。ところてんについて深く考えることなく四半世紀生きてきてしまったおがたです。こんにちは。
「ところてん」とは一体何なのか、寒天とテングサは何が違うのか——私が迷い込んでしまったこの謎に、あなたは答えることができますか?
食通が多いポケマルのお客さまにはご存知の方が多そうですが、「知っている」とまでは言えない私のような人も、きっといるはず……。
というわけで、今回は私がテングサからところてんを作って、ところてんの謎解きにチャレンジします!
テングサが届いたよ
ということで、今回は三重県志摩市の山川眞智子さんが販売しているテングサを購入しました。
レターパック便で届いたのは、テングサ100gとテングサの煮出し方レシピ。
テングサは真空パックで、かなりしっかりとしていました。
はじめて見たテングサは繊維状のものが絡まり合っているような状態。一本一本は直線かと思いきや途中で枝分かれしています。言われてみれば、海藻っぽい形です。
手触りはパサパサ。ちぎるときに強く握ると、指に刺さってちくっとするような感覚があります。色は、黄色く濁ったような部分と、白色の部分が混ざっています。
答えを求める私に、生産者の山川さんがテングサ干しの現場写真を送ってくださいました……!
↓ ↓ ↓
\これがテングサ干しだ!/
海の傍の作業場で、地面に並べられているものがテングサです。赤紫っぽい色をしているみたいです。
海から採ってきたテングサを天日干しすると色が抜け、最終的にはこの写真のように、白色の「さらしテングサ」ができあがるのです。
いざ、ところてんづくり
テングサの謎が解けたところで、さっそくところてんづくりです。今回は同封レシピを参考に、テングサ20g、水2Lの分量で行うことにしました。
①テングサを洗う
まずはテングサを水洗いします。
水につけると刺々しい感じはなくなりましたが、テングサが溶けてしまう気配はありません。香りだけは粉寒天を溶かしたときに似ていて、ほわっと漂います。
多少の付着物がみられましたが、最終的には煮出した液を濾すのでそこまで気にしなくて大丈夫そうです。
②テングサを水に浸す
大きめの鍋に洗い終えたテングサ(洗浄前重量20g)と水(2L)を入れ、1時間ほど浸けておきます。
③テングサを煮る
そのまま火にかけ、沸騰したらお酢を小さじ1いれます。
ここから蓋をせず40分ほど、様子を見ながら煮出します。中強火で10分も経つと溢れそうになってくるので、火加減を調節。
煮汁はだんだんとにごり、とろみがついてきます。
④テングサの煮汁を濾す
40分経ったらザルにあけてテングサと煮汁を分け、さらにキッチンペーパーなどで漉して、細かい破片やゴミなどを取り除きます。
濾した後のキッチンペーパー。細かい固形物がたくさんあるのがわかります。
⑤煮汁を型に入れて冷やし固める
煮汁をタッパーや流し缶にいれたら後は冷やすだけ。2Lの水で40分煮出して、ちょうど1L分の寒天液ができあがりました。
浸水や煮出しで時間はかかりますが、工程自体に難しいところはなく、ゆったりとした気持ちで臨めました。
ところてんと寒天の違いって?
翌日、一晩冷やしたテングサの煮汁は、しっかりと固まっていました。
麺のような細長い形態にするためには、本来は「天突き」という専用の道具を用いるそうですが、今回は包丁で細切りに。
さっそくお味見です。
濾したりなかったのか、ところどころ白く濁っています
自分の手でテングサを洗い、煮出して、固めて……これまでの工程を思い返せば、どんなところてんよりも美味しく感じられました。
これ以上はお手上げです。
自力究明は諦めて図鑑を開くと、どうやらこういうことのようです。
テングサ・ところてん・寒天とは?
○テングサとは:
紅藻類テングサ目テングサ科の海藻。オニクサ、オオブサ、マクサ、ユイキリ、ヒラクサなどいくつかの種類があるが、日本で「テングサ」と言う場合はマクサを指すことが多い。
○ところてんとは:
テングサを煮て、その煮汁を型に流し込んで冷やし固めた食品。
○寒天とは:
テングサを煮て溶け出させたアガロースなどの繊維状の水溶性成分を、煮汁を凍結・乾燥させることにより固形化した食品。「糸寒天」「角寒天」「粉寒天」など、製品の形状によって呼び名が変わる。
(参考:食材魚介大百科第4巻 第4刷, 平凡社)
謎、解けました。
ところてんを食べる
こうしてできあがった人生初の本当のところてん。ところてん自体には味がないので、組み合わせの幅も広そうです。
定番の「酢醤油」は基本として、他にどんな食べ方があるでしょう?
ところてん×きなこ
生産者の山川さんに教えていただいたのがこの組み合わせ。
角切りにしたところてんにきな粉をかける食べ方です。黒蜜はかけず、お好みでお砂糖を足しながら。デザート感覚で楽しむことができます。
ちなみに、山川さんのおばあさまは何もかけずに、旦那様は甘醤油で召し上がっているのだとか。それぞれが好きな食べ方で楽しめるのは、お餅の食べ方に通ずるところがあっておもしろいです。
ところてん×ヨーグルト
ここから先は私の創作ところてんです。
こちらはお気に入りの組み合わせ。角切りところてんにヨーグルトを混ぜ、はちみつをかけます。
例えるならばアロエヨーグルトのようで、食感のないヨーグルトに食感のある寒天を足すことで、プレミアム感のあるヨーグルトに大変身しました。
ところてん冷やし中華風
平たく切ったところてんに冷やし中華のように具材をのせてポン酢をかけたら、ヘルシーながらもお腹にたまる一食に。食欲のないときにも良いかもしれません。
ところてん冷奴風
ところてんを冷奴のように大きめに切り分け、醤油をかけて箸で切りながら食べる……! ところてんを切るのが面倒なときにありかもしれません。
牛乳ところてん
固める前のテングサ煮汁に、フルーツミックス(果物+シロップ90mL)・牛乳110mL・寒天液200mLを混ぜて冷やし固めました。
※煮汁に冷たい牛乳を混ぜてしまったせいか、固まり具合がゆるくなってしまいました。牛乳は温めてから混ぜてくださいね。
ところてん羊羹
煮汁200mLに市販のレトルト粒あん200gを混ぜて固めました。一般的に想像する羊羹よりは柔らかく、舌でつぶせるほど。とても上品な滑らか羊羹になりました。
* * *
ということで、ところてんの謎、解明できました!
ところてんづくりに失敗はありません。固さは、煮出す時間やそもそもの水の量によって変わります。
一度レシピ通りに作ってみて、柔らかいと感じたら調節し、試行錯誤の中でお好みの「ところてん度」を見つけてみてください。
どうやって食べようか、固める前に何を入れようか、アレンジを考える時間も楽しいですよ。
粉寒天でつくるのとはまた違ったおいしさを、ぜひ堪能してみてください。
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※2020年10月25日現在の商品情報です
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おまけ:テングサの再利用だ!
テングサについて調べていると、一度煮出し終えたテングサを再利用できるという情報が目にとまりました。
ザルに残ったテングサを再び鍋に入れ、1Lの水で20分ほど、1回目と同じ要領で煮出しました。
できあがった寒天液を比べると、2回目の方が少し透明度の高いものになりました。
左が1回目、右が2回目の寒天液
1Lの水から約500mlの寒天液ができましたが、固まった後もふるふる揺れています。
これもいわゆるところてんにして食べようと思いましたが、包丁できれいに切れる固さではありません。スプーンですくって食べるくらいの、ゆるいゼリー状になりました。
もう少し固くしたい場合、もう一度火にかけるという技があります。ところてんをそのまま鍋に入れ、再度沸騰させます。
火にかけるとだんだん溶けてくるので、水がだいたい半分くらいになったら火を止めて、この時点で砂糖を入れてみることに。
そして、切ったぶどうを入れた果物寒天と、インスタントコーヒーを溶かしたコーヒー寒天をつくりました。
よく煮詰めて水分を飛ばしたため、歯ごたえのしっかりとしたものになりました。
文・写真=尾形希莉子、編集=中川葵