高山村・有機農業者たちの歩み

高山村で耕す、ゆうきの人

ルーツを辿り
見つけた価値を
地元・高山村から

平形 清人

Kimidori farm&kitchen

Goto AkihiroGoto Akihiro

ルーツを辿り
見つけた価値を
地元・高山村から

麻産業に携わりたいと渡ったカナダで、日本の有機農法が高く評価されていることを知った。その価値を自分の原点から発信したいと思うようになり、地元・高山村へ帰郷。有機農家として歩み始めた。12年以上が経った今も、自然相手の農業は思い通りにいかないことばかり。それでも、その可能性を信じ、試行錯誤を続けている。加工品の販売や仲間との連携など工夫を重ねながら、持続可能な有機農業の形を目指す。

高山村で耕す、ゆうきの人

遠くで見つけた近くの価値

群馬県高山村で生まれ育った平形さん。大学で人類学や環境学を学ぶうちに、日本文化と深く結びつく「麻」に興味を持つようになった。麻は1年で育ち、収穫後には畑に還る循環型農業に適した植物で、繊維や食品、建築資材など多用途に活用できることから、環境にも優しく、ビジネスとしての可能性も感じたという。
そこで一念発起し、麻産業先進国のカナダへ。有機麻を扱う企業で働きながら、現地の有機農家とも交流を深めた。そんななか、彼らが自然農法を提唱・実践した日本の農学者について「私たちのヒーローだ」と語る姿に触れ、日本の自然・有機農法の価値を再認識。自分の原点からその魅力を広めたいと考えるようになり、高山村へ戻ることを決意した。
帰郷後は、地域資源を生かして高山村の活性化を目指す「NPO法人 上州高山・竹倶楽部」に研究員として所属。そこで同法人の理事であり、村で有機農業を実践する後藤明宏さんに出会い、後藤さんが育てた有機野菜を東京などで販売する取り組みにも関わるようになった。「でも、自分がつくっていないので、野菜の背景やこだわりをしっかり紹介できなかったんです。実際に有機農業をしなければ、その魅力は伝えられないと思いました」。
こうしてKimidori farm&kitchenを立ち上げ、高山村で有機農家としての一歩を踏み出すことになった。

続ける理由がここにあるから

農家として独立後は、後藤さんの畑に間借りして、高山きゅうりの有機栽培を始めた。隣の畑で後藤さんが作業する様子を見ながら、実践的に有機農業の基礎を身につけていった。さらに、高山村のほかの農家にも教えを受け、とうもろこしやトマトなどの栽培にも挑戦。後藤さんに借りた畑も含めて、約5反の農地で多品目の有機栽培に取り組んだ。
けれど、実際に始めてみると、有機農業の難しさを痛感する。害虫や病気の影響を受けやすく、収量の予測が立てにくいため、収入は不安定だった。特に最初の4年間は「農業一本で生活するのは厳しい」と感じることもあったという。それでも辞めたいとは思わなかった。「ただお金を稼ぐだけなら農業以外の方法もあります。でも、仕事において大切なのはお金だけではないと思うんです。自分がやりたいのは、農家として高山村から有機農業の魅力を伝えること。それを諦めるつもりはありませんでした」。
収入面は工夫で改善できると考えた平形さんは、県の農業経営塾に参加。そこで農業経営のノウハウを学んだ。さらに、収量予測の難しさに対応するため、野菜を多めにつくり、余った分は干し芋などに加工して販売することにした。こうした取り組みのかいあって、少しずつ売り上げは安定していった。

広がる畑広がる思い

現在、平形さんの農場は約25反に拡大し、さつまいも、にんじん、ビーツを中心に、高山きゅうり、とうもろこし、マコモダケ、トマトなどを有機栽培している。収穫した野菜は食材宅配サービスやスーパーに出荷。また、野菜の一部と干し芋などの加工品は、奥様が中心となって自社ECサイトで一般消費者にも販売している。
今後は、販売力の強化に向けて、高山村の仲間たちとの共同出荷にも力を入れていく考えだ。個人では難しい安定供給や販路の拡大も、仲間と連携することで可能になると期待している。
また、法人化を含め、平形さんがいなくても農業が止まらない仕組みを整えたいともいう。「数年前、農作業をしているときに脳卒中で倒れてしまって。幸い今は回復していますが、農業を一人で担うリスクを感じました。作業が止まってしまうことで、出荷が滞り、築いてきたお客様との関係が途絶えてしまう可能性もありますし、持続可能な体制づくりに取り組むのは大切なことです」。
有機農業の魅力を発信するには、つくるだけでなく、届ける仕組みも欠かせない。だからこそ、仲間と協力しながら持続可能な農業の形を模索している。地域とともに歩み、人と人とのつながりを大切にしながら、これからも有機農業の可能性を広げていく。

その歩みをひとりずつ
じっくりと辿ってみてください。

始まりは一人仲間と重ねて村の「ゆうき」に

銀河高原ファーム

後藤 明宏

ルーツを辿り見つけた価値を地元・高山村から

Kimidori farm&kitchen

平形 清人

自然に寄り添う農と編集のほどよい暮らし

上州高山農園

中澤 浩明

美味しくて美しい野菜を笑顔の畑から

農園花笑み

渡辺 藍

輪と輪が広がる食への思いが導いた土地で

農園わとわ

渡辺 聖光

高山村有機農業者座談会「土と人と、この村と。」

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