2019年9月9日未明に関東地方の太平洋沿いを通過した台風15号は、伊豆諸島や房総半島に私たちの想像を上回る被害と課題をもたらして、去って行きました。
ご存知のとおり、台風15号の被害は、発生から1日以上が経ってから、徐々にに明らかになっていきました。その多くは復旧が比較的早かった地域からの情報で、深刻な被害を受けていた地域の情報は、なかなか明らかになりませんでした。
今になってわかることですが、その原因は、情報通信網の遮断にありました。本当に酷い被害を受けていた地域では、電気も電波も遮断されてしまっていたため、情報の受発信ができなくなっていたのです。
たくさんのポケマル登録生産者さんがいる千葉県は、いったいどうなっているのか? 被災しなかった人たちにできることはあるのか?
その問いの答えを見つけるヒントを得るため、私たちは千葉へ行ってきました。
1章 千葉取材を決めた経緯
筆者の場合、千葉で起きていることを、ポケマルへの生産者さんからの投稿で知りました。
台風通過後、始めの被害報告は9月9日の午後。旭市の平野兼悟さんからの投稿でした。

写真には、畑に横たわる苗たちが写されています。その奥には大きな水たまりのようなものが。
その後、数人の生産者さんが台風の経過を投稿してくださいましたが、その数は9月12日以降はほとんど変わりませんでした。
一方、SNSでは"大規模な停電が継続中"だということが発信されていて、その地域には何人ものポケマル生産者さんがいることは、一目瞭然でした。

ポケマル生産者さんの分布(グーグルマイマップより)
便りがないのは良い便り――などと、呑気なことを言っている場合ではありません。
でも、電気が届いていない人に無用な連絡をしてバッテリーを消費させてはいけないし、電波が届いてない地域には連絡することもできないし、もしかしたら、被災してポケマルどころではないかもしれない……。
今何かしなくてはいけないのではないか、いや、今は何もしないほうがいいのかもしれない。
堂々巡りをしながら意を決して既にコミュニティで報告してくださっていた数名の生産者さんにメッセージを送ると、数名の方が呼びかけに答えてくださいました。そして、そうしている間、筆者は"安全な場所でネットの情報を収集している自分"に違和感を覚えていました。
千葉県は東京の隣の県です。現地に行けば、台風が生産地にどのような被害をもたらすのか、生産者さんが何を必要としているのか、少なくとも、今よりはわかるのではないかと思いました。
ライフラインの復旧状況を確認すると、北総エリアなら混乱もおさまっていそう……というわけで、自分たちの足で千葉に行って、当事者の方に会って、聞いてくることにしたのです。
2章 9月21日、北総へ
9月21日、ポケマル編集部は千葉県北部へと、車を走らせました。
今回訪問した北総は、首都圏近郊にある一大生産地ながらも、台風の影響により場所によって4日間におよぶ停電と、風雨による被害で大きな打撃を受けたエリアです。
台風上陸から約2週間。町の様子は一体どうなっているのだろう。取材班は少し緊張した面持ちで北総エリアに入りました。
高速道路から一般道に降り、市街地を進みます。幸運なことに訪問当日の道路状況は通常通りで、特に台風の被害を感じる工事等もありませんでした。
一方で、一部損壊をしたとみられる店舗や家屋も点在していました。バイパスを走れば、看板の文字が吹き飛んでいたり、壁の一部が崩落していたり……。

途中立ち寄ったコンビニは一見すると通常営業のようでしたが、レジには「台風被害」の文字が残ります。

3章-1 旭市・平野さんの場合
はじめに訪れたのは、千葉県旭市。いち早くコミュニティに知らせをくださった平野兼悟さんご家族の畑です。
お父さま・お兄さまとともに米や多品目の野菜を栽培する平野さんは、近い将来での独立を目標に掲げる27歳の農業青年です。

最初に案内いただいたのは、建てて1年ほどの新しい倉庫でした。

平野さんが指さすのは、一部が吹き飛んでしまったシャッターでした。金属製のシャッターがここまでビリビリに破けてしまうなんて……。一体どれだけの風だったのだろうと衝撃を受けました。

*未熟米とは、生育環境等により成熟が不十分な米を指す
幸運なことに、商品として出荷する予定のお米は無事だったようですが、台風の影響で収穫予定がずれ込んでしまったとのことです。

「稲刈り終わらせるのが遅くなっちゃったよー!」と明るく答えるお父上
次に見せてくださったのは、ブロッコリーの畑です。

広大な畑でしたが、ポツポツと所々抜け落ちたように、何も植わっていない場所が点在します。

生き残り立ち上がったブロッコリーたち。当日の風向きがわかるほどに、苗の傾きが揃っていた
そしてこちらはビニールハウス。

ビニール部分は破れ、ハウスの中央部は骨組みがぐにゃりと曲がっていました。

生々しい被害を目の当たりにした取材班でしたが、とりわけ印象的だったのが平野さんの表情でした。

そう言う平野さんの表情は、決して悲壮感に駆られたものではなく、毅然としながら真っ直ぐ前を見据えるものでした。
最後に連れてきていただいたのは、大根とキャベツが育つ畑でした。
キャベツは台風が去ってから定植をしたとのことで、畑には規則的に青々とした葉っぱが両手を伸ばしていました。

台風前から植わっていた大根は、葉の一部が強風で飛ばされ欠損していました。

3章-2 ”被災地のものを買う”という支援
平野さんの「千葉県産を買ってほしい」という言葉に、筆者は”千葉全体を後押ししてほしい”という願いを感じ取りました。
「被災地支援」というと、私たちは今すぐにできることを探しがちです。しかし実際には、大規模農家であるほど、被災直後に一般消費者が直接的に力になれることは少ないです。

「農業魂」が刻まれたキャップが素敵でした(農機具メーカーの株式会社クボタさんにいただいたものだそう )
だからこそ、地域全体に目を向けて、被災地域で生産された食材を”継続的に”購入していくことが大切なのだと感じました。こういう災害があったということを忘れないことも、食べ手の私たちにできる支援のひとつです。
平野さん、ありがとうございました。
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文=大城実結(2章・3章)、中川葵(1章) 編集・写真=中川葵