北村広紀 | 自然栽培園 北村
2026.8.22一年に一度の絶景。自然栽培米の田んぼ一面に広がる稲穂と、自然の声に耳を澄ます贅沢な時間
田植えから8週間。
田んぼ一面に広がる鮮やかな緑の中から、たくさんの稲穂が顔を出し、いよいよ出穂(しゅっすい)の時期を迎えました。
自然が見せてくれる、一年に一度だけの息をのむような美しい景色です。
今年はお天気にも恵まれ、非常に珍しいことに、田んぼ全体で稲穂が一斉に出そろいました。
一面に風と光を受けて輝くその姿を目にすると、「今年も無事にここまで来ることができた」という深い感謝の気持ちが、静かに込み上げてきます。
■ 40年の自然栽培で出会った、初めての表情
私はここ佐賀の地で、肥料も農薬も一切使わない「自然栽培」を40年続けてきました。
本来、自然栽培の田んぼでは、稲穂が出る時期は一株一株少しずつ異なるのが当たり前です。それぞれの稲が独自のペースで育ち、自然の揺らぎとともに生きているからです。
「それが自然の姿だ」そう思っていた私にとって、今年のように一斉に揃って顔を出す稲たちの姿は、どこか新鮮で、美しくもありました。
自然は、毎年同じ顔を見せてくれません。
だからこそ、これほどまでに面白く、奥深いのだと感じます。
効率や人間の都合ですべてをコントロールするのではなく、天候、土、水、そして生命そのものが持つ力。それらが複雑に調和し合うことで、その年だけの特別な「一粒のお米」が育まれていきます。
■ 答えをあせらず、「なぜだろう?」と問いかける贅沢
この時期は、根元がぐらぐらと揺れるような状態になることがあります。
なぜ毎年、決まってこのような現象が起きるのか――。
正直にお話しすると、40年向き合ってきた私にとっても、その明確な理由はわかりません。
しかし、「分からないから」といって、すぐに人間にとって都合の良い処置や肥料を入れて直そうとはしません。
答えを急がず、「なぜだろう?」と稲の姿を静かに眺め、観察する。
そこにこそ、自然からの小さなメッセージや生きるヒントが隠されているかもしれないからです。
不自然なものを一切使わず、ありのままの生命力を引き出すこと。それこそが、私が40年間守り続けてきた大切な美学です。
■ 効率を超えた先にある「本当の価値」
お米づくりは、単なる生産活動や効率化だけでは語れない世界です。
何年もかけてじっくりと土を育て、
毎日田んぼに足を運び、稲の声に耳を澄まし、
その年ごとの自然をただありのままに受け入れる。
一口食べたときに身体の奥から染み渡るような「生命力」や「本当の美味しさ」は、こうした目に見えない時間と手間の重ね合わせから生まれると信じています。
■ 秋の黄金色を楽しみに
今はまだ青々としているこの美しい稲穂も、秋が深まるにつれて重みを増し、見事な黄金色へと変化していきます。
その美しい日を心待ちにしながら、今日も一日、感謝を込めて田んぼを見守り続けます。
今年もたくましく、美しく育ってくれた稲さんに、心からの感謝を込めて。
いつも見守ってくださる皆様、本当にありがとうございます。
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