北村広紀 | 自然栽培園 北村
2026.6.12水面に映る空と、涼やかな風に包まれて
初夏を思わせる汗ばむ陽気が続く中、いよいよ田んぼに水を満たす「通水」を行いました。
水が張られた田んぼに一歩足を踏み入れると、不思議なほどに心地よく、涼やかな空気がふわりと通り抜けます。鏡のようになった水面に青空や白い雲が美しく映り込む景色は、何度見ても息をのむ美しさです。
大自然の大きな営みの中に生かされていること、そして今年もこうして米づくりができることへの感謝が、じんわりと胸に湧き上がってきます。
美しい仕上がりが、健やかな成長を約束する「荒代掻きと均平作業」
田んぼに水が入ると、それまで気がつかなかったごくわずかな土の凹凸が、水面の高低差としてはっきりと見えてきます。
この繊細な違いを見逃さず、トラクターに「逆転ロータリー」を駆使して、土を細かく砕く「荒代掻き(あらしろかき)」と、地面をまっすぐに整える「均平(きんぺい)作業」を同時に進めていきます。
なぜ、平らに整えることがそれほど重要なのでしょうか?
田んぼが完全に平らであることは、この後の田植えで苗を美しく植えるためだけでなく、水の深さを均一に保ち、苗にストレスを与えず健やかに育てるために不可欠だからです。さらに、収穫期を見据えた理想的な「排水性」までを計算しながら、ミリ単位の感覚で丁寧に仕上げていきます。
一見すると地味で、泥に隠れて見えなくなってしまう部分ですが、この妥協のない土台作りこそが、最高峰の美味しさを支える極めて重要な工程なのです。
力を合わせて、次の世代へつなぐ準備を
作業は私一人だけのものではありません。川端(田んぼの端)では、妻が大切な役割を担ってくれています。
田んぼからの貴重な水の漏れを防ぎ、あぜ道からの雑草を抑えるために、手際よくビニールマルチを設置していく妻。言葉にせずともお互いの役割を理解し、一つの目標に向かって力を合わせる時間は、私たちの暮らしの豊かな原点でもあります。
本物だけが持つ、目に見えない価値
無肥料・無農薬の「自然栽培」は、決して魔法ではありません。日々の小さな工夫、丁寧な手仕事、そして自然への深い畏敬の念。その一つひとつの奇跡のような積み重ねの上にしか成り立たないものです。
派手さや効率だけを追い求める世界とは対極にある、自然のバイオリズムに寄り添い、五感を研ぎ澄まして向き合う時間。この贅沢なプロセスそのものに、私たちは何にも代えがたい本物の価値を感じています。
田植えという特別な日に向けて、準備は一歩ずつ、しかし確実にととのっています。
今年も五感を震わせるような、豊かな実りをもたらしてくれることを願いながら。大いなる自然の恵みに、心からの感謝を込めて。
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